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本能の赴くままに日記や小説を書いています。
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失いそうになって気付いてしまった。
いや、違う…。
気付かないフリをしていただけだ。
彼が大事なのだと…

「それが死んで下さいと言った相手に思う事ですか…」
彼は生きていた。
他のレプリカ同様、消えるはずだった彼はアッシュの助けもあり、消えなかった。
だが、奇跡なんてものは起きない。
彼は今、この世界の全てが愛しいモノのように笑いながら死に向かっている。
水が綺麗だとか
空は青く広いだとか
ここは空気が綺麗だとか
そんな事を言いながら彼は精一杯、世界を感じて生きている。
死を隣に感じながら…
「何故、貴方なんですかっ…」
世界が綺麗だと言うならば、それは彼の犠牲があるからだ。
世界は残酷だから代償なしには救われてくれない。
綺麗な彼が犠牲になるからこそ世界は綺麗でそして、汚い。
「どうせ消えるなら私のようなろくでもない人間が消えれば良かったのに…」
彼は生きていた。
だが、奇跡は二度も起きない。
彼はもう音素乖離が手のつけられないところまで進んでいる。
薬を使って遅くする段階はとうに過ぎてしまった。
「貴方がいなくなる恐怖をもう一度体験しろと言うんですか。」
世界は残酷だ。
綺麗な彼がこんな汚い世界にいるのは耐えられないとばかり彼を排除する。
いや…世界は綺麗だ。(だって彼が救った世界だ。)
汚いのは私たち人間だ。
ならば世界は汚い私たちから彼を取り上げようとしているのか。
私たちには勿体ないと…
「それでも彼は生きたいと願っています。だから私から彼を取り上げないで下さい。」
私は結局、自分の事しか考えられない。
彼のように自分の身を顧みず人の為を思って行動するなど自分には到底できない。
彼は確かに生きたいと願っているが、この願いは私の為で彼の為ではない。
私が彼がいなくなるのが耐えられないだけ。
彼によって死を認識してしまった私が彼を失うのが怖いのだ。
彼が存在しなくなると思ったあの時、私の中に虚無が広がった。
人々を苦しめていた症気が消えても感動も悲しみも虚しさも喜びも怒りも何も微かにすら感じなかった。
あの時の私は色を失って、ただ、存在するだけのモノに成り下がっていた。
その後、彼が生きているとわかった時、私の世界は鮮やかに色づいた。
彼は私にとって世界になっていた。


「ルーク…」
「ん?どうしたんだ?ジェイド。」
「消えないで下さい。」
「…ジェイド?」
「お願いします。消えないで下さい。生きて下さい。貴方がいないと世界から色が消えるんです。貴方がいないと何も感じないんです。死霊使いとまで呼ばれた者がこんな事を言い出すなんて滑稽だ、と嘲笑ってくれても構いませんから…。」
「笑わないよ。」
「……」
「笑わない。」
「…はい。」
「…消えない、なんて優しい嘘、俺はつかないからな。」
「…えぇ、わかってますよ。それにそんな事言われたらその言葉に縋ってみっともない姿を晒しちゃいそうですしね。」
「ジェイドにそこまで真剣に言われると何か怖いなぁ。」
「おや~?ル~ク、どういう意味ですか?私はいつでも真剣じゃないですかv」
「どこがだよっ!」
「…今回のは本音ですよ。貴方が生きられるなら何だってしたい。それなのに、私は何も出来ない。音素乖離を止める事も…遅らせる事すら出来ない…。」
「それは…ジェイドのせいじゃないだろ。…自然の摂理だ。レプリカは第七音素だけで出来てる不安定な存在だから…」
「しかし…っ」

ルークはジェイドを見て微笑むと自分より幾分か高い位置にあるジェイドの頭を抱きしめる。
そして、ポンポンッと幼子をあやすように背中を叩いた。
「ありがとう。」
ジェイドは手でルークの背中を掴む。
力いっぱい握ったから放したらきっと皺になってるだろう。
「ありがとう。こんなに必死になってくれる人がいて、俺は幸せだな。」
必死になっても結果が伴わないなら意味がないじゃないかとは口に出せなかった。
きっと、今喋ったら涙声になるだろう、とわかっていたから。
「ジェイドが寝る間も惜しんで音素乖離を止める方法を探してるのも知ってる。鏡見てるか?隈あるんだぞ。…そんだけあんたにとって価値があるんだと思ったら嬉しくてさぁ、止めるに止められなくて…。」
ありますよ。
私にとって貴方は世界なんです。
「ありがとう、ジェイド。」
「感謝なんか、しないで下さい。」
枯れた声が出た。
「ルーク…っ」

感謝も何もいらないから生きて下さい…

ルークはただただ、ジェイドを抱きしめた。


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