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本能の赴くままに日記や小説を書いています。
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放置プレイですみません。
「秘密~」を書いていたはずなのに、他のが先に書きあがっちゃったんで、そっちあげます。
何にも更新がないのわね…

少しリアルが落ち着きました。
先日まで、部活の合宿と定期演奏会。
ポスターとか案内はがきとかプログラムとかアンケートとか作ったりしてましたし…(多いな
それから仕事で納品が先週までの仕事がありまして、創作どころではありませんでした…

ですが、ようやく余裕が出てきたので、少しは執筆スピードが……あがるかな?(ぉい
それでは、返信です。


02/12
>ゆう さま
はじめまして!
拍手ありがとうございますvv
TOAコメが久しぶりで、何だか嬉しいです!
「白騎士~」は続き書きますよ!
あらすじは(脳内でですが)できあがってるので…(一応
ただ、本編無視で「カイルvsアスラン→ルクがやりてぇ…」とか思ってますが(ぉい
とりあえず!
私自身、好きな方の作品ですので、時間がかかっても終わらせる気はありますので、そこはご安心を!

拍手[1回]

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唐突に、自分が子供なのだと悟った。
何かきっかけがあったわけではない…ふと、思ってしまったのだ。
復讐のためと言って尚に執着するのは自分が子供だからではないかと…
それどころか、好きだと思っていたその感情さえも疑った。
誰かといたくて、その相手に幼馴染で共にいる機会の多い尚を選んだだけではないかと。
寂しくて、それが嫌で尚を利用していただけではないかと……
利用、という点では尚と何ら変わらない。

ひとりは寂しい…そう泣いている子供なのだと、キョーコは気付いてしまった。

その瞬間、復讐心も薄れ、“幼馴染”兼“復讐相手”兼“好きだった男”が“ただの幼馴染”に成り下がった…いや、成り上がったのかもしれない。
だって、過去の尚はキョーコにとって寂しさを紛らわせる都合の良い相手でしかなかったのだから。

 

「なんだか最近、様子が変わったね」

ラブミー部の部室でキョーコとお茶を飲んでいた蓮は脈絡もなくそう切り出した。
その言葉にキョーコは一瞬驚き、そして困ったように微笑む。
いつか言われるとわかっていた…蓮は聡いから。
だから、慌てることはなく、こちらの感情の動きを読もうと窺う蓮を見つめた。

「そうですか?」

「あぁ…何て言ったらいいのかな?妙に落ち着き出てきたというか…」

「もしかしたら、復讐をやめたからかもしれませんね」

「あ、そうな……」

あまりにもさらりと言われ、思わず聞き流しそうになった蓮は、そのキョーコのセリフを吟味して、次の瞬間驚きをあらわにした。
あからさまに動揺した蓮に、珍しいモノを見たわ…と思いながらキョーコはお茶をすする。

「そ、それってどういう意味…?」

「そのままの意味ですよ」

「……何でか聞いてもいいかな?…もしかして、よりを戻した、とか?」

険しい表情を浮かべ、キョーコを睨むように見る蓮。
そんな蓮にキョーコはいつものように怯えることもなく、あっさりと否定してみせた。

「よりを戻すなんて…表現間違えてますよ、敦賀さん。戻すも何も、そんなもの最初から存在してませんもの」

「…じゃあ、何で?」

「冷めたんです」

「は?」

「馬鹿らしくなったんです。復讐なんて言葉でアイツとの繋がりを保とうとしていたことが」

その答えに蓮は少し青くなる。
今、目の前にいる少女は、“復讐”が建前だったと、不破尚との繋がりを保つための無自覚の嘘だと認めたのだ。
つまり、それは自分の感情に素直になって、尚を好きだと認めたということなのだろうか…?
蓮は自分の想像にますます青ざめる。

