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本能の赴くままに日記や小説を書いています。
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「…エドワード、嫁に来ないかい?」
「断固拒否。」



「…何だコレ?」
エドワードは目の前の惨状に絶句した。
いや、惨状と言うほどのものではないのだが弟の仕込みのせいで綺麗好きになってしまったエドワードにとって目の前に広がる光景は惨状と呼べるものだった。
「だらしねぇな…。洗濯もの溜まってるし、食器は流しに置きっぱなし…」
冷蔵庫には酒とつまみ程度しか入ってなかった。
「何もないって…ホント、何にもねぇな…。ありえねぇだろ。」
と、呟くとエドワードは買ってきた食材を冷蔵庫に仕舞い、念のため買ってきた調味料を調理棚に並べる。
それからソファーの上に乗っている洗い物を風呂場の隣にある洗濯機に押し込み、ついでに風呂も掃除する。
それも終わって、洗濯機がまだ回っているのを見たエドワードはキッチンに戻り、浸けてあるだけの食器を洗いだす。
洗い終えた後、冷蔵庫に仕舞った食材を取出し、調理しだす。
俺が作るんだから自分の好きなもので良いだろ…と切った野菜と水を鍋に入れ、野菜スープ状態にする。
それから嫌いな牛乳ベースのホワイトブイヨンを作り、そちらの火を消すと、野菜が煮えるまでどうしようか…と考えて、洗濯物がもうそろそろ洗い終わる頃だ、とそちらに足を運ぶ。
洗濯物を干し終えた後すぐに鍋を見て、野菜が煮詰まっているのを確認するとホワイトブイヨンをその中に入れた。
「…俺、何しに来たんだっけ?」
泊まるついでに料理作るだけだったはずだよな…?
エドワードの呟きは部屋に響いて消えた。


「帰ったよ。」
「お邪魔します。…エドワード君?」
「大将~?」
ハボックは遠慮なくリビングに足を踏み入れるとテーブルの上には"人数分"の食事が乗っていた。
「ぇ…何で…」
「あ、お帰り。」
「おっ、大将!何で俺らの分まで?予定じゃ大尉しか来る予定じゃなかったってのに」
「リザさん誘った時点で中尉たちも来るだろうなぁ…って予測ついたし。だって、中尉たちも中まで入った事ないだろ?」
「まぁ…玄関までかなぁ、良くて。何で知ってんだ?」
ハボックの問いにエドワードは何でもない事のように答える。
「ん?俺が准将ならそうするから。まっ、俺は錬金術で見られちゃ困るもんとか隠すし、リビングあたりまでなら許容範囲かな。」
国家錬金術師の研究なら一般人には理解できなくても、同じ錬金術師からすれば喉から手が出るほど価値のあるものだ。
その研究の一部だけでも。
だから、不用意に人を入れるわけにはいかないのだ。
それ以前の問題で錬金術師は自分のテリトリーに入られるのを嫌うというのもあるが…
「見られたくないものとは?」
ちゃっかりご同伴になっているフィルマンが問うとエドワードはあっさり
「禁書とか?」
と言い切った。
「大丈夫なんですか?禁書を家におくなんて…」
「ん?平気、へーき!罠はある意味、俺の専門だからね。書斎や書庫の周りに沢山仕掛けるつもりだし。あんたらが帰った後、この家の周りにも仕掛けとくから明日から気をつけろよ。」
フュリーの言葉に対しにこやかにそう断言されて命の危険を感じる面々。
エドワードは敵と見做したモノには容赦がない。
そんな事はわかりきった事だ。
「さて、シチューもあったまった頃だし、メシにするか!!」


「ふぅ…食った、食った!大将って料理、上手かったんだな。」
ハボックの隣にいるブレタも満足そうに酒を煽っている。
「ん?そう?」
「えぇ、とても美味しかったわ。ご馳走様。」
ホークアイにまで褒められて満更でもないエドワードは頬を朱に染め、頷く。
俺たちと態度違ぇぞ~とハボックが拗ねてるのを無視して、エドワードはキョロキョロしているロイに話しかけた。
「何やってんだ?」
「え?あ、何か部屋が綺麗になってる気がしてね…」
ロイの言葉に何を今更…とエドワードは呆れる。
「散らかってたから片付けたんだ。洗濯物もたとんで洗濯機の上に置いてるから後で仕舞えよ。」
「君が…?」
ロイは感動して、肩を震わせたかと思うと、エドワードの肩をがしっと掴んだ。
「…エドワード、嫁に来ないかい?」
「断固拒否。ってか何でそうなる…」
心底嫌そうな顔で一蹴されたがロイは諦めない。
「だって君、料理が上手くて…あぁ、ご馳走様、美味しかったよ。毎日食べたいくらいだ…家事全般はおてのもの。その上、美人ときたら求婚するしかないじゃないか。」
「…あんたの思考回路は理解できん。根本的なところからして間違ってる。俺は男であんたも男だ。」
「じゃあ、私のところにお婿に来ない?」
その声の方を見ると片手にお酒を持っているホークアイ。
外見的変化は見当たらないが、どうやら酔っているらしい。
だが、酔っ払いと言えどホークアイ。
その言葉にエドワードは本気で照れる。
酒の勢いでも嬉しいものは嬉しい。
実際、冗談でも酒の勢いでもないのだが、その事を知らないのは幸か不幸か…
「む…大尉、邪魔をしないでくれないか?私は今、大事な話をしてるんだ。」
「お言葉ですが、准将。お忘れのようですが貴方は記憶を失っているのですよ。そんな無責任な事を言って、記憶が戻った時、責任を取れるのですか?取れると今この場で断言できますか?」
全く言い訳ができないほどの正論にロイは落ち込む。
ホークアイの言った事は正しく、今の記憶のない自分が何を言ったところでそれは無責任な発言としかとられない。
例え、本気でも。
「(何で私は記憶を失ったんだ…。今の私は彼にとっても、彼女らにとっても偽者で、だから今の私の言葉も偽物になる…。)」
例え、記憶がなくても私は私…と言い切れないのは、以前の私と今の私の違いがありすぎるから…
「辛い、な…」
「ん?どうした?」
顔色をなくしたロイにエドワードは心配そうに尋ねる。
以前と変わらないところがあったからホークアイに言われるまでエドワードもロイが記憶をなくしているのを忘れかけていたが、今のロイは言わば別人のようなものだ。
そんな人間に今までの仕打ちは酷かったかな?と少し反省した為、態度も殊勝になる。
「いや、何でもない。大丈夫だ。ただ…」
「ただ?」
「いや…」
「途中で言葉を濁すな。言いたい事があるなら言えっての!」
エドワードの言葉にロイは今しか言えないだろう言葉を、どうか心に届くようにと願って口を開いた。
「…ただ、信じてほしいんだ。以前の私がどうであったかなんて私は知らない。だけど、私は君が好きだ。」

