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本能の赴くままに日記や小説を書いています。
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人通りの少ない廊下を一人の女性がカツカツとヒールを鳴らして歩く。
ピンッと伸びた背筋、バランスの良いスタイル、美しい歩行、そしてその美貌。
その女性を見た人物がいたならば、彼女のことをモデルだと思うだろう。
しかし、実際はまだ新人のタレントで、最初のCMでは地味だと評価された少女。
不破尚のPVでヒトとは思えない美しさを見せ付けたがCGで修正されていると思われ、その天使が評価されて得た役『未緒』は事務所の力だと思われている不憫な少女である。
だが、今の彼女を見れば、人々は今までの評価を覆すに違いない。
今の彼女は地味という言葉から程遠く、人を魅力する蝶であり、そして毒を持つ蜘蛛なのだから。


「社さん」

落ち着いた声に呼ばれて、社はキョロキョロと辺りを見回す。
その声が待ち合わせをしている少女の声に似ていたから、少し期待しながら。
しかし、そこにいたのは見知らぬ女性。
それも特上の美女だ。
どこかで見たことがある気もしたが、どうせ蓮の仕事相手のモデルか何かだろうと結論付けた。

「えーっと、何かな?」

「何かな、って酷いですね。あたしを呼んだの、社さんなのに」

「え?!も、もしかして、キョーコちゃん!?」

言われてみれば、髪色はキョーコと同じものだし、顔も化粧でわかりにくいものの、キョーコのものだ。
モデル立ちも蓮の家で見せてもらったものだし、"お姉さん"系の服は事務所から借りると聞いていたので着ていても不思議ではない。
それに、彼女がキョーコである証拠が胸元で輝いている。

「ふふっ、正解です。カリスマ女子高生に見えます?」

「見える、見える!それより、ごめんね?気付かなくって…」

「いいですよ。現場でも、『誰あんた』って反応されましたし。わからない方が面白いですから」

そう言って、くすくすっと笑うキョーコは本当に別人みたいで社は混乱する。
蓮が女性のモデルウォークを教えてから大分経つが、実際に『ナツ』に会ったのはこれが初めて。
蓮直伝のモデルウォークに、手作りには見えない『プリンセス・ローザ』を使ったアクセサリー、そして"お姉さん"系の服。
そんな格好をしたら、まるで自分たちが知ってるキョーコじゃないみたいだと蓮に漏らしたことのあった社だが、今それを直に見て実感していた。

「はい。お弁当です。敦賀先輩に渡しておいて下さい。社さんの分もありますから」

「(せ、先輩?!)あ、ありがと、キョーコちゃん!…あのさ、蓮の奴、もうそろそろ来るはずだし、待ってなよ。一緒に食べよーよ」

「一緒にですか?」

「うん、そう!あいつ、最近またあまり食べてなくてさ。キョーコちゃんが一緒に監視してくれると助かるなーって」

どうせ、この後は『Dark Moon』で同じ現場なのだ、誘っても問題ないだろうと判断して社はそう言う。
するとキョーコは、少し眉を寄せ考え込んだ後、にっこりと艶のある笑みを浮かべる。
その笑みにドキッとした社だったが、『闇の国の蓮さん』を想像して青くなり、見惚れた自分を叱咤した。

「敦賀先輩と一緒にいて、渋々食事をする敦賀先輩を見たり、周りの反応を楽しむのも面白そうですけど、私これからカオリたちと食事なんで」

「(楽しむ?面白そう?キョーコちゃん、どうしちゃったの~~~?!)そそそそっか、なら仕方ないね」

普段のキョーコから掛け離れた言動に目を回す社だが、一緒に食事をできない理由を聞いて、それなら仕方ないと諦める。
『BOX"R"』の台詞合わせの時、前日の余韻に浸っていたせいで大遅刻をしたあげく、怒られることもなく、その日のうちに共演者たちに謝罪することも叶わなかったと落ち込んでいたため、現場でうまくいってるか心配だったが、その心配は無用のものだったようだ。
キョーコが今出演している『BOX"R"』は高校を舞台とするドラマであるため、出演者の殆どはキョーコと同年代だ。
尚のせいで友達ができなかったと言っていたキョーコにはちょうどいいだろう。

「じゃあ、また後で」

「あ…(せ、せめて蓮が来るまでっ)」


「俺には挨拶ないの?」


その声に社は「間に合ったぁ~」とホッとする。
キョーコに会えたか会えないかだけで、その日のモチベーションが違う蓮。
会えた方が断然モチベーションが上がるため、仕事をスムーズに熟してもらうためにも助かる。
更に本音を言えば、自分だけ会えたのに蓮は会えなかったという状況が怖い…

「こんにちは、敦賀先輩」

キョーコはといえば、普段なら恐縮して深くお辞儀をしながら挨拶するのに、今回は蓮を見ながらにっこりと微笑んで挨拶をした。
その違いに、また役が憑いてるんだな…と察し、同じようににっこり笑う。

「こんにちは、最上さん……いや、『ナツ』」

「ふふっ…敦賀先輩はすぐわかったんですね。あたしが誰かって。あ…社さんがいたからか」

「それもあるけどね。社さんがいなくても、俺が君に気付かないことはないよ」

「お上手ですね。あたしじゃなかったら、気があるのかもって勘違いしちゃいますよ?」

「勘違いしてもいいよ?」

「遠慮しまぁす」

くすくすっと笑いながら、キョーコは右手で髪を掻き上げる。
口説いてるようにしか見えない蓮にはらはらしている社をよそに、蓮はキョーコの仕種にすっと目を細めた。

「右手、治ったみたいだね」

「何のことですか?」

よくわからないといった表情をするキョーコ。
返事に間が空くこともなかったため、普通の人なら騙されていただろう。
しかし、蓮には通用しない。

「この前、右手を痛めてたよね?」

「そんなことないですよ。先輩の勘違いじゃないですか?」

「俺を騙せると思ってるの?上手く隠してたから皆気付かなかったようだけど、右手を庇いながら演技してたよね、この前」

「そうでした?」

「ごまかさない。…君は人一倍プロ意識が高い役者だ。それに、運動神経も並外れている。その君が不注意で怪我を負うような真似はしないはずだ…誰にやられたの?」

「買い被りすぎですよ~。あたしが誰かにやられて黙ってるように見えます?」

「怪我したことはもう否定しないんだね」

「あら、一本取られたわ」

普段のキョーコなら「敦賀様を謀るような真似をして、誠に申し訳ありませぇぇん!」と泣いて謝っただろうが、今は『ナツ』が憑いているため、悪びれもなくごまかそうとした事をあっさり認めた。
そのやり取りを聞いていた社は「ぇえ?!」驚き、キョーコに詰め寄る。

「怪我してたってホントなの、キョーコちゃん!」

「ちょっと捻っただけですよ」

ケラケラと笑いながら、もう平気なのだと右手をぱたぱたさせるキョーコに少しホッとする社。
蓮が「治ったんだね」と言っていたから、それほど重傷ではなかったのだろうと見当はついていたが、それでも心配は心配なのだ。
なんせ、キョーコは「骨は折れても治るもの」という精神の持ち主である。
痛みをおして演技テストに臨んだ過去を知っている身としては、怪我に関してはキョーコを信用できないのだ。

「本当?」

「ホントですよ~。もう!敦賀先輩のせいで社さんにまで心配かけちゃったじゃないですかぁ~」

「隠そうとするからだよ。君が正直に答えてくれていれば、ここまで心配はかけなかったと思うよ?」

「先輩が言わなきゃ良かったんですよぉ」

「そうはいかないな…で、いったい誰なんだい?」

「言ったら手出ししそうだから、だぁめ。あの子、あたしのなんで」

それに決着つきましたし、とにこっと笑って牽制するキョーコの笑顔を見て、社は蓮の笑顔を連想する。
有無を言わせない笑顔はそっくりだ。
もしかしたら、少しだけ蓮を参考にして『ナツ』を作ってるのかもしれない…

