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本能の赴くままに日記や小説を書いています。
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「背を向けたら斬る」


文が途絶えた父を探しに京に来た千鶴は、浪士に追われ、羅刹に襲われ、新選組に結果的には助けられたものの、機密を見てしまったため捕まった。
その場にいたのは三人。
副長である土方歳三、一番組組長沖田総司、三番組組長斎藤一。
そのうちの一人、副長の土方は先に戻ると言って一足先に屯所に戻ってしまったため、残された二人で千鶴を見張りながら歩いていた。

「あ、あの…っ」

「何?大人しくしてないと斬るよ?」

沖田にそう言われ、一度は口を噤んだものの、再び口を開く千鶴。

「…その羽織り…新選組、ですよね?」

「それが何?人斬り集団に捕まるくらいなら死にたいって言うなら、すぐにでも斬ってあげるよ?」

「っそうではなくて…あの…烝さんを知っていますか?」

「烝?どこかで聞いたような……斎藤君、わかる?」

「…わかるが、念のために訊く。姓は?」

「山崎です。山崎烝」

その名を聞き、沖田は道理で聞き覚えがあるはずだと思い、斎藤は予想を違わなかったことに眉を寄せる。
山崎は隠密であり、斎藤と同じく土方に尽くす同志だ。
その山崎が一般人に身分を明かしたとはあまり考えられない。

「何故あんたは山崎君を知っている?」

「昔からの知り合いなんです。最近は会っていないんですけど…」

「……そうか。ならば、そのことも含めて副長に報告しておく。話は明日だ。もう寝ろ」

「でも…」

戸惑う千鶴を面倒臭そうに見た沖田は、問答無用で千鶴に首刀を食らわせ、気絶させる。
それを見ていた斎藤は咎めるように沖田を見た。

「総司…」

「こっちの方が早いじゃない。起きていられても迷惑だし、殺してないんだからいいでしょ?」

「……」

はぁ…と呆れたように溜息を吐く斎藤を尻目に、沖田はどこからか持ってきた縄でくるくると千鶴を縛り、手ぬぐいで口も塞いで布団に転がす。

「…女相手にやり過ぎじゃないか?」

「逃げられたら土方さんが煩そうだし、叫ばれたら『何で屯所に女が?!』ってなるでしょ?何も知らない隊士たちに事情を説明するわけにはいかないし、必要な処置だと思うけど?」

「………そうだな」

それだけではなくいやがらせも含む気がしたが、理が適っているため肯定しかできない。
しかし、他の二人と同様に面倒だと思っていた斎藤も流石に不憫に思い、せめても…と掛け布団を掛けてやった。

そして次の日。

散々な目覚めだった千鶴は、更なる窮地に立っていた。

「殺しちゃえばいいじゃないですか」

羅刹を見てしまった千鶴を殺せと沖田が促し、半数ほどがそれに賛同したのだ。
それを土方が止めるが、内心はさほど違わぬように思える。
殆ど味方がいない状況に千鶴が青ざめていると、廊下から足音が聞こえ、襖の前で止まった。

「御呼びと聞きましたが…」

「あぁ。とりあえず入ってくれ、山崎君」

「はっ」

ガラッと音を立てて襖が開き、どちらかといえば小柄な男が現れる。

「烝さん!」

「お嬢様?!」

見知った人物の登場に千鶴は喜ぶ。
一方、山崎は江戸にいるはずの千鶴の姿に驚き、目を見開いて硬直していた。
その様子に、本当に知り合いらしい…と土方たちは納得したが、そのことを知らなかった面々は驚くと共に疑問に思う。

「山崎君、知り合いなの?ってか、『お嬢様』って何?!こいつ男だろ!」

平助の後半の言葉に賛同したのは新ハのみで、他は千鶴が女だと見抜いていたらしい。
千鶴は自分の男装が通用していなかったことに落ち込む。

「女ってのはわかってたが、山崎君とどういった知り合いで、何で『お嬢様』って呼ぶのかがさっぱりわかんねぇんだが」

「まず確認させて下さい。俺が呼ばれたのはお嬢様がここにいることに関係するんですね?」

「あぁ。こいつが君と知り合いだって言うからな。確認するために呼んだ」

「そうですか……それで、何故、お嬢様がこちらにいてこのような扱いを受けているのですか?」

目敏く千鶴の腕に巻き付く縄に気付いた山崎は、目を鋭く光らせながら一同を見る。
そんな山崎に土方は深く溜息を吐き、答えた。

「昨日、アレの後始末、君に頼んだろ」

「はい」

「その現場に居合わせたんだよ、こいつ。アレを見ちまったんだ」

「!」

動揺する山崎に「だからここにいる」と補足すると、土方は目を細めた。

「次はこっちの番だ。…どういった関係だ?」

「…関係も何も、彼女は綱道さんのお嬢さんですよ」

「「「はぁ?!」」」

山崎の説明に皆驚き、奇声を上げる。
その後まじまじと見られ、居心地の悪い気分を味わったが、父の名前に反応する一同に千鶴は多少期待して口を開いた。

「申し遅れました。雪村千鶴と申します。一月ほど前から父からの文が途絶え、心配で父の行方を探しに江戸から参ったのですが…皆さんは父を、綱道を知っていらっしゃるんですか!」

「知っても何も…なぁ……一月前に姿くらましちまって俺らも探してる」

「そう、なんですか…」

期待しただけに落胆も大きい。
千鶴はがっくしと肩を落とし、俯いた。

「…おい。綱道さんの娘ってなら、お前は薬のこと何か…」

「お嬢様は存じ上げないかと。綱道さんは過保護でしたから」

「そうか…」

ちっと舌打ちする土方。
綱道が途中で放り出した薬のことを何か知っているならと思ったのだが、期待外れだったらしい。
びくっと震える千鶴に、山崎が咎めるように土方を見つめ、その珍しい態度に土方は眉を寄せた。

「ちょっと、土方さん。何一人で納得してるのさ。この子が綱道さんの娘で、女の一人旅は危険だから男装して京まで遥々綱道さんを探しに来たってのはわかったけどさ、肝心の山崎君との関係が全くわからないんだけど」

話に入れずつまらなそうにしていた沖田が横から口を挟む。
つまらなそうにしていた割にはちゃんと話を聞いていたらしい。
確かに山崎は「綱道の娘」と言っただけで自分と千鶴の関係を明らかにしていない。

「あ?そりゃあ、山崎君が一時期江戸に身を寄せてた頃に綱道さんの師事を受けてたらしいから、その関係だろ」

「初耳なんですけどー」

「へー、だから山崎君そいつのこと知ってたんだー」

土方の説明に沖田は関心が薄れたのか、やる気なさそうな声を出し、平助や新ハは納得とばかり頷く。

「僕、てっきり山崎君と恋仲か何かだと思ってたのにー」

「はっ?!」

「えっ?」

「だって、『烝さん』だよ?あの山崎君が名前を呼ばせてるんだよ?そういう仲だと思っても仕方ないじゃない」

期待してたのにつまんないなーと言いつつ沖田の顔は面白そうなものを見つけた時の顔だ。
普段、斎藤と同じくらい表情の変わらない山崎が千鶴のことになるとあからさまに動揺するのが楽しいのだろう。

