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ブルブルブルブル
「お、蓮!ケータイ鳴ってるぞ!」
テーブルの上に置いてあった蓮のケータイが震え出したことに気付いた社がTVをじっと見つめていた蓮にそう言う。
蓮は礼を言うと、ケータイを開く。
“社長”の文字に蓮は眉を顰めると、通話ボタンを押した。
「…もしもし」
『お、蓮か?』
「そうですけど、どうかしたんですか?今日は仕事にならないから一日待機って言ったの社長ですよ?」
『もちろん、そのまま待機だ。お前のマンションも張られてるからな』
「じゃあ…」
『チャンネルを“きまぐれロック”に合わせろ』
「は?」
『どうせニュースチャンネルに合わせてあるんだろ?だから、チャンネルを変えろ。今から緊急生放送をやる』
その言葉に蓮は目を細める。
今日のところは事務所からは特にコメントは出さないと聞いていたのだが、何かあったのだろうか。
『いいな?絶対に見ろよ』
「ちょ…社長!!」
言いたいことだけ言って通話を切ったローリィに蓮は深く溜息を吐いた。
「社長、なんだって?」
「…よくわかりません。ただ、緊急生放送をするから“きまぐれロック”にチャンネルを合わせろとだけ…」
「“きまぐれロック”?」
「社さん、知ってるんですか?」
ドラマや映画といった演技に関わるもの以外には興味のない蓮は、それがどういった番組なのかわからず、反応を示した社にそう尋ねる。
すると、社は呆れたように蓮を見た。
「うちのタレントが持ってる番組だよ。“ブリッジロック”っていう三人組で、人気のあるタレントなんだぞ!それくらい知っとけ」
「すみません…」
「まぁ、いいけどさ。生番になったのはお前が理由だろうけど…」
「いったい何をするつもりなんでしょうか?」
「俺が知るか!とりあえず、見るしかないだろ」
社はそう言うとチャンネルを“きまぐれロック”に合わせる。
ちょうど始まるところだったらしく、まだ司会者の三人しかいなかった。
『はい。本日は予定を変更して、緊急生放送となりました!』
『ゲストの○○さんを楽しみにしていた皆さん、すみまへん』
『しかぁし!生放送になったというところでお気づきになられた方もいらっしゃるでしょう!今日の話題は“敦賀蓮”さんです!!』
『本人に来てもらうわけにはいかなかったので、今日は“敦賀蓮”を語ってもらうために、彼女に来てもらいました!!』
『『『我らが後輩の、京子さんです!!!』』』
紹介と共に画面の中に現れた少女に二人は目を見開く。
朝のニュースを見ていた二人は、もしかしたら…と予感はしていたものの、実際そうなってみると、やはり驚いてしまう。
今朝とは違い、可愛らしい笑顔で現れた少女は、リーダーに勧められるがままに椅子に座った。
『こんにちは、京子ちゃん。今朝はびっくりしたよ』
『こんにちは。びっくりさせてすみません。独断だったので、お咎めをいただいちゃいました』
『あはは、勇気あるよねぇ~。因みに、お咎めってこの番組に出ることだよね?』
『はい。今日は敦賀さんに怒られたり嫌われたりするのを覚悟で、敦賀さんのあれやこれを暴露させていただきに来ました』
『え~?あの敦賀さんが怒ったり嫌ったりって想像できへんなぁ…』
『怒るとすっごく恐いんですよ。私、四回ほど大魔王を拝みましたもん』
そう言うと少女はその時のことを思い出したのか、蒼白になってガタガタを震える。
そんな少女の様子に司会者の、特にリーダーが心配そうに少女を見つめ、そしてそれほど恐ろしいのか…と認識を変えたようだった。
「るぇぇぇん?お前、そんなにキョーコちゃんの前で怒ったのか?二回は居合わせたけどさぁ、更に二回もマジギレしてるとは思わなかったよ。しかし、大魔王か…キョーコちゃんも言うねぇ」
からかい顔になった社にむっとしながらも、蓮は少し落ち込む。
あれほど怯えられてるなんて…と。
しかし、少女の言う四回のうちの1つがわからない。
1つ目は芸能界に入る理由を聞いた時、2つ目は不破尚のPVに出た際の嘘、3つ目は軽井沢での裏切り…
「…あと一回は何だ…?」
「蓮?」
「いえ、何でもありません」
気付かないうちに少女いわく“大魔王”を発動したのかもしれない…
蓮はそう自分を納得させ、画面に視線を戻した。
『それに、私最初すっごく嫌われてたんですよ』
『え?そうなん?仲良いって聞くけどなぁ…』
『あー…今は以前ほど嫌われてない、かと。タレント部の主任に聞いてみたらわかりますよ~。敦賀さんが私のこと嫌ってたって断言してくれるはずです!それか、敦賀さんのマネージャーさんも知ってますし…』
「あ~あ…お前が最初の頃、キョーコちゃん苛めるから、周りから見れば仲良しなのにキョーコちゃんからは嫌われてないかも程度なんだぞ~」
「…動機が、不純でしたからね」
そう言いつつも、少し後悔している蓮。