「…敦賀さん?顔色が…」

「あいつが好きなの?」

「はぃ?」

「あいつと付き合うの?」

立ち上がり、机越しにキョーコの肩を掴む蓮。
あまりに力強く掴まれ、痛みを感じたキョーコだが、蓮の不自然な様子に眉を寄せるだけに留める。

「…おっしゃってる意味がわかりません。何故私がアイツと付き合わないといけないんですか?」

「だって、あいつとの繋がりを保つために“復讐”という建前を盾に、あいつを追っていたんだろう?あいつと離れたくなかったんだろう?」

「…まぁ、そうなりますね。でも、根本的な部分が違ったんだって気付いたんです」

「根本的な部分?」

冷静に返され、少し頭が冷えた蓮は、手に込めていた力を緩め、続きを促す。

「自分の寂しさを紛らわせるためにアイツを利用していただけなんだって気付いたんです」

好きだと錯覚するのに都合に良い相手だった。
幼馴染で、尚の家に預けられていたから接する機会も多くて、顔が良くて、『王子様』[理想の相手]に最適だった。
もし、それが尚でなくても、きっと自分は尚と同じように入れ込んだだろう…そう思ったのだとキョーコは語った。

「ひとりは寂しいから…だから、傍にいたアイツを“好き”になることで寂しいという感情を忘れようとしていたんだと、最近になって思ったんです」

「…そう…」

それしか言えなかった。
蓮は幼い頃のキョーコを知っている。
母に認めてもらいたいとテストの答案用紙を握りしめて泣いていた…
クリスマスと一緒に祝われる誕生日を悲しいとも思わず、喜んでいた…
『ショーちゃん』で笑顔になるのに、その『ショーちゃん』自身に慰めてもらおうなんてカケラも考えておらず、一人泣き場所を探して森を彷徨っていた…
あの頃のキョーコの尚に対する恋心が偽りだったとは思えない…けれど、思い返してみると、恋を知った蓮には薄っぺらいものに思えてくる…。
だって、好きなら独占したくなる。
自分だけを見てほしい。
いつも傍にいてほしい…嬉しい時も、悲しい時も。
年齢の問題かもしれない。
まだ幼い恋心はそこまで育っていなかっただけかもしれない。
けれど、キョーコの恋は『王子様』という幻想に恋をしている、夢見る少女に思えてならなかった。

「だから、私も利用しているという点に関してはアイツのことは言えません。それなのに復讐なんておかしいでしょう?だから、もういいやって」

「そうなんだ…」

「あ、でも、貢がされたことには変わりありませんから、そこはきっちり本人に復讐をやめることを含めて伝えました。通帳を見ればいくらアイツに使ったのかわかりますから、マネージャーの祥子さん経由で請求したんです」

仮にも売れてるって言われているアーティストなんだから、このくらい払えるでしょ?
それとも払えないくらい稼ぎないの?って!

笑顔でそう言ったキョーコに蓮の顔が引き攣る。
経済観念がきっちりしているのは良いことだが、なんだか…

「…今、せこいとか思いました?」

「………いや、思ってないよ」

「下手すぎる嘘はやめてください」

「うっ…」

「別に楽がしたくて請求したわけじゃないんですよ?」

勤労学生の自分には、いくらあっても足りないのだとキョーコは言う。
学費に俳優養成所に下宿代…
養成所は分割払いにしてもらってはいるものの、それだけでも出費が痛いというのに、役に合わせて服を買ったり、化粧品を揃えたりと、芸能人ならではの出費もかさむ。
そのうち冗談ではなく、クビが回らなくなるとキョーコは自覚していた。
だから、気持ち的には餞別代わりに水に流そうかとも考えたお金を請求したのだ。
そう説明すると、お金に困ったことのない蓮は、その感覚がわからないのか戸惑うような表情のまま相槌を打った。

「えっと……不破くんにわざわざ請求しないで、俺を頼ってくれていいんだよ?」

「遠慮します。敦賀さんに頼るのとアイツに請求するのでは話が違います。アイツに請求するのは私が働いて稼いだお金です。ですけど、敦賀さんに頼るのはおかしいでしょう?」

敦賀さんに貢がせてアイツのようになれ、とでも?
冷たい表情のキョーコに慌てて蓮は否定する。
復讐心は消えたものの、尚の行いに関して嫌悪が消えたわけではないようだ。