「ってか、綱道さんは『綱道さん』って呼んでるのに、どうしてその子は『お嬢様』なのさ?」

「その…綱道さんにそう呼ばないと医学を教えていただくどころか家にすら入れてもらえなかったので…」

「へぇ、綱道さんって親馬鹿だったんだ。山崎君を悪い虫扱いなんて……良かったですね、土方さん。この子殺してたら、綱道さんが見つかっても協力してくれなかったと思いますよ。あ、でもその前に後始末に来た山崎君が死体を見て、怒り狂ってたかもしれませんね」

「………」

にこにこと笑顔で物騒なことを言う沖田を山崎は無言で睨む。
普段から仲が良いとは言えない二人だが、千鶴が絡むと更に険悪になるらしい。
沖田の言ったこともあながち間違いではなさそうだと思った土方は面倒なことになったと思いながら山崎を見た。

「山崎君」

「…はい」

「綱道さんに強制させられる前は何て呼んでた?」

「普通に『千鶴君』と呼んでいましたが」

「じゃあ、そう呼べ。それと敬語も禁止な」

「は?あの、それはどういう…」

「こいつはここに置く。男装させたままな。だから、『お嬢様』なんて呼ばれると困るんだよ」

「なっ…こんな男所帯にお嬢様を置いておけるわけっ」

「だから、『お嬢様』って呼ぶなって!仕方ねぇだろ。アレ見ちまった奴をそのまま放り出すわけにはいかねーし、殺すのもまずい。なら、男の格好させて軟禁するしかねぇだろうが」

「っ………」

これでも譲歩しているのだと気付いた山崎は口を固く結び、ちらりと千鶴を見る。
不安げに瞳を揺らす千鶴に山崎は、ここで反論して条件が厳しくなるよりは―例えば軟禁から監禁になるなどよりは―良いと判断して、こくりと頷いた。

「…ならば、おじょ…千鶴君の監視をするおつもりでしたら、その役目を俺に」

「まぁ、そのくらいなら…」

「えー、いいんですかぁ?山崎君を監視にしたら、こっそり逃がしちゃうかもしれませんよ?」

「新選組の不利になるような真似はしません」

「ふぅ~ん?でもさぁ、君がいない時はどうするのさ?」

「その時は…」

ちらりと斎藤の方を見る。
土方を除けば一番信用できると思っている相手だ。
無口で無愛想だが、意外と人の良い斎藤ならば、悪くはしないだろう。
山崎が斎藤に望むことをわかっていたのだろう…反応の薄い沖田は「でもさぁ」と続けた。

「斎藤君も君も仕事の時は?」

「それは……」

「…山崎君がいない時は監視役は幹部の中で交代で行う。それでいいか、山崎君?」

「……沖田さん以外の幹部でしたら」

「ちょっと、山崎君。何で僕だけ除外するのさ。仲間外れなんで酷いなぁ」

「貴方の存在は千鶴君にとって百害あって一利なし、ですからね。貴方の側に置いておくくらいなら、任務放棄します」

「酷いなぁ、そこまで言う?ってか、仕事大好きな山崎君からこんな言葉が聞けるなんてねぇ…いいんですかぁ、土方さーん。山崎君、任務放棄するって言ってますよ」

「お前を監視役にした場合、だろ。なら、総司抜きで決めるか」

あっさりそう決めた土方に沖田はむっとした後、不安げに成り行きを見守っている千鶴を見る。

「ねぇ、千鶴ちゃんだっけ?君も僕には監視されたくない?」

「えっ?えっと………」

「選択肢のねぇ奴を脅すな、総司」

「えー?人聞きの悪いこと言わないで下さいよ。僕はただ、この子の意思も確認した方がいいと思って…」

「総司」

「はいはい」

咎めるように睨まれて、沖田は仕方なさそうに肩を竦めた。
元々、監視なんて面倒なものがやりたいのではなく山崎をからかって遊びたかっただけなので、あっさり引き下がった。

「そういうわけだ、山崎君」

「はい。…お嬢様の身は俺が守りますから、安心して下さい」

「山崎君、口調」

「はっ!…あ、その…千鶴君。君のことは俺が守る」

話に名前を出す分には問題ないが、本人に対して口調を改めるのは難しいのか、躊躇いがちにそう言う山崎。
そんな山崎に千鶴は少し安心したのか、肩の力を抜いてにこりと笑った。

「よろしくお願いしますね、烝さん」

「……あぁ」

「ふふっ…何だか懐かしいですね。烝さんが名前を呼んでくれるの。不謹慎かもしれませんが、嬉しいです」

「あ、その、だな!俺は別に呼びたくなくて呼んでなかったわけではなく、寧ろ逆というか……」

顔をほのかに赤くして狼狽しながら弁解しようとする山崎を見て、幹部たちは驚くとともに、生温かい目で山崎を見つめた。

((((わかりやすい……))))

鉄仮面とさえ言われていた山崎をここまで翻弄する少女に一部は額を押さえ、一部は微妙な顔でそんな山崎を眺め、一部は笑いを堪え、そして一人は我慢せず吹き出し笑いこけた。
遠慮なく腹をかかえて笑うその一人を睨んだ山崎だったが、千鶴に「烝さん。何故あの人笑ってるのでしょうか?」と訊かれ、慌ててごまかす。
そんな二人の様子に、

((((あぁ、鈍いのか…))))

と恋愛事に縁がなく、千鶴を女だと見抜けなかった二人さえ思い、「頑張れ」と肩を叩いて応援したのであった。





―――――――――――――――――――
ただ山崎に「お嬢様」と呼ばせたかっただけです。
捏造ってやっぱり楽しいですね!

最初は山崎も鬼にして、代々雪村家に仕える鬼(ただし血は薄い)にしようかなぁと考えていたのですが(千姫でいう君菊のような存在)、力量不足のためボツにしました。
それなら何故新選組に所属しているのか、それから考えないといけませんからね…

綱道に風間のことを聞いていて、「婚約者のいる女性を男所帯の新選組におくのは」と渋って、何も聞かされていなかった千鶴に問い詰められたり。
実際に風間に会って、「こんなのがお嬢様の婚約者!?」と嘆き、「風間様に渡すくらいなら、俺が一生お嬢様を守り抜く」と決意したり。
千鶴が自分に向ける気持ちに気付いて、従者である自分と千鶴を愛する男としての自分の間で揺れたり。

もうこれだけで書けそうですね…書かないけど(ぉい
誰か書いてくれないかなぁ…?