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「えっ、大将!?なんで軍服なんか…」
「似合う?」
「おぅ!似合う似合う…って違う!!何で中佐の軍服なんか…」
「ハボック~?どした??」
「ブレタ…」
「ん?えっらいお若い(美人さんの)中佐だな。」
「あれ?エドワード君じゃないですか!!どうして軍服を?」
「何っ?!エドかっ?気付かなかったぜ…。ちょっと見ねぇうちにこらまたぁ…背ぇ伸び(て美人になっ)たな。」
「よっ、久しぶりぃ♪フュリー曹長だけだぜ…俺だってすぐに気付いてくれたの。中尉なんて一番最初、俺の事、女だって勘違いしたんだぜ~!」
「…ハボック。」
「言うな。どうせ、お前も思ったろ?俺とお前の違いはそれを口に出したか、そうじゃないか、だ。」
「今はこれでも准尉なんですよ。それよりエドワード君、軍に入ったの?」
「へへっ…実は-----じゃ~ん!!」
「じゃ~んって、手がどうしたよ…ってちょっ…手ぇ!?」
「エド…お前…」
「って事はアルフォンス君も?」
「当たり前!俺が戻っててアルが戻ってないわけないじゃん!」
「昨日教えてくれりゃあ良かったのに…」
「意趣返しだよ、いしゅがぇし~!!驚かそうと思って電話もせずに来たのにさ、逆に驚かされてちゃザマァねぇっての。」
「意趣返しって軍服も合わせて?」
「もちっ!!」
「…何で軍入ったのかは聞かねぇけど、ここ配属なんだろ?」
「そりゃね。」
「じゃ、これからもよろしく!!」
「その前に…目的達成、おめでとうございます。」
「うぉっ?!フィルマン准尉っ!いつの間に…」
「さぁ?因みに今は少尉ですよ。」



エドワードは持たされた鍵と目の前の無駄にでかい家を見比べて溜息をついた。
そして、その隣のこれまたでかい家を見て、これから自分がその家に住む事になると思うと憂鬱になる。
また、溜息をついて、エドワードは預かった鍵を使ってロイの家に足を踏み入れた。