「モー…琴南さんに話したら、それくらいしても罰はあたらないわよと大賛成してくれました」

それどころか慰謝料も絞り取れとまで言う始末。
経済観念がキョーコ以上にきっちりしている琴南らしいセリフである。

「と、ところで、どうしていきなり君曰く利用しているってことに気付いたの?」

下手すぎる話の転換に、キョーコは訝しげに蓮を見る。
いつものさりげなさや強引さはどこに置いてきたのやら…
焦ってるような表情に、キョーコは不思議に思いつつ、素直に話の流れに応じた。

「きっかけはなくて、唐突に…天啓みたいに悟った……気がしてたんですけど、どうやら勘違いみたいです」

「え?」

「琴南さんや敦賀さんと話してみて気付いたんですけど、“ひとり”ではなくなったから気付けたんじゃないのかなって」

そう言ってキョーコはふふっと柔らかい笑みを漏らす。

「心を押しこめても誰も気付かなかったあの頃と違って、些細な変化に気付いて心配してくれる人がいるから…だから気付けたんだと思います」

そう言って微笑んだキョーコに、蓮は目を見開いた後、ふわりと温かく優しげな笑みを浮かべた。
自分に向けられる好意に鈍感なキョーコの変化…
まだ些細な変化かもしれないけど、それども確かに変わりつつある。
愛を拒絶するキョーコにとってこれは良い変化だろう。

「そうだよ…君はひとりじゃない。琴南さんや俺だけじゃない、社さんやマリアちゃんや君を大事にしてくれてる下宿先の夫婦も君の変化に気付いて心配するよ。君が大切だから…」

「…そうだと、嬉しいです」

前向きな返事に更に頬を緩ませる。
そんな蓮の笑顔にキョーコもまた、いつものように逃げ出すことはせず、嬉しそうに笑ったのだった。

 

拍手[96回]



久しぶりな気がするなぁ…と思ったら、1ヶ月近く経ってたんですね…
更新しないとなぁ…こっちも本館も別館も…(汗

一応、書いてはいるんですけど、なかなかラストにたどり着かなくて(泣
めんどくさくなって放置せず、絶対更新するぞ!という意気込みを表明して、自分を追い詰めておこう…
ただいま書いているのは「秘密がばれたとき」の番外編…というか蛇足です。
ポジティブな方向に壊れてる蓮を表現できたらいいなと思っております。

ではでは、拍手返信です。

>遊yuN さま
返事が遅くなってしまい、申し訳ありません。
私も、リンクの申し出とても嬉しかったですvvvvv
こちらこそ、よろしくお願いします!!


追記:
「ひとり」を更新しました。よくわからない話です…(汗
目次にリンクページを追加しました。

拍手[0回]



ren02.jpg










12月に書いてupするのを忘れてた。

拍手[10回]


あけましておめでとうございます。
今年も管理人共々拙宅をよろしくお願いします。

更新…少々お待ちを!
いくつか書いてるんですが、どれも中途半端なとこまでしかいってなくて(泣
書き終わり次第、upするつもりです。

ではでは、拍手返信です。
放置ですみませんでした!!!


>perorin さま
拍手ありがとうございますvvv
斎藤さんいいですよね!!
不器用で苦労性な人が好きなんですよぉ~w
だから、へた/りあも菊ちゃんと√が好きなんですww

「大切な君」【3】は書いてて楽しかったです!
社さんがとても動かしやすくて…それに比べて、蓮はなかなか思うように動いてくれないんですよね。
反抗期か、蓮…(ぇ

すれ違い話は、ギャグっぽくなる予定だったのですが…どこで間違ったorz(←最初から
ナっちゃんが結構好きなので、また出してしまいました!
私の中だと、キョーコちゃんは自分への告白は信じないけど、ナっちゃんはカリスマ女子高生だから「モテて当然」みたいな感じで受け止めるってイメージなんですよね。
でもって、蓮は間が悪そう!ってイメージで(笑


>ぞう さま
はじめまして!
拍手ありがとうございます。
蓮は確かに病んでるの、似合いますよね!(ぇ
病んでる…っていうか、後ろ向き?
ネガティブがデフォ!(ぉい
以降の話では、あまり病んでる感じは出ないと思いますが、ところどころでちょろっと病み蓮が顔を出す感じで書きたいなぁと思っています。
続きも頑張ります!