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※エース救出後捏造




「ワニ~!」

「うっせぇ、懐くな」

――何だ、これ……

船長を除く麦わら一味の心は一つになった。


シャボンティ諸島で世界貴族を殴り、それがきっかけで王下七武海であるバーソロミュー・くまに飛ばされた船員たちは大きな怪我もなく、無事に再びシャボンティ諸島で合流した。
一人、有り得ないほどの方向音痴であるため合流が危ぶまれた者もいたが、"命の紙"―ビブルカードが示す方向に進めばいいだけだったからか、意外なことに一番最初に辿り着いたのはその方向音痴…ゾロであった。
その次はウソップ、次はサンジ…サンジの変わりようにゾロとウソップはドン引きしたが、次の日には戻ったため、他のメンバーが知ることはないだろう(ゾロもウソップも進んでその話をしたいとは思わなかったし)。
船員で最後に戻ってきたのはナミで、空島に飛ばされたらしい。
なるほど、最後になるわけだと納得したメンバーは残りの一人、自分たちの船長を待つことにした。

「全く…あいつときたら、一人で冒険しちゃって!」

「ふふっ…船長さんらしいと言えばそうだけど、蚊帳の外っていうのは少し悲しいわね」

「兄貴を助けるためだってわかっててもなぁ…」

ルフィが最近どこで何をしてきたのか…それは全員が知っていた。
ルフィ並に情勢に疎いゾロでも知っていた…なんせ、行く先々で話題にのぼっているのだ。
『インペルダウンに侵入・脱獄を果たし、脱獄囚たちを連れてマリンフォードでの"戦争"に参戦した革命家ドラゴンの息子、億超えルーキー"麦わらのルフィ"』
その"戦争"と呼べる戦いが起こってから数日経っているが、どこに行っても"白ひげ"や"海賊王"ロジャーの息子エース、元王下七武海クロコダイル、ジンベエ、革命軍イワンコフ、そしてルフィのことで話は持ち切りだ。
脱獄メンバーにかつての敵であるクロコダイルが入っていたのは心底意外だったが(なんせ死闘を繰り広げた相手だし、仲間だったビビの国を荒らした相手だ)、それだけ手段を選べなかったのだとわかる。

「ったく、あのクソゴム…戻ってきたら、一週間肉抜きだ!」

メシ抜きじゃないだけマシなのだろうか…
サンジの言葉に「そうしろ」と殆どの者が同意した。

「…なぁ、ナミ~」

「なぁに?」

「ルフィ、どうやって戻ってくるんだろ?」

「さぁ?"白ひげ"にでも送ってもらうんじゃないかしら?ルフィにとっては助けるのが当たり前でも、"白ひげ"からしたら仲間を助けるのを手伝ってくれた恩人になるわけだし」

チョッパーの問いにナミはあっさりそう答える。

「だが、それにしても遅くないか?マリンフォードからここまで一日かかるかどうかって距離だろ?」

フランキーの疑問にナミやロビンが同意する。
"戦争"が起こってから既に数日が経っている…もう、戻ってきてもおかしくないはずだ。

「ビブルカードを無くしたとか?」

「あー、ルフィならありそうねぇ」

「そしたら、合流できなくね?!」

「やばくねーか?」

「ん?何がやべーんだ?」

「だぁかぁら!ルフィと合流できなくなるかも…って、ルフィ!?」

何気なく会話に参加してきたため、スルーしそうになったが、聞き間違いようのない声にナミは驚き、思わず叫んだ。
ナミ以外のメンバーももちろん驚き、声のした方を見遣る。
そこには包帯だらけで決して無事とは言えないが、五体満足の姿でルフィが立っていた。

「にししっ!久しぶりだなぁ、お前ら!」

「『久しぶりだなぁ、お前ら!』じゃないわよ!あれから何日経ってると思ってるの!!」

「わりぃ、わりぃ。普通の経路で来たら海軍に捕まっちまうから、迂回してきたらしいんだ。あと、宴とかあったりしてさー」

そう言ってにこにこ笑うルフィの頭にゴツンッと拳…ではなく、見覚えのある金のフックが落ちた。

「てめぇはその間ずっと寝てた上、目ぇ覚めた途端、絶対安静って言葉無視してここに来たんだろーが」

自分も宴に参加したみてぇに言うんじゃねぇ、とその金フックの持ち主がルフィの後ろにある木の陰からすっと現れ、葉巻を銜えるながら言った。
そんな男にルフィは「言うなよー」とむぅっと膨れ、そんなルフィに男は喉で笑う。
そんな、傍から見たら仲よさ気な二人に船員たちは絶句した。

「あ、あんた…そいつ……っ!」

「おぅ!ワニだ!」

「なんでそんなに普通なのよ!そいつはアラバスタを…ビビの国をめちゃめちゃにしたのよ!あんただってそいつのこと…」

「もちろん怒ってるぞ!俺の仲間に手ぇ出したんだからな!でも、エースを助けてくれたんだ、こいつ」

だから、怒ってるけど嫌いじゃねぇ、と笑うルフィ。
そんなルフィの態度にも勿論驚いた船員たちだったが、何よりその内容に驚いた。

「はぁ?!このワニ野郎がお前の兄貴を助けただぁ!?」

「う、嘘だよな、ルフィ!」

「ホントだぞ!」

嘘に決まってる!と言う船員たちにルフィは笑顔で肯定する。
ルフィが必要のない嘘はつかないことを知っている船員たちは信じられないとばかりその男―クロコダイルを見た。

「ヨホホホホ、ところでそちらの方とは皆さんどういったお知り合いで?」

「確かァ、王下七武海だった奴だよな?」

クロコダイルとの関わりを知らない新たに仲間になったブルックとフランキーの二人は空気を読んで黙っていたが、過剰反応する他の船員たちの様子に訝り、そう問う。

「…私の昔の上司よ」

「おや、ロビンさんのですか?」

「えぇ。まだ彼が上司だった時に私は船長さんたちに会ったの。因みに、彼が捕まったのは船長さんたちが彼の悪事を暴いたからなのよ」

「ってことは、麦わらたちがそいつを牢獄にぶち込んだってことか?確か、海軍の手柄になってた気がするんだが…」

「海賊に国を救われた、なんて海軍の面目丸潰しでしょ?」

その言葉に、海軍お得意の捏造か…とフランキーとブルックは納得し、ルフィ以外が警戒しているその相手を見た。
新聞でも見た顔だ…実物は写真よりおっかない…しかし、どこか優しげでもある。

「…そんなに悪い奴には見えねぇけどな」

「………かも、しれないわね。私が知っている彼より穏やかになった気がするわ」

いつも纏っていた殺伐とした雰囲気が消えている…ロビンは目を細めながらそう呟いた。

「これも、船長さんの力かしら」

私も昔は誰も信用できなかったから…と微笑むロビンにフランキーやブルックはルフィを見る。
二人から見れば、まだまだ子供である船長だが、頑なだった心を解きほぐす力を持っていることを二人は知っていた。