「あの子ってことは女の子なんだ。歳も近いみたいだね」

「んー、そうですよー」

「ってことは『BOX"R"』の共演者かな?」

「せーかぁい!」

流石は敦賀先輩!と言うキョーコに蓮はにっこり笑う。

「誰なのかは教えてくれないの?秘密にするよ?」

「敦賀先輩もあたしと秘・メ・ゴ・トしたいんですか?」

流し目で蓮を見つめ、人差し指を唇に当てて、うっすらと笑みを浮かべるキョーコに蓮は笑顔を保ったまま内心では動揺し、社は顔を真っ赤にする。

「(キョーコちゃぁぁあんっ!エロいっ!エロいよっっ)」

叫びたいのを我慢して、心の中だけで絶叫する社。
地味で色気がないとまではいかないが、普段はどちらかというと清楚で健康的な色気を持っているキョーコ。
しかし、今のキョーコは妖艶で、どこか毒のある艶と常にない色香を漂わせている。
今のキョーコを見て「色気がない」なんて言う輩がいたら見てみたいくらいだ。

「…秘めゴトという響き、とても惹かれるね。是非お願いしたいな」

「う~ん…だけど、光先輩と二人だけのヒミツですからね…」

「『光先輩』?」

「あれ?知らないんですか?」

「うん。LMEの人?」

「そうですよ。LMEのタレントです」

ちょうど現場に居合わせちゃって…とキョーコは笑うが、そのことよりも名前呼びであることが気になった。

「ふぅ~ん…その人、助けてくれなかったの?」

「受け止めようとしてくれたんですけど、体勢を立て直そうとして方向転換しちゃったんで」

先輩をクッションにせずに済みました。
そう笑うキョーコに蓮は内心青筋を立てる。
それは、助けられなかったくせに親しげな様子の『光先輩』に対してと、その場に居合わせることができなかった自分、そしてその『光先輩』という男と二人だったと思われる無防備なキョーコに対してだ。
嫉妬と、不甲斐ない自分に対する憤りと、心配と苛立ちからくる怒りに燃える蓮に気付いた社はガタブルと震え上がる。
そんな蓮の様子に、蓮の機嫌に敏感なキョーコが気付かぬはずはないのに、キョーコは面白いものを見つけたとばかり目を輝かせ、楽しげに微笑む。

「どうしたんですか、敦賀先輩?」

「……いや、ね。『光先輩』とは秘めゴトできるのに、俺とはできないのかと思うとショックでね。君とは結構親密だと思っていたからね…」

「ふふっ、親密と思っていただけているなんてすごく光栄です」

「なら、教えてくれる?」

ずいっと顔を近付け、にっこり微笑む。
いつもならその笑顔に青くなるキョーコだが、負けじと麗しい笑みを浮かべ、見定めるように蓮を見つめた。

「どうしようかしら?」

「教えてくれたら、退屈凌ぎになるような面白いこと探してあげるよ?」

「あら、素敵。貴方なら期待を裏切らなさそうだし…」

蓮の提案にキョーコは惹かれたのか迷うような発言をする。
あと一歩かな、と更に興味を惹くような言葉を言おうとした時、遠くから軽い足音がいくつか聞こえ、若い女性の声がした。

「ナツー!まだなの~?あんたが一緒に食べようって言い出したんでしょー?」

「あ、今行くわー!」

キョーコは後ろを向いてそう返事を返すと、蓮と向き直り、くすりと笑った。

「残念。タイムオーバーです」

ちょんっと人差し指で蓮の唇を突き、離れるキョーコ。
蓮はその行動に驚き、無表情になって「そのようだね」と返した。

「それでは、また後ほど」

ちゃんと食べて下さいね、と言って去っていくキョーコを今度は引き止めるようなことはせず、黙って見送る蓮と社。
モデルばりの歩行で去っていくキョーコの後ろ姿が見えなくなり、きゃいきゃいと騒ぐ女性たちの声が聞こえなくなってから、蓮ははぁ~~~~~~と長い長い溜息を吐いた。

「れ、蓮、大丈夫か?」

「社さん…」

「しっかし、すごかったなぁ、キョーコちゃんの『ナツ』。『未緒』もすごいと思ったけど、憑き方や役の印象は『ナツ』も負けてないよ!」

「だから言ったでしょう。彼女は走り出したら早いって。まぁ、俺もあんな『ナツ』が出てくるとは思っていませんでしたけどね」

「うんうん、だよなー。『未緒』は誇り高きお嬢様って感じだったけど、『ナツ』は今時の女子高生でまさにリーダー的存在って感じだし、同じイジメ役でも全然違うからびっくりしたよ」

ヒロインを虐めるという立場も、役の年齢だって同じ女子高生なのだからあまり変わらないはずなのに、印象は全く違う。
条件は殆ど同じという中でバリエーションを付け、演じ分けるのは難しいはずだ。
にも関わらず、ここまで違う役を作り上げたキョーコには感嘆するしかない。

「さっきの仕種もすっごく色っぽかったし、あれがオンエアされたら反響すごいだろうなぁー」

「……………社さん」

「な、なんだ?(地雷踏んだか?!)」

「彼女の秘メゴトの相手の…『光先輩』でしたっけ?誰だかわかります?」

「(あ、そっちか…)同じ事務所のタレントで『光』って名前だろ?それなら多分『ブリッジロック』の石橋光くんじゃないかな?」

「石橋、光ですか…」

その名前を呟いた途端、蓮からぶわっと闇色のオーラが噴出する。
そのことに慌てた社は「蓮!」と叫んで、何やら考え込んでいる蓮の注意を自分に向けた。

「あのな、『ブリッジロック』は3人で形成されてるグループなんだけど、3人とも石橋姓なんだ。だから、キョーコちゃんが名前呼びなのは他意はないと思うぞ!」

「そう、なんですか…」

物騒な雰囲気を収めた蓮にホッとする社。
かと思いきや……

「……だが、気に食わないな…」

と再び不機嫌になる蓮。

「社さん」

「はっ、はぃぃぃいい!!」

「怪我の方は決着をつけたそうですし構いませんので、石橋光くんというタレントと彼女の関係…調べてくれますよね?」

「もももももちろん!」

その返事を聞いて多少浮上し、「では、行きましょうか?」と促す蓮とは対照的に、社はやつれたような顔をしてその後に続くのであった。




―――――――――――――――――――
久しぶりにスキビ更新。
でも、7月中旬まで忙しくなりそうなので更新速度は遅いままになりそうです。

拍手[107回]

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久々に浮上できたので、久々にネタ語り。
TOAネタ語りはホントすっごく久しぶりです。

今回のネタは「アシュ+ルク双子(でもルクの身体はレプリカ)」です。
なんじゃそりゃ、って感じですよね。
寝る前にネタ神がご降臨されたのですよ、何故か今はまってる薄桜鬼(ぇ)でもスキビでもなくTOAで!
あ、薄桜鬼は斉千と土千と山(崎)千が好きです。
何故、山崎ルートがないんだ!!(ゲームやってないくせに何言ってるんだ…
ネタもあるにはあるんですよ?
前世:土千 → 現世(転生):斉千(記憶あり)+土(記憶なし)で!
あ、すみません、脱線しました。
今回はTOAですよね!

