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本能の赴くままに日記や小説を書いています。
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※すっごい短いです。いつも通り捏造。



 

好きだと言って
好きだと言われて

何でハッピーエンドにならないんだろう?

 

「やってくれるな、ルーク?」

拒否権は、なかった。
その言葉は問いではなく、確認。
ルークの意思を尊重するのではなく、捩じ伏せる言葉。

「……はい」

それ以外、何が言えたのだろう?
視界の隅で顔を強張らせている恋人が見えたが、ルークはそこから意識を切り離した。
    を見ていたらきっと言いたくなるから…
「嫌だ…やりたくない」と。
だから、意図的に見ないように視界から外した。

 

好きだと言って
好きだと言われて

何でハッピーエンドにならないんだろう?

 

「皆の命を俺に下さい!俺も…俺も一緒に…っ」

地面にローレライの剣を刺し、超振動を発動する。
途端、レプリカたちが淡い光を放ちながら、透けて、そして消えた。
残ったのは自我が発達し、レプリカの代表としての役割を担っていたマリィベルのレプリカと超振動を起こしたルーク。
そして、少し離れたところにいるパーティーメンバーとアッシュ、そして……

「俺も一緒に、逝くから」

ルークはそう言って透けた腕をマリィベルに伸ばした。
その言葉にマリィベルも微笑みながら手を伸ばす。

「だから…さよなら、    」

もう感覚のない首を動かして、最後の最期に愛した恋人だけを見た。
愛してくれてありがとう。
愛すことを教えてくれてありがとう。
俺は、幸せでした。
レプリカたちと心中するのは凄く嫌だったけど…
まだ生きていたかったけど…
世界を救うってことは    を守れるってことだから…だから、後悔はない。

ありがとう…さよなら。
幸せになって…どうか、どうか、幸せに……



好きだと言って
好きだと言われて

何でハッピーエンドにならないんだろう?



彼がレプリカだったから?
彼が超振動を使えたから?
私に彼を助けられるだけの地位も権力もないから?

私はどうすればよかったんだろう…
彼を連れて逃げ出せば良かったんだろうか?
わからない…私には、わからない……


好きだと言って
好きだと言われて

何でハッピーエンドにならないんだろう?







恋人は私的には実は生きていたアスランをプッシュ!
そう思ってくれないかなぁ、と思ってわざとレプリカアスランは出しませんでした。
でも、ノエルでもいいなぁっと思ったので、わざと「恋人」って記述にして性別を曖昧にしてみました。

まぁ、お好きな相手で読んでみてください。

拍手[8回]

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※あまり厳しめな傾向はないと思いますが…しいて言うならキムラスカ厳しめ?





「ルーク殿…私のところに来ませんか?」

そう言って手を差し延べてくれたのは、銀色の青い軍人だった。



「もう!ルークってば、どうして返事くれなかったの?たくさん手紙出したんだよ!」

「ごめん、アニス」

ヴァンの剣が無くなっていると報せを受け、前回と変わらぬ同行者たちと合流したルークは会うなりそう言われて謝った。
他のメンツも同じように文句を言ったが、ナタリアだけは複雑そうな顔をしてルークから視線を逸らした。

「(あぁ、ナタリアは知ってるもんな)」

偽姫だったとはいえ、王族として認められたナタリアはルークが手紙を読めなかった理由を知っている。
というより、読めない状況に追いやった一人であると言った方が正しい。
しかし、ナタリアが知っているのはルークがファブレにいない――否、いれない事情だけで、今までどこにいて何をしていたのかは全く知らなかった。


ヴァンを倒し、外殻大地を無事に降下させたルークを待っていたのは、王位継承権の剥奪、そして“ファブレ”を名乗ることを禁ずるというものだった。
レプリカの身でありながら、7年もの間、王やそれに連なる貴族、そして国民を騙していたことは許しがたいことだ。
しかし、本来ならば死を持って償わせるべきことだが、外殻大地降下の功績を考慮し、王位継承権剥奪、名の返上、バチカル追放のみで許そう…
―ようは、レプリカを王族として扱うわけにはいかないから、身分を返上して、ここから出て行け…ということだ。
そう言い渡された際、ナタリアもその場にいたが、自分可愛さと「被験者ルークが帰ってこないのはレプリカルークがここにいるからだ」と言われたことで、ルーク追放を反対することなく躊躇いがちにだが、しっかりと同意した。
行き場のないルークは「承知しました」と承諾することしかできず、その日のうちに荷物と与えられた金銭を持って追い出された。
それゆえにルークに対して、後ろめたく思っていたナタリアは、ガイたちマルクト組かティアたちダアト組を頼ると思っていたルークが同行者の誰にも頼っていなかったことを合流した際の会話で知り、ますます後ろめたくなってルークと目を合わせることができなかった。
だが、そんな事情を知らない一行は、ルークがファブレ公爵邸にいたと思い、手紙を出し、キムラスカが発表した『大地降下は“ルーク・フォン・ファブレ”の功績』という言葉を純粋にルークが認められたものだと思っている。
その発表の意味を知っているのは、このメンバーではルーク本人とナタリアだけだ。
ジェイドは薄々感づいているかもしれないが、ルークがファブレを追い出されたことはまだ知らないのだろう。

「ルーク!」

純粋に再会を喜ぶ一同とは別に二人だけは微妙な空気を作っていたが、その声に、その空気は霧散した。

「あ。アスラン!」

小走りで近寄ってきたその人物の顔を見て、ルークの顔が明るくなる。
しかし、些細な変化だったため気付く者はおらず、明らかな変化である呼び方に対して皆反応した。

「えっ?!何で、フリングス将軍とルークが親しげなわけ?」

「あまり接点なかったよな?」

不思議そうな一同に、アスランはにっこり笑ってみせる。

「実は、ルークには我が師団の剣術指南をしていただいているんです」

「えっ?!俺、知らないぞ?」

「…私も知りませんでしたが」

アスランの言葉に反応するガイとジェイド。
そんな二人にアスランは平然と「伝えておりませんから」と言った。

「キムラスカ王族の特徴を持つルークにマルクト軍人の指導を堂々としていただくわけにはいきませんから、陛下と我が師団しか知りません」

「そうなのか?俺くらいには教えてくれたって…」

「ガルディオス伯爵は陛下の覚えもめでたく、注目の的ですからね。その伯爵に話して、頻繁に私のところを訪れることになっていたら、何かあるのではと勘繰った輩が現れ、ルークの存在が公になる可能性も否めません。同様に、あまり接触のないカーティス大佐がいきなり私のところに来るようになっても不自然だと思いましたので、報告を控えさせていただきました」

何か不満でも?と無言で問われ、二人は口を噤む。
そんなことはないと否定するのは簡単だが、知っていて、全く会いに行くことはないかと尋ねられれば答えは否だ。
そんな自分を自覚しているため、二人は反論することはなかった。

「へぇ~。でもぉ、ルークに指導なんてできるんですかぁ?」

「もちろんです。ルークの剣は実践的ですから、とても勉強になりますし、珍しいアルバート流ですからね。ルークに指南を受けようと長蛇の列ができるくらいです」

ルークには無理なんじゃない?と含みのあるアニスの問いにアスランは即答する。
裏のなさそうな笑顔で答えられ、アニスはいつものように「うっそだぁ~」と茶化すこともできず、「そ、そうなんですかぁ」と引き攣り笑顔で引いた。