「すげぇ奴だな、麦わらは」

「ヨホホ、全くです」

そんな三人の会話を聞いていたのかいなかったのか、今までナミ側の会話にもロビン側の会話にも加わらなかったゾロが閉じていた目を開き、クロコダイルを睨むように見た。

「…で、何でそいつがここにいる?」

嫌いじゃなくなった理由はわかった、しかし、ここにいる理由にはならない。
ゾロはそう言ってクロコダイルからルフィに視線を移す。
その問うような目にルフィはにかっと笑った。

「しししっ、仲間にしよーと思ってよー」

「「「「「「「はぁ?!」」」」」」」

「あらあら」

ルフィの爆弾発言に皆驚き、冷静なロビンもマイペースながらも驚き、ルフィを凝視する。

「何の冗談よ!?」

「冗談じゃねーよ。な、ワニ~!」

「うっせぇ、懐くな」

抱き着いてきたルフィを慣れた様子で引きはがすクロコダイル。
その光景はまるで兄に構ってほしい甘えたな弟と弟は可愛いけど素直になれないツンデレ兄だ。

――何だ、これ……

麦わら一味(船長除く)の心が一つになった。
皆、ルフィの人懐っこさは知っているが、ここまで懐くのも珍しい。
しかも、懐いている相手は好感度が最低ラインだった(と思われる)クロコダイルである。

「る、ルフィ…ほ、本気なのか?」

「あぁ」

「……そいつも了承したのか?」

「にししっ、了承させた!」

その言葉に皆クロコダイルを見ると、ふんっと不機嫌そうに鼻を鳴らすだけで否定はしない。
違うのなら、はっきり否定するはずだろうから、つまり、事実だということである。

「お、お前なぁ…そいつに殺されかけたのを忘れたのかよっ」

「忘れてないぞ?」

「ならっ」

「けど、気に入ったんだ!だから、仲間にする!」

そのルフィらしい言い分に一同は深々と溜息を吐いた。
こうなったら何を言っても聞かない…

「はぁ……あんたは本気なの?」

「…ついてこいと言われたから、ついてきた、それだけだ」

ま、飽きたらこいつをまた枯らすかもな。
そう言うクロコダイルにゾロはすっと目を細めて鞘に触れ、サンジはトントンと靴を鳴らし、ナミは一歩下がってゾロに場所を譲り、ウソップは火薬玉を握りしめる。
チョッパーはいつでも飛び掛かれるように足に力を入れ、ロビンは笑顔のまま腕を交差させ、フランキーはコーラをぐびぐびと飲み、ブルックはヨホホと笑いながら杖をカツンと鳴らす。
ルフィ以外が戦闘体勢を取ったその時、にししっとルフィが楽しげに笑った。

「嘘つきだな、クロコダイルは。んなことするつもりなら、最初からついてこねーだろ?」

「っ…」

ワニ、と呼んでいたルフィがクロコダイルと呼ぶ。
その意味を知っている仲間たちは入っていた力を抜いた。
ルフィ自身が意図して言っているのかはわからないが、ルフィは仲間と認めた者や余程親しい者しか名前で呼ばない。
たいていは勝手にあだ名をつけて呼んでいる。
そのルフィが"クロコダイル"と呼んだのだ、ならば認めるしかないだろう。
それに、名前で呼ばれたクロコダイルの顔を見てしまったら、警戒するのも馬鹿らしくなる。

「む、麦わら、てめぇ…」

「ん?どうしたんだ、クロコダイル?」

「っ……おい、そこの奴、笑うんじゃねぇっ」

顔を赤くして怒鳴り散らすクロコダイルに首を傾げるルフィと、その様子に耐え切れず笑い出す一同。
そんな一同につられてよくわからないまま笑い出すルフィに、わかんねぇのに笑うなとその頭を殴るクロコダイル。

どうやら、更に賑やかな航海になりそうである。




――――――――――――――――――
ワニを仲間に引き入れ隊!
海軍(+七武海)vs白ひげ(+脱獄組)が終わったら、ワニはどうするんだろ…
仲間にはならないってわかってるけど、夢を見たいので捏造しちゃいました☆
ワニが加わったらナミたちはハラハラしそうだけど、ルフィは普通に自分を枯らしたことのある手に触ったりすればいいよ。
で、ワニは戸惑ってればいいよ!(妄想乙

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※本編ネタバレ…になるかな?




クロコダイルはドフラミンゴと戦いながら、ちらっと"白ひげ"の方を見た。
それに気付いたドフラミンゴが嘲るように笑う。

「よそ見するなよ、つれねぇな。そんなに気になんのか、あの男が」

「そんなんじゃねぇよ」

即答するクロコダイルにドフラミンゴは笑みを深める。

「フッフッフッ、お前の態度じゃ図星だって言ってるようなもんだ。気になんだろ、"白ひげ"が」

その言葉にクロコダイルは瞠目し、微かに動揺した。
その様子にやっぱり図星か…と思ったが、ふとその反応に違和感を抱く。
誰を気にしているのか言い当てられることくらい予想がついていたはずだ…にも関わらず、まるで予想していなかったとばかり動揺したということは、"白ひげ"ではない者を気にしていたということではないだろうか?
ドフラミンゴはちらりと先程クロコダイルが見ていた方向を見る。
そこにはやはり"白ひげ"がいて、「俺の思い違いか…」と思った時、先程吹っ飛ばされて"白ひげ"にぶつかった場違いな子供が視界に入る。

「…なるほど」

「ぁあ?」

「お前が気にしてたのは"麦わらのルフィ"か…」

その言葉にクロコダイルは大袈裟なまでに動揺した。
他人にそれほど興味のないクロコダイルを動揺させたその存在にドフラミンゴは興味を惹かれる。

「フッフッフッフッ、そーいや、あのイカれたルーキーにやられたんだったな」

「…………」

「けど、それだけじゃねぇだろ?」

苦虫を噛み潰したような顔をするクロコダイルにドフラミンゴは愉しくなる。
弄りがいのない冷めた男が、無謀なガキ一人に面白いくらい反応するのだ、愉しくないわけがない。

「フッフッフッフッフッ!お前が執着する相手だ、何かしら気になる"モノ"を持ってんだろ?気になるなァ…」

「…アレは俺の獲物だ。手ぇ出すんじゃねぇ」

「なら、俺を倒すんだな、ワニ野郎。もっとも、お前程度に俺が倒せるとは思わねぇけどなァ!」

そう言って笑うドフラミンゴにクロコダイルは忌ま忌ましげに歯ぎしりする。
そして、ナースに預けられたルフィを一瞥すると、ドフラミンゴに視線を戻し、すっと目を細めた。

「てめぇにはやらせねぇよ」

――てめぇにはもったいねぇ

そう呟いてクロコダイルはにやりと神経を逆なでする笑みを浮かべ、ドフラミンゴもそれを見て同じように笑った。




―――――――
中途半端!
続きを思いつかなかった………
ただ、ワニがルフィを気にしてたらいいなと思ったので、書いただけっす。
それにしても………口調がわからん!!