「それで、エルリック中佐。君は今日、これからの予定は?」
「え?予定?…今日、一日使って家を探すつもりだったからなぁ。今から宿に戻るつもりだけど。」
エドワードの言葉にロイはにやりと笑うと、エドワードに何かを投げつけた。
エドワードは慌ててソレを受け取ると、ソレをまじまじと見る。
「鍵だよ。」
「そりゃ、見りゃわかるっつーの。」
「私の家のだ。」
「っつーのもわかるけど、何で俺に渡すわけ?」
その言葉を待ってましたとばかりロイが笑顔になる。
それは記憶をなくす前、何か企んでいる時に浮かべていた笑みに酷似していてエドワードは嫌な予感がした。
「今日は私の家に泊まりなさい。」
「ヤダね。」
予想通りの言葉にエドワードは即答する。
「せっかく知り合いの家があるのに無駄金を使うなんてもったいないじゃないか。」
「俺の金なんだから、あんたにゃ関係ねぇだろ。それに同じ錬金術師としての忠告。滅多な事で人を家に入れんな。技術盗まれても文句言えねぇぞ?」
エドワードの忠告にロイは目を丸くすると、次の瞬間、にっこりと笑った。
「君は別だろう?盗まれるって言ったって、君には盗んでもらわないと困る。でないと教えてもらえないからね。」
ロイの言葉は正論である。
何気に最初からいたホークアイが頷いているのを見てエドワードはそれこそ花のように綺麗に微笑むとパンッと手を合わせた。
「あら…」
「ほぅ…これは…」
エドワードが手の内側に保っている炎を見て二人は感嘆した。
綺麗な炎だ。
「まるで、君が目の中に飼っている焔のような…」
ロイの呟きは小さく、二人には聞き取れなかった。
「ま、専門職じゃねぇから、俺じゃ、せいぜいこの部屋燃やすのが限度かな?」
「それでも凄いわ!准将から空気の密度を調整するのは難しいって聞いてたけど、そうでもないの?」
「いや、難しいよ。いつかそこの無能を驚かせてやろうと思って練習して、この程度。あんな広範囲の錬成は極めた奴じゃねぇと無理だ。…こんな形で役に立つなんて思いもしなかったけどな。」
エドワードの言葉にそれほど無能でもなかったのか…とロイはホッとする。
しかし、同じ国家錬金術師であるエドワードができないような凄い錬金術を今の自分は取得できるのだろうか?そこが問題だ。
「…ともかく、今日は私の家に泊まりなさい。この頃、物騒だからね。」
「私もそれには賛成よ。嫌だと思うけど今日だけだから我慢してくれないかしら?」
「う~ん…大尉がそう言うなら…」
二人の言葉にロイは机の上に撃沈する。
何がなんでもこの扱いは酷すぎる。
「君たち…そんなに私は嫌な人間だったのかね?」
「いえ、そこまでは。あ、エドワード君。私もプライベートじゃリザで良いわ。」
「え?本当?何か、親密になった感じで嬉しいな♪」
「なら、私も名前で…」
「は?あんた、何言ってんの?『無能』って改名するなら呼んでも良いよ。」
ばっさり斬られてロイはいじけだす。
昔の私が何をしたかはともかく、今の私は悪くないじゃないか…
「んじゃ、先に行ってる。残業になんねぇようにしろよ、明日から錬金術の勉強すんだから。」
「…ハイ。あ、そうだ。家に何にもなかった気がするから何か買って食べてくれ。」
「何もないって…わかった、何か作って食うよ。」
エドワードの言葉にロイは驚く。
「君、料理できるのかい?」
「はぁ?当たり前だろ。これから一人暮しする奴が自炊できないでどうする。」
「あ、いや…以前の私も料理はからっきしだったようだから。」
エドワードはロイの言葉に呆れる。
あんた、錬金術師だろー?
「私も苦手なの。」
「え?リザさんも?じゃあ食べに来なよ!!腕を奮うからさ♪」
そう言われてホークアイは嬉しそうに礼を言った。
ただ、ロイの位置からは勝ち誇った笑みにしか見えなかったが。


と、いうわけでエドワードは少しの荷物と沢山の食材を手に、ロイの家に足を踏み入れたのだった。

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「私が君たちのやろうとしていた事を知っていたとは言え、わざわざ言いに来たという事は何かあるのだろう?」
「…えぇ。貴方がた軍としては俺を手放したくないでしょう?」
「そうだな。なんせ、初めて人体錬成に成功した錬金術師だ。野放しにもできまい。」
「だから、交渉に来ました。軍に入る代わりにお咎め無しと弟に手出ししない事を約束して下さい。」
「私は別に良いのだがね。しかし、問答無用で君たちを捕まえる事もできるのだよ?」
「…それなら国外逃亡でも謀りますよ。ちょうどシンに知り合いがいますし。特務程度に俺たちが捕まえられると思います?」
「思わないな。まぁ、良い。君が軍に入ってくれるなら問題はないからね。」
「あ、それからもう一つ…」
「何だね?」
「俺はロイ・マスタングの下以外に着くつもりはありませんから。そのつもりで。」
「何故だね?」
「…どうせなら恩返しをしたいんです。借りっ放しじゃ錬金術師の名が廃るっ!!」



