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本能の赴くままに日記や小説を書いています。
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瑞穂さまへのお返事から派生

 

「………アンタか」

「君は、軽井沢の時の……」

「そう睨むなよ。約束通り、現れなかっただろ?」

「去年のうちは、だろ?」

「なんだ、キョーコから聞いているのか」

「(キョーコ呼び…)不破が暴走したのは君のせいらしいね」

「まぁ、勘違いさせるようなことはしたからな。だが、半分はアンタのせいだと思うけど?」

「俺?」

「不破はアンタのこと敵視してるみたいだし、俺のことが誤解だって解けても馬鹿な行動を取ったんだとしたら、他の原因はアンタしかいないだろ」

「俺が原因、ね…(まさか、不破の前で最上さんが俺を意識してるような発言をしたとか…いやいや、相手はあの子だぞ!同じ部屋で暮らしても平気なくらい俺を男と意識してない子だぞ。そんなはずは…)」

「あ、そうそう。考え事をしてるとこ悪いけど、俺時間だから」

「…そうか(だけど、不破にあんな行動を取らせたってことは、そういう発言をしたとしか思えないよな…。不破の奴、最上さんに…した後、俺を見て嘲笑ってたし)」

「じゃあな。あ、それと、お前の過去キョーコに話しといたから」

「そうか………って、はっ?!」

 


という感じで、レイノから話を聞いた蓮がキョーコちゃんのとこに行くところから始まります。
では、[ つづきはこちら ]どうぞ

 

 

 

呆然としている間に消えた彼を捕まえるのを諦めて、俺は確認するために事務所に向かった。
この時間なら、彼女はまだ事務所のラブミー部の部室にいるはずだ。
案の定、まだ残っていた彼女はちょうど帰ろうとしていたようで、タイミングよく部室のドアが開いた。

「最上さん!!」

「えっ…な、何ですか?そんなに慌てて…」

「あ、あのさ…その、あの…っ」

「えぇっと、本当にどうなされたんですか?とりあえず、落ち着いてください!」

「あぁ、うん。ごめんね…」

走って来たせいで服は汗だく、息は荒く、肩で息をする状態の俺を心配するように彼女は眉を寄せ、ハンカチを取り出して俺の額を拭こうとする。
その手を掴んで、彼女が逃げないように部室の中に連れ込み、鍵をかける。
そんな俺を不審に思ったのか、彼女が怪訝そうに俺を見上げた。

「…あの、どうなさったんですか?」

「……ビーグールの、ボーカルに会ったんだけど」

「えっ…あの魔界人にですか?」

彼女の顔色が変わる。
それは、あの男に関わったことを俺が怒ると思ったから?
それとも…

「うん……それで、最上さんが俺の過去を………」

「そ、そんなこと聞いてませんよ!だいたい、アレが敦賀さんの過去を知るはずないし!」

ぶんぶんと首を振って否定する彼女。
そのわかりやすい反応に、いつもなら笑みが零れるのに、今は焦りと恐れしか浮かばない。

「…やっぱり、何か聞いたんだ…なんて言ってたの?」

「えっと……」

「うん?」

「そ、その………敦賀さんが…」

「…俺が?」

「『コーン』…だと」

「っ…」

予想はついていたのに思わず息をのむ。
軽視していたのかもしれない…知るはずがない。
だって、この記憶は彼女と俺だけの宝物[モノ]なのだから…と。

「ああああああありえませんよね!敦賀さんが『コーン』だなんて!」

「…そう思ってるなら、何故目を逸らす?」

ありえないと言うのに、その目は俺と合わない。
本気で違うと思ってるのなら、目が合うはずだ。
彼女は人と目を合わせて話す、礼儀正しい子なのだから。
だから、本当はもうわかってるんだ…彼女は俺が『コーン』だって…

「……」

「もうわかってるんだね……他には?」

「え?」

「他にも何か言われたんだろ?じゃないと、君の態度に説明がつかない。俺が『コーン』だと知っただけなら、君は隠すのではなく寧ろ問い詰めたはずだ」

「そ、そんなこと…」

否定しようとしても無駄だよ?
だって、君の人間性なんて俺が1番よく知ってる。
君は俺が『コーン』だって知ったなら、「何で黙ってたんですか!」って怒りに来るはずだよね?
「私がコーンのこと心配してるの、知ってるくせに!」って泣きながら怒るはずだよね?
その権利が君にはあるから…
だけど、君はあの男と会ったことを黙ってただけじゃなくて、俺が『コーン』だと知ったことも黙ってた。
それって……そういうこと、なんだろ?