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※ルフィが海賊王になった後設定



俺を突き動かす、この感情の名前はわからない。
俺の中で燻り続けるこの感情…
ただ、わかるのは――お前を手に入れたいという欲求……


「あれ?」

聞き覚えのある驚いたような声にスモーカーはそちらを向いた。
予想を違わず、そこには麦わら帽子を被った少年が一人。
否、少年に見える青年が一人、と言った方が正しい。
童顔と落ち着きのない行動のせいで子供に見られがちだが、とっくに成人していることをスモーカーは知っていた。

「麦わら…」

「しししっ!偶然だな、ケムリン!」

にかっと笑う"麦わらのルフィ"…その姿は海賊の頂点である海賊王の名を持つ海賊とは思えなかった。

「ここで何をしている?」

「ん?メシ食いに来たんだ!あ、ケムリン
おごって~!」

「馬鹿か、てめぇは。海賊にメシ奢る海軍がいるかっての」

ってか、腐るほど金は持ってるだろ、とスモーカーは呟く。
海軍が麦わら海賊団を捕まえようとする理由は何も海賊王がいるからとか、懸賞付きの海賊ばかり(例えば、最強と謳われた鷹の目を倒して大剣豪となったロロノア・ゾロとか)だからというわけではない。
確かにその理由も大きいが、資金のやり繰りに苦労している海軍の狙いは麦わら海賊団が所有するお宝にもある。
国家予算にも劣らないと噂の財宝を押収して、自分たちの資金にしようと考えているのだ。

「だってよー、金はナミが管理してて触らせてくれねぇんだもん」

「あぁ、あの女か…」

金にがめついナミを思い出し、スモーカーは少し遠い目をする。
金への執着心は人並み以上だ、確かに自分たちの船長だろうと触らせはしないだろうとスモーカーは思わず納得してしまった。

「な?だから、おごってくれよ」

「お前、俺が敵だと忘れてないか?それとも、お前の身柄をメシの代金にして構わないという意思表示か?」

「俺の懸賞金って今5億くれぇだろ?なら、5億分メシ食わしてくれるのか?」

「勘弁しろ…そんなに食われたらお前を捕まえる前に破産する」

「にししっ!だろーな!」

嫌そうな顔をしたスモーカーにルフィは楽しげに笑う。
スモーカーはそんなルフィの頭をぐしゃぐしゃと乱暴に撫でた。

「ほら、行くぞ」

「え?」

「メシ奢ってやる」

「いーのか?まさか、奢るふりして捕まえるつもりじゃ…」

「ほぉ…多少は頭が回るようになったみたいだな。だが、今回はその気はない。普通に奢ってやる」

「マジで!フトモモだな、ケムリン!」

「それを言うなら太っ腹だ、馬鹿!」

ペシンと叩いてやるが、ルフィは笑顔を崩さない。
この程度の打撃など、ゴムであるルフィにはどうってことないのだろう。
叩き損な気がしてスモーカーはむっと眉を寄せた。

「でも、ホントにいいのか?」

「休暇中まで仕事やるほど真面目じゃねぇんだ、俺は。それに、覇気使える相手に武器無しじゃな…」

そう言われてルフィはスモーカーがいつもは持っている十手を持っていないことに気付いた。
覇気を使えるようになり、実体のない煙相手にでもダメージを与えられるようになったルフィ相手には、海蝋石でできた武器くらいなければ太刀打ちできない。
無論、武器がなくともスモーカーは強いが、素手でルフィに勝てるかといえば否だ。
生憎とスモーカーは自分の力量を計れない馬鹿ではなかった。

「しししっ!武器ねぇなら少しは安心だな!ってか、休暇中だったのか、おめぇ」

「有休取らなすぎて上から苦情が来て仕方なく、な」

「あー、だから、軍服着てねぇのか。どーりで違和感あると思った」

今スモーカーは軍服ではなく、白いワイシャツに黒いズボンを穿いている。
軍部を出る際、たしぎに「軍服じゃない中将って、なんか違和感ありまくりですね」と言われたくらい軍服でない方が圧倒的に少ないスモーカーは、自分でも違和感があったため、ルフィの言葉に「そうだろうな」とあっさり肯定した。

「で、行くのか?行かないのか?」

「行く行く!!肉がうめぇとこが良い!」

「んなこたぁ知るか。たまたま立ち寄った島の店のことなんぞわかるわけねぇだろ」

「ししっ!それもそーか」

俺もわかんねぇ、と笑顔でルフィは言う。
そんなルフィの頭をもう一度くしゃくしゃと乱暴に撫でると、スモーカーは歩き出した。

「行くぞ」

「おぅ!」

歩き出したスモーカーに続き、ルフィも歩き出す。

「けっこー優しいのな、ケムリン」

「…射止めるなら、まずは胃袋からって言うしな」

「は?どーゆー意味だ??」

「気にするな」


俺を突き動かす、この感情の名前はわからない。
俺の中で燻り続けるこの感情…
ただ、わかるのは――お前を手に入れたいという欲求……

(この欲に名前をつける日も遠くねぇんだろうな…)