>遊yuN さま
はじめまして!
以前から日参させていただいておりますvvvv(ここでいうな
もちろん、リンクOKです!
こちらからも、リンクさせていただきますね。
こちらこそ、よろしくお願いします。


>わか さま
拍手ありがとうございます!
セドハリいいですよねwww
かなり少なくて、探してもなくて自分で書いちゃったんですよね(笑
また、機会がありましたら書きたいと思っております♪


>リン さま
拍手ありがとうございます。
思いついて勢いで書いた小説だったので、短くなってしまったんですよ…
続き…時間がある時に考えてみます!
リンさまのも参考にさせていただきますねww
書くとしたらキョーコちゃん視点かなぁ…?

--

切られた通話。
プー プー と空しい音が鳴る携帯電話を私は混乱したまま見下ろした。

「行くって…押しかけるって……」

混乱した頭で敦賀さんの言葉を整理しようとする。
しかし、上手くいくはずもなく、ただわかっているのは敦賀さんがここに来るということだけだった…。

--

冒頭はこんな感じですかね?

拍手[2回]




「…君は残酷で、考えが甘いね」

「ぇ?」

「恋をしてくれないのに受け入れて、傷付いてくれないのに俺にはたくさんの傷を残して…酷い娘[こ]だ。満足?必要ない?そんな日が来るわけがないなんて、君は考えもしなかったんだろうね。別れを告げられようと、手放す気はないのだと君は思いもせずに、その日を待ち続けるつもりだったのかな」

「ま、待って下さいっ。敦賀さんにとって、擬似恋愛に過ぎないんじゃ」

「何でそう思うの?」

「だって、敦賀さんには好きな子がっ…」

その言葉に蓮は目を見開き、そして、恐ろしいほど美しく微笑んだ。
その笑みには温度がなく、作り物のようであった。

「好きな子、ねぇ…どんな噂を聞いてそう思ってるかは知らないけど、君は自分だと少しも考えてくれなかったんだね」

「わ、たし…?」

「そうだよ。ずっと、ずっと君が好きだった。君が欲しくて欲しくてたまらなかった」

憎しみを糧に立ち上がり、芸能界に入ろうとする君を咎めた俺が、君に恋をし、愛を知った。
あいつやあの男が「キョーコ」と君を呼ぶたびに渦巻く嫉妬。
何度、君を閉じ込めてしまおうかと考えたことか…

「だけど、俺は罪人[つみびと]で、大切な人を作ることなんてできない…だから、君を大切に思ってはいけないんだって、何度も自分に言い聞かせた。なのに、君は俺の葛藤に気付かず、たくさんの人を魅了して、無自覚に馬の骨を増やすから…誰かのモノになるくらいなら、俺は誓いを破ろうと決めた。神に背いても、君を手に入れよう…そう覚悟を決めたんだ。だから、受け入れられた時は嬉しかった。恋をしないと言った君が、俺に恋をしてくれたんだって有頂天になって…そして、このざまだ」

因果応報。
多くの人を不幸にした俺に相応しいオチじゃないか…
俺が己の幸福を願う…そんなこと許されるはずがないのに、求めてしまったことが間違えだったんだ。
間違えだった……そうわかってるのに何でこんなにもショックなんだろう…
今更じゃないか。
期待して裏切られるなんて…
あぁ…だけど…だけど、君だけは……

「逃がさないよ」

「え?」

「言っただろう?君を手放す気なんてないって。君に誤解させたのは俺のミスだけど、受け入れるという選択をしたのは君。『ナツ』であろうと、君に変わりない…だろう?」

「あ…」

冷たい笑みを浮かべ、蓮はキョーコに覆い被さる。
そして、いつかのようにすいっと指でキョーコの唇を撫でた。

「怯えないで、最上さん。俺は君を傷付けたりしない」

ただ、ほんの少し触れるだけだから…
そう呟いた蓮は顔を傾け、キョーコと目を合わせた。
そして、そっと顔を近付ける。
迫ってくる蓮の唇に、キョーコは思わず目を瞑った。
それは恐怖からか、恥ずかしさからか、絶望からか、それとも……期待?
あと少しで触れる…その瞬間、蓮はキョーコから離れ、深く息を吐いた。