「最上さん………キョーコ、ちゃん?」

「っ…」

「言って?」

強い口調でそう言うと、彼女はどこか辛そうな表情で口を開いた。

「…『コーン』は聞き間違いだろ?って…本当の名前は……」

「『クオン』」と音にはならなかったが、彼女の唇の形で何と言ったのかわかった。
でも、それ知っただけなら、そんな辛そうな表情はしないだろう?
だって、『クオン』は君が尊敬するクー・ヒズリの息子の名前だ。
父親の手にひっかかって飛べないと言った『コーン』の言葉を覚えていてくれた彼女は、何で俺が『クオン・ヒズリ』であることを隠しているか察したはずだ。
だけど、名前からわかるのはそこまで。

「それも聞いたんだ…なら、俺が過去に犯した罪も聞いたんだろうね…」

感受性の強い彼女なら、俺[クオン]と同調して飛べない気持ちを想像して辛くなったのかもしれない。
けれど、それだけとは思えない…
それに、あの男がそれだけで済ませるとは思えなかった。

「敦賀さん…」

彼女は否定しなかった。
ごまかしても無駄だと悟ったのだろう。
俺に掴まれてない方の手を胸元でぎゅっと握り、泣きそうな顔で俺を見つめる。

――ねぇ、その顔は俺に触れられたくないから…?

過去を知ったならそう思われても仕方ない。
優しい君はヒトを傷つけた俺を軽蔑するだろう…
だから……

「君には…君だけには、知られたくなかった…」

「…何で、ですか?」

何で?なんて聞かなくてもわかってるだろう?
あぁ、でも君は鈍感だからね…
何故、君“だけ”には知られたくなかったのか、気付かないだろうね。

「…『コーン』は優しい思い出であってほしかったからだよ…『コーン』は妖精の王子様で、決して罪人である『クオン』なんかじゃないんだと思っていてほしかった…」

『コーン』なら飛べると言ってくれた君を失望させたくなかった。
君が信じていた妖精が、本当は『コーン』を心配してるのに隠したまま先輩風を吹かせている最低なペテン師だなんて知ってほしくなかった。
いつか、俺を嫌う日が来ても、『コーン』を想っていてくれさえいれば生きていけると…そう、想っていたから…

「罪人だなんて…」

「罪人だよ。荒れて、タバコにも酒にも女にも手を出して、毎日毎日暴力を振るって…最低な人間なんだ、俺は…」

「敦賀さん…」

そう…最低なんだ、俺は…
薬には手を出してなかったし、浮気もしたことなかったけれど、それだけの話で、決して褒められた生活はしていなかった。
オーディションに落ちて酒を飲んで、役を切られてタバコを吸って、求められるがままに女性と恋人になって、彼女を抱いて、自分は他人の体温に多少癒されたのに彼女たちには悲しみと寂しさだけを与えて、解消されない苛立ちや絶望感を暴力という形で他人にぶつけて…
そんな俺が許されるはずがない…だから、大切な存在はどこにいたって作れないのだと誓っていたのに…
俺はこんなに君が大切で仕方ない…。
君を好きになる権利も、幸せになる資格もないって知ってる。
知ってるんだ…だけど…だけど……っ

「だけど…ねぇ、お願いだよ。お願いだから、俺を軽蔑しないで…君の中から俺を抹消しないで?」

君の中から俺が消されてしまったら、きっと俺は生きていけない。
狂って壊れかけた俺が社長に手を伸ばされる前に命を絶たなかったのは、君との思い出を覚えていたから。
君という存在がいたから、俺はこの世に留まっていられたんだ…
その君が『俺』という存在を拒絶したら、きっと俺は壊れるだけじゃ済まない…
君を閉じ込めて逃がさないだけならまだいい方…最悪、君を道連れに死のうとするかもしれない。
どちらにしろ、君を巻き込んでしまうだろう。
君を大切に思ってるのに、そんなことを考えてしまう自分がいるのも確かなんだ…

「お願いだよ、キョーコちゃん…ダメな人間だって憐れんで失望して同情してくれていい…。だから…だから、俺から離れていかないで…っ」

「コー…ン」

「妖精じゃなくてごめん。君の綺麗な思い出を汚してごめん。尊敬できる先輩でいられなくてごめん。こんな最低な人間でごめん。憎んでくれてもいいよ…『よくも長年騙していてくれたわね』って怒って復讐してくれたっていい…だけど、俺を消してしまうのだけは…それだけは許して…」