「…あの、ルークが指南役をしているのはわかりましたが、何故ルークに指南役を?接点もあまりなかったと思いますが」

「あぁ、そのことでしたら、ルークが何か自分にできることはないかと尋ねてきましたので、ルークの剣に興味があった私が陛下の許可を得てお願いしたんです」

「え?ルークがフリングス将軍に?」

「えぇ。家にいるだけでは暇だったみたいで…」

「べ、別に暇だからだけじゃなくてっ」

「わかってますよ。私の役に立ちたかったんですよね。嬉しいです」

「っ////」

にこにこと笑顔を絶やさないアスランと真っ赤になるルーク。
その会話の内容に一同が疑問符を浮かべる中、ナタリアだけは目を見開き、二人を凝視していた。

「家にいるだけって…あ!もしかしてルークってば、フリングス将軍の家にお世話になってるの?バチカルとグランコクマ往復するのきついもんねー」

「半分当たりで半分外れ、かな」

「ふぇ?」

「ルークは私のところに"住んで"いるんですよ、タトリンさん」

「は?住んで、って…だって、ルークの家はファブレ公爵の……」

疑問をそのまま口に出すと、アスランは苦笑し、ルークは目を伏せ、ナタリアはびくりと震えた。
前者二人の反応も気になったが、それ以上にナタリアの反応が気になったアニスを筆頭に、ティアやガイ、ジェイドはナタリアを見る。
ナタリアは集まった視線にますます震え、血の気の引いた顔でルークを見つめた。

「ルー、ク……」

「そんな顔しなくても俺は気にしてないよ、ナタリア。俺がレプリカだって知ったあの日から、居場所を失う覚悟はあったんだから」

「ですがっ!わたくしは…私は貴方も私と同じで己の意思で居場所を奪ったのではないと知っていたのに…っ」

意味深なその言葉に一同が首を傾げる中、ジェイドだけはその言葉の真意を読み取っていた。

「成る程。つまり、ルークは王族として受け入れられず、功績もキムラスカが認める"ルーク"…つまり、被験者であるアッシュに奪われた、ということですね?」

「えっ?旦那、それってどういう…」

「おかしいと思ってたんですよ。キムラスカがあれほどあっさりとルークを讃えるような発表をするなんて。我が子がすり替えられていることに気付かなかったファブレ…ひいては王家にとって、ルークの存在は言っては難ですが、汚点のようなものです。ナタリアに関しては赤子だったからまだしも、10年も共に過ごしてきた"ルーク"の違いを見抜けなかったのは汚点以外のなにものでもありません」

「旦那!ルークやナタリアがいる前で…」

「……よいのです、ガイ。事実ですもの。キムラスカはレプリカは認めないと言ってルークを追い出し、大地降下の功績を被験者ルークであるアッシュのものにするために、"ルーク・フォン・ファブレ"の名で公表したのですから…アッシュがいずれ戻ってくることを想定して」

ナタリアの言葉に事情を知らなかったメンバーは絶句する。
逆に疑問を持っていたジェイドは納得し、アスランは隣にいるルークの髪を優しく撫でた。

「えっと…それでルークはマルクトに?」

「いや、最初はケセドニアにいたんだ。和平が結ばれたとはいえ、流石に俺の見た目でマルクトうろつくのはなって思ってさ。ケセドニアなら職を探すのも楽かなぁって思ったし」

「ちょうどその頃、私は私用でケセドニアにいて、凄腕の傭兵の噂を聞きまして。見たこともない剣の型を使うと聞いて、興味本意で会いに行ったんですよ。デマではなく本当に素晴らしい力を持つ方なら、軍に興味はないかと誘いをかけるつもりで」

「そしたらその傭兵が俺で、すっげぇアスラン驚いてたよな」

「それはルークもでしょう。第一声が」

「「どうしてここに?!」」

「だったもんな」

「ですね」

くすくすと笑い合う二人。
その時のことを思い出しているのだろう。
あの時の顔は面白かっただの、その後の慌てようが見ていて微笑ましかっただの、言い合うルークとアスラン。
内輪で盛り上がる二人に、続きが気になる他のメンバーはそわそわと二人を見つめていたが、途切れる様子がなかったため、周りから視線を受けたガイが代表して躊躇いがちに割り込んだ。
いつものことながら、不憫な役回りである。

「コホンッ。…あー、その、それでどうなったんだ?」

「あぁ、申し訳ありません。話の途中でしたね。その後、ルークから当たり障りのない事情を聞いて、私のところに来ないかとお誘いしたんです」

「迷ったけど、アスランが俺のことを心底心配してるのがわかってさ。この人なら俺を放り出したりしないかもって思って、手を取ったんだ」

「その後、陛下に連絡を入れたら、ルークの戸籍をマルクトに作って下さいまして、一応家も用意して下さったのですが、ルークがそこまでしてもらうわけにはと恐縮してしまいまして」

「それでアスランのとこに世話になることになったんだ。最初はそれも申し訳なくて断ったんだけど、アスランが一緒にいてほしいって言ってくれてさ」

「せっかく手の届くところにルークがいるのに、離れて暮らすなんてもったいないですからね」

「あっ、アスランっ////」

顔を赤くするルークに今更隠すこともないでしょう?とアスランが微笑む。
その笑みはどこか悪戯げで、その珍しい笑みに一同は唖然とする。
何となく会話から二人の関係を察していた者は一人は虚ろな目で遠くを見つめ、一人は「お父さんは認めませんっ」と泣き叫び、一人はなにやらメモを取っている。
察していなかった一人はルークに対して淡い恋心を抱いていたため、ショックで砂と化していた。
ただ、ナタリアだけは淋しげな笑みを浮かべ、「貴方は自分で幸せを掴んだのですね、ルーク…」と二人の仲を祝福した。

「私たちが…私が貴方にしたことは決して許されることではありませんが…どうか、貴方たちの幸せを願うことだけは許して下さいませ」

「許すも許さないも…確かに最初は自分たちの都合で俺をことを切り捨てたキムラスカを恨めしく思ってたけどさ…アスランに会って、毎日が幸せなんだ。ずっとバチカルの屋敷にいたら、感じられなかった感情だと思う。今の生活があるのは、ある意味キムラスカのおかげだから、俺、恨んでもないし憎んでもないよ」

「そう、なのですか…ありがとうございます、ルーク」

幸せを感じることができないと断言されたキムラスカの在り方を嘆くべきか、ルークに幸せを感じさせることができるアスランを羨むべきか……
どちらにしろ、ルークを切り捨てた自分が抱くべき感情ではないと思ったナタリアは、ただ微笑んで二人を見つめた。


「幸せに………ルーク」




―――――――――――――――――――
久々のフリルクです。
あまり甘くないですけど…
最初はナタリアも厳しめにしようかと思ったんですが、しっかり後悔してもらうことにしました。
あ、本文の「自分可愛さ」ってのは、ルークを追い出すことに反対したら、自分も一緒に切り捨てられるのではないかと思ったからです。
…補足しないとダメな文って……orz

最近の傾向的に、仲間厳しめじゃないのは珍しい気がします…まぁ、ティアが空気ですけど。

拍手[21回]



「―――ルーク殿?」

見かけたのは偶然だった。
久々の休暇をゆっくり過ごし、消耗品を買いに行った帰り、ふと視線を向けた先に彼はいた。
ルーク・フォン・ファブレ――の模造品[レプリカ]。
けれど、自分には彼が自信のないただの少年にしか見えない。
その少年が一人、夕日の中に立っていた。
風が夕日色の少年の髪を靡かせる。
そして――そのまま消えてしまうのではないかと、思わず手を伸ばした。

「え………?」

いきなり腕を掴まれた少年は驚いて振り返る。
逆の手で剣の柄を掴んで。
そのことに、彼は一端の武人なのだと知った。

「フリングス、将軍?」

少年の声が己の名を奏でる。
――甘い…
何故か、そう感じた。

「こんにちは…いえ、もうそろそろこんばんは、の時間ですね」

「ぇ、あ、はい、こんばんは」

「こんな時間にお一人でどうなさったのですか?」

「えっと……」

「一人じゃないですのー!ミュウもいるですのー!!」

ひょっこりと少年の道具袋の中から頭を出すチーグル。
そのチーグルの頭をわしゃわしゃと乱暴に撫でる少年。
小動物にその強さは虐待に近いのでは…と思ったが、当の小動物が喜んでいるので良しとする。