アシュルク(not CP)は先程も述べたとおり双子として生まれてきます。
そのことに困惑する両親+インゴベルト。
預言にはルーク(聖なる焔の光)のことしか詠まれてなかったうえ、王家で双生児は忌子だからです(勝手に設定)。
預言に読まれてないのだからどちらか殺そう…とインゴベルトは言うのですが、クリムゾンも人の子…自分の子供は可愛いですから、「どちらが本当の“ルーク”かわかりませんから、とりあえずわかるまで両方生かしましょう」と提案。
因みに、この時はまだアクゼリュスの預言は知りません。
その預言を知るのはルークたちが9歳になった時です。
さて、クリムゾンの機転で両方生き延びることができましたが、本来存在すべき“ルーク”は一人。
なので、ルークたちには己らが双子なのだということは伝えず、離して育てます。
公爵邸は広いですから、それくらい可能ですよね。
食事も勉強させる内容も一緒。
味覚が同じなのか好みも一緒、勉強も両方できます。
ただ、教師はアッシュ(ルークと書くと混乱するため、ここではアッシュと書きます)の方をべた褒め。
アッシュに問題をやらせると模範解答が返ってくるからです。
でも、クリムゾンとしてはルークの方が気になります。
ルークの解答は正解ではあるものの、別解のようなもので、教師は難色を示しますが、クリムゾンから見れば応用が効く政治家向きタイプに見えたからです。
しかしながら、7歳くらいに体術も習い始めて、ルークの方は体力がないことが判明。
調べてみると、持病があり、身体が弱かったのです。
なので、体力はアッシュ>ルーク。
剣術はアッシュ≧ルークです。
アッシュは体力も力もあるので正統派剣士ですが、ルークは体力面に問題があるため技術特化で剣を磨きました。
なので、持久戦にさえならなければ、ルークも十分戦えます。
でもって、譜術はアッシュ<ルーク。
素質は同等ですが、技術特化のルークはコントロールに長けているため、短い詠唱で音素を集めて譜術を発動させることが可能なのです。
戦士としては総合してみるとアッシュ≦ルークって感じですね。
でも、やっぱり持病のせいで“ルーク”から外されて、アッシュが“ルーク”になります。
そこで表向きはルークは殺されてしまいますが、クリムゾンがこっそり影武者を用意して、本当のルークはそのまま保護することになりました。
双子なのにアッシュに比べてルークの方が筋肉のつきが薄いため、これなら1つ下の弟でもいけると判断したからです。
預言に詠まれてないから殺されてしまうと考えて公表しなかった弟としてルークの居場所を確保したクリムゾンはシュザンヌにもそのことを話し、いつか“ルーク”が王になる時、ルークには公爵家を継いでもらおうと考えます。
その際、“ルーク”になれなかったルークはもう一人の“ルーク”の存在を教え、新しい名前を与えます。
そうだな…“ルカ”(仮)で!(ありきたり
ルークは“ルーク”の存在を聞いて最初ショックを受けて、自分はもういらないと捨てられるのでは…とびくびくしていましたが、新たに名前を与えられたことで、「ここにいてもいいんだ…」と希望を持ちます。
しかし、9歳になった時、悩んでるクリムゾンに遭遇し、どうしたのかと聞いてみたところアクゼリュスの預言のことを知らされます。
その預言を聞いて、自分が“ルーク”から外されたのは体力面に問題があったからだと自覚しているルークは「“ルーク”の存在はキムラスカに必要です。王族の血筋は何故か子に恵まれず、国王の一人娘のナタリア王女は“証”を持っていない…キムラスカが“ルーク”を失うわけにはいきません。ですから、おれ…私が…」と申し出ます。
最近になって始められた超振動の実験で、アッシュもルークも超振動を使えることが発覚したため、そのことに関しては問題ありません。
そのことを知っているクリムゾンは悩みながらも施政者としてルークに任せる、と決断します。
因みにシュザンヌは本編で知らなそうだったので、ここでも知りません。
その分、優しくしようと決めてルークに甘くなります(でもクリムゾンの性格から考えると本当に多少/笑)
その代わり、アッシュの方に厳しくなってしまい(ルークを犠牲にして王になるのだから、立派な王になってほしいという親心)、アッシュは自分が愛されてないのではないかと疑心暗鬼。
そんな感じで1年過ごしたある日、アッシュはヴァンの甘言に騙されてダアトについていきます。
混乱するファブレ家。
因みに文武共に教師は別です。
双子だと知られるわけにはいきませんからね、違う教師をつけていました。
なので、ヴァンはルークの存在を知りません。
そんなヴァンがその数週間後、コーラル城で発見した『ルーク』を連れてファブレに来ます。
マルクトの仕業のはずなのに、何故コーラル城? そこはファブレの所有する城なのに…と皆疑問に思いますが、ヴァンは無駄に口が回るので、上手くごまかします。
帰ってきた『ルーク』はもちろんアッシュのレプリカ。
記憶がない、目は虚ろ、歩くこともしゃべることもできない…
そんな状態で帰ってきた『ルーク』に両親ともにショックを受けますが、この『ルーク』ならアクゼリュスに行かせても…という考えがクリムゾンの頭によぎります。
真っ白な『ルーク』よりも、アッシュと同じ教育を受けてきて、政治面ではアッシュより上だと思っているルークを取るのはある意味当たり前です。
なので、情が移らないように…とクリムゾンは『ルーク』から距離を取ります。
しかし、ちょうどその頃、ルークの身体に異変が起こります。
乖離です。
アシュルクは双子なので、音素数も一緒…つまり同位体です。
なので、ルークと『ルーク』の間に大爆発が起こります。
確か、大爆発って一週間くらいのうちに起るんですよね?(チーグル実験)
で、その間に起らなければあまり問題がない、と。
そんなことを知るどころか『ルーク』がレプリカであることも知らないルークとクリムゾンは慌てますが、結局一週間後、ルークは服を残して消えてしまいました。
愕然とするクリムゾン。
しかし、一方、ルークは『ルーク』の中にいました。
そして、『ルーク』の記憶を見て、この身体は人でないこと、ヴァンが犯人であること…自我が芽生える前に『ルーク』を自分が殺してしまったことを知ります。
ルークはいろいろとショックを受けたものの、作られたばかりで力の入らない身体を酷使して、夜にこっそりクリムゾンの部屋に忍び込みます。
何もできない『ルーク』が動いてるのを見て、不審に思われないようにです。
クリムゾンはいきなり現れたルークに驚きますが、いろいろとショックな出来事が続き、冷たい目で「何の用だ」ルークを追い返そうとします。
初めて見る父の冷たい態度にルークは動揺しますが、それでも何とか自分は“ルカ”であること、この身体は自分の音素が溶け込んだ“ルーク”のレプリカであること、“ルーク”を誘拐したのはヴァンであることを話します。
ルークの乖離を間近で見ていたクリムゾンは最初は信じられなかったものの、ルークと自分しか知らない乖離のことから話したため、最終的には信じます。
そこで、裏を取るためにファブレの私兵(ぶっちゃけ白光騎士団暗部)をダアトに差し向け、間者としてもぐりこませます。
ですが、まだ『ルーク』を帰したばかりだし、『ルーク』を連れ帰った自分が疑われることも考慮していたヴァンはアッシュに「今見つかれば再び国の道具として飼われることになる」と言ってアッシュの身を隠し、自分は普段通りに過ごします。
しかし、数年後、もう平気だろうとアッシュをオラクルの一員として外に出します。
髪くらい染めさせるか、仮面くらい付けさせろよ!と思いますが、ここは原作通りそのままの姿です。
なので、間者としてもぐりこんでいた暗部からファブレに連絡がいきます。
“ルーク”が別にいると裏が取れたため、クリムゾンはルークに王としての教育をすることを決めました。
ルークの体力面の問題はアッシュのレプリカになったことで解消されたためと、どんな理由があるにせよ(誘拐されたにしろ、自分でついてったにしろ)、キムラスカではない国の兵になったアッシュにキムラスカを任せるわけにはいかないと判断したからです。
そして、導師と接触した際に聞いた秘預言の続きを知ったためです。
なので、最初の予定を変更してルークを王、アッシュを公爵とすることにしました。
秘預言についてはインゴベルトにも伝え、そちらでも裏を取らせ、本当だということを確認しました。
そのことにより、キムラスカは預言離れを決め、ダアトに不信感を持つようになります。
しかし、気付いていることを気付かせないために寄付という名の賄賂は続けます。
そして、更に数年後。
ティアと疑似振動を起こし、本編通りストーリーが進んでいきます。
ただし、ルークは決して世間知らずのお坊ちゃんではないのですが、偏見を持っているティアやジェイドたちは基本的に自分が正しいと思っているので、本編通りです。
常識外れな愚者に囲まれて心身ともに追いつめられるルーク。
一人になった時の口癖は「早く帰りたい」「家ってサイコー」でした。
ついでに、セントビナーとカイツールで鳩を飛ばして連絡を入れているため、キムラスカは怒り狂っています。
それこそ、何故かキムラスカに居座っているモースに気取られないようにマルクトに抗議するくらいは。
ダアトにはアクゼリュスの件が済み次第、都合良く居座っているモースごと断罪するつもりです。
抗議どころの問題じゃないですからね。
マルクトにもこっそり秘預言を伝えて、協力してアクゼリュスの瘴気について調べ、セフィロトに続く扉を見つけて、イオン(被験者)に協力を仰いで開けさせた結果、アクゼリュスはもう持たないことが判明したため、パッセージリングを破壊して他と切り離すことが2国間で決定しています。
なので、今回の和平は表面上だけのもの。
アクゼリュスの件が済んだら協同でダアト(上層部?)制裁に走ります。
そのためにも、キムラスカは預言に盲目に見せるために同行者たちの罪を見逃すふりをします。
戻ってきたらがっつり制裁。
そんなこんなでアクゼリュス。
ついでに犯罪者の処刑も兼ねてしまおう!ということで、両国の犯罪者が集められているため、人はいっぱいいます。
なので、そんなアクゼリュスを(ヴァンに騙されたふりをして)落としたルークはもちろん責められますが、これは自分の意志ではなく2国の意志だと知っているため動揺しません。
そんなことより、同行者たちのせいで逃がしてしまったヴァンの動向の方が気になってます。
そしえ、ユリアシティ。
のこのこ現れたアッシュに罵倒されるものの、それを一蹴したルークは一言。

