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『てんてこ舞い、です』
「てんてこ舞い~~~???」
社は無表情な蓮と画面の少女を交互に見ながら、思わず叫ぶ。
それほど少女の言葉は意外だった。
「れーんー。これってホントか?」
『京子ちゃん、それってホント?!』
社とリーダーの声が被る。
それを聞きながら、蓮は深く溜息を吐いた。
できることなら誰にも知られたくなかった…
あんな問いをしたことが全国放送で流される…なるほど、凄く恥ずかしい。
そして、社長はそれを許可したのか…イメージダウンに繋がると思うんだが…。
――いや、それ以上に問題が…
『はい。しかも、どういう意味?って聞くならまだしも、敦賀さんはこう言ったんです』
『「てんてこ舞いってどんな舞なんだ?」』
司会者の三人が固まった。
蓮の隣にいる社も固まった。
そして、次の瞬間――
『『『「ぶふーーーーーーーーっっ」』』』
思いっきり噴き出した。
――あぁ、わかっていたさ!そういう反応をされるって!!
鶏(つまり最上さん)にも同じ反応をされたんだ。
しかも、スタジオに向かう際、何度も噴き出されたんだ。
他の人も同じような反応を示すことは予想がついてたさ!
腹を抱えて笑う三人を最上さんは申し訳なさそうな顔で見ている。
その表情は彼らに対してではなく、俺に対してなんだろう。
『私もつい笑っちゃったんですけど、疑問に思って聞いてみたんです。「日本に20年もいて一度も聞かなかったのか」って。その時はごまかされてしまいますけど、クー・ヒズリの息子さんだったのなら日本で暮らしていなかったでしょうし、納得ですよね』
『っ…きょ、京子ちゃん。いいの?そんな風に言っちゃって…。今日はクー・ヒズリの息子=敦賀蓮のイメージを払拭するために来たんでしょ?』
『そうですね。でも、私はイメージを払拭したいだけで、決してお二人の関係を否定しに来たわけじゃないですから。私が訴えたいのはクー・ヒズリの息子“だけど”敦賀蓮は敦賀蓮、ってことです』
否定したところで親子関係じゃないってことになるわけじゃないですし、と少女はあっさり言う。
その割り切り方が誰にでもできればいいのにな、と蓮は苦笑した。
皆が皆そう考えてくれたなら、蓮も生きやすかっただろうに…
隣で笑っていた社も少女の言葉に共感したのか、うんうんと頷いている。
それを横目で見た蓮は「周りに恵まれてるな…」と照れくさそうに微笑んだ。
が、実はそれどころじゃなかったことを社の言葉で思い出す。
「そういえば、キョーコちゃんがあの鶏だったんだなぁ…」
「そう、ですね」
「俺、台本読みの時は誰も近づかせない蓮と一緒にいたから、広く浅くの蓮にも友達が!って喜んだのに…ってか、お前が傍に置いてた時点気付くべきだったなぁ…」
「…俺も知りませんでしたから、気付かなくて当然ですよ」
「みたいだな。キョーコちゃん、大嫌いなんて言ったんだ…ホント、嘘のつけない子だよねぇ。…って、あ!じゃあ、お前がスランプの時にわざわざ楽屋を訪ねてきたのも偶然じゃなかったんだな!」
良かったな、キョーコちゃんに気にかけてもらえて!とにまにまと笑う社の言葉に蓮はぴしりと固まる。
すごい顔で固まった蓮に社は眉を寄せた。
「どうした?」
「……俺、あの鶏に恋愛指導されたんですよ…」
「はぁ?!」
「しかも、気になる相手が高校生で4つ下ってはっきり言ってしまいました…」
「あー…それは痛いな」
同情するような目で蓮を見る社。
本人に恋愛相談した上、全く気付いてもらえなかったのだ。
あの頃、あの少女以上に蓮と仲の良い人間は高校生どころか成人した女性にもいなかったのに…
その時点で普通なら『もしかして、私のことだったり…!?』とか思うだろう、普通なら。
しかし、普通でないのが最上キョーコである。
恋愛方面が壊死している少女はもちろん自分のことだと思うことなく、『堕とせ』だの『関係を深めたまえ』だの自分じゃない(と思い込んでる)他の女性との恋愛を推奨してきたのだ。
悪気がないとわかっているからこそ、痛すぎる…
「最上さん、そのこともあったから鶏だったことをばらさなかったんでしょうね…。最初の失言以降も結構言いたい放題でしたし。『大先輩の敦賀さんにこんなことを言ったって本人にばれたら…ひぃぃいいいい!!』って思ったんでしょう…まぁ、全部俺のためにしてくれた行動だって知ってますけど、ね」
「確かに、尊敬してる先輩に恋愛指導なんて普通はしないよなぁ…まぁ、そんだけスランプになったお前が心配だったんだろ」
あはは…と乾いた笑いを漏らす社に蓮は苦笑する。
否、苦笑しかできない。
二人は目を見合わせると、溜息を吐き、止まることなく続いている画面に再び目を向けた。
『――――で、その後、私が坊をクビになったことを話したんですよ』
『あぁ!京子ちゃん、初回で不破尚相手にやらかしちゃったもんねぇ!』
『えぇ、(あいつを陥れるために)はりきりすぎちゃいまして…』
「…何か、副音声聞こえたぞ」
「……俺もです」
『まぁ、最初の方が面白いって言われて、復帰できたけどね。ってか、京子ちゃん、よくきぐるみであそこまで動けるよねぇ~』
『体力に自信がありますから!…って、脱線してますよ、光さん』
『あ、ごめん!』
「…………名前呼び…」
「れ、蓮!あれは三人とも石橋姓だからだと思うぞ!絶対にお前の危惧してるようなことじゃないから!な?」
闇の国の蓮さんが現れそうになり、社が慌ててフォローを入れる。
蓮は納得しながらも気に食わず、「石橋光、ね」とこっそりブラックリスト入りした。
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展開遅いなぁ~
突っ込みが入るから、ですかねぇ…