「では、こんなところに一人と一匹でどうしたのですか?」

「こんなところ?」

「この時間帯は、この辺りは物騒ですのであまり人が通らないんですよ。ですので、暴漢などに襲われて悲鳴を上げても助けが来る確率が低いんです」

それを知って、最近はパトロールをしているんですけどね。
そう苦笑すると、少年はわたわたと落ち着かない様子で辺りを見回した。
自分たち以外、人っ子一人いない。

「俺、知らなくて…あ、でも、そういう奴らが出ても俺一人で…」

「過信をしてはいけませんよ、ルーク殿。貴方の腕が確かでも、そういった輩は卑怯な手を使いますからね。多勢でたった一人に襲い掛かることを恥とも思わない者たちですから。だから、もし遭遇するようなことがあれば助けを呼んで下さい。可能性は低くとも、それが1番生存率を上げる方法ですから」

「助けを、呼ぶ……?」

まるで知らない言葉を聞いたかのように少年は目をぱちくりと瞬かせる。
その様子に嫌な予感がして眉を寄せた。

「……貴方が不寝番を担当する際も、敵に出くわしたらそうなさるでしょう?」

「え……」

「…………しない、のですか?」

「あの…最初は、俺一人じゃ無理だし、起こしてたけど『何のための不寝番だと思ってるの?』『これくらい一人で片付けてよね!』『おいおい、ルーク。一人じゃ寂しいからってわざわざ起こすなよ』『こんな時間に起きるなんて美容の敵ですわ!』『おやおや、お坊ちゃんは一人じゃ何もできないようですね』って何度も言われて…。だから、そういう時は俺一人で対処してますけど…」

それが当たり前なんでしょ?
そんな目で少年はこちらを見た。
しかし、そんな当たり前があるはずない。
不寝番は寝ずに敵がいないか見張る係であって、敵が来たら一人で戦う係ではない。
そんなことをして、もしその不寝番が倒されてしまったら、寝ている者たちは無抵抗のまま殺されてしまうことになる。
そんなの考えずともわかるはずなのに、彼らは何を考えてそんな対応をするのか…

「あの、フリングス将軍…?」

「………彼らは?」

「へ?」

「彼らが不寝番の時、敵に遭遇したらどうしてるんですか?」

「そりゃ、叩き起こされますけど…」

今度こそ絶句する。
少年が不寝番の時は起こすなと言いながら、自分たちが不寝番の時は起こす?

「……………矛盾、してませんか?」

「だって、俺は罪人なんですから、あいつらより働かなきゃいけませんし。それに、不思議に思って聞いてみたら『ルークは1番強いんだから一人でも平気でしょ』って言われたので…」

パーティーの中で1番強い奴は一人で対処しないといけないんだろ?

まるで、洗脳…いや、まるでではない。
これは洗脳だ。
無知をいいことに自分たちの都合の良いように常識という名の非常識を埋め込んで、それを疑問に思うことすら許さない。
少年のことをお人形のように扱う彼らは、少年に自我があることを理解しているのだろうか…
レプリカだから、罪人だからと人格を無視して、思い通りに動く人形を作っているようにしか思えない。
しかも、『1番強い』?
軍人が半分を占めるパーティーで、王族である軍事訓練を受けていない少年が?
それはつまり、少年を前線に出していたということだ…レプリカだとわかる前から王族を。

「…ルーク、どの」

「?」

「本日はどちらに宿泊予定でしたか?」

「えっと、明日発つ予定なので街の端の方の……」

「そうですか。では、後ほどそちらに部下を向かわせますので、ルーク殿は私の執務室で旅の話をして下さいませんか?」

「へ?別にいいですけど、ジェイドが報告書を出してるんじゃ…」

「カーティス大佐の報告書は簡潔的でわかりやすいのですが、報告書に感情は伴いませんからね。是非、その時にどう思ったのか貴方の主観を混ぜて構いませんので教えて下さい」

そう、大佐は簡潔でわかりやすく、模範のような報告書を書く。
だから、違和感に気付くのが遅れた。
その状況に至るまでの経緯を…何故、少年がそのような行動に出たのか、その理由が報告から欠けていることに。

「あ、はい。わかりました」

少年は戸惑いながらも頷いた。
その事に安堵する――彼らと少しでも離すことに成功したから…
彼らと共にいる限り、少年は人形でしかいられない。
それは予想ではなく確信だ。
レプリカだとかそういう問題じゃない。

「では、行きましょうか」

「ミュウもいるですの!」

少年の肩に乗るチーグルが存在を主張する。
今の今までその存在を忘れていた。

「はい。では、ミュウ殿もご一緒に」

「ミュウも話すですの!ミュウはずーっとご主人様と一緒だったですの!!」

「そうですか。よろしくお願いしますね」

チーグルの証言がどこまで当てになるかはわからないが、少年一人の証言より良いかもしれない。
少年は洗脳されきっていて、彼らの非常識な行動でも肯定してしまうだろう。



その後、書記官を連れて執務室で話を聞いたアスランは言葉を失った。
出るわ、出るわ、非常識な行動の数々。
数え切れないほどの不敬と犯罪。

――ちょっと待て…ルーク殿と会ったのがマルクト内だなんて聞いてませんよ?!
――しかも、ファブレ公爵の屋敷に侵入して子息を誘拐した犯罪者を放置?!
――極秘任務の途中でそれ以外の行動なんて…

最初の方を聞いただけで眩暈がする。
連れてきた書記官も真っ青になりながら、ルークとミュウの話を紙に綴った。

「……………ルーク殿」

「はい?どうしました?」

アクゼリュス崩落、そしてユリアシティのところまで話し終えたルークの肩をがしっと掴むアスラン。
ルークはきょとんと首を傾げてアスランを見た。

「貴方は私が守りますっ…いえ、護らせて下さい、お願いします!!」

「ふぇ?守るって…罪人を守る必要なんてないと……」

「いいえ!貴方がそんなに罪を感じる必要も、その身を矢面に立たせる必要もないのです!」

――罪人といったら、周りの面子の方が余程罪人だ
――だいたい、アクゼリュスの崩落はルーク殿が騙されてと聞いていたが、どう考えたって暗示じゃないかっ

「戦う必要なんてないんです。戦うのは我ら軍人の役目ですから」

「でも、武器を持ってるなら子供でも…」

「ティアさんの言い分が通るのは戦時中だけです。一触即発の状態だったとはいえ、まだ戦争の起きていない状況で民間人が戦う必要なんてないんですよ」

「お、俺はレプリカで…っ」

「レプリカは皆軍人なんですか?」

「そうじゃ、ないですけど…」

「貴方がその手を汚す必要なんてないんです。誰が何を言おうとも、これからは私が貴方を護ります」

膝をついてその手を取る。
主であるマルクト皇帝以外に膝をつくことになるとは思わなかったが、少年に関しては例外だ。
いっそ、頭を床に打ち付けるほど下げた方が気持ち的に楽かもしれない…
それほど大佐の対応は最悪なものだった。
陛下にもし駄目だと言われたら、この地位を返上してでも少年を護ろうと思わせるほど…そう言えば少年が遠慮するとわかっているから、結果が出るまで言うつもりはないが。

その後、書記官にも泣いて守られてほしいと頼まれたルークは戸惑いながら頷き、それを確認したアスランは朝一の謁見を申し込んだ。
そして次の日の朝。
アスランの報告に真っ白になったピオニーは即効ジェイドを呼び出し、事実を照らし合わせ、すぐさま処分を下した。
その後、キムラスカとダアトに文を出し、事の次第を伝えると、ルークの共にアスランを付け、キムラスカからはジョゼットが派遣された。

研究員として幽閉されたジェイド以外の行方を知る者はいない…――




―――――――――――――――――――
おかしい…
フリルクを書こうとしたのにフリルクにならなかったうえ、仲間に厳しくなった…

拍手[51回]