「冗談だよ」

「え…?」

瞑っていた目を開き、蓮を見上げる。
そこにはいつもの『敦賀蓮』がいた。

「あれ?もしかして期待した?」

「なっ…そ、そんなわけありません!!」

いつものようにからかう蓮に反論するキョーコ。
それと同時にほっと胸を撫で下ろした。

「冗談だよ。さて…もう遅いし、送ってくよ、最上さん」

そう言って蓮はテーブルの上に置いておいた車の鍵を掴み、キョーコに背を向ける。
その瞬間、キョーコは何故か恐ろしくなった。
蓮の背中が自分を拒絶しているようで…
ここで引き留めなければ、手どころか声さえ届かなくなりそうな予感がして…ここで素直にならなければ、二度と心を開いてもらえない気がして…キョーコは思わず蓮の服を握った。

「最上さん?」

「待って…待って下さい」

ぎゅっと外されないように握り込む。
そして、そのまま俯くキョーコに蓮は戸惑う。

「…最上、さん?」

「嬉しかったんです」

「え?」

「悲しくて、嬉しかったんです…。貴方は手の届かないところにいる人で、私が触れて良い人じゃなくて…そんな貴方が私に何かを求めてくれたことが嬉しかったんです。だから、受け入れたんです…例え、私を通して『ナツ』を見ていても、『ナツ』を通して誰かを見ていても……」

「それって…」

「わからないんです…私を見てくれないのが悲しくて、それでも求めてくれるのが嬉しくて、触れられるたびに苦しくなって、離れたら切なくなって、見つめられたらドキドキして…こんな気持ち知らない…」

「それは…」

蓮は目を見開きキョーコを凝視する。
覚えのある感情…それをキョーコも感じていたのだと知って、期待に胸が高まった。

「もし…もし、この複雑な気持ちが恋だとしたら…私は貴方に…」

--恋してる…

そう呟いた瞬間、キョーコは身体ごと振り返った蓮に抱きしめられた。
背中の方を握っていたため、キョーコ自身も抱きついたような形になる。

「つ、敦賀さんっ?!」

「…馬鹿だね、君は」

「ば、馬鹿って…私は真剣にっ」

「馬鹿だよ。せっかく俺から逃げられる最後のチャンスだったのに、ふいにするどころか自分から飛び込んでくるなんて…今更嘘だって言っても、もう逃がしてあげないよ」

そう言って更に抱きしめる力を強める蓮に、キョーコは握っていた手を放してその手を蓮の背中に回した。

「嘘じゃありませんよ。今の正直な気持ちです」

「そう…」

その言葉に蓮は頷くと、ゆっくりキョーコから身体を離し、キョーコの顔を見る。
そこには『ナツ』ではなく、キョーコがいた。
ずっと求めていたキョーコ自身がいた。

「…ねぇ、最上さん」

「はい?」

「好きだよ、君が。最上キョーコが。…君を愛してる」

甘く囁いた蓮は、再びキョーコを抱きしめる。
顔を真っ赤にしたキョーコはじたばたと無駄な抵抗をしていたが、意味がないことを悟ると、蓮の背中に腕を回したのであった。




拍手[101回]



「君が好きだっ」

そう言って抱き締めたその人は、尊敬する先輩。
仕事に対する姿勢や大人な対応に憧れを抱いていた。

私の傷[過去]を知っている、数少ない人…
そして、きっと私以上に辛い過去を背負う孤独な人。

孤独…違う、孤高、ね。
私の手の届かないところにいるはずの人だもの。
私では癒せない傷を負った人だもの。
私が側にいていいような人じゃない…だけど、貴方が…他ならぬ貴方が求めるなら、応えるわ。
例え、本当に求めるモノが私じゃなくても……


玉砕覚悟で告白して、予想外にも受け入れられた蓮は、思わず都合の良い夢を見てるのではないかと疑った。
ラブミー部のキョーコが、曲解もせず告白を受け入れるなんて、考えもしなかった…けれど、頬をつねってみても夢から醒める様子はないし、痛みも感じる。