「よくも国の期待を裏切ってくれたな、自国民殺しの“ルーク・フォン・ファブレ”」

カイツールで軍港を襲ったアッシュの王位継承権はもちろん、戸籍すら抹消。
弟の“ルカ・フォン・ファブレ”が王になると決まっていたとはいえ、ファブレを継ぐことになるはずだった“ルーク”を失うのはキムラスカとしても痛手…けれど、自国民を殺したアッシュに王族である資格どころかキムラスカ国民である資格なし、と判断。



って感じです。
あとは仲間+アッシュ断罪、なので割合。

拍手[15回]



放置プレイですみません、生きてます。
少し余裕ができたので浮上してきました。
と言っても、やるべきことの5つ中4つが終わって、あと1つ面倒なのが終わってないので、6月中の更新頻度は低いままだと思います…(汗

えっと…
勝手に蓮キョ素敵小説サイトさん「悠悠閑閑」をリンクに追加しました。
えへへ……すみません!


ではでは、お返事です。


6/4・6/9
>瑞穂さま
拍手ありがとうございます!!
返事が遅くなってしまい、申し訳ありません(汗

>秘められた過去【派生話】
キョーコちゃんは確かに優しいけど、蓮はキョーコちゃんを美化しすぎる傾向があると思いながら書いたのがこの話です。
蓮は自分の過去が最低だと自覚してるからこそ、キョーコちゃんには綺麗なままでいてほしいと願ってしまうんですよね。
実はキョーコちゃんより蓮の方がキョーコを神格化してるんじゃないかなぁ…と時々思います。
お互いがお互いを美化してるから、両方ともある程度その位置から引きずり落とさないとこの二人は本当の恋愛をできない気がします。
タイムリミットを告げたのは多分社さんですよ!(笑
「蓮~、時間だぞ~?」
って探しに来て、キョーコちゃん抱きしめてる蓮見つけて驚いた後、にっま~と笑って「あと10分くらいなら待ってやるからなぁ~」と気を利かせてそこから立ち去るんでしょうね、社さん。
絶対その後からかわれますね、蓮(笑

>お返事
それはショックですよね(爆笑

「あ、あの、敦賀さん!」

「ん?」

「こ、コレ…貰ってくれませんか…?」

「え?なになに、キョーコちゃん。蓮にプレゼント?」

「えっと………ハイ」

「っ…////」

「あの、家に帰ってから一人で見てくださいね?」

「キョーコちゃんが恥ずかしいから?」

「は、い…」

 

「よかったなぁ~、るぇ~ん」

「…何ですか、社さん。その目は…」

「だって、気になるんだよー。お前、誕生日プレゼントの中身も結局教えてくれなかったし、今回くらいいいだろ?」

「ダメです。最上さんが一人で見ろって言ってたじゃないですか。俺に約束を破れと?」

「ばれなきゃいいじゃん!」

「ダメです!」

「ケチー」

 

「…何なんだろ…(バースデープレゼントの時と同じ条件だと考えると期待しても…)」

カサッ

「…………なんで、白髪染め……(泣」


って感じですかね?
可哀相だなぁ、蓮…
次の日沈んでる蓮を見て、社が「キョーコちゃんからプレゼントもらったのに何で落ち込んでるんだ?」って疑問符浮かべそうです。


 

拍手[0回]



うふふふ…リアルが忙しいです。
ピークは来週末…
それまでにいろいろとやらなければならないことがあるんですよねぇ~…遊び足りない!!!

スキビ読みたいよ、スキビ。
早く新刊出てほしいよ、待ち遠しいよ。


ではでは、拍手返信です。


6/1
>perorin さま
こんばんは。
拍手ありがとうございますw
お気遣いありがとうございます!
大丈夫ですよ。
プレッシャーといったら、本館の方の終わってない連載の数々の方が凄まじいですから(ぉい
むしろ、こうしてご感想をいただけて、とても嬉しいです!!
最近はリアルの方で結構忙しくて、執筆スピードが格段に落ちていますが、頑張って時間を作りたいと思います(笑
それでは。
ご丁寧にどうもありがとうございました!!

拍手[0回]



瑞穂さまへのお返事から派生

 

「………アンタか」

「君は、軽井沢の時の……」

「そう睨むなよ。約束通り、現れなかっただろ?」

「去年のうちは、だろ?」

「なんだ、キョーコから聞いているのか」

「(キョーコ呼び…)不破が暴走したのは君のせいらしいね」

「まぁ、勘違いさせるようなことはしたからな。だが、半分はアンタのせいだと思うけど?」

「俺?」

「不破はアンタのこと敵視してるみたいだし、俺のことが誤解だって解けても馬鹿な行動を取ったんだとしたら、他の原因はアンタしかいないだろ」

「俺が原因、ね…(まさか、不破の前で最上さんが俺を意識してるような発言をしたとか…いやいや、相手はあの子だぞ!同じ部屋で暮らしても平気なくらい俺を男と意識してない子だぞ。そんなはずは…)」

「あ、そうそう。考え事をしてるとこ悪いけど、俺時間だから」

「…そうか(だけど、不破にあんな行動を取らせたってことは、そういう発言をしたとしか思えないよな…。不破の奴、最上さんに…した後、俺を見て嘲笑ってたし)」

「じゃあな。あ、それと、お前の過去キョーコに話しといたから」

「そうか………って、はっ?!」

 


という感じで、レイノから話を聞いた蓮がキョーコちゃんのとこに行くところから始まります。
では、[ つづきはこちら ]どうぞ

拍手[56回]


やっぱり更新できませんでした…orz
執筆する時間がなかなかとれなくて…
次、暇になるの…7月?(ぇ
まぁ、電車の中でぽちぽち打つことにします。

ではでは、拍手返信です。


5/27
>perorin さま
はじめまして!
拍手ありがとうございますww
楽しんでいただけたようで幸いです。
まだ、作品数はそれほど多くないですが、これから頑張って増やしていきたいです!
新作の「大切な君」はなんとなく続きの構想はできているんですが、あまりくっつきそうにないんですよねぇ、脳内ストーリーだと(ぇ
キョーコちゃんはもう蓮のことを「コーン」だと知ってますから、その印象が抜けない…から?
まぁ、書いてみないことにはわかりませんけどね。
蓮が可哀相なところで終わってるので、続きを書いて、なるべくハッピーな状態にしてあげたいなぁとは思っています(笑
体調管理には気をつけます! …代マネのときの蓮みたいに風邪引かないようにね(笑


5/28
>瑞穂 さま
拍手ありがとうございます!
続きは蓮が情けなくなりそうな予感…(笑
でも、きっと蓮キョは成立しますよ…きっと!
蓮を救うことができるのはキョーコちゃんだけですよね!!
キョーコちゃんだけが蓮の心を揺さぶって、蓮からクオンを引き出すことができますからv
「大切な君」はショーをどうやって絡ませるかが悩みどころです。

拍手[2回]



もう、ストック皆無です…
今回の更新作品は蓮が可哀相なことになっています…
続き書いて、救うべき?
でも、オチが見えないんですよねぇ…

ではでは、返信です!

5/27
>瑞穂 さま
いつもありがとうございますwww
レイノと蓮の会話が気に入っていただけたようで幸いです!
あの後、蓮は慌ててレイノを追いかけるでしょうが、我に返るのが遅かったので、見つからないと思います(笑
で、結局、キョーコちゃんに恐る恐る聞きそう…

昨日みたいに会話文にしてみたら、1作品になりそうな長さになったので、書きあげて後日UPしますね(苦笑


 

拍手[1回]




黒い箱の中にコーンがいた。
正確には、テレビの画面に成長したコーンが映っていた。
何かのドラマの会見らしい…「原作は漫画で…」とコーンの隣に座っている男の人が話していた。
だけど、そんな言葉は右から左に流れていって、私にはコーンだけしか見えてなかった。
コーン。
優しい綺麗な妖精さん。
何故、貴方が人間界[こんなところ]にいるの?
妖精界に帰るから、二度と会えないって言ってたんじゃないの?
ねぇ、コーン……

『―――主演はこちらにいる、敦賀蓮くんが…』

え?
今、コーンのこと、よりにもよってショーちゃんが大嫌いな顔だけ俳優『敦賀蓮』って言った?
コーンが『敦賀さん』って呼ばれて、返事をする。
どういうこと?
コーンじゃないの?
…ううん、どう見たってコーンよね。
『敦賀蓮』は髪はウイッグ、目はカラーコンタクトだって説明してるけど、髪はともかく目はごまかせない。
だって、ショーちゃんもカラコン入れて目を青くしてるけど、そんな自然な色にならないもの。
コーンと同じ、宝石のような碧眼じゃないもの。

ねぇ、コーン。
貴方はいったい何者なの……?