「あ、あのさ…」

グランコクマのとある宿。
前日まで普段と変わりなかったルークが朝食を取るために集まった一同の前で、真っ赤な顔をして話を切り出した。

「どうしたんだ、ルーク?」

「そ、そのっ…~~~~~っ!やっぱ、無理!」

何かを言い淀んだルークは真っ赤な顔を更に赤くすると、後ろのドアを開き、ドアの向こうにいた人物の後ろに隠れた。

「あれ?フリングス将軍?」

「何でここに将軍が?」

にこにことドアの向こう側に笑顔で立っていたのは、若いながらも少将という地位にいる有能な軍人。
よく脱走するピオニーの尻拭いをしているアスランに暇なんて滅多にないはずなのに…とジェイドは怪訝そうに眉を寄せた。
他のメンバーも何故朝っぱらから宿にアスランがいるのかと不思議そうにしている。
そんな一同の疑問に気付いたのか、アスランは後ろで真っ赤になっているルークの頭をひと撫ですると、一同に向かって口を開いた。

「実は皆さんにお知らせしたいことがありまして」

「業務に関することですか?」

「いえ、個人的なことです。ですが、皆さんに知っていていただきたいと思いましたので…」

「ふ…アスラン、さん……」

ホントに言うの?とばかり不安げな表情をして、ぎゅっとアスランの服を握るルークに、アスランは安心させるように優しく微笑む。

「あら?ルーク、貴方いつの間にフリングス将軍を名前で呼ぶほど親しくなったの?」

「あ、えっと…」

「つい最近ですよ」

ね、ルークさん?と同意を求めるアスランにルークはコクコク頷く。
先日まで「ルーク殿」と呼んでいたはずのアスランが「ルークさん」と呼んでいることに気付いた一同はん?と首を傾げた。

「……それで、我々に知らせたいこととは?」

「あぁ、そうでしたね。…実は、この度ルークさんとお付き合いをさせていただくことになりました」

「「「「はぁ!?」」」」

アスランの爆弾発言に一同は目を見開き、声をあらげる。
そして、否定を期待してルークを見ると、ルークは真っ赤な顔で俯くだけでアスランの言葉を否定することはなかった。

「そういうわけですので、グランコクマにいらっしゃる際は私とルークさんの逢瀬の邪魔はなさらないで下さいね」

そう言いながらルークを抱き寄せると、「では、これからデートなので失礼しますね」と言い残して、ルークを連れて食堂を後にした。
残されたのは凍ったかのように微動だにしない一同。
その中で真っ先に我に返ったアニスは「ありえないぃぃい!!!」と叫び、宿の主人に怒られたのであった。



「上手くいきましたね」

「そうですね。てっきり「あはは、面白い冗談だねぇ」って笑い飛ばされると思ってました」

朝食を食べ損ねたルークのために喫茶店に入った二人は食後のティータイムを満喫しながらしみじみ呟いた。

「陛下が「俺とルークが恋人だってあいつらに言ってくる」と言い出した時はどうしようかと思いましたよ」

「俺もです。一日恋人のふりをしろって言われて、すっげぇ困りました…代わりに将軍が申し出てくれた時は神の助けだと思いましたよ」

「陛下に政務をサボタージュさせるわけにはいきませんからね。それから、ルークさん。今日は将軍ではなく、アスラン、でしょう?」

くすくすと笑うアスランにルークは顔を赤くして、すみませんと謝る。
アスランはそんなルークを愛しげに見つめると、そっとルークの頬に付いた食べかすを拭った。

「あ、すみま…」

「ルークさんさえよろしければ、ずっとアスランと呼んで下さいませんか?」

「え?」

「嘘を本当にしませんか、ルークさん?」

「ぇ、えぇ?!」

驚くルークにアスランはにこりと笑いかける。
その表情に嘘はなく、ルークは赤い顔で口をぱくぱくさせた。

「好きですよ、ルークさん」

「う…」

「嘘ではありませんからね?」

逃げ道を塞いだアスランは拭った食べかすをぺろりと舐めると、熱い視線をルークに向けた。

「とりあえず、今日はデートを楽しみましょう?行きたいところはありますか?」

「ぇ、えっと、俺はどこでも……」

「それでは、景色の綺麗なところにでも行きましょうか?実は、グランコクマを一望できるところがあるんですよ」

「え!そんなとこあるんですか?」

「えぇ。その後はチキンが美味しい店にでも行きましょうか。是非、ルークさんに食べていただきたいと思っていたんです」

「っ…////」

真っ赤なルークを見て「可愛らしい方だ」と呟いたアスランは立ち上がるとルークに手を差し出した。

「お手をどうぞ、ルークさん」

差し出された手を、恐る恐る握るルーク。
アスランは嬉しそうに目を細めると、「では、参りましょう」と歩き出した。


――嘘が真になるのは二人次第

拍手[7回]


「アスランさん!"Trick or treat!"」
扉を開けたアスランは入るなり言われた言葉に目をぱちぱちと瞬かせたが、意味を理解するとくすりと笑った。
「はい、どうぞ」
そう言ってアスランはポケットから飴を取り出すと、ルークの掌に乗せた。
持ってると思っていなかったルークはアスランと自分の掌にある飴を見比べ、ちぇっと舌打ちした。
「持ってないと思ったのに…」
「駅で配ってたんです」
何だろうと思ったら今日はハロウィンだったんですね、とアスランは微笑む。
「イタズラできると思ったのになぁ…」
「どのような悪戯をするつもりだったんですか?」
「内緒です!」
そう言うとルークはアスランに貰った飴の口に入れた。
味はハロウィンらしくパンプキンだ…
結構イケるかもと思っていると、そんなルークをじっと見ていたアスランが何か思いついたように目を細めた。
「ルーク」
「ん?」
「"Trick or treat!"」
「ふぇ?!」
まさか、真面目なアスランが言ってくるとは思っていなかったルークは目を見開き、アスランを凝視する。
「お菓子、持ってないんですか?」
笑顔のままそう尋ねられたルークははっと我に返るとポケットや自分の机の中を漁った。
しかし、目当ての物は出てこない。
「持ってないみたいですね。では…」
「ちょっ、ちょっと待って…」
「ないんでしょう?」
「うっ…」
アスランの言う通りルークはお菓子を持っていない。
ということは…
「悪戯です」
アスランはそう言うとルークの唇に己の唇を重ねた。
突然のことにルークは目を見開くが、アスランは気にせず、歯を割って舌を差し込んだ。
「んっ」
アスランが舌を動かすたびにコロコロと飴が転がる。
その飴が溶けてなくなるまでアスランはキスを続けた。

「ごちそうさまです」

口を離し、ぺろりと唾液と飴で濡れた己の唇を舐める。
ルークは顔を赤く染めて荒い息を吐いていたが、落ち着くと、キッとアスランを睨みつけた。
「な、何するんですかっ」
「何って悪戯<キス>ですけど?」
さらりと言うアスランにルークはむっと顔をしかめた。
そんなルークにアスランは微笑む。
「お嫌でしたか?」
「べ、別にそういうわけじゃ…」
「それは良かった。ルークに嫌われてしまっては生きていけませんからね」
「大袈裟な…」
「大袈裟ではありません。ルークは私の全てですから」
アスランがそう言うとルークの顔が更に赤くなる。
可愛い人だ…と思いながら、アスランはそっとルークの頬に触れた。
「もう一度、してもよろしいですか?」
「なっ…」
「駄目ですか?」
「そ、そんなこと聞かないで下さいっ」
そう叫ぶルークにアスランは「では、お言葉に甘えて」と再び唇を重ねたのだった。


――お菓子<飴>より甘い悪戯<キス>を貴方に

拍手[2回]


