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本能の赴くままに日記や小説を書いています。
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※仲間厳しめ?


自分にとってその子供は道具にしかなりえなかったはずだった。
目的のために作り出した道具、レプリカドール。
しかし、真っ白な子供と接するうちに、いつしか絆されていた。
真っ白で綺麗な穢れを知らない子供。
その子供は再会した時、血の臭いを纏っていた。
飛ばされた時は木刀だったのに、身に付けているのは真剣。
レプリカ(という事は知らないはず)だろうと王族に代わりない少年を戦わせたのだとそれを見て悟った。
その時沸いたのは怒りと安堵。
この真っ白な子供を戦わせた事に対する怒りと、その手を血に濡らしても真っ白な子供のままである事に対する安堵。
そんな感情を抱く時点で、自分が子供を道具として見れてないのは明白だった。

――本当にルークを喪っていいのか

自分にそう問い掛ける声がする。
その声は子供と会うたびに大きくなり、己の決心を揺るがしていた。
だが、ここで決心を覆してしまえば、ついてきてくれた同志に申し訳が立たない。
訴える心に蓋をして、預言の地で子供に絶望の言葉を与えた。

――愚かなレプリカルーク、と

超振動を使い、座り込んだ子供を見つめる。
被験者であるアッシュと似ても似つかない子供。
純粋に己を慕う気持ちを利用し、踏みにじった自分をどう思うだろうか…?
きっと、憎むだろう…と自嘲した。
その時、足音が聞こえ、そちらを向くと、そこにはアッシュと子供の同行者たちがいた。
その中に妹の姿を見つけ、ホッとする。

――ユリアの譜歌を謡えば、ルークも助かる

預言を覆すために作り出し、本物の『聖なる焔の光』の代わりにアクゼリュスを崩落させたルーク。
共に消滅するという預言は、メシュティアリカさえいれば覆るのだ。
預言を覆すという目的とルークの命が助かるという事に安堵し、これ以上計画の内容を暴露されないためにアッシュを連れて、そこから去った。
ルークは自分に利用されたのだとはっきり言い残して…
本当はルークも連れて行きたかったのだが、自分は犯罪者となり追われる身になる。
逃亡生活にルークを巻き込んで危険な目に合わせたくはない。
それに、一行には自分と同じくルークに絆されたガイラルディア様がいる。
だから、安心して、その場を去った。

しかし、それは甘い考えだった。

導師と王女が捕まったと聞き、内密にダアトに訪れた時に見たのは、俯き、後ろを歩くルークの姿。
美しいグラデーションの髪は短く切り揃えられ、素直に感情を浮かべていた表情は沈んでいる。
暴言を吐かれても言い返す事はせず、諦め顔で微笑む子供。
あんな表情をする子供じゃなかったのに、自分たちが変えてしまった。

――こんなはずではなかった

アクゼリュスを崩落させたのはルークだが、その力を使わせたのは自分。
しかも、暗示をかけてだ。
だから、きっと彼らは信頼していた師に騙された可哀相な子供だと同情し、ルークを慰めてくれると思った。
それが甘い考えだとしても、誰も責めないと思っていた事すら甘い考えだとは思わなかった。
ルークが孤立するように仕向けた自覚はある。
だから、慰める事はないかもしれないとは思った。
しかし、彼らにはそれぞれ罪があるし、ルークを一人にさえしなければ成立しなかったのだ、目を離した自分たちにも非はあると理解するだろうと思っていた。

――しかし、なんだ、これは…

ルーク一人を責め、いないものとして扱い、罵声を浴びせる。
アッシュが接触したはずだろうから、ルークはまだ七歳と変わりないのだと知っているはずなのに、揃いも揃って子供だけに罪を押し付ける。
その傲慢さに、やはり人とは醜いものなのだと実感し、そんな中にルークを置いておくわけにはいかないと思った。
…自分こそが、誰よりも酷い仕打ちをしたというのに。


「ルーク」
聞き間違いようのないその声にルークは反射的に振り向いた。
同じように、ティアたちも振り向く。
「せんせぇ……?」
頼りない声にヴァンは眉を寄せると、ルークはびくっと震え上がった。
子供らしく率直に疑問を尋ねるルークはもうおらず、ヴァンは悲しくなった。
「おやおや、どなたかと思えばアクゼリュスを崩落に導いた大罪人のヴァン・グランツ謡将ではありませんか」
そう言って眼鏡を押さえるジェイドを一瞥したヴァンはルークに視線を戻す。
すると、ルークは再び震えた。
ヴァンは悲しそうに顔を歪めながら、手を差し出す。