「夢、じゃない…」

じわじわと湧いてくる喜び。
それと同時に不安も湧いてきた。

「…義理、とかじゃないよな…?」

今時珍しいほど義理堅い娘だ。
世話になっている先輩の告白を断わるなんて…と義理で受け入れた可能性も否定できない。
だいたい、彼女は恋や愛を否定していたはずだ。
その彼女があんなにあっさり受け入れるだろうか…?
普段の彼女なら「嘘です!からかうのも好い加減にして下さい!」とか「いたいけな後輩で遊ぶのはそんなに楽しいですか?」とか「光栄です!私めも敦賀様を信仰しております!!」とか言うはず。
なのに彼女は「嬉しいです。あたしも好きですよ…とても」と言って、抱き締めた俺の背中に手を回した。
その時の俺は嬉しくて他のことは考えられなくて…
だけど今は、何か大きな間違いを犯した気分だ。
何か、見落としているような……

見落としたモノに気付いたのは、彼女と3回目に過ごした時だった。


「ねぇ、最上さん。なんで今日も『ナツ』なの?」

蓮の家で食事を取り、ソファーで二人してくつろいでいた時、彼女のしている化粧が気になって、そう尋ねた。
普段、あまり化粧をしないキョーコ。
しかし、前回もその前も『Box“R”』の撮影後に会ったから気にしなかった。
化粧をするのが好きな彼女のことだ、落とすのが嫌だったのだろう…そう思って…
それに、『ナツ』が取り憑いている時は積極的に触れてくれるし、恥ずかしがって触れることを嫌がったりしないから、仕事の都合上なかなか一緒にいられない俺にとって、貴重な時間の中ずっと彼女に触れていられるのは嬉しかった。
だけど、何か違うような気がしていたのも確かだ。
俺が好きなのは最上さんであって『ナツ』ではない…いや、『ナツ』も最上さんの一部だから勿論好きだけど、一番好きなのは最上さん自身だ。
なのに、付き合うようになってから、仕事以外では『ナツ』にしか会ってない気がする…

「…イヤ、なの?」

「嫌じゃないよ、勿論。ただ、『君』だけじゃなくて、最上さんにも会いたいな、って」

「その必要があるんですか?あたしじゃ不足?」

「そうじゃない。『君』も好きだよ。ただね、素の君にも会いたいんだ。会って、安心したい。ここにいるのは君の意思だと確かめたい」

俺の我が儘。
君の気持ちが見えなくて不安だから…恐くて恐くて仕方ないから。
だから、君に会いたい。
君を抱き締めたい。

「……なんで?」

「え?」

「なんで、ですか?貴方が求めてるのはあたしでしょ?」

そう言って艶っぽく微笑する『君』
この時になってようやく、俺は見落としたモノに気付いた。
いや、きっと見ないふりをしていた。
『彼女』だからこそ、受け入れてくれたのだと知っていたから…

だけど、俺の求める人は『君』じゃない…俺が愛する人は『最上キョーコ』だから…

「…ごめんね。俺が『君』の時に告白したから、そう思ってるんだよね?」

『君』が言い寄られてるのを見て、それが何度も続いて、我慢できなくなった。
君の時は他の人からは隠れている魅力が『ナツ』の時は溢れ出していて…花に集まる蝶のように『君』の周りに邪魔な虫がうようよと群がる…それを見るのが苦痛で仕方なかった。
だから、告白した。
俺にとって、君は君でしかなかったから、どんな君も、最上キョーコでしかなかったから…