「大変ですぅ~!イオン様が攫われてっ」
「「「………」」」
「何だって?!大変じゃないか!」
「一大事じゃない!」
ヴァンと昨日決めた進路を話し別れた後、さぁ行くかと思った時、バタバタと騒がしい足音と声が飛び込んできた。
その言葉に反応したのはガイとティアだけで、ルークやカイル、ジェイドを含むマルクト兵は呆れたようにアニスやガイたちを見た。
「…アニース。何故、イオン様が攫われたと断言できるのです?」
「寝てる間にいなくなってて、聞き込みしたらサーカス団っぽい人たちと一緒にいたって…」
きっと、六神将の仕業ですよ~!と騒ぐアニスに、ガイやティアは捜し出して助けなきゃと勝手に決意する。
それを見たカイルはルークに断りを入れると、アニスに剣を突き付けた。
「黙れ、エセ導師守護役」
「なっ…エセって何よ!私はちゃんとした…」
「私は黙れと言ったんだ。『ちゃんとした』?職務怠慢をしている者を『ちゃんとした』などとは言わない。本来なら30人いなければならない導師守護役は今は貴様一人しかいないのだぞ、交代する者がいないからと言って不寝番をしなくていい理由にはならん」
「不寝番?」
不思議そうなアニスの様子にカイルを始め、ジェイドやマルクト兵たちは絶句する。
「今までも、していなかったのか…?」
「え?だって…」
言い訳をしようとするアニスに「黙れ」と低く言う。
「だいたい、何故それをわざわざ我らに言うのだ。貴様の上司は城にいるだろう、何故そちらに報告しない?それとも、その上司の命令でここにいるのか?」
だいたい、六神将は大詠師派で有名だ。
モースの命令でイオンを攫ったのではないとは言い切れない。
その事も尋ねると「違いますよ~」と軍人が使うような口調とは信じられない口調で否定した。
「モース様は六神将の勝手な行動に怒ってましたから違いますって。それで、私がここにいるのはできたら一行に加えてほしいなぁーと思ったんですぅ。陸路で行くんですよね?私も連れてって下さい!」
そんな事を言うアニスを奇妙な物体を見るような目で見る一同。
しかし、空気の読めない者が勝手に口を開いた。
「そうね…イオン様が攫われたとなると和平に支障をきたすわ。すぐに追いましょう」
「そうだな。俺もそう思うよ」
「はぅあ!ありがとう~!」
「当然の事よ」
「あぁ」
勝手に話を進める者たちに他の者たちは頭痛がするとばかり顔をしかめる。
ルークはうちの者がすまないとマルクト側に謝り、マルクト側はルークのせいではないと言って慌て、その様子を見たカイルはキッとガイを睨み付けた。
「ガイ・セシル…貴様、たかが使用人の分際でルーク様のお顔に泥を塗るとは…恥を知れ!」
「は?カイル、何言ってんだよ」
「わからないなら黙っていろ。旦那様から貴様の解雇許可は頂いている。次に不適切な言動、行動があった場合、容赦なく首を切る。覚悟していろ」
「ちょっと!ガイは別に悪い事なんて言ってないじゃない!」
「ティア・グランツ。いつ発言を許した?罪人風情が口だしをするな」
そう言ってギロッと睨むと、ピシリと固まるティアに、これで軍人だったなど嘆かわしいと溜息をつく。
別にダアトの軍人がどうであろうと知った事ではないが、それがルークに害を与えるというなら話は別だ。
この派遣の責任者はルークであり、彼らが起こした事は全てルークに責任としてのしかかってくる。
つまり、ティアやガイたちの馬鹿馬鹿しい発言の責任はルークに降り懸かってくるのだ。
「そして、アニス・タトリン。貴様は城に戻れ」
「ちょっと待って下さいよぉー!イオン様の身が危ないんですよ~?戻ってる場合じゃありませんって!」
「我らに助けを請う事が間違いだと言っているんだ。城に戻ってダアトに要請すればいいだけの話だろう。貴様の他にあと29人もの導師守護役がいるのだ、それだけいれば六神将に太刀打ちできるだろう」
「そ、れは…」
「それに、これはダアト内部の問題。我らが手を貸したとなれば、キムラスカとマルクトからの内政干渉を許すきっかけになるが、それでも良いのか?」
その言葉にアニスは漸く理解できたのか真っ青になる。
そして、礼も取らずに慌てて城へと走り去ったた。
「無礼な……ルーク様、御前をお騒がせしました」
「いや、大丈夫だよ」
「マルクトの方々も申し訳ない」
「いえ、当然の対応ですよ。ところで、お聞きしたい事があるのですがよろしいですか?」
ジェイドの言葉にカイルはルークを見、ルークが頷いたのを確認すると、「何でしょう?」と尋ねた。
「他の騎士はどちらに?」
「それならば、隠密行動を取っている。そうだな…あそこの一見商人に見える者やそこにいる旅人に紛した者はそうだ。あと、一人先鋭隊に紛れ込ませているし、他はルートの確認や妨害の排除に行っている。あとは、陸路だと砂漠越えだからな、バチカルの外でキャラバンに紛して待っているはずだ。砂漠を越えるのにキャラバンを雇わないのは逆に不自然だからな」
「成る程…」
的確な手配にありがとうございますと言うジェイド。
このジェイド、素直すぎて気持ち悪いと思いながら、ルークは苦笑するのであった。


―――――
久しぶりすぎてカイルの口調はようわからん…〓
でもって、他の騎士団員の名前を出すのが面倒くらいってのがまるわかりな文章ですね……

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※仲間厳しめ?


自分にとってその子供は道具にしかなりえなかったはずだった。
目的のために作り出した道具、レプリカドール。
しかし、真っ白な子供と接するうちに、いつしか絆されていた。
真っ白で綺麗な穢れを知らない子供。
その子供は再会した時、血の臭いを纏っていた。
飛ばされた時は木刀だったのに、身に付けているのは真剣。
レプリカ(という事は知らないはず)だろうと王族に代わりない少年を戦わせたのだとそれを見て悟った。
その時沸いたのは怒りと安堵。
この真っ白な子供を戦わせた事に対する怒りと、その手を血に濡らしても真っ白な子供のままである事に対する安堵。
そんな感情を抱く時点で、自分が子供を道具として見れてないのは明白だった。

――本当にルークを喪っていいのか

自分にそう問い掛ける声がする。
その声は子供と会うたびに大きくなり、己の決心を揺るがしていた。
だが、ここで決心を覆してしまえば、ついてきてくれた同志に申し訳が立たない。
訴える心に蓋をして、預言の地で子供に絶望の言葉を与えた。

――愚かなレプリカルーク、と

超振動を使い、座り込んだ子供を見つめる。
被験者であるアッシュと似ても似つかない子供。
純粋に己を慕う気持ちを利用し、踏みにじった自分をどう思うだろうか…?
きっと、憎むだろう…と自嘲した。
その時、足音が聞こえ、そちらを向くと、そこにはアッシュと子供の同行者たちがいた。
その中に妹の姿を見つけ、ホッとする。

――ユリアの譜歌を謡えば、ルークも助かる

預言を覆すために作り出し、本物の『聖なる焔の光』の代わりにアクゼリュスを崩落させたルーク。
共に消滅するという預言は、メシュティアリカさえいれば覆るのだ。
預言を覆すという目的とルークの命が助かるという事に安堵し、これ以上計画の内容を暴露されないためにアッシュを連れて、そこから去った。
ルークは自分に利用されたのだとはっきり言い残して…
本当はルークも連れて行きたかったのだが、自分は犯罪者となり追われる身になる。
逃亡生活にルークを巻き込んで危険な目に合わせたくはない。
それに、一行には自分と同じくルークに絆されたガイラルディア様がいる。
だから、安心して、その場を去った。

しかし、それは甘い考えだった。

導師と王女が捕まったと聞き、内密にダアトに訪れた時に見たのは、俯き、後ろを歩くルークの姿。
美しいグラデーションの髪は短く切り揃えられ、素直に感情を浮かべていた表情は沈んでいる。
暴言を吐かれても言い返す事はせず、諦め顔で微笑む子供。
あんな表情をする子供じゃなかったのに、自分たちが変えてしまった。