「だから、公然の秘密なんだ。それからもう一つ。アルを大学にやりたくてさ。金が必要なんだよ。あいつ、医者目指しててさぁ。…ってなわけで俺の都合だから大尉が気にする必要はないよ。」
エドワードが話し終えると(恩返しについては話していない)それでも何か察したホークアイは「そうなの…」と呟いて少し悲しそうに笑った。
ロイは正直に言うとちんぷんかんぷんなのだが察するにエドワードはしてはいけない事をして、お咎め無しにしてもらう代わりに軍に入ったという事は理解できた。
軍に入った正確な理由としては国家錬金術師じゃ軍内での行動が制限されてしまう為でもあったのだが、それを話してしまうと気にしてしまうだろうから、とエドワードはその理由は言わずにいておいたが。
「…そうか。君も大変なようだな。では、これからよろしく頼むよ。」
ロイはそう言うと手を差し出した。
それにエドワードは右手で応える。
昔は生身で応えたかった為、失礼ながらも(喧嘩を売る意味である)左手で応じていたが、これからは右手で応じても相手に不快な感情などを抱かせなくて済むと思うと嬉しい限りだ。
「君がいてくれれば錬金術に関する書類がどうにかできそうで助かるよ。」
実はそれも理由だったのでエドワードは苦笑いする。
軍属なだけでは出来ない事だ。
「今日から仕事に入るのかい?」
「いや…いえ、今日は顔見せだけです。」
「敬語じゃなくても良いのに…」
「では、お言葉に甘えて仕事の時のみとさせていただきます。」
「む…、まぁ、それが妥当か…」
ロイはそれでも不満があるのか、顔をしかめている。
表情をつくるのに長けていた男とは思えないくらい顔に感情が現れているのを見て、エドワードは内心、嘆息した。
昨日からわかっていた事だが、記憶のないロイは素直すぎる。
あの厭味の応酬になれていたエドワードとしては物足りない。
「では、今日はもう帰宅するのかね?」
「えぇ。ここに住むのを決めたのもいきなりでしたから今日は左官以上に国から提供される住宅を見て回ろうと思いまして…」
正直、アパートとかでも良いのだが、そうも言っていられないらしい。
まぁ、ロックベル家に置いてある錬金術関連の本をどうにかしろと言われていたところだし、アルも養生が終わったら一緒に住む事になるだろうから良いのだが…
「それなら私の家に住めば良い。よく知らんが無駄に大きい家でね。部屋も余っているようだし…」
「…記憶が戻った時、困るのは貴方ですよ?俺は弟と住むつもりですし…。それに、そんな事して貴方と噂になるのは御免です。」
「噂?」
「前にエドワード君…エルリック中佐と准将とが噂になった事がありまして…」
ホークアイが少し言いづらそうに眉をひそめながら言うとエドワードが「今まで通りで良いよ。」と苦笑しながら言う。
「なら、私も仕事の時だけにするわね。」とホークアイも笑ったので「じゃあ、今は俺、仕事中じゃないからいつも通りにしてよ。」とエドワードもにこやかに笑った。
「…じゃあ、私にも普段通りにしてくれたって…」とロイがブツブツ言うのを無視して、ホークアイが言葉を続ける。
「その時にエドワード君は准将のファンの方々から嫌がらせを受けたそうでして…」
「…モテる分には良いが、それは許しがたいな…。」
綺麗な顔をしてるから半分は妬みも入っているかもしれない。
それ以前に彼でなければ噂にすらならなかっただろうとロイは苦笑した。
「…でも、正直なところエドワード君には准将の護衛も兼ねてほしいのよね。」
「今は前にも増して無能だしね。」
無能は私の代名詞か…と落ち込むロイをよそにホークアイは少し考え込むとエドワードに向き直した。
「エドワード君。」
「は、はいっ」
ホークアイの真剣な表情にエドワードは畏まる。
「私としてはひっじょう~に不本意なんだけど、この無能を警護するには側にいないといけないの。」
「ソウデスネ。」
エドワードはホークアイの砕けた口調に度肝を抜かれながらも律義に返事をする。
「でも、一緒に住むのは後見人としての立場を入れても、貴方が未成年だという事を入れても難しい事だと思うの。」
「ってか、ソレは断固拒否!!」
「えぇ、私も認めないから安心して。(エドワード君と一つ屋根の下vなんて許すわけないじゃない!)だけど側にいなくちゃ警護ができない。」
「うん。」
「そこでね、准将の隣の借家が空いてるからそこに住んでもらえないかしら?」
ホークアイの言葉に2人は目を瞠る。
そして、1人は嬉しそうに、1人は嫌そうに顔を歪めた。
「うん、それが良い!そうしてくれたまえ。明日から使えるよう手配しておこう。」

「勿論、記憶が戻ったら引越しちゃって構わないわ。」
にこにこと上機嫌になった上司を尻目にホークアイは当たり前の事のように言う。
エドワードもそれを当たり前の事のように頷いた。


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「本当はさ、国家錬金術師やめてまた旅にでも出ようと思ってたんだ。アルみたいに目標があるわけでもないしさ。」
『それで影からあの人の手助けするって?兄さんらしいや。』
「だってよぉ、あいつ絶対に厭味言うだろ?『君は人の好意さえ等価交換でしか受け取らない気かい?』とか言ってさ。」
『想像つくよね~』
「あぁ…。だからってわけじゃねぇけど恩を返すチャンスじゃねぇかなって。」
『…うん。』
「だから俺さ…軍に入る。」



