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本能の赴くままに日記や小説を書いています。
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たまたま社長が持っていた書類を見て、私はあの子だと気付いた。
髪の色も目の色も違ったけど、顔立ちにあの頃の面影があったし、アメリカのドラマを勉強のために見た時にそのドラマに子役で出ていたから。
そして、小さく「クオン」と呟いたことで確信を得た。

「社長!その子のこと、私に任せてもらえませんか?」

迷いはなかった。



「蓮。今日はお前の世話をしてくれる奴を連れてきた」

会うなりそう言い放ったボスに俺は驚いた。
こちらに来て、まだそれほど経っていないから、しばらくはボスが世話を見ると先日言ったばかりだったからだ。
俺に手を差し延べたのはボスなのに、無責任にも放り出すのか、と思わず目が鋭くなる。
そんな俺にボスは溜息を吐いた。

「そう睨むな。俺も迷ったんだ。けどな、どうしてもと言われてなぁ…」

「……どういう意味ですか?」

「たまたまお前の書類を見られてな。黒髪のやつだったが、お前が子役で出ていたドラマを見たことがあるらしい。『その子、クオン・ヒズリですよね?』って当てられちまった」

「っ?!」

ボスの言葉に息を呑む。
役者生命をかけて、自分のことを誰も知らない日本に来たというのに、ここでも知られてしまった。
やはり、俺の居場所なんてどこにもないのだろうか…

「安心しろ。彼女はお前と周平を同一視していない」

「え………」

「ドラマでお前の演技を見て、気になったから覚えていたんだと。お前の可能性のために自分に預けてほしい…彼女はそう言ったんだ」

「俺の、可能性…?」

「そうだ。親が周平だからじゃない。彼女には肩書も七光りも効かないからな」

演技に関してはすごく厳しいぞ、と笑うボス。
そんな人が俺の演技を気に留めていてくれて、世話を申し出たということは、その人に俺の演技が認められたということだろうか…?
それなら、すごく嬉しい。

「あの、ボス…その人って……」

「あぁ、紹介しよう。最上くん、入ってきてくれ」

カチャ
ドアノブを回す音と共にドアが開き、人が入ってくる。
その人物を俺は知っていた。

「京子、さん…?」

日本のドラマや映画で見たことのある人。
若手実力派女優としてアメリカでも注目されていた。

「おっ、知っていたか。彼女がお前の世話をするLMEの看板タレントの京子だ」

「看板だなんて大袈裟ですよ」

そう言って苦笑する女優は、ボスの言うようにLMEを代表する2大女優の一人だ。
………ん?

「タレント…?」

「なんだ、知らなかったのか。彼女はドラマの出演の方が多いが、タレント部所属だぞ」

演技が評価されて売れているから、皆最初は勘違いするんだがな…とボスは笑う。

「俳優部に異動の話も何度か出たんだが、バラエティーは度胸がつくし、アドリブも多いから勉強になるのでって今だタレントだ」

「そうなんですか」

そういう考えもあるのかって驚いた。
確かにバラエティーは役を演じるわけではなく"自分"のままだから、イメージを崩さないように注意を払わなくちゃいけない。
ある意味では役を演じるより大変かもしれないな…