ただ…今はまだ、この関係で……



―――――――
そして、食べながらワニの話ばっかするルフィにケムリンがヤキモキするわけですね、わかります(ぉい

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※ルフィが海賊王になった後の話です




「ワニ~~!」
「…また来たのか」
手を振りながら走り寄ってくるここ数年で見慣れた姿にクロコダイルは呆れたように溜息を吐いた。
「お前、仲間はどうした?」
「ワニに会いに行こうって言ったらさぁ、一人で行けだってさ」
冷たいよなぁ~と言いながらクロコダイルに抱き着くルフィに、クロコダイルは当たり前だと眉を寄せた。
誰が好んで殺されかけた奴に会いに来るというのだ…ルフィは来ているが。
邪険にされているが、しかし、これでも一応はルフィの仲間たちに信用されていると知っている。
ルフィがクロコダイルに会いに来るようになった当初は、指一つ触らせないとばかり警戒していた船員たちが、ルフィを一人で来させるのがその証拠だ。
まぁ、尤も、昔より丸くなったクロコダイルへの信用というより、クロコダイルに攻撃されてもやられないだろう自分たちの船長への信用が理由だろうが。
「…物好きな奴だ」
「しししっ、そうかぁ?一緒に脱獄した仲だし、おかしくねぇと思うぞ?」
あん時は大変だったよなぁーと他人事のように言うが、史上初のインペルダウン侵入と沢山の囚人を連れた脱獄の先導者は間違いなく目の前にいるモンキー・D・ルフィである。
相変わらずこいつはよくわからん、とクロコダイルはルフィを理解するのをあっさり放棄した。
「…で、今日はどうした?」
「お!聞いてくれよ~!ケムリンが遊んでくんねぇんだ」
「将校相手に遊ぼうとしてんじゃねぇよ、アホが」
「だってさ~」
ぷぅとガキみたいに頬を膨らませる姿は本当に子供にしか見えない。
「あいつくらいしかまともに相手してくんねぇんだもん」
「…だろうな」
海賊王にまでなったこの男を本気で捕まえようとする人間など、確かにあの男しかいないだろう…否、捕まえようすることができるだけの力を持った、と言った方が正しい。
そこらの海軍では退屈凌ぎにすらならないだろう。
「なのにさー、『海賊はお前だけじゃないんだ』ってどっか行っちまうし」
そりゃあ、海賊のくせして民間人の英雄みたいな存在になってるこのアホより、海賊らしい海賊は沢山いる。
こいつが騒ぎを起こす時はたいてい相手方が悪いし、余程のことがない限り、誰かを害したりはしない。
それならば、こいつを放置して他の海賊を狩っていた方が海軍も有意義だろう。
ってか、わざわざこいつに会って、そう告げていく時点で、煙野郎もかなり甘いと思うのは俺だけか?
「…で、俺に暇潰しの相手をしろと?」
「だってワニも暇だろ?」
勝手に決め付けているルフィにクロコダイルは眉を寄せた。
「暇じゃねぇから他を当たれ。どこぞの海賊女帝やてめぇの兄なら喜んで相手をしてくれるだろーが」
「えー?俺はワニと遊びてぇんだよー」
「却下だ」
どこぞの煙野郎の代わりなんざ御免だ。
クロコダイルは舌打ちして、葉巻に火をつける。
ルフィはむぅっと顔をしかめ、クロコダイルに飛び付いた。
「っ…何しやがる、クソガキ!」
飛び付いてきたルフィのせいで深く煙を吸い込んでしまったクロコダイルはケホケホと咳込みながらルフィを睨み付けた。
「遊んでくれねーおめぇがわりぃんだ!」
「ガキの理屈だろ、そりゃあ」
「ワニが悪いんだ!…俺は今から寝るから起こすなよ」
そう言うとルフィはクロコダイルの背中に張り付いたまま目を閉じた。
そしてすぐに寝息をたて始める。
物事が思い通りに進まないことにふて腐れて寝るなんざガキ以外何者でもねぇ…こんなのが海賊王なんて世も末だな。
クロコダイルはそう思いながら、背中の温もりを引きはがすことはせず、葉巻の煙を吸い込んだ。

「…甘ぇ」

いつもは苦く感じる葉巻が何故か甘く感じた。



――――――――――――――
ワニ→ル(←スモ)のつもりw
ルフィは大人になってもお子様だから他意はない!(ぉい
ルフィはワニといたらケムリンの話ばっかして、ケムリンといたらワニの話ばっかしてたらいいなwww←待て

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「おい、一護!」
「だから、やらねぇっての!」
一護は条件反射で逃げ出した。
でなければいくつ命があっても足りない。
顔を確認してからなんて悠長なことをしていれば、餌食となることは必須だ。

「あーあ、また逃げちゃったね、いっちー」
小さくなっていく背中を剣八の肩の上から見送りながら、やちるが残念そうに呟く。
やちると同様、一護の背中を見送った剣八は「ちっ」と舌打ちした。
追い掛けても無駄なことはこの数日で流石に学んだ剣八である。
「つまんねぇ」と不満げに呟いて道場へと足を向けた。
「ったく、一角たちとはヤるくせによ…」
「ツルリンとの勝負は殺し合いじゃなくて仕合いだからいいんだってー」
「ぁあ?」
「いっちーがこの間言ってたの」
その時お菓子もらったんだー!と笑顔でやちるは言う。
自分のことは避けるくせにと剣八は再び舌打ちした。
「剣ちゃんも素直になればいいのに」
「はぁ?」
「剣ちゃんがいっちーを追い掛ける理由はなぁに?」
「殺り合うために決まってんだろ」
「本当にそれだけ?強いっていうだけなら他の隊長たちもいるし、いっちーにこだわる理由はないよ?」
「そりゃ、めんどーだからに決まってんだろ。始末書だの何だの書かねぇとなんねーしよ」
「他にそれだけ?」
じーっとやちるは剣八を見る。
普段はそんな風に見られても気にしない剣八だが、思い当たる節があるのか少しだけたじろいだ。
「ねぇ、それだけ?」
「……敵わねぇな、お前には」
「えへへ」
降参した剣八が言った言葉に照れるやちる。
「剣ちゃんのことなら、剣ちゃんより知ってるよ!」と胸を張るやちるの頭を剣八は乱暴に撫でた。
「いっちーが好きなんだよね?」
「…わかんねぇ」
やちるの問いに剣八はぼそりと呟く。
「ただ…あいつの傍に他の奴がいるとムカつく。あの目に映るのは俺だけでいい」
「わぁ!剣ちゃん、熱烈~!」
「そうか?」
「うん!だって自分だけを見てほしいんでしょ?それ、独占欲ってやつだよ!」
にこにこと笑顔で言われた言葉に剣八は「独占欲ねぇ…」と眉を寄せた。
剣八が今まで執着したのは強さくらいだからしっくりこないのだろう。
そんな心情を理解しているのかいないのか、やちるは笑顔で剣八を見た。
「気持ちがわかったなら前進あるのみだよ、剣ちゃん!」
「けどよぉ、肝心の一護は俺に気付いた途端逃げ出すんだぜ?」
「あたしがいっちーに伝えとく。剣ちゃんが、殺し合いじゃなくて話し合いがしたいって言ってたって!」
「いや、話より殺り合いてぇ…」
「ダメだよ、剣ちゃん。ガマン!もっといっちーと仲良くなってからでも殺し合いはできるよ。今はいっちーをメロメロにすることだけを考えるの!」
やちるの主張にそういうものか?と首を傾げながらも頷く剣八。
そんな剣八を満足そうに見たやちるは「じゃ、あたしはいっちー捜しにいってくるねー」と剣八の肩の上から飛び降り、たたたっと一護が消えた方向に走り出した。
その途中でくるりと振り返り、大きな声で叫ぶ。
「剣ちゃん!」
「あ?」
「剣ちゃんは気付いてないみたいだけど、いっちーってすごくモテるんだよ!びゃっくんとかレンレンとか、うちの隊だとツルリンとか!」
「…ほぉ」
元々凶悪な面なのに、更に凶悪度が増した剣八にやちるは「これでツルリンは離脱かな」と笑顔で酷いことを考えた。
「じゃ、あたし行くねー!」
今度こそ走り去ったやちるを見送った剣八は凶悪な笑顔を浮かべ、十一隊の道場へと歩き出した。