ふざけた理由で芸能界に入ろうとした少女が許せなかったとはいえ、最初にやりすぎたからこそ、少女からの認識がこのような状態なのだろう。
最初、嫌われていたことを思えば、今の状態は大分改善されたと言ってもいい。
改善されすぎて、人間のカテゴリーを外れて神様扱いだが。
『へぇ~。そこまで言うならホンマなんやろうなぁ。よく、嫌われてる相手を尊敬できるね、京子ちゃん』
『あはは…実は私も最初は敦賀さんのこと嫌いだったんです』
『え!?マジ?』
『はい。まぁ、近くに敦賀さんのことが嫌いな人がいたので、その影響もあったんですけど…初対面の印象がすっごく悪かったので、敵視してました』
苦笑する少女に蓮はその時のことを思い出す。
確かに、“温厚”や“紳士”で知られていた蓮としてはありえない態度を取った覚えがあった。
「そういえば、最初の頃すっごく蓮のこと敵視してたよなぁ…。俺には礼を言うのに、蓮には文句しか言わなかったし、演技対決の時も睨んでたし…あの時、「骨は折れても治るもの」って言うからさぁ、この子恐い…って思っちゃったんだよな、俺。それから、その後も蓮を無視して俺とばっか話すし、あと……」
「…社さん。あの頃のことは反省してますから、そのくらいにしてください」
「えー」
「社さん」
「わかったよ」
つまんないのー、と呟く社に「冗談じゃない」と思う蓮。
あの頃は嫌われてても平気だったが、今はその時のことを思い出すだけで胸が痛むのだ。
あの子にそれほど嫌われていたのか…と。
『だけど、敦賀さんの仕事に対する姿勢を見て、人となりを知って、いつの間にか尊敬してました』
『そうなんだ~。今日はそこ辺りも詳しく話してくれるの?』
『そうですね。社長に「蓮の尊敬できるとこだけじゃなくて、情けないところや恥ずかしいことも全部話してこい!」と言われましたから』
『え~?敦賀さんの尊敬できるとこってのはわかるけどさ、情けないとことか恥ずかしいことなんて存在するん?完璧人間やん、敦賀さんって』
『ありますよ~。…まぁ、そのことばらす時は、死を覚悟しないといけませんけどね……』
『えぇ!?死って、京子ちゃん大丈夫なの?!』
『…どうでしょう?それでも、敦賀さんを知ってもらうためには、敦賀さんの人間らしいところも知ってもらうべきだと思いますから。そのためには、イメージを崩してしまっても、言った方がいいと思うんです』
死を覚悟…のところではどんよりしたが、それでも真剣な表情でそう言う少女。
その表情を見て、蓮は自分のことを考えてくれた上で言うのか…と嬉しくなり、思わず破顔した。
それを見た社は「蓮にこんな表情させられるのってキョーコちゃんだけだよ…」と画面の向こうにいる少女を尊敬する。
『皆さんが敦賀さんを“クー・ヒズリの息子”として見てしまうのって、敦賀さんが完璧に見えるからっていうのも少なからずあると思うんです』
『うんうん、確かに。“クー・ヒズリの息子”ってことは“ジュリエナの息子”ってことにもなるしね。そうすると、どうしても「そんな親を持つなら、その息子は…」って思っちゃうよね』
『外見が完璧なだけに、その認識を崩すのって難しいよなぁ…』
『はい。だから、その“完璧”を崩すために、そして“敦賀蓮”を見てもらうために私はここに来ました。これから話す内容は、本人に話したら絶対止められるので本人からの許可はありませんが、社長とクー・ヒズリからは許可を得ています』
『え?社長はともかくクー・ヒズリからも?』
『はい、直接』
『えぇ~~~!!??知り合いなの?もしかして』
『はい。ちょっとした機会がありまして…それも、これから話しますね』
少女はそう言ってにっこり笑う。
それを見て社は「キョーコちゃん、クーに懐いてたもんなぁ」と呟き、あれ?と首を傾げた。
「確か、息子さんの名前って“クオン”だよな?で、それってお前だよな?」
「…そうですけど」
「ってことは、キョーコちゃん、お前を演じてたってことだろ?じゃあ、あまり似てなかったんじゃ…」
「そんなことなかったです。彼…父さんが詳細を教えたとしか思えないくらい、幼いころの俺に似てましたよ。思わずあの後確認に行ってしまうくらいには」
「へぇ~、そうなんだ~。昔のお前、あんなんだったのか…想像できん。でもって、親ばか子ばかのラブラブ親子ってのも想像できん」
「…しないでください」
照れたような顔でぷいっと顔を背ける蓮に、レア顔!と思いつつ、追求をやめることにする社。
突きすぎて“闇の国の蓮さん”が顔を出したら心臓に悪いからだ。
再び画面に意識を戻した蓮をちらりと見た社は、もうちょっとからかいたかったなぁ…と思いながらも本題に入ろうとする少女の様子に、慌てて画面を見た。
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関西弁がわかんないです。
ってか、ブリッジロックの話し方がわかんないです。