「こんにちは、"敦賀蓮"くん。ご紹介にあずかりました、タレントの京子です。これからよろしくね」

「こんにちは、京子さん。よろしくお願いし………え?あ、あの、えっと…京子さんが俺の……」

「世話役ってさっき言ったろ」

「ちょっ…ちょっと待って下さい。京子さんってかなり忙しいですよね?」

「おぅ!うちじゃ1、2番めに忙しいんじゃねぇか?」

「そんな人に俺なんかの世話だなんてっ」

彼女と一緒にいれば演技の勉強もできるだろうし、俺の可能性に期待してくれている人だから、それは嬉しい。
だけど、日本の業界でも忙しい方のはずだし、アメリカでも注目されている役者だ、俺の面倒を見ている暇なんてあるはずがない。
別に子供ってわけじゃないし、朝から晩まで面倒を見てほしいなんて思わない。
ボスに世話になっている時も、基本的には部屋に篭って日本の勉強をしているし。
でも、地理とかマナーとかまだ全然わからないし、ネットや辞書で調べてもわからないことが多々ある。
そんな時にボスや執事の人に頼ってたけど、彼女にも同じように教えを請うのは辞退したい。
彼女が嫌だとかプライドの問題じゃなくて、彼女の時間を奪うのは気が引けるんだ。
彼女は父さん…クー・ヒズリが認めている役者だから。

「敦賀くんは私じゃ嫌?」

「嫌とかではなく…」

「あ、因みに、お前の住むとこ、今日から最上くんと一緒な」

「は?待って下さい!妙齢の女性と一緒に暮らすなんて…」

「お!妙齢なんて難しい言葉、よく覚えたな。偉いぞ、蓮!それからな、一緒に暮らすって言っても彼女はワンフロアを3人で借りてるから、同居って言うよりお隣りさんになるって感覚に近いと思うぞ。そのうち一人は男だし」

これは決定事項だからな!とボスが断言する。
つまり、俺に断る権利はないらしい。
窺うように京子さんを見ると、京子さんは同居という点は気にしてないのかにこにこしている。
男として見られてないらしい…
確かに俺の方が4つ下だけど、経験は人並み以上にあると思うし、年上にも年下にもモテていたのに…彼女から見たら範疇にないのだろうか。
それとも、そういう関係になっても構わないと思ってるのだろうか…俺には読めない。
思わず、はぁっと疲れたように息を吐くと、京子さんの顔が寂しそうに歪んだ。

「あ、あの、敦賀くん!嫌ならいいのよ?貴方の成長を間近で見たいと思って申し出たけど、それは私の我が儘だし。いきなり親交のない人間と生活しろなんて普通は拒否するだろうし。今まで通り社長の家で生活したいなら、それでいいから。ただ、敦賀くんは養成所に通わなくても、基礎はしっかりできてるし、家に篭って勉強ばかりしてるって聞いたから、日本に来てから直に演技に触れてないんじゃないかって思って…。だから、少しでも演技に触れる機会を私が作れればって思って、貴方のことを任せてほしいって社長に申し出たの」

その言葉を聞いて、そういえば早く日本で活躍できるように必死に勉強してきたけど、演技の勉強はDVDで見て学ぶしかできなくて、日本に来てから直接演技を見たことがないことに気付く。
それに、彼女ほどの役者に成長を間近で見たいと言われて、嬉しくないはずがなかった。

「ごめんなさい。貴方の都合も考えず…迷惑だったでしょ?」

「そんなことっ…京子さんの言葉はすごく嬉しかったです!迷惑だなんてありえませんっ」

「じゃあ、決まりだな」

にやりと笑うボスにはっとしたがもう遅い。
そういうことで、と何日か分のお泊りセットを渡され、荷物は直接送ると言われる。
京子さんは苦笑して、呆然としている俺の頭を慰めるように撫でた。

「…よろしくね、敦賀くん」

「…………はい」

よしよしと撫でられて、こんな年になって撫でられるなんて…と思いつつ、頭を撫でられるなんて何年ぶりだろうとしみじみ思う。
そして、やはり俺は彼女から見たら年下の男の子でしかないのだと少し肩を落とした。

何故、意識されないことを残念に思うのか気付かないまま―――





―――――――――――――――――――
やってしまった…
年齢逆転とか、立場逆転とか、そういう話が好きなんですよねぇ…。
蓮が恋心に気付くのはいつになることやら…キョーコちゃんより早いのは確実ですけどね。
でもって、年下だから中々強引になれなくて、キョーコちゃんに振り回されそうだわ(笑

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