「失礼します。」
扉を開いた先にいたのは驚いた顔した准将と大尉。
どうやら急な事で(当たり前だ。昨日の今日で届くはずがない。)書類が届いていないよいだ。
「エドワード君?」「エドワード?」
不思議そうに呼ばれ、エドワードはロイを凝視する。
ホークアイもロイの方を振り返り、2人の視線を受けたロイは何かしたかと狼狽する。
「なっ何んだね?」
「…いえ、申し訳ありません。貴方が彼を『エドワード』と呼ぶのを(フルネーム以外で)初めて聞いた気がしまして…」
「俺も…」
2人にそう言われ、首を捻るロイ。
階級のないエドワードを他にどう呼べと言うのかわからない。
「…私は彼の事をどう呼んでいたんだ?」
「『鋼の』とお呼びになっていらっしゃいました。」
「鋼の…?」
何だかしっくりするような懐かしいような気がして、成る程、自分は確かにそう呼んでいたのだと実感した。
しかし、何故『鋼の』なのだろう?
その疑問に答えたのはエドワードだった。
「それは俺の二つ名が『鋼』の錬金術師だったからだよ。」
納得。
「では、私は君に『焔の』とでも呼ばれていたのかね?」
そう言われてエドワードは笑った。
上司を二つ名で呼ぶほど世間知らずではないし、語呂が悪い。
それに『焔の』なんて呼んだらそれこそ厭味と取られるだろう。
「普通に階級で呼んでた…っと、呼んでました。」
「何も言い換える事はないだろう。君と話すのは新鮮で好きだったのに…」
「そう言うわけには参りません。」
エドワードはそう言うと姿勢を正し、敬礼をする。
「改めまして。エドワード・エルリック、地位は中佐。銘は鋼。今日よりここの配属になりました。以後よろしくお願いします。」
ロイの「エドワード」発言にインパクトがありすぎて、話が逸れてしまった為、忘れかけいた2人は反射で「こちらこそ」と言いつつ目を見開いてエドワードを見る。
エドワードが軍人としてそこに立っている事に疑問を覚えているからだ。
「どういう事だ?君は旅をしていて、ここに留まるのだって一時的な事なんだろう?」
「旅の目的はもう達成したんだ。」
その言葉にホークアイは驚愕する。
目的を達成したと言う事は兄弟は身体を取り戻したと言う事だ。
奇跡に近いその事実は喜ばしい事だが…
「…私のせいかしら?エドワード君が昨日来たのは国家資格を返還する為だったんでしょう?それを私が准将のお守りを頼んでしまったばっかりに…」
辛そうに顔を歪めるホークアイにエドワードは首を振った。
「違うよ。それだったら資格返還を後回しにするだけで良かったんだ。こうなったのは俺の都合だよ。」
「君の都合?」
ロイの呟きにエドワードは軽く頷く。
「そっ。一つは俺たちがやった事がばれたら俺らもあんたらもヤバイって事。」
「…ヤバイって、何をしたんだ?」
ロイの疑問は記憶があった頃なら答えまでもないが今はそう言ってられない。
「人体錬成。」
「エドワード君っ!!」
ホークアイは驚いてエドワードを呼ぶがエドワードは苦笑しただけだった。
「まぁ、コレは隠してもらってもいつかばれるだろうから良いんだ。なんせ、鋼だった手足が生身になってるんだからさ。」
昨日は記憶のロイに対して鋼の手足を持っていた事が知られていないのは都合が良いと思ったが、そういうわけにはいかないだろうと考え直した。
「いつかばれるんだったら、さっさとばらして、せめて自分にとって有利な条件で軍に入った方が今後の事を考えると良いかなって思ったんだ。」

あの後、大総統本人に直接告げたのだ。
「人体錬成をした。」と…


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「…恩返しをしたいんです。借りっ放しじゃ錬金術師の名が廃る。」


「今日のご予定はそこに山積みになっている書類の処理と11時から会議。2時頃にここに配属となった中佐がお見えになります。」
「ここに…?そんな話は聞いていないが…前々から聞いていた話なのかね?」
「いえ、今日回ってきた話でして…」
「ふむ。せいぜい私の監視用かな?会議には一度出ただけだが、どうやら私は嫌われているようだし。」
「人事ではないのですよ。」
「わかってはいるのだが…こう、実感がね。自分がこんな偉い身分にいる事が今だに信じられないくらいだからね。」
ロイはそう言って溜息をつく。
以前の自分は何故こんなにも敵を増やしてるんだろう。
だいたい、あの日、目覚めてから驚くばかりだ。

目が覚めたら知らない人たちに囲まれていて自分の事を『准将』と呼ぶ。
違うような気がして名乗ろうとしたが自分の名前が出てこない。
それを話すと冗談と思われ、金髪の男には笑われ、金髪美女には銃を向けられる。
(あの時、本当に自分は准将なのか?と本気で疑問を覚えた。)
どうにか説得し終えると『無能』と呼ばれ(記憶のない人間に対して無能はひどいんじゃないか?)怪我した理由や状況、自分の名前や立場を教えてもらった。
人事のようにしか思えなかったので実感はなかったのだが、一番驚いたのは自分の歳を聞いた時だ。
30代…
将軍職にしては若すぎる(会議に出て、成る程。自分は疎まれているか、と納得した。)歳にも驚いたが、自分の容姿と合わないのにも驚いた。
どう見たって30代には見えない…。
「童顔なんスよ」と言われて全くその通りだと思った。
(そう口にしたら驚かれた。なんでも以前の自分は童顔と言うと怒っていたらしい。事実なのだし、老けて見られるより若く見られる分には良いと思うのだが…)
それから驚いたのは昨日来た金色の少年…いや、青年と言うべきか?(歳は17と聞いていたがほんの半年前まで自分の胸あたりまでしか身長がなかったと聞いていたから少年と言うイメージの方が強い。)
とにかく、彼には驚いた。
12歳で国家資格を取った天才だと聞いて、確かに大人でもそうそうなれるものじゃない事は理解していたので凄いとは思っていたがそれだけだった。
外見に関しても金髪なんてどこにでもいるし(それこそ自分の部下だと名乗った直属の部下の中に2人もいる。)、金目は珍しいなとは思ったが、気にかかるほどの事ではなかった。
しかし、本人に会うと思っていたイメージと全然違う。
すらりと伸びた背(と言っても聞いていたのに比べて、だ。)に、華奢な体つき。
だが、鍛えているのだろう、服の上からでも彼の肉体が引き締まっているだろうと想像がついた。
それから、解けば腰に届くであろう金の長い髪。
部下のとも、そこ辺りにいる人たちのとも違う、まるで彼だけの色のような特別な金色に感じた。
それに目…
ただの金目なんてとんでもない。
彼ほど澄んだ、それでいて焔を飼っているような目をした人間など彼以外存在しないだろう。
(ここで焔と言う表現が出てくるあたり自分はやはり『焔』の錬金術師と言うわけか…)
中性的な美貌も人を引き付けて離さない魅力がある。
(彼が女性か、又は自分が女性だったら即刻プロポーズしてしまっただろう、その自信はある。実際、彼は男で自分も男だと言うのに口説きそうになった。彼や部下たちに言わせれば自分は女たらしだったようだが彼を目の前にして他の人間に目が向くか?と訊かれれば今の私の答えはNOだ。)