「ルーク、私と一緒に来ないか?」

ルークは目を見開き、ティアたちは息を呑んだ。
「なに、言って…」
「言っただろう?ダアトに亡命しないか、と」
「で、でも…」
動揺するルークを押し退け、ティアたちが前に出る。
「そう言って、またルークを利用する気?」
「ヴァン。ルークはお前の玩具じゃないんだ。そう言えば手元に戻ってくると思ったら大違いだぞ」
「だいたい~、こんな人間モドキに利用価値なんてないと思いますよぉ~。手元に置くだけ無駄って感じぃ」
「彼を連れていかれては困りますね。彼はアクゼリュスを崩落させた実行犯なのですから」
一方に自分の意見を押し付けるティアたちにヴァンは溜息を禁じ得ない。
彼らは気付いてないのだろうか…話を聞いている人間たちの顔が嫌悪に歪んでいる事を。
気付いていても、自分たちではなくルークに対してだと思っているのかもしれない…
ヴァンは失望を隠せず、冷たい目でルーク以外を見た後、ルークに微笑みかけた。
「お前にとって私のした事は裏切り以外の何物でもないだろう。私はお前を利用し、そして捨てた。その事実は覆しようのない事だ」
そう言うとルークの顔が泣きそうに歪む。
その表情だけで、いかに自分がルークを傷付けたのかがわかる。
本来なら、ルークの前に立つ事さえ許されぬ行いをしたのだと。
だが…
「しかし、放っておけないのだ…これ以上、傷付くお前を見るのは…」
その言葉にルークは目を見開き、他の者も驚く。
その中で、二人と付き合いの長いガイがいち早く我に返り、ヴァンを睨み付けた。
「ルークを傷付けたお前が言うのか」
「ルークを捨てた兄さんがそれを言うの?それに、私たちはルークを傷付けたりしてないわ。ただ、事実を言ってるだけよ」
ガイに続いてティアもそう言い、アニスも頷く。
ジェイドは同意こそしなかったものの、否定しなかったという事は同じように思っているのだろう。
彼らは気付いていないに違いない…通行人がありえないモノを見る目で己らを見ている事に。
彼らからすれば悪いのはルークとヴァンたちで、自分たちは正義の味方のつもりでいるのだろう…逆にしか見えないのに。
「お前たちには聞いていない。私はルークに聞いているんだ」
「ルークに正しい判断ができるわけないじゃないですかぁ。こんな人間モドキに」
ルークをこき下ろすアニスにヴァンは冷たい視線を送る。
「…モースのスパイがよくそんな口を叩けるものだな」
ヴァンの言葉に真っ青になるアニス。
顔色の変わったアニスにジェイドはまさか…とアニスを見定めるように睨み、アニスの顔色に気付かないティアたちはそんな事あるはずないと喚く。
「ルーク…私と共に来ないか?今度こそ、私が全てからお前を守ろう」
尤も、お前が嫌なら無理強いはしないがな…とヴァンは差し出した手をゆっくり下ろす。
ルークは思わず、その手を掴んだ。
「ルーク?」
「師匠っ…俺…俺は……っ」
「ルーク!いったい何考えてるのよ!貴方、アクゼリュスの事を償うって言ったのは嘘だったの?」
その言葉にルークの身体はびくっと震え、掴んだ手を放す。
その事にティアは勝ち誇ったように微笑んだのを見て、ヴァンは震える手を握った。
「せ、せんせぇ…?」
「ルーク。お前がアクゼリュスの事を償う必要などないのだ。お前に超振動を使わせたのは私、お前にアクゼリュスを滅ぼさせるのを決めたのはキムラスカだ。お前の責任ではない、あれは国の責任だ。キムラスカは預言を知っていたからな」
預言に狂った世界が悪いのだ。
そう言うヴァンにルークは目を見開き、そして抱き着いた。
身体を震わせ、しがみつくルークの頭をヴァンは優しく撫でる。
「ちょっと、ルーク!」
「ルーク、お前…」
ティアとガイの失望したような声にルークは顔を上げると、泣きそうな顔で笑った。
「ごめん…俺には師匠だけなんだ」
「何言ってるんだ、ルーク!俺だって…」
「否定しかしないじゃないか。師匠だけなんだ、俺を肯定してくれるのは…。間違ってても良い。悪党でも、世界の敵でも良い。俺は、俺を肯定してくれる師匠の傍にいたい…」
そう言うと、ルークはヴァンについてその場を立ち去った。
残されたのは呆然としたティアとガイ、真っ青なアニスと険しい顔をしてアニスを見るジェイドだけだった。



―――――――――――――――――――
ヴァンをルーク至上にすると、かなり良い人になりました(笑
絶対無理と思っていたCPだったのに、久しぶりにアビス回って読んでみたら、ツボったので書いてみましたw
楽しかったけど、難しかったです…

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