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本能の赴くままに日記や小説を書いています。
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敦賀蓮はハリウッドスター、クー・ヒズリの息子だった!!??


捏造が多いと共に流行も生み出してきたという某雑誌の一面を飾った見出し。
何が原因かは不明だが、どこからか漏れてしまったらしい…否、漏れたわけではなく、ただの捏造記事だったのかもしれない。
しかし、それが事実であったため、事態は笑いごとではすまなかった。


『演技がうまいのも納得ですよねぇ~』

『流石はクー・ヒズリの息子ですよね!!』

――プチッ

キョーコは据わった目で画面を消した。
その様子をオロオロと『だるまや』の女将さんが見ていたが、キョーコはそんな女将さんを気遣う余裕はない。

――敦賀さんに対する侮辱だわ…

キョーコは真っ暗になった画面をまるで親の敵を見るような目で睨みつけながらそう思った。
普段、あまりTVを見ないキョーコ。
そのキョーコに「大変だ」と言って、このことを教えてくれたのは、今傍でキョーコを見守っている女将さんであった。
そして、あの後にきたケータイへの連絡。
疲れ切った声で「今日は事務所には来ないで現場に直行すること」と椹に言われたキョーコは問合せが殺到しているのだろうと察すると同時に、事務所も張られているのだと察した。

「行くのか」

疑問ではない、ただの確認。
そう大将に問われて、キョーコはしっかり頷いた。

「はい」

「そうか」

言葉は少なかったが、それだけで通じた。

「悔いのないように言いたいことを言ってこい」

「はい!」

大将に背中を押されたキョーコは真剣な表情で頷くと、鞄を持って歩き出した。
まるで、戦場にでも行くかのように出て行ったキョーコを、女将さんは心配げに、大将はいつも通り無表情で見送った。

「あの子、大丈夫かね…?」

「あいつならやるさ。事務所に怒られて辞めさせられたら、ずっとここに置けばいい」

まぁ、そうはならんだろうが…と呟く大将。
絶対に“敦賀蓮”にとって不利なことは言わないとわかっているからこそ叩ける軽口。
「あんたも素直じゃないねぇ」と笑った女将さんは、「さぁて、ご飯にしようか」とキョーコが作っていった朝食を食べ始めるのであった。

 

報道陣が詰めかけているLME本社の表玄関。
キョーコはそこ目掛けて、まるで報道陣が見えていないかのように歩いた。

――冷静に、冷静に…

感情で喋ったらダメ、と自分に言い聞かせながら、普段通りを心がけて歩くキョーコ。
嘘は苦手でも演技はできる。
でも、演技でもダメだ。
演技では世間は騙せても本人には通用しない。
それでは意味がない。
本心で…しかし、冷静に――

「京子さん!」

目論見通り、報道陣は厳戒態勢の中現れたキョーコの周りここぞとばかり囲んだ。
そんな報道陣に内心「ひっかかったわ」と微笑む。
これからやることは事務所からは怒られ、本人からは余計な世話だと言われるのが必須なこと。
…それでも、我慢ならなかったのだ。

「京子さん!先輩である敦賀さんのことですが…」

「敦賀さんがクー・ヒズリの息子だということは…」

「何か、本人にはお聞きしていますか?」

「京子さん、何かコメントを!!」

餌に群がるハイエナのような報道陣の詰問にキョーコはぴたりと足を止めると、報道陣を見て微笑んだ。
微笑みといっても普通の笑みではなく、緒方が『京子』を未緒に押した理由である闇色のオーラで、共演者には怯えられた魔性の微笑みである。
その笑みに報道陣は震えあがり、一歩、二歩、と後ずさる。
それを見て、少し複雑な感情を抱きながらもキョーコはそれを表には出さず、小さな声で呟いた。

「敦賀さんが、クー・ヒズリの息子だった…?」

反応を示したキョーコに再び口を開くきっかけを得た報道陣。
こんな小さな声でも反応するなんて、流石ね…とどこか皮肉げに思いながら、先程より控え目に尋ねる報道陣に目を向けた。

「え、えぇ…京子さんはそのことは…?」

「知っていますよ。それが何か?」

思わず、そっけなく返事をしてしまった。
薄い反応に戸惑う報道陣を「いい気味だわ」と思うキョーコ。
どうやら、自分で思っていた以上に自分は怒ってるらしい…とキョーコは冷静に自己分析した。

「あ、あの、そのことに関して驚いたりとか…もしかして、本人から何か…?」

「本人からは何も聞いてませんよ。今日、ニュースで見て凄く驚きました」

――聞いてるわけないじゃない!私はただの後輩なんだから…

でも、知ってることもある。
それだけで判断材料は十分だ。

「し、しかし…」

「けど、それだけです」

「え?」

「クー・ヒズリの息子だった。それは確かに驚くことかもしれませんけど、ここまで騒ぎ立てることですか?敦賀さんの価値はそんなところにはないのに」

冷静に淡々と述べられる言葉に誰もが驚き、固まる。
そんな報道陣をよそに、キョーコは一台のカメラに狙いを定めて、そのカメラを睨みつけるように見つめた。

「私は敦賀さんを尊敬しています。役者として、人間として。けれど、それは“敦賀さん”だから尊敬しているのであって、“クー・ヒズリの息子”だから尊敬しているわけではありません。“クー・ヒズリの息子”だから演技が上手いとも思いませんし、“クー・ヒズリの息子”だから人気があるとも思いません。敦賀さんが必死で“敦賀蓮”を築きあげてきたからこそ、私は敦賀さんを尊敬してるんです」

芸能界に入る前の私なら、他の人と同じ反応だっただろう。
『顔だけ俳優』と思っていた頃なら…
しかし、私は“敦賀蓮”を知ってる。
そして、ハリウッドスターではなく、親としての“クー・ヒズリ”を知っている。

――だから、許せなかった…“敦賀蓮”を知ってるから、許せなかった

敦賀蓮を見ない人たちを。
肩書に惑わされる愚かな世間を。

「それだけ言いたかったんです」

それだけ言い残して、キョーコは邪魔な報道陣をかき分けて何事もなかったかのように事務所の入口へと向かう。
ぼけっと突っ立っている報道陣が我に返って何か言っていたが、キョーコは言いたいことは言ったので、無視して中へと入ったのだった。

 

 

NEXT→

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キョーコ視点。
キョーコならこんな風に騒がれたらキレそうだなぁと思って書きました。
だって、キョーコって基本、芸能人に興味ないし、肩書とかで判断されるの嫌いそうだし。
なにより、信仰している神様だしね!(笑

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