ともかく、本当に彼の登場には驚いた。
そして、今日来ると言った彼の来訪を楽しみにしている。
以前の私はどうだったのだろうか?
知りたい反面、以前の記憶が戻ってしまえば今の私の人格が消え去ってしまうだろうから思い出したくないと感じている。
彼一人の存在で感じ方から変わってしまっているのに気付き、また驚愕した。


「准将、そろそろお時間です。」
「ん?あぁ、中佐が来るのだったな。」
「そう気楽に構えないで下さい。唯さえ今の准将は以前に比べて無防備ですのに…」
「まぁまぁ。で、その事に関して書類は来てないのかね?」
「…来ておりません。人事の方からしてみてもいきなりの事だったそうで…」

コンコンッ

ロイの執務室にノックの音が響く。
その音にロイは「時間ぴったりだ。」とホークアイに笑いかけ、「入りたまえ」と扉の向こうにいるだろう、配属されてきた中佐に声をかけた。

そして、扉は開いた。

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「あ、アル?」
『兄さん、どうだった?皆、驚いてた?』
「いや、言う暇がなかったっつーか…」
『…兄さん?』
「アル。俺……」


「君が?」
「そうですが?」
ロイはエドワードを凝視する。
その事にエドワードは不安になった。
もしかして自分の事を聞いていないのだろうか?
「聞いていた感じと大分違うな。」
「ぇ?」
「金髪のみつあみに、金の目。まぁ、一つ結びにしてるのは髪は長くなったからかな?それから黒い服の上に赤いコート。そこまでは聞いていた通りだが、身長が…私の胸あたりだと…」
「だぁれが顕微鏡を使わないと見えないくらいミジンコチビだ~!!」
反射で叫んでしまってエドワードはしまった…と顔を歪めた。
記憶がないロイからしてみれば上司に叫んだ無礼な部下だ。
「あ…あのっ…」
「くっ」
「く?」
「っはははははは!!!」
笑われてエドワードはきょとん、とする。
ここは怒られるところではないのか?
「くっくっ…君は面白いなぁ。その言い回しなんか最高だ。」
「お…怒らないのか?」
「怒るって何故?」
「何故って…俺、一応あんたの部下だし、こーゆーの不敬罪になるんじゃねーの?」
エドワードの言葉にロイはまた笑った。
「まぁ、そうなるかもしれないがね。記憶の無い今の私としては無理に敬語使ってくれるより、そんな感じで話してもらえる方が嬉しいのだよ。どうやら私は堅苦しいのが嫌いなようだからね。」
それに…とロイが言葉を続けた。
「その綺麗な顔とその言葉使いのギャップがまた面白い。」
「綺麗って…記憶失くなっても相変わらずタラシなんだな。」
と呆れつつ、ロイの言葉にホッと胸を撫で下ろす。
だが、今考えている事を実行するなら敬語にも慣れておいた方が良いんだよなぁ…とか考えているとホークアイが口を開いた。
「准将。問題としていた錬金術の事ですが、エドワード君に教えてもらってはいかがでしょうか?」
「錬金術?…あぁ、そう言えば私も国家錬金術師だったね。仕事を覚えるのに必死で忘れていたよ。で、君はそれで良いのかね?」
ロイの言葉にエドワード頷く。
ロイの部下には錬金術師はいないし、彼レベルの錬金術を使えるのは知っている限りでは自分くらいだろう。
(アームストロング少佐はある意味で論外だ。分野が違うし、何より暑苦しい。)
「そうか、助かるよ。錬金術がどういうモノなのかはわかるが理論とかがさっぱり抜けているようでね。…しかし、本当に良いのかい?」
「何が?」
「君は鎧の大男と旅をしているんだろう?私の都合で旅を中断してしまってその人は怒らないのかね?」
ロイのその言葉にホークアイとハボックはエドワードの隣にいるはずのアルフォンスの姿が見えない事に漸く気が付いた。
どうやらエドワードの変わりようにその事に目がいかなかったらしい。
「大丈夫。アルとは今、別行動だから。」
「そうか…一度見てみたかったのだが。」
心底残念そうに言うロイを尻目にエドワードはホークアイにコソッと話しかける。
「アルが弟って話してないの?」
「えぇ。貴方たちには悪いと思ったのだけどその事を言えば細かい事も話さなきゃいけなくなるから…」
「って事は俺の機械鎧の事も?」
「話してないわ。」
ホークアイの言葉にエドワードはにたりと笑った。
それが本当なら好都合だ。
もし、記憶のないロイに機械鎧の事を話していれば元に戻った生身の腕に疑問を覚えてしまうだろうから。
「ま、そーゆー事で。明後日から教えてやるから。」
「今日からでも良いんじゃないかね?君がテロリストを取り押さえてくれたおかげで仕事もすぐ終われそうだし。」
「少し野暮用がね。じゃ、また明日!」
そう言い残すとエドワードはさっさとその場を去って行った。
ロイはそれを不満そうに見届け、ホークアイたちは変わらない関係にやっぱりこの人は記憶がなくても准将ね、と笑った。

