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本能の赴くままに日記や小説を書いています。
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「もう…無理だっ!」

そう言って、蓮はキョーコをソファの上で押し倒した。
肩を掴まれ、いきなり押し倒されたキョーコはのしかかってくる巨体に目を見開く。

「なにを…」

「いい加減気付いてくれ!俺は君が好きなんだ!」

蓮はボサボサな長い前髪の間からキョーコを真剣な目で見つめる。

「好きだ…君が、好きなんだ!!」

ーーさやかっっ


「はい、カット~!迫真の演技だったよ、敦賀くん。すごく切羽詰った感じが出てた!京子ちゃんもよかったよー。次もその調子で頼む」

「「ありがとうございます」」

二人の演技を褒める監督に二人は揃って礼を言い、ソファの上から退く。
蓮は名残惜しそうに…キョーコはそんな蓮には気付かず普通に。
そして、蓮は社のところへ、キョーコは自分の荷物が置いてある椅子のところに向かうと、用意しておいた飲み物を口に含んだ。

そう…先程のやり取りは実際のことてまはなく、演技…ドラマの中の話だったのである。
キョーコ演じる『さやか』は外ではクールビューティー、家ではおとなしめで、心優しい女性だった。
そんな『さやか』が蓮の役である『たかし』に出会うのは、ある雨の日…
背中を曲げ、俯いたまま雨に濡れていた『たかし』を『さやか』が傘に入れてあげたことが、二人の始まりだった。
冴えない格好で顔を隠し、木偶の坊のようにぬぼっと立っていた『たかし』を誰もが避ける中、ただ一人、「こんなに濡れて、どうしたんですか?」と声をかけてくれたことは『たかし』にとって思いがけない出来事であった。
その出会いをきっかけに連絡を取り合うようになった二人…そして、次第に『さやか』に惹かれていく『たかし』。
ある日、自分の恋心にカケラも気付いてくれない『さやか』に『たかし』は思いあまって告白するのだが…
これで告白が成功すれば、ハッピーエンドで終わり、となるのだが、実はこの場面、冒頭にすぎない。
ついでにいえば、『さやか』はヒロイン役ではないのだ。
この後、『たかし』は『さやか』に「貴方はいい男なんだから背筋を伸ばして前を向いてみなさい。そしたら、違う世界が見えてくるから」と言われ、「外に出て、それでも私がいいって言うのなら、その時は考えるわ」と言われて、振られる(?)のだ。
『さやか』に背を押された『たかし』は言われた通り、猫背気味だった背を伸ばし、長い前髪を切って俯いていた顔を上げる。
それだけで世界が変わったように見えた『たかし』は、運命の人に出会う…

といった感じのストーリーであり、『さやか』は物語のキーパーソンではあるものの、最終的に結ばれる相手ではない。
そのことを蓮は残念に思い、キョーコはほっとしていた。

「お疲れ様、最上さん」

「お疲れ様です、敦賀さん!鬼気迫る演技で、危うく呑まれてしまうところでした…」

「そう?最上さんの戸惑う演技も全く違和感なくてよかったよ」

「ありがとうございます!実は、先程監督にも言われたんです。あんな風に敦賀さんに迫られたら、殆どの人は赤面したり台詞と違うこと言っちゃってNGになるのに、一発で演じられるなんて凄いって。あまり、嬉しくない褒められ方でしたけどね」

そう言って苦笑するキョーコに、蓮も微笑む。
いっそ、他の人と同じようにうろたえてくれたら、脈があるかもって期待できるのにな、と内心思いながら。

「キョーコちゃん、お疲れ~」

「あ、社さん」

「またキョーコちゃんの演技が直接見れて嬉しいよ」

「あ、ありがとうございます!」

「でも、少し残念だなぁ…」

「え?」

「相手役じゃなくて。『さやか』も重要な役だけどさ、どうせならヒロインだったらよかったのに…」

そう言って、蓮を見ながらによによ笑う社に、蓮は素知らぬ顔で気付かないふりをする。
ここで反応すれば、社に遊ばれると、経験上わかっていたからだ。

「と、とんでもない!!敦賀さんの相手役だなんて…想像しただけでも恐ろしいわ……」

「…それ、どういう意味かな?」

キョーコの失言に反応した蓮は、にこにこと笑顔でキョーコに詰め寄る。
よくわからないが、地雷を踏んだということだけ理解したキョーコは真っ青になり、降参ですとばかり両手を挙げて後退った。