 

夜遅く。
共演者のNGが続き、予定より遅くなってしまった帰宅時間。
あまり睡眠は取れないな…と思いながら、社さんを送った後、自分の家に向かって車を走らせていた。
ようやく着く…と思った時、マンションの近くの歩道に座り込んでいる小さい影を見つけ、驚いて車を止めた。
大きさ的に男性が酔っぱらって…ということはなさそうだ。
子供か、女性。
こんな時間になんでこんなところに…と不審に思って車を降りると、その人物の傍に寄った。
近くによると黒髪の高校生くらいの女の子だとわかり、眉を寄せる。

「…お嬢さん。こんな時間にこんな場所にいると危ないよ?」

世の中、親切な人ばかりではない。
見つけたのが俺だったから良かったものの、危ない男が少女を見つけていたらと思うとぞっとする。
何が起こったとしても俺には関係ないことだけど、事前に防げる事を放置できるほど俺は鬼畜じゃない。
声をかけると少女ははっと顔を上げ、驚きに満ちた表情でまじまじと俺を見た。

「敦賀、蓮……」

少女は飾り気のない格好で、今時の子にしては珍しく化粧もしてなかった。
少し地味な印象を受けるけど、整った顔をしているから、もう少し大人になったら誰もが振り返る美女になるかもしれない。
そんな印象の少女は嫌悪と好意が入り混じった複雑な表情を浮かべて俺を見ていた。
好意だけならまだわかる…一応これでも人気のある俳優だし、ファンもありがたいことに結構いるから。
だから、この少女がそのうちの一人でもなんら不思議はないし、ファンじゃなくても外見には恵まれてるから、好意を向けられやすい。
けれど、何故嫌悪まで?
その嫌悪は俺[敦賀蓮]に向けて?それとも……

「…家出かい?でも、こんな時間にふらついてたら襲われても文句は言えないよ?」

「………貴方に、会いに来たんです」

「俺に?」

やっぱりファンの子だったのか?
家の前で待ち伏せされるのは初めてじゃない。
芸能界にいればプライバシーなんてあってないようなものだ。
だから、不思議じゃないけど…この子は、今までのファンとは違う気がする。

「…俺に会いたいって思ってくれるのは嬉しいけどね、年頃の女性が一人でこんな時間にこんな場所にいたら危ないだろう?送ってあげるから、今日のところは帰りなさい」

「時間は取らせません。ただ、確認したくて………それだけです」

「確認?」

はて。
確認したいこととは何だろうか?
初対面の少女に確認されることなんてないと思うんだけど…

「貴方は…貴方は、コーン?」

「え………?」

懐かしい響きに、俺は言葉を失った。
俺のことを『コーン』と呼ぶのは、たった一人。
俺の英語訛りの発音のせいで『クオン』を『コーン』と聞き間違えた、メルヘン思考な女の子だけ。

「キョーコ、ちゃん…?」

まさかそんなわけないだろうと思いながら、無意識のうちに思い出の少女の名を呼んだ。
だって、あの子は京都に住んでて、王子様の『ショーちゃん』と幸せになってるはず…
こんなところにいるわけがない…
そう思ったのに、少女は「やっぱりコーンなのね!」と微笑んだ。

「ホントに、キョーコちゃん?」

「そうよ!久しぶり、コーン。……妖精じゃ、なかったのね」

その言葉に、少女―キョーコちゃんが今だ俺のことを妖精だと思い込んでいたことを知る。
夢を壊してしまったことを申し訳なく思いながら、何故俺[敦賀蓮]が俺[クオン・ヒズリ]だとわかったのか不思議に思った。

「うん…ごめんね。ところでキョーコちゃんは何で敦賀蓮が俺だってわかったの?」

「あのね、テレビで見たの…すぐにコーンだってわかったわ」

テレビ…と言われて、先日行ったドラマの会見を思い出す。
原作が漫画だというそのドラマの主役を演じることになったのだが、問題はその主人公の外見が金髪碧眼だったことだった。
日本人で、髪を染めてカラコンをしている人は芸能界では珍しくないけど、俺はダメなんだ。
それは俺の本当の色だから…だから、俺は断ろうと思ったんだ。
だけど、社長に「外見が外国人でも、日本人だと思わせる演技をしろ」って言われて、演技力で外見をカバーすることになったんだ。
俺[久遠]だとばれたらどうするんだ…とひやひやしたけど、あちらでの俺[クオン]の知名度は低かったから、俺[敦賀蓮]を見て俺[クオン]と繋げる人はいなかった。
それでいいはずなのに、ぽっかりと心に穴が空いた気がしていた…
なのに…
キョーコちゃんだけは俺[クオン]に気付いてくれた。
一緒に遊んだのは、たった数日間だけなのに。
俺[敦賀蓮]が俺[クオン・ヒズリ]だとばれたらダメなのに、まだ自分への誓いを果たしていないのに、本当は焦るべきなのに…どうしてこんなに心が温かくなるんだろう…?

「そう、なんだ…それで会いに来てくれたの?」

「うん。何で貴方が『敦賀蓮』なのかわからなかったけど、コーンに会わなきゃって思って」

「…そうなんだ」

この子にとって俺は『敦賀蓮』じゃなくて『コーン』
そして、『コーン』には好意を抱いてくれているけど、『敦賀蓮』の名前を口にした時、一瞬感じたのは…嫌悪?
キョーコちゃんは『敦賀蓮』が嫌いなのか?
過去を持ちこまないと決めた俺は今『敦賀蓮』でしかいられないのに…
今度は胸が締め付けられるように痛い。
さっきまで、すごく温かい気持ちでいられたのに…。

「私ね、コーンにずっとお礼が言いたかったの!」

「お礼?」

「コーンは私の辛い気持ちを聞いてくれて、泣き場所になってくれたでしょ?それに、涙が減るようにって魔法の石をくれたし!」

「俺がしたくてしたことだから、お礼なんて必要ないんだよ、キョーコちゃん。それに…ごめんね、魔法の石なんて本当は嘘なんだ…」

「うん。コーンは人間だったもんね」

少し悲しそうにそう言うキョーコちゃんに、何で俺は妖精じゃないんだろう…なんて馬鹿なことを思った。
妖精だったら、この子にこんな顔をさせなかったのに。

「だけどね、コーン。この石は魔法の石なの。私の悲しみを吸い取って、私を元気にしてくれたのよ!」

「本当…?」

「本当よ。この石はコーンに貰ったあの瞬間から私の宝物だったの!」

そう言ってキョーコちゃんが小さな財布を開けて、俺があげたアイオライトを取り出して見せる。
10年も前にあげたものなのに、欠けた様子もないその石を見て、大事にしてくれてるんだ…と嬉しくなった。
あの思い出が宝物なのは、俺だけじゃないんだ…

「そうか」

「うん。それとね…」

「うん?」

「コーンのこと思い出すたびに、後悔してたの」

「え?」

後悔してたって…俺に会ったことを?
それとも、俺の前で泣いたことを?

「…なに、を?」

「私が話を聞いてもらったように、コーンの話も聞けばよかったって」

「え…?」

「コーン、よく辛そうな顔をしてたでしょ?なのに、私は自分のことばっかりで、コーンが耐えてる横でボロボロ泣いて、慰めてもらって…だから、私も話を聞いてあげればよかったのにってずっと後悔してたの。話すだけで悲しみが薄らいで、心が軽くなるって、私はコーンに話を聞いてもらって知ってたのに、私は甘えてばっかりで…」

ぎゅっとアイオライトをサイフ越しに握って俯くキョーコちゃん。
ずっと、俺のことに気かけてくれていたんだと思うと自分の中の闇が薄らいだ気がした。
見向きされなかった俺[クオン]をずっと見つめていてくれた女の子。
この子の中が『ショーちゃん』でいっぱいでも、俺[クオン]の居場所も確保されていたんだと思うと嬉しい…
演技でいっぱいな俺の中に、ずっとキョーコちゃんがいたように、キョーコちゃんの中にも俺がいた。
そんな些細なことで何でこんなに幸せになれるんだろう…?

