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本能の赴くままに日記や小説を書いています。
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「はぁ?写真ですって?!」

雪花は心底嫌そうに顔を歪めると、ギロリとそんなことを言い出した監督を睨み付けた。

「兄さんの写真だって撮らせたくないのに、私とセットの写真が欲しい?ふざけないで!私は兄さんと違って(コレに出る)役者でもなければモデルでもないのよ?」

何考えてるのよ!と叫ぶ少女にスタッフたちは注目する。
謎の俳優『カイン・ヒール』の妹『雪花・ヒール』は本人が言うように役者でもモデルでもなく、兄であるカインの付き人である。
モデルばりのプロポーションで、美しい雪花は、ボディピアスさえなければモデルでも通用するであろうが、本人は兄のことしか考えていないため、その道を歩むことは今後ともないだろう。
何で、あんなおっかない兄に夢中なんだ…とスタッフたちは残念に思いながら雪花たちを眺めていると、そこに近付く男が一人。

「セツ」

「あ、兄さん!聞いてー!この人がね…」

「聞こえていた……必要ない」

「そうよね!兄さんならそう言ってくれると思っていたわ!」

そう言ってぎゅっと抱き着く雪花をそのままに、カインは監督と向き合う。
カインの目は「余計なことをするな」と語っており、その鋭く冷たい眼差しだけで人が殺せそうである。
カインの正体を知っている数少ない人間である監督でもその視線は恐いのか、顔色が悪い。

「だけどな…」

「………」

「……場所が悪い。とりあえず、二人ともこちらに来てくれないか?」

どうにか説得しようと思った監督だが、腹を割って話すには場所が悪いことに気付き、二人を楽屋へと誘う。
雪花がじっとカインを見上げると、カインは雪花を引きはがし、監督の後を追って歩き出す。
引きはがされて不機嫌になった雪花も、渋々その後を追ったのだった。


パタンッ
楽屋のドアが閉まったその瞬間、雪花――否、キョーコはがばっと頭を下げた。

「失礼な態度を取ってしまい、誠に申し訳ありませんでした!ですが、先程の言葉通り、私はカインの付き人ですから、写真を撮られるのは…」

「雪花さん、顔を上げてくれ。君の言いたいことはわかってるから」

『雪花』と全く違う少女に監督は苦笑する。
因みに、普段と同じ喋り方になっても名前は言わない。
個室とはいえ、誰がどこで聞いているかわからないからだ。

蓮を殺人鬼として出演させるにあたり、ローリィから『敦賀蓮』のマネージャーを付けるわけにはいかないからと社の代わりに紹介された少女。
謎の俳優"X"の妹で、『雪花・ヒール』
そう紹介された時、謎の俳優"X"改め日系英国人『カイン・ヒール』とどこか似た雰囲気を持つ少女に、一瞬本気で兄妹だと信じかけた。
が、『カイン・ヒール』は『敦賀蓮』であり、彼に妹がいるという話は聞いたことがない。
困惑する監督にローリィは笑いながら、少女の正体を明かした。
「彼女は一応タレントの『京子』だ。『Dark Moon』の『未緒』と言った方がわかりやすいか?」
そう言われてかなり驚いた。
百人が百人「別人だ」と断言しそうなほどに見た目も雰囲気も違ったからだ。
イジメ役として注目されている新人タレントである彼女の違いすぎる外見と雰囲気と、ローリィ社長の保証があることからばれることはないだろうと思いつつ、どこかでボロを出すのではないかと心配していたが、心配無用だったらしく、彼女は見事に病的なほどのブラコンを演じている。
例えば、「私と兄さんの時間を邪魔しないで!」と言って(少しでも蓮を休ませるために)人払いをしたり、「私の兄さんに他の人と同じモノなんて食べさせるつもり?」と言って(少食な蓮のために)局弁を拒否したり(因みに蓮の弁当はキョーコの手作りである)、撮影が終わった瞬間「兄さん、お疲れ様~!今日も素敵だったわ!」と言って(共演者が話しかけてくる隙をなくすために)抱き着いたり…(最後に関しては無用な心配だと思うが)

「だが、この映画の特集でね、カインの写真が必要なんだけど、カイン単体より二人セットの方がばれにくいと思ってね」

「そんなことないです!カインは完璧ですから!!」

そう訴えるキョーコに「君にはばれたけどね」とカイン――蓮は苦笑する。

「私なんかが一緒に写って、私のせいで芋づる的にばれたらどうするんですか!『雪花』が私だってばれたら、『カイン』がどこの事務所の人間なのかばれて……」

そんな状況になった場合を想像したのか、ガタガタと青い顔で震えるキョーコ。
雪花=京子だと気付く人はいないと思うけどな…とそんなキョーコを見ながら蓮と監督は思った。

「それに、私からばれなくても、いつかはカインの正体を明かす日が来るんですよね?そうしたら、絶対『妹』は誰だって話題になりますよね?『妹』だったっていう情報だけならまだしも、こんな奇抜で露出の高い恰好の写真が残っていたら………私に生き恥を曝せと言うんですか?」

そう真剣に言うキョーコに監督は「うっ…」と言葉に詰まる。
それに畳み掛けるように蓮も言った。

「俺も反対です。カインの情報は少しでも伏せておくべきです。どうせ、『雪花』の情報はここのスタッフや共演者から流れるんですから、わざわざ明かす必要はありません(ってか、彼女のこんな姿を世間に曝すなんて冗談じゃない!!)」

その後押しにキョーコは「そうですよね!」と笑顔で頷く。
セツ魂が入っていれば「流石はカイン兄さんね!」と抱き着いただろう。

「…カインくんの言うことも一理あるね」

仕方ない…と監督は苦笑した。
せっかくローリィの許可まで取ったが、無駄になってしまったらしい…。
まぁ、半分は『雪花』がこの場だけの存在であるのはもったいないという私情であるため強くは言えない。

「わかったよ。その代わり、誰もが『君』だってわからないような、そんな写真にしてくれよ?」

「もちろんです」


というやり取りがあったため、その話はその場で流れた…が、世の中はそう甘くなかった。
スタッフに紛れ込んでいたBOOSTの記者の手で、現場から車までの短い距離を仲良く歩いていた二人の姿が激写され、『謎の俳優"X" 撮影現場に女を連れ込む?!』という蓮たちとしても映画製作側としても不名誉な記事を書かれたため、その誤解を撤回するために結局二人セットの写真が撮られることになったのであった。
その際に「これは演技、私は役者、この恰好は不可抗力で私の意思じゃないんだから、いつかばれてもそう言えば…って、やっぱりいやぁぁぁぁあああ!!!」と楽屋で泣き叫ぶ少女と、役(B・J)よりも恐ろしい表情で「あれを世に出すなんて…」と嘆き、「いっそ、あの子を見た奴全員殺したい…」と呟いて、撮影スタッフを恐怖のどん底に突き落とす男の姿があったとか…




―――――――――――――――――――
懲りずにスキビですが、何か?
本誌も読んでませんが、何か?

以前も書いた通りコミックス派なので、二次創作と感想から情報を得て展開を知るという暴挙に出ています。
なので、捏造を更に捏造している可能性がありますので、ご了承下さい(今更

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