「そ、そのですね、敦賀さんの相手役なんて、例えドラマの中だけの話でも日本中の女性が羨むことでして…そんな役をやったら私、外を歩けなくなります!」

「そんなことないと思うけど…」

「いいえ、あるんです!私、まだ死にたくないんです!」

必死な顔でそう訴えるキョーコに蓮は微妙な顔をする。
嫌いという意味合いではないことは嬉しいが、ここまで必死に拒否されると複雑だ…

「…そう」

「はい!でも、共演できたのは本当に嬉しいです 」

「俺もだよ」

でも、できるなら社さんが言ったように相手役だったらもっと嬉しかったんだけどね…

そう内心思いながら、蓮は微笑む。
救いといえば、『さやか』が誰かと恋人になる…なんて展開がないことか。
自分と以外のラブシーンなんてできれば見たくないと思っている蓮にとって、そのことは大きかった。

「そういえば…キョーコちゃん」

「はい?」

「今日って次のシーン終わったらあがり?」

「はい、そうですけど…」

「じゃあさ、蓮に食事を作ってやってくれないかな?こいつ、今日全然食べてないんだー」

「え、本当ですか?」

「ちょっ、社さん!」

目を見開くキョーコと焦る蓮。
そんな二人を見ながら社は「ホントホント!」と肯定して、キョーコに「頼むよキョーコちゃん!」とお願いする。
キョーコは「わかりました!」と敬礼すると、さっそくメニューを考え始める。
そんなキョーコを見た後、勝手に予定を立てられた蓮はギロッと社を睨むように見た。

「どういうつもりですか、社さん」

「どういうって、そりゃ、そういうつもりで…」

「言葉遊びをするつもりはありません」

「こわっ!…ただ、お前は『たかし』みたいに他の子を見るようなことはないだろうけど、『たかし』と『さやか』みたいな関係で終わる可能性はあるからな。少しでも一緒にいて意識されるように…と思う俺の気遣い」

「…余計なお世話です。接触が多かろうが少なかろうが、最上さんは変わらないと思いますよ」

「けど、機会は少ないより多い方がいいだろ」

「それはそうかもしれませんが…」

「お前なぁ、その調子じゃ『たかし』と『さやか』のイイ友達でいましょうね、ならぬイイ先輩後輩でいましょうね、で終わるぞ」

「………」

その言葉に蓮は無言で眉を寄せる。
『たかし』と『さやか』の最終的関係は社の言った通り『イイお友達』
『さやか』の裏設定である恋愛音痴なところにキョーコを重ね、『たかし』に感情移入しかけている蓮にとって、社の言葉は笑い事ではなかった。

「ま、とにかく地道にいけ!」

「…はい」

渋々返事をしたところで監督から「次のシーンいくぞー」と声がかかる。
そのタイミングの良さに聞こえいたのでは…と思ったが、隣で考え事をしているキョーコにすら聞こえない小さな声で会話していたので、それはないかと思いながら、蓮はキョーコに「だってさ」と微笑みかけた。

「あ、最上さん」

「はい?」

「夕食、ハンバーグがいいな」

「わかりました!滅多にない敦賀さんからのリクエストですからね、腕によりをかけて作らせていただきます!」

「ありがとう」

とりあえず、まずは君の好物は俺にとっても好物だよってところからアピールしてみるか…

社が聞いたら「地道すぎる!」と言われそうなことを考えながら、蓮は意識を切り替えて、『たかし』になったのであった。




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リハビリ第1段!
iPhoneにしてから、初めての更新です。
…ちょーうちにくい…
携帯だった頃の2倍くらいかかってる気がします…

就活をしないといけないので、更新速度がやばいくらい落ちると思います。
更新を楽しみにして下さっている方がいらっしゃいましたら、申し訳ありません。

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