「違うんだ。俺は『ナツ』が好きなんじゃない。最上さん…君が好きなんだ。最上キョーコという人間を愛しているんだ」

「え…?」

「見た目で好きだなんて言ったわけじゃない。君だから好きなんだ」

それに外見は普段の君の方が好きだ。
そう言うと、キョーコは『ナツ』ではありえない間抜けな表情を浮かべる。
それを見て、やはり誤解していたのだと確信した。

「あたしじゃなくて、私…?」

「そう。君だよ」

「うっ、嘘!嘘に決まってます!」

「どうして?『ナツ』の時は素直に受け入れてくれたのに」

「だって、『ナツ』はカリスマ女子高生で、モデルみたいな存在感を持っていて…皆、私じゃなくて『ナツ』を求めてた!」

「…皆って、君に告白してきた男共?」

「そうです!『ナツを見て君に一目惚れした』『君はすごく魅力的だ』『モデルみたいだね。君の美しさに魅入られてしまったよ』…全部、全部、『ナツ』への賛辞です!私じゃなくて、みんな変身した『あたし』しか見てない…私自身を求める人なんていなかった…っ」

『ナツ』は私…でも、私じゃないのに…
そう苦しげに呟くキョーコに、蓮は思わず拳を握る。
役者だからこそわかる苦しみ…
蓮で例えるなら、『嘉月』が好きだと告白されるようなものだろう。
蓮はあまりないが、それでもドラマや映画での役のイメージを押し付けられることがある。
その度に、演技を認められる喜びと、役ではない自分を見てもらえない寂しさが付き纏った。
役ごとに外見も性格も変わるキョーコは尚更だろう。
キョーコではなく『ナツ』を求められている…そして、蓮も『ナツ』の時に告白したから、同じだと思われてしまったのだ。

「だから、『ナツ』として付き合ってくれたの?幻想を見る俺に幻滅して、俺で遊ぶつもりだったの?群がってくる男共と変わらない…『君』にとって玩具[暇潰し]でしかなくて、飽きたら捨てるつもりだった?」

「ちがっ…違います!!……確かにショックでした。敦賀さんは違うと思ってたのに、私を見てくれない方たちと同じなんだって…。でも、遊びとかそういうわけじゃなくて、敦賀さんがそう望むなら、構わないと思ったんです。『ナツ』だったら傷付かないから…自分を見てくれなくても、面白ければ満たされるから…。だから、敦賀さんが満足して、もう必要ないからと別れることになっても、『ナツ』の心の傷になることはない。私も傷付かない。だって恋なんてしてないから…」


「…君は残酷で、考えが甘いね」


拍手[43回]



>名無しさん
ご報告ありがとうございます!
目次の「大切な君」【3】、繋ぎ直しておきました。

これからも頑張ります!

>EAST さま
こんばんは!
拍手ありがとうございますvvv
ようやく、お引っ越しが叶いました…
料理上手を知らなかった蓮は、もしキョーコちゃんが料理下手だったらどうするつもりだったんでしょうね(笑
社さんは、最初は時々差し入れ貰う…みたいな形にしようか迷ったんですが、社さんも碌な食生活をしていなかったのを思い出して、一緒に食べてもらうことにしました。
といっても、オフや用事がある時は別でしょうし……まぁ、これからの展開次第ですよね。
続き、どうしよう…(ぉい
書くつもりはあるのですが、いつUPできるか不明です。
プロット作ってから書くんだった…orz

拍手[0回]



書きたい話があってもまとまらなくて、書けない…orz
いきあたりばったりがダメなのは、経験上わかってるのになぁ…

「可能性の話」はタイトルのまんまです。
動きがなさ過ぎて書いててつま(ry
のですが、フォロー話なのでさらーと流し読みして下さい。

「大切な君」【3】 …続いちゃいましたね。
どこまで続きかなぁ…これも行き当たりばったりなので、どこまでいくかわかりません(ぉい
今回は、キョーコちゃんと社さん視点。
蓮視点まで入れると(私が)混乱するのでやめました。


ではでは、拍手返信です。

>perorin さま
拍手ありがとうございます!
落描き楽しいですよねvv
私のファイルの中、落書きだらけですよ…(笑
一番多いのは斎藤さん(薄桜鬼)。
スキビは描いては消してますね…なかなか似なくてorz


他にも、たくさんの拍手ありがとうございます!
どういうのが皆さん好きなのか、傾向がわかって楽しいです(ただし反映するか(ry

只今拍手回数1位は(目次を抜かすと)「秘密がばれたとき」【11】と「ナツ姫とご対面」
根強いですね…

拍手[0回]


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