「…しかし、彼は明後日から錬金術を教えると言っておきながら、また明日…と言ってなかったか?」
「そうですね。言い間違いでしょうか?」


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コンコン
「准将、只今戻りました。」
「あぁ、入りなさい。」
入室許可を得たホークアイはハボックと共にエドワードを隠す形で部屋に入る。
「ご苦労。早かったな。テロリストを捕まるのはそんなに簡単なものなのか?」
以前の彼なら本当に早いから何かあったのだとわかるはずなのだが今の彼では基準がわからないらしい。
嘘だと思いたかったがホークアイたちが言った言葉は事実だったのだとエドワードは悟った。


「記憶喪失~!?」
「えぇ。一般常識は残っていたのだけど、自分の事や人との関係を忘れちゃってるみたいなの。」
ホークアイの言葉にエドワードは目を白黒させる。
そしてふと思った。
「って事は、自分が焔の銘を持つ国家錬金術師だって事も?」
「そうなんだよ。唯さえ仕事覚えてもらわなきゃいけないってのに錬金術使えないとなると対錬金術師の時に困るだよなぁ。お偉いさん方は錬金術関係はこっちに押しつけりゃ良いって考えてるしよ。まぁ、今んとこ錬金術師が関係するテロは起こってないけど時間の問題だな。」
確かに外に漏らすわけにはいかない話だ。
あの若さで将軍職に着いた彼は敵が多い。
この情報が漏れたら、ここぞとばかりテロや古狸どもからの嫌がらせが起こるだろう。
そんな事は見なくともわかる事だ。
「この間のテロで現場に出るだけじゃなく、部下を庇って怪我までして、その上、記憶を失くすなんて本当に無能よね。」
将軍とは普通、指示を出すだけで現場には行かない。
将軍ともなるとかかっている命が多くなる分容易に命を晒すわけにはいかないのだ。
それを理解していて、それでも尚、現場に出てくる彼は、だからこそ部下に慕われているのだ。
「それでも、仕事は忘れてるくせにサボり癖は忘れてないんスからやっぱ准将ッスよね~。」
「そここそ忘れて欲しかったわ。」
二人の言葉にエドワードは苦笑する。
サボってはホークアイに銃を突き付けられているロイを思い出したからだ。
「いつ頃だったの?そのテロ。」
「ほんの5日くらい前ッスよ。で、3日前に目ぇ覚まして、昨日から仕事に来て、仕事の内容とか教えてるトコ。まぁ、記憶がないって言ってもあの人、頭良いから結構すぐ覚えちゃったけどな。」
まぁ、そこは流石あの歳で…だろう。
「…問題は錬金術か?」
「えぇ、その事なんだけど…エドワード君、本当に悪いと思うけどお願いできないかしら?貴方なら准将の側にいてもおかしくないし…」


「いえ、ジャックされた列車の中に協力者がいたので。」
「そうか。で、その者は?」
その言葉にハボックが身体をずらしてエドワードを前に出す。
その金と赤と黒の強烈な色にロイは目を見開いた。
「彼が協力者の鋼の錬金術師、エドワード・エルリックです。」
「…私が、後見人を、してると言う…?」
「そうです。…エドワード君。」
ホークアイに呼ばれ、エドワードは敬礼しながら名乗った。
「鋼の錬金術師、エドワード・エルリックです。」

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「あれ?大尉、早いっスね。」
「えぇ。彼が捕まえてくれたおかげで乗客に怪我もないし。」
ハボックはその彼を見て驚く。
金の長い髪を高いとこで無造作に一つでくくり、金の目は滅多にお目にかかれないほど澄んでいる。
そして、彼と言われなかったら性別がわからない中性的な顔。
その整った顔は周りにいる一般人から憲兵まで振り返って見惚れるほどだ。
「彼、がですか?」
華奢な身体付きを見て言ったのがホークアイでなければ信じられないところだ。
「美人だなぁ。」
思わず呟いた言葉にピクッと反省するのを見て、おや?と思う。
この反応の仕方は…
「大将……?」
「そーだよ。ハボック少尉、気付くの遅すぎ!!大尉はすぐ気付いてくれたのにさっ」
「マジか…。おっきくなったなぁ…」
しみじみ言われて少しカチンとはきたが悪い気はしない。
「因みに俺、今、中尉ね。」と付け足されて「少尉らしっ」とエドワードは笑った。

車に乗り込むとハボックもホークアイ同様、真剣な顔になったのでエドワードも真剣な顔でどちらかが口を開くのを待つ。
開いたのはホークアイだった。
「驚くかもしれないけど本当の事だから信じて欲しいの。貴方にも関係してくる事だから…」
エドワードが頷いたのを確認するとホークアイは話を続けた。