その日、とある隊の3席が重傷で四番隊に担ぎ込まれたのは余談である。



――――――――――――――――――
やちるが黒い……
剣→一(←やち)って感じかなぁ…
やちるは恋愛感情じゃなくて親愛で、「いっちーが剣ちゃんのお嫁さんになったらずっと一緒だよね!」とか思ってたり。
この剣八、めっちゃやちるの思惑通りに動いてるよ(苦笑

あ、あと好きなカプ付け足し。
阿一も好きです!
鬼畜のくせに一護にだけヘタレだったら萌えますww

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一護がその人物をちゃんと見たのは、織姫に怪我を治して貰い、一日安静と言われてベットに縛り付けられた次の日であった。
藍染たちが離反し、ごたごたしている中、とりあえず顔合わせだけでもと恋次に連れられて歩いていた一護は途中、剣八に見つかり、追い掛けられたため、恋次とはぐれてしまったのだ。
その時に、鉄笠を被った大柄な人物を見つけた一護は、この人どこかで…と眉を顰めて見つめた。
その視線に気付いたその人物は少し驚いたように一護を振り返った。
「…黒崎一護、か?」
「そうだけど、あんたは?」
「あぁ、すまぬ。儂は七番隊隊長狛村左陣と申す」
「七番隊隊長………あ」
藍染たちと相対した時に見かけた人物だと思い出し、納得したようにぽんっと手を叩いた。
しかし次の瞬間、怪訝そうに狛村を見る。
「ぇっと、狛村さんはさ、何でソレ付けてんの?」
「…コレか」
その指摘に狛村は困ったように唸った。
付けている理由なんて簡単だ…"人"ではないから。
それを先日見ているはずの一護に問われ、戸惑う狛村。
しかし、背骨一本で繋がっている状態であった一護にはあの時の記憶は殆どないだろうし、周りを見る余裕もなかったはずだと思い出し、仕方なく外すことにした。
恐れられるのは慣れている。
この子供の目が恐怖に染まるのは何となく悲しいが…と思いながら恐る恐る外すと、一護は狛村をマジマジと見た。
そんな風に見られると思っていなかった狛村は僅かに狼狽する。
「…儂が恐ろしくはないのか?」
「え、何で?」
「む…」
まさかそんな風に聞き返されるとは思わなかった狛村は困惑した。
「その、だな…普通は儂のような異形を恐れるものであろう?」
「カッコイイのに何で恐がる必要があんだよ」
当然のように言い放った一護に狛村は目を見開いた。
「人と違うって言ったって、俺の髪みたいなもんだろ?」
「髪…」
一護の髪は鮮やかなオレンジ色だ。
確かに変わってはいるが、こちらでは赤やピンクがいるため、そこまで変わっているとは思わない。
狛村がそう思ったように、一護もこちらには変わった髪色の人間がいることを思い出したのか、少し眉を寄せた。
「…えっとさ、俺の髪がこの色なように、他人と違うって当たり前なんだからさ、別にそれを隠す必要なんてねぇと思う」
「しかし…」
「狛村さんが嫌って言うなら仕方ねぇけど、恥じることは何もないんだから堂々としてて思うんだ、俺」
それに、せっかくカッコイイんだし…と呟く一護に狛村は低く唸った。
今までの反応と全く違う反応をする一護。
恐がるでもなく、同情するでもなく、自分の髪色が違うのと同じだ、なんてあっさりと言った子供。
その反応がどこか心地よい。
「…お主は平気だと思うか?」
「もちろん!」
「そう、か」
狛村はそう呟いて、ぽふっと一護の頭に手を乗せた。
「…ありがとう」


「あー!黒崎くん、その人!!」
少し話した後、正直に迷ったことを明かした一護は十一番隊にまで狛村に送ってもらった。
そして、たまたま十一番隊にいた織姫がその姿を発見し、大きな声で叫んで一護の隣にいた狛村を指した。
異形だ、化け物だ、と言われるのだろうと目を伏せた狛村は次の言葉に危うくこけそうになった。
「かわい~!その人も隊長さん?」
「か、かわ…?」
「おぅ!七番隊隊長だってさ」
「へぇ~。あ、あの!」
「……何だ?」
「尻尾、触ってもいいですか?」
「あ、俺も触りてぇ!ダメか、狛村さん?」
キラキラと目を輝かせて見つめてくる二人に狛村は戸惑う。
「…別に構わんが……」
「やったー!!」
「ありがと、狛村さん!」
許可すると二人は喜び、狛村の尻尾をもふもふしだす。
その光景を見ていた一角が引き攣った顔で狛村を見た。
「狛村隊長…」
「言うな。儂にもわからん」
こんな反応をされたのは初めてだ。
現世の人間は感じ方が違うのだろうか…と戸惑いながらも、嬉しいと思う自分がいることを自覚していた。

こんな日があってもいい…そう思った狛村であった。




――――――――――――――――
マイナーが何さ!狛村さんが大好きなんだーーーっっ!!
どうも、いきなり脱色ですみません。
最近、再びはまりました…多分、一時的なものですけどね。
最近の一押しカプは狛一と剣一ですv
本編の理不尽な剣八にやられました。
でもってマユリさまにもやられました。何あの萌え…
あと、浮一はもちろん、斬一とか茶一も好きですww

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「こんにちは、健二くん」
ドアを開けた先にあったのは、思いもよらない人の笑顔だった。


あの事件から3ヶ月の月日が経過した。
太陽がギラギラと照り付け、蝉の声が鳴り響いていた夏真っ盛りのあの日が嘘のように、外に出れば冷たい風が待っている。
あれほど混乱していたOZも復旧に当たる人々の努力により元通りとなり、今は問題なく運営している。
あの日活躍したカズマくんや夏希先輩は3ヶ月経った今でも注目の的だが、当初ほどではない。
僕はと言うと、OZ内(つまり人の見えるところ)で活躍したわけではなかったから騒がれる事もなく……となればよかったんだけど、カズマくんが黄色いリス=ラブマシーンに最初に乗っ取られたアバターの持ち主だと言っちゃった上に、『あらわし』を逸らして自分たちを助けたと公言しちゃったものだから、一躍有名人となってしまった。
二人はOZ内だけだからまだ良いけど、僕の場合、一度犯人扱いで(目は隠してあったけど)写真を放送されてるわけで…かなり人の目が痛かった。
もちろん、カズマくんは考えなしに公言したわけじゃなくて、OZの大混乱がラブマシーンの仕業だと知っても疑いの目を向けてくる世間から僕を守るために言ったという事を知ってるから、責めるわけにもいかないし、責める気も元々なかった。
夏休み明けが一番人の目が痛かったけど、時が経つにつれ、地味な僕からチャンプに返り咲いて今もOZで活躍中のキングカズマの方へと意識が向いていったため、大分楽になった。
以前よりも派手な活躍をしているから、ちょっと気になって聞いてみたら「お兄さん、自信過剰」って笑われたけど、その後に恐る恐る「…ところで、最近どうなの?」と聞いてきたから、やはり感じた違和感は間違っていなかったみたいだ。
人見知りであまり他人と接しないから、懐かれる(と言ったらカズマくんは否定するかもしれないけど)なんて初めてで、何だかくすぐったい。
因みに、アバターは変なリスのままだ。
元のアバターはイメージが悪いからと陣内家の人たちに反対されてしまったし、僕もそう思ったからだ…だからといって、この不細工なリスも微妙だが。

