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本能の赴くままに日記や小説を書いています。
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「こんにちは、健二くん」
ドアを開けた先にあったのは、思いもよらない人の笑顔だった。


あの事件から3ヶ月の月日が経過した。
太陽がギラギラと照り付け、蝉の声が鳴り響いていた夏真っ盛りのあの日が嘘のように、外に出れば冷たい風が待っている。
あれほど混乱していたOZも復旧に当たる人々の努力により元通りとなり、今は問題なく運営している。
あの日活躍したカズマくんや夏希先輩は3ヶ月経った今でも注目の的だが、当初ほどではない。
僕はと言うと、OZ内(つまり人の見えるところ)で活躍したわけではなかったから騒がれる事もなく……となればよかったんだけど、カズマくんが黄色いリス=ラブマシーンに最初に乗っ取られたアバターの持ち主だと言っちゃった上に、『あらわし』を逸らして自分たちを助けたと公言しちゃったものだから、一躍有名人となってしまった。
二人はOZ内だけだからまだ良いけど、僕の場合、一度犯人扱いで(目は隠してあったけど)写真を放送されてるわけで…かなり人の目が痛かった。
もちろん、カズマくんは考えなしに公言したわけじゃなくて、OZの大混乱がラブマシーンの仕業だと知っても疑いの目を向けてくる世間から僕を守るために言ったという事を知ってるから、責めるわけにもいかないし、責める気も元々なかった。
夏休み明けが一番人の目が痛かったけど、時が経つにつれ、地味な僕からチャンプに返り咲いて今もOZで活躍中のキングカズマの方へと意識が向いていったため、大分楽になった。
以前よりも派手な活躍をしているから、ちょっと気になって聞いてみたら「お兄さん、自信過剰」って笑われたけど、その後に恐る恐る「…ところで、最近どうなの?」と聞いてきたから、やはり感じた違和感は間違っていなかったみたいだ。
人見知りであまり他人と接しないから、懐かれる(と言ったらカズマくんは否定するかもしれないけど)なんて初めてで、何だかくすぐったい。
因みに、アバターは変なリスのままだ。
元のアバターはイメージが悪いからと陣内家の人たちに反対されてしまったし、僕もそう思ったからだ…だからといって、この不細工なリスも微妙だが。

いろいろあったけど、1ヶ月を過ぎると日常に戻ってきた。
時々、思い出したように佐久間と僕に企業からお誘いがあるくらいで、返事はまだ待ってもらっている。
何たって僕たちはまだ高校生だ。
あの事件が起こるまで、このまま大学に進むんだろうなぁと簡単に考えていたから、企業からの誘いなんて想定外で、ただ、佐久間と二人、もし受けるなら同じところにしようなと笑い合っている。

その日もいつもと変わらない日常で、違ったのはバイトがなかったからそのまま帰宅した事くらい。
けれど、この3ヶ月の間にそんな事は何度もあったし、それといって変わった事ではなかった。
けれど、ここにきて変化が…彼が唐突に訪れた。

ピンポンとチャイムが鳴り、健二は「はーい」と叫びながら玄関に駆けた。
いつも母や佐久間や夏希にまで「健二(くん)は危なっかしいから、家に誰か来たら確認してから出な(さいね)」と耳がたこになるまで言われたというのに、失念していた健二はそのままガチャとドアノブを回した。
「どちらさまで…」
「こんにちは、健二くん」
「へ?」
聞き覚えのある声に顔を上げると、そこにはあの家で知り合った男がいた。
「り、理一さん!?」
「良かった、覚えててくれたんだね」
「…忘れたと思ってたんですか?」
「いや、顔は覚えてるだろうけど、いろいろあったからね、名前は抜けてるかもしれないなって」
沢山話したってわけでもないしね、と苦笑する理一に健二は少しだけ納得した。
あんな事件があった上、親戚が覚えられないほどいたのだ、一番接する事の多かったカズマやラブマシーンを作った侘助ならともかく他の人の名前が抜けてるかもしれないと思っても仕方ないだろう。
尤も、持ち出す許可が普通は出ないような車両を持ち出してきたような人を忘れられるはずもないけれど。
「あ、あの、」
「ん?」
「僕、住所教えてませんよね…?」
「うん、そうだね」
「じゃあ、何で…」
「それは言えないかな」
爽やかな笑顔でさらりとそう言う理一に健二は引き攣り笑いしかできない。
謎の多い人だとは思っていたが、ここまでくると、もはや笑うしかない。
夏希は知らないのでそこから漏れたということはないし、後は佐久間だが、接点は殆どないため除外していいだろう。
念のため、明日にでも確認しておこうと決めた健二はにこにこと微笑んでいる理一を見上げた。
「それで、あの、今日はどうして…」
「たまたま仕事がオフだったから遊びに来たんだ」
「え?わざわざ東京まで?」
驚く健二に理一はくすりと笑う。
「そういえば、帰る日が違ったから知らないのか。僕も東京に住んでるんだ」
「そうなんですか!?」
「うん、市ヶ谷駐屯地勤務」
結構近いでしょ、と楽しげに言う理一にこくんと頷く。
「自衛隊なんて仕事してるとなかなか休みが取れなくてね。せっかくだから健二くんと遊ぼうかなって」
「せっかくの休みなら、疲れてるでしょうしのんびり過ごした方が…」
体力勝負のイメージが強い自衛隊…それが休みだというのなら、家でゆっくり寛いだ方がいいのではないか。
健二はそう思って心配げに言う。
だというのに返ってきた返事は健二の予想とは違っていた。
「そうだね。だから健二くん、僕と一緒にのんびりドライブをしないかい?」
「へ?」
「夕飯奢るよ?」
「ぇ、あ、いや、それよりも…」
「健二くんといると癒されるんだ。だから、ゆっくり休めと言うなら一緒にいてほしいんだけど、駄目かい?」
そこまで言われて断れる健二ではない。
幸いと言って良いのか用事もなく暇だったし、父は相変わらず単身赴任、母は先程忙しいから今日は帰れないと電話があったところだ、外出しても特に問題はない。
相手が信用できない相手だというならともかく、理一の身元ははっきりしているし、警戒する必要もない。
黙り込む健二を見て悲しそうに表情を歪めた理一に、健二は慌ててコクコクと頷いた。
「ありがとう、健二くん。それじゃあ行こうか」
一変して笑顔になった理一に健二はホッとしたが、第三者(例えば侘助)がいれば騙されるな、さっきの悲しそうな顔は演技だぞと忠告したに違いない。
しかし、残念なことにこの場には理一と健二しかおらず、健二は理一の差し出す手を恐る恐る握ったのであった。


(チャンスは自分で作らないとね)



―――――――――
続く…かもしれない。
終わり方が中途半端すぎる…orz

理健好きです、数字コンビ!(理"一"と健"二")

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