「そんなことないよ、キョーコちゃん。だって君は、『飛べない』と言った俺のために泣いてくれただろう?それだけで俺の心は軽くなったんだ…」

「本当…?」

「うん、ホント。だから、そんなに後悔しなくてもよかったんだ」

おずおずと顔を上げるキョーコちゃんに笑いかける。
すると、何故か彼女は驚いたように目を見張った。

「キョーコちゃん?」

「…ホントに貴方がコーンなのね……」

「え?どういう意味?」

「だって、笑顔が違ったんだもの…」

「笑顔?」

どういう意味だ?
彼女が何を言いたいのかわからなくて首を傾げる。

「…私ね。貴方がコーンだってすぐにわかったの」

「うん。それはさっき聞いたけど…」

「だけど…コーンはもう『コーン』じゃなくて、『敦賀蓮』になっちゃったんだって思ってた」

「俺が、『敦賀蓮』に?」

本当にどういう意味なんだろう?
俺が敦賀蓮だってことは見ればわかるだろうし、彼女だって最初に確認してるはずだ。

「……だって、笑顔が違う」

「笑顔…?さっきも同じことを言っていたね。どういう意味?」

「『敦賀蓮』が浮かべる笑顔って綺麗なの…作りものみたいに…」

その言葉にはっとする。
キョーコちゃんは今まで誰も気付いていなかったことに気付いたのだ…俺が心から笑ってないことに。
俺が普段浮かべる笑顔が偽物だって…

「コーンの笑顔はね、すっごく綺麗なの!作りものじゃなくて自然な笑顔で、心が温かくなるの……だけど、『敦賀蓮』の笑顔はいつでも同じで心が籠ってなくて、嫌…」

「だから、『敦賀蓮』のことが嫌いなの?」

「え?」

「キョーコちゃんは素直だからね。『コーン』は好きだけど『敦賀蓮』は嫌いってずっと目が言ってたよ?」

「うっ……」

否定しないキョーコちゃんに思わず苦笑する。
本当に昔と変わらず素直な子だ。
よくこんなに純粋に育ったな…としみじみ思った。

「だって…」

「だって?」

「…『敦賀蓮』が『コーン』を消しちゃったんだって思ったら……」

…本当にこの子は俺を見ている。
たった数日間、しかも昼間だけしか会っていなかったのに。
俺[敦賀蓮]とはテレビ越しにしか見たことがないはずなのに。
彼女は、俺[過去]と俺[今]が違う人間だと察している。
本当に違う人間ではないけど、今の俺は『敦賀蓮』として親も祖国も自分[クオン]も持ち込まないと決めて、ここに立っているから。
そして…俺[敦賀蓮]が過去[クオン]を消し去りたいことを感覚的な部分で見透かしてる…
彼女に自覚はないだろうけど、「『コーン』じゃなくて『敦賀蓮』になっちゃった」「『敦賀蓮』が『コーン』を消しちゃった」と言ったあたり、本能的に気付いてるんだ…
今まで、社長にしか気付かれなかったのに…

「…『コーン』は消えてないよ。隠れてるだけなんだ」

「そうみたいね。だけど、何で?貴方は今でもコーン[自然]な笑顔を浮かべられるのに、何でいつも仮面みたいな笑顔を浮かべてるの?」

鋭い…鋭すぎる…
年の割に聡い子だと思っていたけど、本当に察しが良い…。
だって、『敦賀蓮』は俺が作り上げた者。
いつでも紳士である彼[敦賀蓮]は、作られた存在だから、浮かべる笑顔も偽物[仮面]でしかない。
俺[クオン]を曝け出せない俺[敦賀蓮]に自然な笑みを浮かべることなんて不可能なんだ…

「…どうしてだろうね?」

あまりつっこまれたくなくて、キョーコちゃんが指摘した作った笑み[仮面]を浮かべると、キョーコちゃんは嫌そうな顔をした。
…そんな顔されると傷つくんだけど…
わかっていた反応とは言え、少々ショックを受けてしまった俺だが、察しの良い彼女は触れられたくないのだと察してくれて、再び問うようなことはしなかった。

「ところでキョーコちゃん。こんな時間にここに来たのは、俺がコーンだと確認するためなんだよね?なら、もうそろそろ…」

「あ!そうだったわ!」

帰った方がいい、と言おうとして遮られる。
他に目的があったのかと彼女を見つめると、彼女は小さなサイフから俺のあげたアイオライトを取り出す。
そして、「はい」と俺に差し出した。

「え?」

「今日はね、『敦賀蓮』がコーンだったらこれを返そうと思って、そのために来たの」

「なん、で?本当の魔法の石じゃないけど、君にとっては魔法の石だったんだろ?コーンが俺だって知っちゃったから『魔法』の効力がなくなっちゃって、もう必要なくなったってこと?」

「ううん、違うの。ショーちゃんがね、『敦賀蓮』のことが嫌いなの」

「『ショーちゃん』?」

例の、彼女の王子様か。

「うん。だからね、コーンと決別しに来たの…。だって、コーンは『敦賀蓮』だから」

「っ?!」

「ショーちゃんはコーンが貴方[敦賀蓮]だってことどころか、コーンに会ってたことも知らないけど、ショーちゃんが嫌いに思ってる人を私が大切に思ってたら嬉しくないと思うの。私も、裏切ってるみたいで心苦しいし…。だからね、コーンと決別しようって思って…だけど、石を持ってたら、ずっとコーンのことを大切なままでいそうだから…」

「だから、返すね」と言って、彼女は俺の掌にアイオライトを乗せた。
そして、呆然としている俺から離れると、走って距離を空ける。
そして、一度振り返ると、泣き出しそうな顔を笑顔に変えて、手を大きく振った。

「ばいばい、コーン!貴方と会えてよかった!!」

そう言い残して、去っていくキョーコちゃん。
悲しくても、自分を奮い立てて笑顔になっていた昔の彼女を思い出して、本当に変わってないなと思うと共に、俺との思い出を置いて行った彼女を酷いと思った。
俺は過去[クオン]を捨てても、キョーコちゃんとの思い出だけは捨てきれなかったのに…
なのに、彼女は『ショーちゃん』のためなら、ずっと大切にしていてくれた思い出を捨てられるんだ…。

「ははっ……」

嗤うしか、ない。
アメリカでは、クオンは切り捨てられ、見下され、軽蔑された。
だから…クオン・ヒズリじゃダメだから、敦賀蓮になったのに。
彼女には、敦賀蓮だから…切り捨てられた。

「痛いよ、キョーコちゃん…」

傷ついた顔をしていた俺[クオン]が気になっていたと言っていた彼女。
そんなに気になっていたなら、今ここに戻ってきて、俺に笑顔を見せてよ…
嘘だって言って?
そしたら俺は、自然[クオン]な笑顔を浮かべられるから…だから、そう言ってよ、キョーコちゃん。
痛いんだ…とっても、とっても……

「どうしてっ…どうして、こんなに胸が痛いんだっっ」

押しつけられたアイオライトを握って、座り込んだ。
ギリギリと胸が締め付けられる。
クビにされた時さえ、敗北感は覚えても、こんなに苦しくなったことなんてなかったのに…
キョーコちゃんは思い出の大切な女の子でしかないはずなのに、何でこんなに痛いんだろう…?
再起をかけて日本にきて、そのためにたくさんのものを捨ててきたのに…『キョーコちゃん』を手放すのは、その時以上に辛いよ…
彼女にそんな選択をさせた『ショーちゃん』が憎い…
ずっと、彼女を独り占めしてきたくせに…
俺の居場所まで取るなよ。
どうして俺[敦賀蓮]に嫌いなんて感情を抱いたんだ…無関心でいてくれれば、コーン[クオン]ごと俺を捨てるなんてことはしなかったのに!