いろいろあったけど、1ヶ月を過ぎると日常に戻ってきた。
時々、思い出したように佐久間と僕に企業からお誘いがあるくらいで、返事はまだ待ってもらっている。
何たって僕たちはまだ高校生だ。
あの事件が起こるまで、このまま大学に進むんだろうなぁと簡単に考えていたから、企業からの誘いなんて想定外で、ただ、佐久間と二人、もし受けるなら同じところにしようなと笑い合っている。

その日もいつもと変わらない日常で、違ったのはバイトがなかったからそのまま帰宅した事くらい。
けれど、この3ヶ月の間にそんな事は何度もあったし、それといって変わった事ではなかった。
けれど、ここにきて変化が…彼が唐突に訪れた。

ピンポンとチャイムが鳴り、健二は「はーい」と叫びながら玄関に駆けた。
いつも母や佐久間や夏希にまで「健二(くん)は危なっかしいから、家に誰か来たら確認してから出な(さいね)」と耳がたこになるまで言われたというのに、失念していた健二はそのままガチャとドアノブを回した。
「どちらさまで…」
「こんにちは、健二くん」
「へ?」
聞き覚えのある声に顔を上げると、そこにはあの家で知り合った男がいた。
「り、理一さん!?」
「良かった、覚えててくれたんだね」
「…忘れたと思ってたんですか?」
「いや、顔は覚えてるだろうけど、いろいろあったからね、名前は抜けてるかもしれないなって」
沢山話したってわけでもないしね、と苦笑する理一に健二は少しだけ納得した。
あんな事件があった上、親戚が覚えられないほどいたのだ、一番接する事の多かったカズマやラブマシーンを作った侘助ならともかく他の人の名前が抜けてるかもしれないと思っても仕方ないだろう。
尤も、持ち出す許可が普通は出ないような車両を持ち出してきたような人を忘れられるはずもないけれど。
「あ、あの、」
「ん?」
「僕、住所教えてませんよね…?」
「うん、そうだね」
「じゃあ、何で…」
「それは言えないかな」
爽やかな笑顔でさらりとそう言う理一に健二は引き攣り笑いしかできない。
謎の多い人だとは思っていたが、ここまでくると、もはや笑うしかない。
夏希は知らないのでそこから漏れたということはないし、後は佐久間だが、接点は殆どないため除外していいだろう。
念のため、明日にでも確認しておこうと決めた健二はにこにこと微笑んでいる理一を見上げた。
「それで、あの、今日はどうして…」
「たまたま仕事がオフだったから遊びに来たんだ」
「え?わざわざ東京まで?」
驚く健二に理一はくすりと笑う。
「そういえば、帰る日が違ったから知らないのか。僕も東京に住んでるんだ」
「そうなんですか!?」
「うん、市ヶ谷駐屯地勤務」
結構近いでしょ、と楽しげに言う理一にこくんと頷く。
「自衛隊なんて仕事してるとなかなか休みが取れなくてね。せっかくだから健二くんと遊ぼうかなって」
「せっかくの休みなら、疲れてるでしょうしのんびり過ごした方が…」
体力勝負のイメージが強い自衛隊…それが休みだというのなら、家でゆっくり寛いだ方がいいのではないか。
健二はそう思って心配げに言う。
だというのに返ってきた返事は健二の予想とは違っていた。
「そうだね。だから健二くん、僕と一緒にのんびりドライブをしないかい?」
「へ?」
「夕飯奢るよ?」
「ぇ、あ、いや、それよりも…」
「健二くんといると癒されるんだ。だから、ゆっくり休めと言うなら一緒にいてほしいんだけど、駄目かい?」
そこまで言われて断れる健二ではない。
幸いと言って良いのか用事もなく暇だったし、父は相変わらず単身赴任、母は先程忙しいから今日は帰れないと電話があったところだ、外出しても特に問題はない。
相手が信用できない相手だというならともかく、理一の身元ははっきりしているし、警戒する必要もない。
黙り込む健二を見て悲しそうに表情を歪めた理一に、健二は慌ててコクコクと頷いた。
「ありがとう、健二くん。それじゃあ行こうか」
一変して笑顔になった理一に健二はホッとしたが、第三者(例えば侘助)がいれば騙されるな、さっきの悲しそうな顔は演技だぞと忠告したに違いない。
しかし、残念なことにこの場には理一と健二しかおらず、健二は理一の差し出す手を恐る恐る握ったのであった。


(チャンスは自分で作らないとね)



―――――――――
続く…かもしれない。
終わり方が中途半端すぎる…orz

理健好きです、数字コンビ!(理"一"と健"二")

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ようやくフリルク話書き出しました。
ちゃんと、甘くなるだろうか…と心配になっています。
仲間厳しめに重点置きすぎてるよ…(汗
まぁ、甘くならなかったら新しく話を考えればいいか!(ぉい

h_sedo.png最近、PCに触れないのでケータイでいろんなとこ回って、
いろんなジャンルにはまってます(汗
「忍たま(乱太郎受け)」「種(イザキラ)」「灰男(リンアレ)」
「BASARA(小十幸)」「銀魂(土新)」etc...
ぶっちゃけ、もっといろんなジャンルまわってます。
そんな暇があれば書けって話ですよね…(か、書いてますよ…!(汗

で、今一番はまってるのは「ハリポタ(セドハリ)」です。
やっぱ、マイナーだなぁ、自分…と思わず泣きたくなりました。
泣きたくなるくらい少ないです、セドハリ。
セドハリの前は普通にスネハリが好きだったんですけど、知り合いがはまってたので探して読んでみたら、ツボに入りましたっ…!
あと、オリハリも好きなんですけどやっぱりマイナーorz
オリバーはパーシーが多いっぽいですね、ってか、オリバー自体少ねぇ…(セドリックにも言えるけど
(セドリックの画像探したら黒髪が多かったんですけど、原作だと黒髪でしたっけ?それとも、映画でも黒髪…?ちゃんとセド役の写真見付けたんですけど…茶髪でしたよね?間違えて他の人描いたんじゃないかと心配になってきた…)


[つづき]にセド+ハリ小説あり

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身代わり伯爵シリーズにときめきまくり、二次創作を探したのですが、出てこない…
やっぱり、固定CPがあるからでしょうか?
確かに書きにくそうではありますが…私は読みたいんだ~~~~っっ!!!

けど、ないので仕方なく自家発電。
こんなの書く暇あるならアビスとかaph更新しろよって話ですよね(汗
では、[つづきはこちら]から

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