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――嫌われて、軽蔑されることになっても、これが私にできることだから…
キョーコはぎゅっと拳を握ると、覚悟を決めて話し出した。
「私が演技するきっかけになったのは敦賀さんなんです」
「そうなんだ。あれ?でも、嫌ってたって言ってなかった?」
「えぇ、嫌ってたからこそ、です。演技する理由は違いますけど、演技をしようと思った理由は敦賀さんを演技でオロオロさせたいからだったんですよ」
「オロオロって…京子ちゃん、勇気あるというか無謀というか…」
「えぇ、そうですね。そんな理由で演技をしようと思ったなんて!と敦賀さんに怒られてしまうかもしれませんけど、あの時私は本気でそう思ったんです」
キョーコは苦笑しながらそう呟く。
蓮の“本気”を目の当たりにして、引きずられた。
自分がいない間に役を勝ち取った瑠璃子ではなく、自分を遠隔操作して蓮に対して悔しさを抱いた。
――私は演技をさせてもらえなかった…
新開監督に演技を褒められても全く嬉しくなかった。
それどころか悔しくて悔しくて…だって、誘導されて上手く見えたって私の実力じゃないもの。
だから、私の力で演技したいと…彼の本気に引きずられないだけの演技力を身につけたいと思った。
「あの人は仕事に関してはとても厳しい人で、仕事に真剣な人には本気で相手をしてくれる人です。そして、相手の演技もホンモノにしてしまう役者で…まだ役者を目指す前に一度だけ演技をさせてもらったことがあるんですけど、その時、私は演技をさせてもらえなかったんです。敦賀さんの演技に本気で驚いて、素で反応してしまった…。それがすっごく悔しかったんです!」
「えっと…演技のことはよくわからないけど、それが悔しくて見返してやろうって思ったの?」
「それに近いですね。それから何度かばったり会ったりしたんですけど…ある日、この番組に初めて出させていただいた時、人気のないところで座り込んでる敦賀さんに出会ったんです」
「え!ちょ…京子ちゃん!言っちゃっていいの?今までずっと黙ってたのに…」
「この話をするためには明かさないといけませんからね。今まで黙っていてすみませんでした。“坊”は私です。敦賀さんには鶏のきぐるみって言った方がわかりやすいかしら…?それとも『やぁ、敦賀くん。またしけた顔をしてるね』の方がわかりやすいですか?」
蓮を相手にする時だけ使っていた声音で話すと、光たちは「そんな声も出せるんだ」と驚いた。
ずっと番組ではホワイトボードで話していたからだろう。
キョーコは困ったような顔で頷いた。
「でもさ、ばらしてよかったの?ずっとエンドロールに名前のせるの嫌がってたのに…」
「嫌だった理由は敦賀さん(とあのバカ)に坊が私だってばれたくなかったからなのでいいんです」
「何で知られたくなかったの??」
「実は、坊の格好の時、敦賀さんの図星をついて怒らせて『ごめんなさい、大嫌いなのでいじわる言っただけですー』って言っちゃったんですよ」
「うわっ!本人に『大嫌い』って言ったの?それなら確かに明かしたくないよなぁ…」
「そうなんですよねぇ…まぁ、でも『面と向かって大嫌いって言われたの初めてだ』って笑って許してくれたんですよ」
「おぉ~!おっとなぁ~~!!」
「そう思いますよね!謝ってくれたから許すって言われて、凄く大人だなぁって感心しちゃったんですよ。私だったら無理だなぁって。だから、何か悩んでるようだったので、力になるから教えてくれって頼みこんじゃいました」
その内容がアレだもんなぁ…
思いだしただけで笑えるわ…と、笑ってられないんだった。
秘密にするからって言って教えてもらったのに、全国放送でばらすんだもの。
次に会った時は大魔王か…存在抹消されてるかもしれないわね。
「え?敦賀さん、何か悩んでたの?」
「えぇ、台本のことで悩んでたみたいなんです」
「台本?」
「はい。急に台本が変更になったらしくて、その中のある単語がわからなかったらしいんです」
「へぇ…わかんない単語って?」
「てんてこ舞い、です」
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言っちゃった…