――こんなはずではなかった

アクゼリュスを崩落させたのはルークだが、その力を使わせたのは自分。
しかも、暗示をかけてだ。
だから、きっと彼らは信頼していた師に騙された可哀相な子供だと同情し、ルークを慰めてくれると思った。
それが甘い考えだとしても、誰も責めないと思っていた事すら甘い考えだとは思わなかった。
ルークが孤立するように仕向けた自覚はある。
だから、慰める事はないかもしれないとは思った。
しかし、彼らにはそれぞれ罪があるし、ルークを一人にさえしなければ成立しなかったのだ、目を離した自分たちにも非はあると理解するだろうと思っていた。

――しかし、なんだ、これは…

ルーク一人を責め、いないものとして扱い、罵声を浴びせる。
アッシュが接触したはずだろうから、ルークはまだ七歳と変わりないのだと知っているはずなのに、揃いも揃って子供だけに罪を押し付ける。
その傲慢さに、やはり人とは醜いものなのだと実感し、そんな中にルークを置いておくわけにはいかないと思った。
…自分こそが、誰よりも酷い仕打ちをしたというのに。


「ルーク」
聞き間違いようのないその声にルークは反射的に振り向いた。
同じように、ティアたちも振り向く。
「せんせぇ……?」
頼りない声にヴァンは眉を寄せると、ルークはびくっと震え上がった。
子供らしく率直に疑問を尋ねるルークはもうおらず、ヴァンは悲しくなった。
「おやおや、どなたかと思えばアクゼリュスを崩落に導いた大罪人のヴァン・グランツ謡将ではありませんか」
そう言って眼鏡を押さえるジェイドを一瞥したヴァンはルークに視線を戻す。
すると、ルークは再び震えた。
ヴァンは悲しそうに顔を歪めながら、手を差し出す。

「ルーク、私と一緒に来ないか?」

ルークは目を見開き、ティアたちは息を呑んだ。
「なに、言って…」
「言っただろう?ダアトに亡命しないか、と」
「で、でも…」
動揺するルークを押し退け、ティアたちが前に出る。
「そう言って、またルークを利用する気?」
「ヴァン。ルークはお前の玩具じゃないんだ。そう言えば手元に戻ってくると思ったら大違いだぞ」
「だいたい~、こんな人間モドキに利用価値なんてないと思いますよぉ~。手元に置くだけ無駄って感じぃ」
「彼を連れていかれては困りますね。彼はアクゼリュスを崩落させた実行犯なのですから」
一方に自分の意見を押し付けるティアたちにヴァンは溜息を禁じ得ない。
彼らは気付いてないのだろうか…話を聞いている人間たちの顔が嫌悪に歪んでいる事を。
気付いていても、自分たちではなくルークに対してだと思っているのかもしれない…
ヴァンは失望を隠せず、冷たい目でルーク以外を見た後、ルークに微笑みかけた。
「お前にとって私のした事は裏切り以外の何物でもないだろう。私はお前を利用し、そして捨てた。その事実は覆しようのない事だ」
そう言うとルークの顔が泣きそうに歪む。
その表情だけで、いかに自分がルークを傷付けたのかがわかる。
本来なら、ルークの前に立つ事さえ許されぬ行いをしたのだと。
だが…
「しかし、放っておけないのだ…これ以上、傷付くお前を見るのは…」
その言葉にルークは目を見開き、他の者も驚く。
その中で、二人と付き合いの長いガイがいち早く我に返り、ヴァンを睨み付けた。
「ルークを傷付けたお前が言うのか」
「ルークを捨てた兄さんがそれを言うの?それに、私たちはルークを傷付けたりしてないわ。ただ、事実を言ってるだけよ」
ガイに続いてティアもそう言い、アニスも頷く。
ジェイドは同意こそしなかったものの、否定しなかったという事は同じように思っているのだろう。
彼らは気付いていないに違いない…通行人がありえないモノを見る目で己らを見ている事に。
彼らからすれば悪いのはルークとヴァンたちで、自分たちは正義の味方のつもりでいるのだろう…逆にしか見えないのに。
「お前たちには聞いていない。私はルークに聞いているんだ」
「ルークに正しい判断ができるわけないじゃないですかぁ。こんな人間モドキに」
ルークをこき下ろすアニスにヴァンは冷たい視線を送る。
「…モースのスパイがよくそんな口を叩けるものだな」
ヴァンの言葉に真っ青になるアニス。
顔色の変わったアニスにジェイドはまさか…とアニスを見定めるように睨み、アニスの顔色に気付かないティアたちはそんな事あるはずないと喚く。
「ルーク…私と共に来ないか?今度こそ、私が全てからお前を守ろう」
尤も、お前が嫌なら無理強いはしないがな…とヴァンは差し出した手をゆっくり下ろす。
ルークは思わず、その手を掴んだ。
「ルーク?」
「師匠っ…俺…俺は……っ」
「ルーク!いったい何考えてるのよ!貴方、アクゼリュスの事を償うって言ったのは嘘だったの?」
その言葉にルークの身体はびくっと震え、掴んだ手を放す。
その事にティアは勝ち誇ったように微笑んだのを見て、ヴァンは震える手を握った。
「せ、せんせぇ…?」
「ルーク。お前がアクゼリュスの事を償う必要などないのだ。お前に超振動を使わせたのは私、お前にアクゼリュスを滅ぼさせるのを決めたのはキムラスカだ。お前の責任ではない、あれは国の責任だ。キムラスカは預言を知っていたからな」
預言に狂った世界が悪いのだ。
そう言うヴァンにルークは目を見開き、そして抱き着いた。
身体を震わせ、しがみつくルークの頭をヴァンは優しく撫でる。
「ちょっと、ルーク!」
「ルーク、お前…」
ティアとガイの失望したような声にルークは顔を上げると、泣きそうな顔で笑った。
「ごめん…俺には師匠だけなんだ」
「何言ってるんだ、ルーク!俺だって…」
「否定しかしないじゃないか。師匠だけなんだ、俺を肯定してくれるのは…。間違ってても良い。悪党でも、世界の敵でも良い。俺は、俺を肯定してくれる師匠の傍にいたい…」
そう言うと、ルークはヴァンについてその場を立ち去った。
残されたのは呆然としたティアとガイ、真っ青なアニスと険しい顔をしてアニスを見るジェイドだけだった。



―――――――――――――――――――
ヴァンをルーク至上にすると、かなり良い人になりました(笑
絶対無理と思っていたCPだったのに、久しぶりにアビス回って読んでみたら、ツボったので書いてみましたw
楽しかったけど、難しかったです…

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「ジェイド、街道を使う許可がおりたはずだが、ケセドニアで待機している部下たちに先に作業をするよう手配はしたか?」
「…いえ、まだ」
「なら、速い鳩を貸すから手配しておいてくれ。作業は早いに越した事はないからな」

ルークは謁見の間を出た後、扉の前に控えていたカイルを連れて屋敷に戻り、カイル含む特殊部隊に任務を申し渡した。
内容は謁見の間で決めた通りルークの護衛。
決行が明日という事で騎士たちは驚き、戸惑いながらも指示に従い荷造りをする。
ルークはというと手掛けていた書類をできるだけ処理し、当たり障りのない書類(でも結構重要)は信用している貴族を呼び出し引き継いでもらった。
そして、メイドに必要なものを詰めておくように言うと荷造りを終えたカイルを引き連れてジェイドの泊まる宿に訪れたのだ。