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「この列車はオレたち『漆黒の爪』が乗っ取った!!」

「またかよ…」


セントラル行きの列車に乗っていると、ある意味聞き慣れたセリフが耳に入ってきた。
旅を終えてもトラブル吸引体質は直っていなかったようだ。
「手を上げろ!抵抗したら痛い目に合うぞ!!」
「毎回毎回、よくまぁ個性のない事で…」
ボソッと呟いたエドワードのその言葉が聞こえたわけではないようだが、一人手を上げないエドワードを不審に思ったテロリストの一人が銃をエドワードに向けながら叫んだ。
「そこの金髪!!手を上げろと言っているだろうがっ!」
エドワードはその言葉に少し嬉しくなって立ち上がった。
これが機械鎧がついていた頃なら「そこのチビ」とか「そこのガキ」とか言われていただろうから。
身長が伸びた事を実感していると、いつの間にかテロリストたちがエドワードを囲んでいた。
が、機嫌の良いエドワードとしては別にそれがどうした、今回くらいは穏便にすませてやろうかなぁ、だ。
「別嬪さんよぉ。そのお綺麗な顔に傷作りたくなかったら手ぇ上げな?」
…前言撤回。
「だぁれが女に見える豆粒ドチビじゃぁああああ!!!」


パンパンッと手を掃うとエドワードは周りを見渡した。
乗っ取られた車両を全て奪い返し、縛り上げたテロリストたちは力だけはありそうな男たちにここに集めてもらった。
勿論、皆ボコボコにしてある。
その瞬間を見た乗客たちは微妙に引き攣った顔をしていたが思った事を口にしなかったのは賢明だろう。
"人は見掛けによらない"とはまさにエドワードのためにあるような言葉だ。

『セントラル、セントラル~。ぉ降りのお客様は~…』
車内放送と共に列車の扉が開く。
外は憲兵に囲まれていた。
『犯人たちに告ぐー。この駅は完全に包囲された。乗客を開放し、出て来なさーい。』
外の緊迫した雰囲気に対し、車内は穏やかなものだ。
それは勿論、テロリストたちがたった一人に倒されてしまって安全だとわかっているからなのだが。
降りる乗客たちは自分の荷物を持ち、外の様子を無視して次々に降りって行った。
それを呆気にとられて見守る憲兵たち。
車掌さんがその憲兵たちにテロリストが捕えられた事を伝えているのを見ながら、エドワードは男たちにテロリストを外に出す事を指示した。
「いったい誰がっ」
「失礼。責任者はどなたですか?」
エドワードは車掌さんと話している憲兵に話しかけると車掌さんが自分の事のように誇らしげに「この方がお一人で倒されてしまったのですよ。」とエドワードを紹介した。
その内容に驚いて憲兵がエドワードを凝視する。
「…あなたが?」
「そうですが、何か?」
滅多に使わなかった敬語を使いながら、いつぞやのようにテロリストが暴れ出さないか警戒していたが、テロリストたちは大人しく尾縄についている。
「いえ、失礼しました。ホークアイ大尉!!この方が…」
「…ホークアイ?」
エドワードは驚いて憲兵が呼んだ方を見ると青い軍服を着こなしている懐かしい姿。
「こちらの方が?あぁ、貴方は仕事に戻りなさい。私が事情聴取を行いますから。」
「わかりました。」
憲兵が去るのを目で追っているとホークアイ大尉がエドワードに向き直した。
「ご協力、感謝します。責任者のホークアイ大尉です。」
「…中尉……」
「いえ、大尉………エドワード君?」
ホークアイの目が驚きに見開かれる。
それもそうだ。
たった半年会わなかっただけの自分の肩までしかなかった少年の頭が自分より少しとは言え、高い位置にあるのだから。
「久しぶり。背ぇ伸びただろ♪」
「本当に久しぶりね。とても身長伸びたわ。…エドワード君だったのね、一人でテロリストをやっつけちゃった強者って。」
「助かったわ」と笑みを浮かべながら言われてエドワードは少し照れる。
お世辞を言わない彼女だからその言葉が嬉しい。
しかし、その笑みを引っ込め、ホークアイは真剣な顔になった。
「話さなくちゃいけない事があるの。一緒に来てもらえる?」
「…ここじゃ駄目な話?」
「えぇ。」
彼女がここまで言うのだから本当にここでは話せないような内容なのだろう。
元から司令部に向かうつもりだったエドワードはホークアイの目を見つめながら頷いた。

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※未来設定
ホムンクルス無視
大総統は良い人




「兄さんっ!!」
「アル?アルフォンス!!!」
「僕たち元に戻れたんだっ!」
「あぁ…」
空はその事を祝うように澄み切っていた。


「アル、本当に大丈夫か?」
身体は取り戻したが、長い間、真理の扉の向こうにあったアルフォンスの身体はガリガリに痩せていた。
せっかく取り戻したのに死なせるわけにはいかないっ、とずっとアルフォンスに付き添っていて、元に戻れた事をロイたちに連絡するのを忘れるくらい必死に。
定期連絡を怠っていたから心配しているかもしれない。
そして、漸くその事に気付くくらいの余裕ができたところだ。
「兄さんってば心配しすぎだよ。もう殆ど支障はないし、ここにはウィンリィたちもいるんだよ?兄さんこそ電話しなくて良いの?半年もご無沙汰してるのに…」
「良いだ。こーゆーのは突然の方が楽しいだろ、俺が。」
いつになっても悪戯好きが直らない兄にアルフォンスは溜め息をつく。
どうせこれ以上言っても無駄な事はわかりきっているし、一般人のアルフォンスが電話したところで司令部に繋いでもらえない。
それに、アルフォンスにしてもどうせなら驚いて欲しいのだ。
自分がその驚いた顔を見れなくても。
「はいはい。じゃあ、会ったらよろしく伝えておいてね。絶対だよ?」
「当たり前だろ。」
エドワードはいつもの赤いコートを羽織ると駅へと歩いて行った。

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