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本能の赴くままに日記や小説を書いています。
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「…エドワード、嫁に来ないかい?」
「断固拒否。」



「…何だコレ?」
エドワードは目の前の惨状に絶句した。
いや、惨状と言うほどのものではないのだが弟の仕込みのせいで綺麗好きになってしまったエドワードにとって目の前に広がる光景は惨状と呼べるものだった。
「だらしねぇな…。洗濯もの溜まってるし、食器は流しに置きっぱなし…」
冷蔵庫には酒とつまみ程度しか入ってなかった。
「何もないって…ホント、何にもねぇな…。ありえねぇだろ。」
と、呟くとエドワードは買ってきた食材を冷蔵庫に仕舞い、念のため買ってきた調味料を調理棚に並べる。
それからソファーの上に乗っている洗い物を風呂場の隣にある洗濯機に押し込み、ついでに風呂も掃除する。
それも終わって、洗濯機がまだ回っているのを見たエドワードはキッチンに戻り、浸けてあるだけの食器を洗いだす。
洗い終えた後、冷蔵庫に仕舞った食材を取出し、調理しだす。
俺が作るんだから自分の好きなもので良いだろ…と切った野菜と水を鍋に入れ、野菜スープ状態にする。
それから嫌いな牛乳ベースのホワイトブイヨンを作り、そちらの火を消すと、野菜が煮えるまでどうしようか…と考えて、洗濯物がもうそろそろ洗い終わる頃だ、とそちらに足を運ぶ。
洗濯物を干し終えた後すぐに鍋を見て、野菜が煮詰まっているのを確認するとホワイトブイヨンをその中に入れた。
「…俺、何しに来たんだっけ?」
泊まるついでに料理作るだけだったはずだよな…?
エドワードの呟きは部屋に響いて消えた。


「帰ったよ。」
「お邪魔します。…エドワード君?」
「大将~?」
ハボックは遠慮なくリビングに足を踏み入れるとテーブルの上には"人数分"の食事が乗っていた。
「ぇ…何で…」
「あ、お帰り。」
「おっ、大将!何で俺らの分まで?予定じゃ大尉しか来る予定じゃなかったってのに」
「リザさん誘った時点で中尉たちも来るだろうなぁ…って予測ついたし。だって、中尉たちも中まで入った事ないだろ?」
「まぁ…玄関までかなぁ、良くて。何で知ってんだ?」
ハボックの問いにエドワードは何でもない事のように答える。
「ん?俺が准将ならそうするから。まっ、俺は錬金術で見られちゃ困るもんとか隠すし、リビングあたりまでなら許容範囲かな。」
国家錬金術師の研究なら一般人には理解できなくても、同じ錬金術師からすれば喉から手が出るほど価値のあるものだ。
その研究の一部だけでも。
だから、不用意に人を入れるわけにはいかないのだ。
それ以前の問題で錬金術師は自分のテリトリーに入られるのを嫌うというのもあるが…
「見られたくないものとは?」
ちゃっかりご同伴になっているフィルマンが問うとエドワードはあっさり
「禁書とか?」
と言い切った。
「大丈夫なんですか?禁書を家におくなんて…」
「ん?平気、へーき!罠はある意味、俺の専門だからね。書斎や書庫の周りに沢山仕掛けるつもりだし。あんたらが帰った後、この家の周りにも仕掛けとくから明日から気をつけろよ。」
フュリーの言葉に対しにこやかにそう断言されて命の危険を感じる面々。
エドワードは敵と見做したモノには容赦がない。
そんな事はわかりきった事だ。
「さて、シチューもあったまった頃だし、メシにするか!!」


「ふぅ…食った、食った!大将って料理、上手かったんだな。」
ハボックの隣にいるブレタも満足そうに酒を煽っている。
「ん?そう?」
「えぇ、とても美味しかったわ。ご馳走様。」
ホークアイにまで褒められて満更でもないエドワードは頬を朱に染め、頷く。
俺たちと態度違ぇぞ~とハボックが拗ねてるのを無視して、エドワードはキョロキョロしているロイに話しかけた。
「何やってんだ?」
「え?あ、何か部屋が綺麗になってる気がしてね…」
ロイの言葉に何を今更…とエドワードは呆れる。
「散らかってたから片付けたんだ。洗濯物もたとんで洗濯機の上に置いてるから後で仕舞えよ。」
「君が…?」
ロイは感動して、肩を震わせたかと思うと、エドワードの肩をがしっと掴んだ。
「…エドワード、嫁に来ないかい?」
「断固拒否。ってか何でそうなる…」
心底嫌そうな顔で一蹴されたがロイは諦めない。
「だって君、料理が上手くて…あぁ、ご馳走様、美味しかったよ。毎日食べたいくらいだ…家事全般はおてのもの。その上、美人ときたら求婚するしかないじゃないか。」
「…あんたの思考回路は理解できん。根本的なところからして間違ってる。俺は男であんたも男だ。」
「じゃあ、私のところにお婿に来ない?」
その声の方を見ると片手にお酒を持っているホークアイ。
外見的変化は見当たらないが、どうやら酔っているらしい。
だが、酔っ払いと言えどホークアイ。
その言葉にエドワードは本気で照れる。
酒の勢いでも嬉しいものは嬉しい。
実際、冗談でも酒の勢いでもないのだが、その事を知らないのは幸か不幸か…
「む…大尉、邪魔をしないでくれないか?私は今、大事な話をしてるんだ。」
「お言葉ですが、准将。お忘れのようですが貴方は記憶を失っているのですよ。そんな無責任な事を言って、記憶が戻った時、責任を取れるのですか?取れると今この場で断言できますか?」
全く言い訳ができないほどの正論にロイは落ち込む。
ホークアイの言った事は正しく、今の記憶のない自分が何を言ったところでそれは無責任な発言としかとられない。
例え、本気でも。
「(何で私は記憶を失ったんだ…。今の私は彼にとっても、彼女らにとっても偽者で、だから今の私の言葉も偽物になる…。)」
例え、記憶がなくても私は私…と言い切れないのは、以前の私と今の私の違いがありすぎるから…
「辛い、な…」
「ん?どうした?」
顔色をなくしたロイにエドワードは心配そうに尋ねる。
以前と変わらないところがあったからホークアイに言われるまでエドワードもロイが記憶をなくしているのを忘れかけていたが、今のロイは言わば別人のようなものだ。
そんな人間に今までの仕打ちは酷かったかな?と少し反省した為、態度も殊勝になる。
「いや、何でもない。大丈夫だ。ただ…」
「ただ?」
「いや…」
「途中で言葉を濁すな。言いたい事があるなら言えっての!」
エドワードの言葉にロイは今しか言えないだろう言葉を、どうか心に届くようにと願って口を開いた。
「…ただ、信じてほしいんだ。以前の私がどうであったかなんて私は知らない。だけど、私は君が好きだ。」

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