「経路について相談したくて来たんだ。海路と陸路、どっちにするつもりだ?一応、公式では海路を利用する事になってるけど…」
「そうですね…六神将や和平反対派による妨害を考慮に入れると陸路の方が好ましいですが…」
「つまり、陛下が手配した正式な部隊を囮にして俺らは陸路で確実に行くって事か?」
"ジェイド"が前回選んだ方法を言うとジェイドはあっさり頷いた。
今回のジェイドは厭味も言わないし、あっさりし過ぎてて気持ち悪い。
「…囮には公式で名が発表されているヴァン謡将に頼もうかと思っているんだが…」
「それが妥当ですね。彼も罪人ですし、襲われても返り討ちにする程度の力はある」
「カイルはどう思う?」
「私も同感です。囮に使うなら彼が適当でしょう」
カイルの返答にルークはしっかり頷く。
「なら、海路は陛下が派遣された部隊とヴァン謡将に、陸路はジェイドたちと俺と白光騎士とティアと…ガイ・セシルか…」
ガイの名にぴくりとジェイドとカイルが反応する。
カイツールで見た限り、ガイは公私の区別がつけられない。
連れて行くべきではない事は明白だ。
「ルーク様、ガイ・セシルも連れて行くのですか?畏れながら、彼は使用人として未熟です。彼を連れて行って恥をかくのは主人であるルーク様です。私は賛成できません」
「…わかってるよ、カイル。あいつの態度は屋敷の中だからこそ許されるものだ…いや、中でも歓迎されない態度だろうな。だから父上から言われた。最後の、チャンスだそうだ…父上が、道中で問題があったようなら解雇しろと…」
今までは屋敷の中だけだったから厳しいクリムゾンも目をつぶってきたのだ。
しかし、外でも同じ態度を取るというのなら話は違う。
そんな態度を取られて困るのはルーク…そして恥をかくのはファブレ家だ。
「そういう事に関して俺は甘いから決定権はカイル、お前に託すそうだ」
「私に、ですか?よろしいので…?」
決定権があるのならすぐにでも首を斬りたいと日々思っていたカイルである。
道中と言わず今この瞬間に解雇したいくらいだ。
「あぁ、任せる。ジェイド何か聞いておきたい事とかあるか?」
「いえ、特には…」
「じゃあ、ゆっくり休んでくれ。明日の朝、準備が整い次第、城の前に集合だ」
それだけ言うとルークはカイルを連れて屋敷に戻った。
念の為にジェイドの部下に鳩を送ったか確認してから…

「イオンは"前回"通り掠われるのかな…」
「ルーク様、何かおっしゃいましたか?」
「いや、気にしないで良い。独り言だ」


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「ちょっと待って下さいよぉ~!確かにそこのお坊ちゃまが名を騙ったのは不可抗力かもしれませんけどぉ、アクゼリュスを崩落させたのは事実だしぃ、イオン様にも失礼な事言ったり…さっき将軍はぁそのお坊ちゃまは間違った事言ってないって言いましたけど、全然そんな事ないんですよぉ?」
黙り込んだナタリアを援護するように口を挟んだアニスにアスランは物騒な色を宿した目で睨む。
「いいえ。彼の言った事は的を射てます。彼は親善大使です。キムラスカ王の名代なんです。つまり、ルーク殿は貴女々一行の中で一番偉い存在…王命に逆らったナタリア様よりも偉い存在です。彼を馬鹿にする事は即ちキムラスカ王を馬鹿にする事。そしてカーティス大佐…貴方はマルクト皇帝、ピオニー陛下の名代です。貴方がルーク殿を蔑ろにするという事はマルクトがキムラスカを蔑ろにする事と同じ…。その事をちゃんと考えて行動しましたか、貴方は?それからルーク殿の言った事は当たり前の事です、親善大使であるルーク殿が一番偉い、そしてそのルーク殿の命に従うのは当たり前のはず…何故軍人と王族を同列に考えているのです?それからアニス・タトリン…イオン様に失礼な事を言った、とはアクゼリュスに赴く際の事ですか?」
「ぇ…あ、そうです」
アニスは何故知ってるのだと訊きそうになって、アスランがルークの記憶を見たと言っていたのを思い出す。
「あの事に関しても私はルーク殿が正しいと思います…それどころか、本来なら貴女が言うべき事でした」
「私、が…?」
「当たり前でしょう。貴女は導師守護役…イオン様を守り安全を謀る義務があるはず…ならば貴女が真っ先に反対すべきでした。身体の弱いイオン様が強靭な男たちでさえ倒れてしまうような瘴気で覆われた地に向かう事を、その身を危険に曝すわけにはいかないと貴女は止めるべきでした…主人を軽んじていると取られてもおかしくありません」
アスランの言葉にアニスは真っ青だ。
これほどかみ砕いて言わなければ理解できないのか、とアスランは呆れ気味だ。
「完全なる職務怠慢です…あぁ、この件に関しては私に裁く権利はありませんが、別件でアニス・タトリン…貴女にはマルクト軍本部へご同行願います」
「は、ぃ?」
「言ったはずです。ルーク殿の目で見て、イオン様の耳で聞いた事を体験した、と。…わかりませんか?」
アニスはぎこちない動きで後ろを振り向くと顔を蒼白にしたイオンの姿。
それを見てアニスはイオンが知っていたのだと気付き、ガクガクと身体を震わせる。
「貴女に拒否権はありません。それから六神将『鮮血』のアッシュ…タルタロス襲撃の実行犯として貴方にも来ていただきます」
「まぁ!アッシュは本物の"ルーク"ですのよ?」
口を挟んだナタリアにアスランは目を細めた。
ジェイドは呆れの表情を作り、ガイは頭を抱え、唯一ティアだけはナタリアに同意するように頷いている。
「…そうだとしてもアッシュが"ルーク"様だという事実はキムラスカにとって受け入れがたい事では?」
「…どういう、意味ですの?」
「そのままの意味です、ナタリア王女。タルタロスを襲っただけならまだしも、彼は自国であるカイツールを襲撃しています…それも命令ではなく彼自身の意志で。そのせいでキムラスカは何億という負担と国民の命が失われました。そのキムラスカが彼をキムラスカ王族である"ルーク・フォン・ファブレ"と認め、歓迎できるはずがない」
ナタリアもアッシュも漸くその事に気付いたのか真っ青になる。
今更だ。
「私は今、部下を連れていません。ですのでカーティス大佐、二人を拘束し、連行して下さい」
「…部下を連れていないのは気付いていましたが、何故です?」
「ここに来た手段が私にしかできなかった、としか言いようがありませんね」
「貴方にしかできない手段?」
「えぇ。ローレライに送ってもらったのです。この方法は監視者にしかできませんから」
急ぎでしたしね、と固い表情で言う。
「…ルーク殿とイオン様については私の名に置いて保護させていただきます。彼ら二人も監視者ですから私と同じ方法で移動できますしね」
「お待ちなさい!その偽者は罪人ですのよ!保護など必要ありませんわ!!」
まだそんな元気があったのか…とアスランは頭が痛くなった。
「彼については事も地位も大き過ぎます。ですので判断するのは陛下であり、一介の軍人でしかない私が判断する事はできません。そして、判断されるまでは彼は偽者であろうと本物であろうと親善大使だった"ルーク・フォン・ファブレ様"です。拘束などできるはずがありません」
そう説明し「イオン様もこちらへ」と呼び寄せる。
イオンは震えているアニスの後ろから抜け出し、一度悲しそうにアニスを見た後、アスランの方に近付いた。
「では皆さん、私たちは先にグランコクマに戻ります。カーティス大佐、罪人二名とできれば罪人ティア・グランツも拘束し、本部に送り届けて下さい。仮にも左官の軍人なんですからそのくらい出来ますね?」
アスランのジェイドを見る目は冷たい。
ジェイドはその理由を理解しているので逆らわず「了解しました」と静かに言った。
「あぁ、それからもう一度言っておきます…貴方々は世界の審判より失格と見做されました。よって、世界の加護を失い、恐らく譜術は使えないでしょう」
アスランはそう言って薄く笑った後、イオンとルークそしてずっとルークに抱き着いていたミュウと共に掻き消えた。