「お願いだ…俺との絆を捨てないで……」

俺[敦賀蓮]の中にクオンを見つけてくれたのは君だけなのに…
君まで俺から目を放さないで…――

空に輝く星を見上げ、願う。

「俺を、見て……キョーコちゃん」

 


――――――――――――――――――――――――――――――――――――
なんか、すっごく痛々しい…
おかしいな…こんなラストじゃなくて、もっと軽い感じになるはずだったのに…
そして、やっぱり自覚のない蓮。
こんなに苦しんでるのに、キョーコちゃんと決別されるのが辛いのは、好きだから…という発想は出てこない。
そこが蓮クオリティ!(ぉい

 

拍手[44回]



うふふ…流石にもう毎日更新もどきは無理そうです。
ネタは一応あるんですけど、執筆する時間がない…orz
最近急がしすぎるんですよ。
6月中旬くらいになれば、少しはマシになるかも…
とりあえず、できる限り更新は続けていきたいと思います。
 

ではでは、拍手返信です!

5/25・5/26
>瑞穂 さま
拍手ありがとうございます!
>お返事
キョーコちゃんの鈍感さは筋がね入りですからね。
蓮の想いが届くのを願うしかないですね…(笑
きっと、キョーコちゃんが自分に自信が持てるようになれば、信じてくれるはず!
まぁ…30代くらい?
ハリウッドからオファーがあったりすれば、きっと自信が持てるはず!!
それか、母親と和解(?)して、トラウマが解消されれば、自然と自信が持てるようになって、蓮の気持ちも届きますよ。
>「秘められた過去」
レイノはもっと本誌でからんでくれてもいいと思います(ぉい
あれはいい馬の骨ですよ。
『コーン』を浄化してあげようとするあたり、根っからの悪人じゃなさそうですし、自分の気持ちに素直なところとか好きです。
皆もっと素直になればいいのに…ってじれったくなりますもん(笑
キョーコちゃんは多分、この話だと本人に聞きに行くことはしないと思います。
レイノに、自分が知ったら蓮がショックを受けると聞いていますし、信じはしてなくても、可能性があるなら…と。
その場合、レイノから蓮に話が行きそうですけどね。

「………アンタか」

「君は、軽井沢の時の……」

「そう睨むなよ。約束通り、現れなかっただろ?」

「去年のうちは、だろ?」

「なんだ、キョーコから聞いているのか」

「(キョーコ呼び…)不破が暴走したのは君のせいらしいね」

「まぁ、勘違いさせるようなことはしたからな。だが、半分はアンタのせいだと思うけど?」

「俺?」

「不破はアンタのこと敵視してるみたいだし、俺のことが誤解だって解けても馬鹿な行動を取ったんだとしたら、他の原因はアンタしかいないだろ」

「俺が原因、ね…(まさか、不破の前で最上さんが俺を意識してるような発言をしたとか…いやいや、相手はあの子だぞ!同じ部屋で暮らしても平気なくらい俺を男と意識してない子だぞ。そんなはずは…)」

「あ、そうそう。考え事をしてるとこ悪いけど、俺時間だから」

「…そうか(だけど、不破にあんな行動を取らせたってことは、そういう発言をしたとしか思えないよな…。不破の奴、最上さんに…した後、俺を見て嘲笑ってたし)」

「じゃあな。あ、それと、お前の過去キョーコに話しといたから」

「そうか………って、はっ?!」

って感じでさらっと告げそうなイメージがあります(ギャグ風味に


 

拍手[1回]



「ったく、ふざけんなよ…俺の作る作品はアートだぞ?それなのに、オーディションに受かった奴でもなければ役者でもモデルでもない社員を採用するなんて…」

そうぶつくさ言うのはCMを撮らせるならこの人!と言われている黒崎潮。
体調管理できない奴はプロ失格!という方針は変わらず、自己管理のなっていない人間に対しては厳しいことで有名である。
自分の作る世界に自信を持っており、CMに採用する人間の選出も自分で行っているのだが、今回は勝手が違ったのだ。
新しい香水のCMの仕事が舞い込み、いざ採用する人間を決めよう、という段階で、先方から「こちらで用意する」と言われてしまったのだ。
今は結構社員たち自身がCMに出て宣伝するという会社も珍しくはないのだが、黒崎としては素人に自分の作る世界を壊され台なしにされなくないので一度は却下した。
それなら自分は降りるとまで言ったのだ。
しかし、先方は引き下がらず、気にいらなかった場合は変えて良い、損失分はこちらで負担すると食い下がったため、仕方なしに先方が用意する社員で撮影することとなったのだ。
もちろん黒崎は、その社員が使い物にならなかったら即効クビを切るつもりである。

「監督!お見えになりました!」

「おっ!時間より早いじゃねぇか。感心、感心。で?もちろんそいつは怪我とかしてねぇだろうな?」

「はい。と、言うか…」

例の社員が到着したことを伝えに来たスタッフは言いづらそうに…というより、信じられないといった感じで口篭った。
入口の方にいるスタッフたちがざわざわと普段とは違った感じでざわめく。
黒崎が「なんだぁ?」と眉を寄せていると、衣装を着替えたらしい例の社員が黒崎のところまでやってきた。

「お?アンタが…………」

そちらを向いた黒崎がぽかんと間抜け面を曝す。
その反応に苦笑して、その人物は挨拶をした。

「お久しぶりです、黒崎監督。この度、CMに出させていただくことになった最上キョーコです」

そう言って綺麗なお辞儀を見せたのは、約1年ほど前に家業を継ぐという理由で引退した元人気タレント『京子』である。
引退してからは殆どメディアに顔を出さなかった人物の登場に、黒崎は唖然とするしかなかった。

「えっと、監督…?」

「…京子、だよな?」

「はい。ご無沙汰しています。この度はこちらの者が我が儘を言ってしまってすみませんでした。私としても、引退した身でテレビに出るのは…と断ったんですけど」

驚かせたことを申し訳なさそうにしながらキョーコは言う。
我に返った黒崎は、30代になってますます磨かれた美貌を見つめながら、詰めてた息を吐いた。

「驚かせやがって…まぁ、お前なら俺の作品壊すようなことはないだろうし、安心だけどな」

「買い被りすぎですよ!この業界から離れて1年も経つんですよ?」

「1年くらいなら平気だろ。それに旦那の読み合わせに付き合ったりしてるんだろ?この前、インタビューで答えてたぜ?『妻のキョーコと読み合わせすると楽しいのですが、実際の撮影の時物足りなくなりますね』ってな。もっぱら半分くらいはお前に関する質問だったな…『京子さんは芸能界に復帰する予定はないのですか?』とか」

にやにやしながら言う黒崎にキョーコは苦笑する。
久遠が出ている雑誌は基本的に目を通しているため、自分に関する質問が多いことは知っていた。
引退してから既に1年が経つにも関わらず、今だ久遠経由で監督たちからラブコールが絶えない。
けれど、引退と共に引き継いだ会社の運営に忙しく、復帰どころではないのが現状だ。
キョーコ自身、演技に未練はあるものの、演技力No.1と名高い久遠との読み合わせである程度満足してしまうため、あまり真剣に復帰のことを考えたことはなかった。

「復帰の予定は今のところないですよ。今回のことは例外というか…新作の香水のイメージに私が合うって言われたのと、CMに起用する人材分のコストを抑えるためにやってほしい言われのと、社内アンケートでその意見がほぼ満場一致だったので仕方なく…」

「ほー。まぁ、確かに今回の香水はお前さんが1番イメージに合うかもしれないな。けど、いいのか?CM出たらまた騒がしくなるぞ?」

「私もそう言ったんですけど、自社のCMに社長を出して何が悪いって反論されまして…中には出ないなら仕事をボイコットすると言い張る社員も出てきたので…」

はぁ…と疲れたように溜息を吐くキョーコに黒崎は同情した後、会話の中で気になる単語を発見し、首を傾げた。

「社長って…確か、先方は……」

「あ、申し遅れました。『最上グループ』の代表取締役をやってます」

はい、と手渡された名刺を反射的に受け取る黒崎。
まじまじと名刺を眺めた黒崎は「はぁ?!」と奇声を上げた。

「お前が継いだのって『最上グループ』だったのか?!『最上グループ』つったら大企業じゃねーか!最近代替わりしたって話は聞いたが…多くの企業の業績が低迷してる中、珍しく上場してる企業で、就職したい企業No.1のとこだろ、確か?」