復讐という動機を怒った俺が言っていい言葉じゃなかった。
だけど、彼女を繋ぎとめるためなら手段を選んではいられない。
傍にいられるなら何だってするよ?
公衆の面前で土下座するのさえ厭わない…
ずっとこだわってきた役者の自分だって、君が捨てろと言うなら捨ててみせるよ。
君を失う恐ろしさに比べたら、『俺』という存在を作ってきた『演技』さえ失うのは恐くない。
『俺』を見失うことになっても、君を失うことの方が俺には恐いんだ…

「何で……何で、そんなこと言うんですか…?」

「キョーコちゃん…?」

「私は貴方にとってただの後輩でしょう?それとも、思い出の女の子?どちらにしても、貴方がそのように縋るような存在じゃないはずです!それに、軽蔑だの、抹消だの……貴方は私を何だと思って…」

戸惑い、掴まれた手をそのままに一歩下がる彼女。
ただの後輩?…そんなわけない。
思い出の女の子?…それだけじゃない。
君を何だと思って…だって?
そんなの決まってる。

「好きなんだよ!!」

「え?」

「君が好きなんだ!どうしようもなく愛してるんだっ!!君が望むなら演技だって捨てられるほど、俺は君が好きなんだっ…君が傍にいてくれるなら何を捨てることになったっていい!」

「何を……」

「ずっと、ずっと好きだったんだ…過去は持ち込まないと決めていたのに、大切な存在は作れないと自分を戒めていたはずなのに、君だけはいつだって例外なんだ…。嫌われるのも、憎まれるのも、本当は嫌だ…だけど、無関心でいられるよりはマシだ。抹消されるよりずっとマシだ。お願いだよ、キョーコちゃん…俺にはずっと君だけなんだ……だから、俺から離れていかないで…?」

掴んだ手を引き寄せて、急に引っ張られてバランスを崩した身体を抱きしめる。
華奢な彼女の身体はすっぽり俺の腕の中に収まった。

「君が離れてしまったら、俺は壊れてしまうよ」

「敦賀、さん……」

「キョーコちゃん…」

彼女を抱きしめたまま返答を待つ。
まるで、今まさに死刑台に上がろうとしている死刑囚の気分だ。


「私、聖人君子じゃありません」


ズキンと胸が軋む音がした。
嫌な汗が背中を伝う。

「それは…俺を受け入れられない、ってこと?」

聞きたくない聞きたくない聞きたくない、けれど、聞かねばならない。

「敦賀さんは私を美化しすぎです。私は見ず知らずの方に同情はしても、貴方よりその方々を優先できるほどデキた人間ではないんですよ?」

「え……?」

「私は、離れません。嫌いも、憎みも、軽蔑も、抹消もしません。だから、壊れるなんて…貴方を作ってきた『演技』を捨てるなんて、悲しいこと言わないでください」

都合のよすぎる言葉が聞こえた気がした。
幻聴だろうか…
目を見開いて固まる俺にぎゅっと下がったままだった腕を回す彼女。

「私だって…私だって貴方が好きなんです!だから…っ」

「キョーコ、ちゃん」

夢を、見ているのだろうか。
出来すぎている…こんな、展開…
俺の過去の非道な行いを知っても、傍にいてくれるなんて…それだけじゃなくて、『好き』って………
ありえないことだらけなのに、彼女の体温が俺にそれを事実だと告げる。

「ほんとうに?」

「本当です」

「嫌わないの?憎まないの?軽蔑して俺の存在を消さないの?」

「嫌いません。憎みません。軽蔑も、抹消もしません」

「離れていかない?」

「離れていきません」

「傍にいてくれる?」

「傍にいます」

「こんな俺を好きでいてくれるの?」

「どんな貴方でも好き、ですよ////」

頬を赤く染めて、それでもまっすぐ俺を見つめる彼女の瞳に囚われる。
偽りのない澄んだ瞳…
その瞳が泣き出しそうな、迷子になったような顔をした俺を映していた。
自分がそんな表情をしていたことに気付き、今更羞恥を覚えた俺はぎゅっと彼女を抱きしめる腕に力を入れて、その肩に顔を埋めた。

「…絶対だよ、キョーコちゃん。嘘だったりしたら許さないからね」

「はい」

「俺から離れちゃダメだよ」

そんなこと言う資格がないのはわかってる。
だけど、これを気の迷いなんかで終わらせたくなくて、彼女を縛り付ける言葉を吐いた。

「好きだよ――キョーコ」


そして俺は、時間の許す限り彼女を抱きしめ続けた。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――
すみません(汗
最初は会話文だけだったのですが、長くなったので普通の文にしようとして蓮視点を入れてみたのですが、そのせいでおかしな文になりました…
支離滅裂で申し訳ない…(汗
ヘタ蓮は書いてて楽しいです(ぇ
 

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