「ここは…」
「ん?起きたか」
「ぅわぁっ!誰だ、あんた!!」
見知らぬ人間のドアップに驚き、ベットから転げ落ちるルーク。
その反応を見て、その見知らぬ男は楽しそうに笑った。
「おはよう。よく眠れたか?」
「眠り過ぎて頭がいてぇ…じゃなくて!あんた、誰だっつかここ何処だよっ!…あいつらは無事なのか?」
自分に散々言った相手を心配しているルークに男は顔を緩ませる。
「おい、アスラン。お前が言ってた通り可愛い生き物だな」
「陛下、その言い草は失礼ですよ。…言った通りだったでしょう?まっすぐで純粋な優しい方だと」
にこにこ笑う男二人をルークは怪訝そうに見る。
「イオン様は保護してありますよ」
「そうか!…大丈夫だったか、あいつ?」
「えぇ」
頷きながらにっこり笑うとルークも釣られて笑顔を見せた。
道中では全く見せなかった表情である。
「他の奴らは?」
「ルーク。俺はピオニー・ウパラ・マルクト9世。こっちはアスラン・フリングスだ。俺の部下が悪かったな」
問いに答えなかった。
それが答えだった。

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アスランがローレライ!なネタ(声優ネタ)をやろうとしたけど断念。
難し過ぎる…ので少し改造♪
で、出来た話がこちら↓↓↓↓


「世界の審判が下されました。貴方々は失格だそうです」
こんな所にいるはずのない人間が出会い頭に言い放った言葉に気絶しているルークを除いた全ての者が訝しげにその人物を見た。
「フリングス、将軍?何故貴方がこのような所に?それに失格とは…」
このような所、とはユリアシティの事である。
知っているのはほんの一部の人間だけであり、将官とは言え一介の軍人が知っているはずのない場所である。
「そのままの意味です、カーティス大佐。世界がそう判断しました。…今まで貴方を尊敬していた自分が恥ずかしい…」
「だからぁ~、その世界の審判とか失格とかどういう意味ですかぁ~?なんか、咎められてるっぽいですけどぉ、それだったらそこで倒れてるお坊ちゃまだけなんじゃないですかぁ~?」
そう言って侮蔑の目をルークに送るアニスにアスランは目を細める。
元々嫌悪に満ちていたアスランの雰囲気が更に険悪になった事にアニスは気付かない。
「…彼は別です。彼とイオン様、ついでに言うならそのチーグルは元々対象外ですから」
「ますます意味がわかりませんわ!はっきりおっしゃって下さいまし!!」
「…そうですね。お話ししましょう」
そう返答すると、アスランは倒れているルークを抱き上げ、その同行者たちを見た。
「…世界の意志であるローレライは世界をより良く導く為に各国に一人ずつローレライの代わりである監視者を置きました。そして、それぞれに役割を与えました。目はキムラスカに、耳はダアトに、口はマルクトに…。そして、今代監視者に選ばれたのは私とイオン様とそしてルーク殿なのです」
「待って下さいまし!そこにいるルークは偽者ですわ!!ここにいるアッシュが本物ですものっ!」
ナタリアの言葉にアスランは険しい表情でナタリアを睨んだがほんの一瞬の出来事だったのでジェイド以外の目にはとまらなかった。
「……アッシュ殿は名を捨てた時点で世界から"ルーク"ではない、と判断されましたので監視者の役目は今のルーク殿に引き継がれました」
「あの…フリングス、将軍…であってますよね?」
「えぇ。申し遅れました。ピオニー陛下より将官を戴いております、アスラン・フリングス少将であります、導師イオン」
にこりと初めてアスランが微笑んだ。
それはイオンだけに向けられたものであり、他の者を見る目は冷たい。
「あの、僕が監視者だと言われても何がなんだか…」
「監視者に自覚はありません。何か問題があった時だけ、ローレライの口の役割をしているマルクトの監視者から世界に告げられるようになっています。ですからすぐに進言できるよう、監視者はその国の中枢にいる人間に限られるそうです。そして今回、ルーク殿の目で見て、イオン様の耳で聞いて、ローレライは貴方々を失格と見做しました」
アスランの説明で漸く何となくだが理解し、最初に言われた事に繋がった。
しかしそれは反発を覚えるものでしかない。
「それはルークの目から見たからでしょう?そんなの理不尽だわ!」
ティアの言葉に皆頷く。
不都合な事は全てルークのせいになるらしい…とアスランは内心嘲笑した。
「…ローレライ曰く、ルーク殿の目で見た世界は純粋だったそうですよ。ついでに言うならばルーク殿とローレライは完全同位体ですから尚更ありのままが見えたとおっしゃってました」
まだ文句が言いたそうな面々を眺めつつ、アスランは話を続ける。
「しかし、私もそれでは納得できませんでしたのでローレライに反論しました。そしたらローレライは『片割れの見た世界を、ダアトの監視者が聞いた世界を見せてやろう』…そうおっしゃって擬似体験をさせて下さいました」
「それなら私たちが悪くない事くらいお分かりになったでしょう!悪いのはその大罪人だと!!」
高らかに叫ぶナタリアにアスランは「いいえ」と首を振った。
「彼の言っていた事に殆ど間違いはありませんでしたよ。まず、カーティス大佐…貴方は彼を拘束し、和平の取り次ぎをしなければ逮捕すると言って彼を脅した。そして、本来なら守らなくてはならないはずの彼を前衛に立たせた」
「それはルーク自身が戦うと…」
「それをどうあっても止めなければならない立場の人間でしょう、彼は王族ですよ。それとも、貴方は陛下が前衛に立って戦うと言ったのなら戦わせるのですか?」
「っ…」
答えはわかりきっている。
ジェイドは俯き、唇を噛んだ。
アスランの言っている事に矛盾はない…まるで本当にその場にいて見てきたようだ。
「その上数々の不敬…申し開きが出来る段階の話ではありません。それに、何故ティア・グランツを捕えなかったのです?」
「え?私っ?」
「はい。警備を眠らせ公爵家へ不法侵入、公爵子息の誘拐、王族に戦闘の強制、並びに身分差を弁えぬ発言と行動の数々…王族を誘拐したなどその場で首を落とされても文句の言えない大罪を犯していたにも関わらずカーティス大佐、貴方はそれを見逃しましたね?」
その通りなのでジェイドは反論しない。
ティアは「夫人は許して下さったわ!」と喚いているがアスランは無視する。
ここまでかみ砕いて言ったというのに理解できないティアに呆れ返ったからだ。
「次にガイ・セシル。主への不敬、職務怠慢、そして個人的に言わせてもらうなら育て親である貴方は最後までルーク殿を庇わなくてはならなかった…貴方が一番知っているはずでしょう?ルーク殿が七年の記憶がないと…七歳児と変わらないのだと…」
アスランの言葉にガイははっとしたように抱き抱えられているルークを見た。
その瞳には後悔の念が映っている。
「それがどうしたと言うのです!アクゼリュスを崩落させ、長年我がキムラスカ・ランバルディア王国を欺きルークの名を騙った大罪人ですわよ!」
そう叫んだナタリアにアスランは軽蔑の視線を送る。
ずっと黙っているアッシュも七年もの間共に過ごしてきたルークをあっさり切り捨てるナタリアに驚愕してナタリアを凝視した。
「欺き、騙ったと…?おかしな事をおっしゃいますね。この方をルーク様だと偽って連れてきたのはヴァン・グランツ。それを信じ、この方をルークだと認めたのは貴女々でしょう?それとも"戻ってきたルーク様"が『自分はルークだ!』とおっしゃったとでも?名を騙ったとはそういう事ですよね?」
「っ!!」
アスランの言い分にナタリアは言葉を詰まらせた。
"戻ってきたルーク"は喋るどころか立つ事もできなかった。
その彼が名を騙るなどできるはずがない。

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