「詳しいですね…。まぁ、何とか黒字経営ですから、そういう評価をいただいてますけど」

「へー…しっかし、今までよくばれなかったな?機密扱いだったとしても、取引先までは口止めできねぇだろ?」

「『化ける役者』を嘗めないで下さいよ。現役は退きましたけど、化粧で化けることに変わりないんですから」

『化ける役者』とは、タレント『京子』の化けっぷりにローリィが面白半分で付けた通り名である。
その名の通り、役ごとに外見も中身も別人のように化けることから付けられ、他にも『七色変化タレント』だの『魔女』(こちらは役に成り切るのではなく、役として生きる京子を妬んだ女優が「あそこまで変わるのはあの女が魔女だからよ!」という暴言からきている)だのと言われていた。
イジメ役から純粋少女役、妖艶な女性役、果てには少年役まで熟す京子は日本の芸能界で1、2を争う役者となり、『敦賀蓮』に続いて3人目のハリウッドスターになるのではと期待されていた役者である。
そのため、引退する時は、そのニュースを聞いた業界人は役者も監督もプロデューサもこぞって反対し、それを振り切ったという経緯があったりする。

「成る程ねぇ…けど、今回のことでばれんじゃね?」

「不本意ですけどね。私に地位を譲った母は元から私のネームバリューを利用するつもりだったらしいんですけど、元芸能人だからって甘く見られたくありませんし、そんなものに頼るなんてたかが知れてるなんて思われるのも嫌じゃないですか!幸い、業績を上げることを条件に母は納得してくれましたし、社員も私のことを知るのは社員だけの特権だって賛成してくれたんですけどね…」

「大変だなぁ。因みに旦那はCMに出ることは知ってんのか?」

「はい。『ますます綺麗になったキョーコを世間の目に曝すなんて…』とか戯れ事を言ってました」

「戯れ事って、ひでぇなー。確かに綺麗になってんぞ。ついでに色気も増したな…愛されてんだなぁ…」

「はい、まぁ…////」

照れて頬を染めるキョーコ。
その少女のような初々しさに、こいつホントに31か?と黒崎は思わず年齢を疑ってしまった。

「あのゴシップ1つなかった芸能界一イイ男を虜にしたのも頷けるな…けど、愛されすぎて寝不足になったりしそうだな」

「下世話は結構です!!」

それに、私も久遠も忙しいから…ごにょごにょ、と言葉を濁したキョーコに、相変わらず素直だなぁと黒崎は笑った。
確かに、干されたわけでもないのにハリウッドから戻ってきた俳優とトップ企業の社長に仲良くする暇は滅多にないだろう。
どちらも疲れて体力が残ってないだろうし、会話して一緒に食事する暇さえないかもしれない。
そんな状況だとしたら破局しないのが奇跡だな…と思ったが、読み合わせに付き合ったりする時間は確保しているようだし、以外とやることやってるのかもしれないと考え直す。
まぁ、この様子だと、第一子を授かるのにも時間がまだまだかかりそうだが。

「はいはい。しっかし、社長とはなー。家業っつーから、てっきりどこぞの家元とか人形師とか料亭とかだと思ってたぜ。因みに最優良候補だったのは老舗旅館な。着物の着こなし方とか捌き方とか、ただ者じゃねぇって噂だったからな」

「あ、ははは…」

芸能界に入ってなければ尚の実家である老舗旅館の女将をやっていただろうから、黒崎の予想はあながち間違いではない。
あのまま京都にいれば、きっと母の冴菜がキョーコに関心を抱くことはなく、そのまま捨て置かれただろうから…

「あの~~……」

「ぁあ?」

黒崎とキョーコが話しているところに、恐る恐る話し掛けてきたスタッフに黒崎はガンつけるように見る。
もちろん本人にそのつもりはないが、睨むような目で見られたスタッフは真っ青になりながら言葉を続けた。

「も、もうそろそろ時間が…」

「あ?もうこんな時間か。まぁ、大丈夫だろ。素人だと思ってたから長めに取っておいたが、京子だからな」

「ちょっ、プレッシャーかけないで下さいよ~!」

「おいおい、天下のクオン・ヒズリと対等に演り合う奴がこの程度で緊張するわけねぇだろーが。しかも、今は会社の命運を握ってる立場の人間だろ?なら、尚更じゃねぇか」

「うっ…まぁ、そうですけど」

「だろ?さぁて、スタッフも待ち兼ねてるようだし、そろそろいくぞ、京子!」

「はい!」

「おい!去年のCM女王『京子』の久々の作品だ!気ぃ抜くなよ!!」

そう現場に発破をかけた黒崎は、監督の顔に戻って定位置についた。
絵コンテ通りの、しかし想像以上の世界を作り出す京子に「期待を裏切らない奴だ」と満足げに呟くと、カットして「お疲れさん」とキョーコを送り出し、これをどう編集したら京子の作り出した世界を壊さずに済むか計算するのであった。



「最上社長」

「あら?追加の書類?」

「いえ。今年度の入社希望の統計結果がでましたので、その報告に」

「もうそんな時期?」

「はい。統計の結果、起用人数を遥かに上回る入社希望数となりました」

「去年もそうだったじゃない」

「去年のおよそ3倍です」

「はぁ?!」

CM効果。
その数字から導き出される答えはそれしかない。
引退したはずの『京子』がCMに出たことによって話題になった香水は瞬く間に売れ、生産が追い付かないほどである。
そんな効果を出したキョーコを自分の会社のCMにも起用したい…そう考えるのは普通だろう。
また、何故「家業を継ぐ」と言って引退した『京子』が『最上グループ』のCMに出ることになったのか…人々が不思議に思うのも当然。
疑問に思えば調べようと思うのは必然。
京子の本名を調べ、検索にかければ人々が思うよりあっさりと答えは出た。
情報開示が義務付けられている現在、大企業の代表取締役に就任した『最上キョーコ』の名前を見つけるのは難しくないのである。
今まで気付かれなかったことの方がおかしいと思うくらいあっさり出た答えに、誰もが驚き、マスコミは飛び付いた。
『デキる女社長は元タレント"京子"!』
そんな感じの特集をいくつも組まれ、キョーコが『最上グループ』の社長だということは世間に知れ渡った。
因みに、キョーコのことが知られなかったのはローリィがネット上に上げていた『京子』の本名を伏せたことと、『京子』のイメージによるものである。
『京子』はいろんな面で秀でていたが、特に茶道や華道のことに詳しかったので、誰もが『家業』をそちら方面だと考え、ネットで調べても出てくるわけがないと他の選択肢を捨てていたのだ。
そんなわけで、『京子』が『最上グループ』の社長だと知ると、たださえ『最上グループ』が上場会社というだけでも入社希望者が多い方だったというのに、更に『京子』ファンまで増えたため、例年以上の希望数となったのだ。
中には、今の仕事をやめてでも…という人もいたり、『最上グループ』が無理ならその傘下企業で!という人も絶えないらしい。

「それから、先日訪問した取引先についてですが…」

「何かトラブルでもあったの?」

「先日は我が社が提示した条件を渋ったにも関わらず、手の平を返すように好条件であちらから提示してきました…『京子』のプライベート写真サイン付きを条件に」

「『京子』のネームバリューで取引をするのは嫌だけど、それだけで済むなら安いものよね。それで?」

「はい。『調子に乗るな、エロ親父!そんなに写真が欲しいならクオン・ヒズリに直談判(殺され)に行け!』と言って丁重にお断りしました」

「は?全く丁重じゃないし!…貴方、最近久遠に似てきたんじゃない?ってか、もしかして久遠に買収されてる?!」

「あはは、そんなに褒めないで下さいよ」

「褒めてないわよ!ってか、買収されてることは否定しないわけ?!」

「買収…されてませんよ、うん。ただ、『キョーコを身売りするような真似してみてごらん。ただでは済まないからね』と脅されて、代わりに『京子』のデビュー当時の写真を1枚だけいただいただけですよ?」

あはは…とにこやかに笑いながら、そう言う秘書。
母の下についてた時はすっごく真面目な人だったのに…とキョーコは頭を抱えた。
どう考えても久遠の影響である。
キョーコの周りにいる男にわざわざ牽制をかけにきた久遠は、特にキョーコと接触する機会の多い秘書の彼とよく接触し、いろいろと刷り込んだらしい。
心身に負担になっているわけではなさそうだし、仕事に影響がなかったため放っておいたが、そのツケがきた……

「思いきり買収されてるじゃない…」

「そうですか?あ、ご心配なさらず。先日の取引には影響ありませんから」

「………」

あんな暴言を吐いておいて、それでも仕事に影響を及ぼしていない秘書の優秀さに素直に感心できない。
そして、「やっぱり久遠に似てきた…」と夫の影響力に呆れたのだった。





―――――――――――――――――――
蓮、出てきてないのに存在感はある気がする…流石、蓮(ぉい

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