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本能の赴くままに日記や小説を書いています。
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※あまり厳しめな傾向はないと思いますが…しいて言うならキムラスカ厳しめ?





「ルーク殿…私のところに来ませんか?」

そう言って手を差し延べてくれたのは、銀色の青い軍人だった。



「もう!ルークってば、どうして返事くれなかったの?たくさん手紙出したんだよ!」

「ごめん、アニス」

ヴァンの剣が無くなっていると報せを受け、前回と変わらぬ同行者たちと合流したルークは会うなりそう言われて謝った。
他のメンツも同じように文句を言ったが、ナタリアだけは複雑そうな顔をしてルークから視線を逸らした。

「(あぁ、ナタリアは知ってるもんな)」

偽姫だったとはいえ、王族として認められたナタリアはルークが手紙を読めなかった理由を知っている。
というより、読めない状況に追いやった一人であると言った方が正しい。
しかし、ナタリアが知っているのはルークがファブレにいない――否、いれない事情だけで、今までどこにいて何をしていたのかは全く知らなかった。


ヴァンを倒し、外殻大地を無事に降下させたルークを待っていたのは、王位継承権の剥奪、そして“ファブレ”を名乗ることを禁ずるというものだった。
レプリカの身でありながら、7年もの間、王やそれに連なる貴族、そして国民を騙していたことは許しがたいことだ。
しかし、本来ならば死を持って償わせるべきことだが、外殻大地降下の功績を考慮し、王位継承権剥奪、名の返上、バチカル追放のみで許そう…
―ようは、レプリカを王族として扱うわけにはいかないから、身分を返上して、ここから出て行け…ということだ。
そう言い渡された際、ナタリアもその場にいたが、自分可愛さと「被験者ルークが帰ってこないのはレプリカルークがここにいるからだ」と言われたことで、ルーク追放を反対することなく躊躇いがちにだが、しっかりと同意した。
行き場のないルークは「承知しました」と承諾することしかできず、その日のうちに荷物と与えられた金銭を持って追い出された。
それゆえにルークに対して、後ろめたく思っていたナタリアは、ガイたちマルクト組かティアたちダアト組を頼ると思っていたルークが同行者の誰にも頼っていなかったことを合流した際の会話で知り、ますます後ろめたくなってルークと目を合わせることができなかった。
だが、そんな事情を知らない一行は、ルークがファブレ公爵邸にいたと思い、手紙を出し、キムラスカが発表した『大地降下は“ルーク・フォン・ファブレ”の功績』という言葉を純粋にルークが認められたものだと思っている。
その発表の意味を知っているのは、このメンバーではルーク本人とナタリアだけだ。
ジェイドは薄々感づいているかもしれないが、ルークがファブレを追い出されたことはまだ知らないのだろう。

「ルーク!」

純粋に再会を喜ぶ一同とは別に二人だけは微妙な空気を作っていたが、その声に、その空気は霧散した。

「あ。アスラン!」

小走りで近寄ってきたその人物の顔を見て、ルークの顔が明るくなる。
しかし、些細な変化だったため気付く者はおらず、明らかな変化である呼び方に対して皆反応した。

「えっ?!何で、フリングス将軍とルークが親しげなわけ?」

「あまり接点なかったよな?」

不思議そうな一同に、アスランはにっこり笑ってみせる。

「実は、ルークには我が師団の剣術指南をしていただいているんです」

「えっ?!俺、知らないぞ?」

「…私も知りませんでしたが」

アスランの言葉に反応するガイとジェイド。
そんな二人にアスランは平然と「伝えておりませんから」と言った。

「キムラスカ王族の特徴を持つルークにマルクト軍人の指導を堂々としていただくわけにはいきませんから、陛下と我が師団しか知りません」

「そうなのか?俺くらいには教えてくれたって…」

「ガルディオス伯爵は陛下の覚えもめでたく、注目の的ですからね。その伯爵に話して、頻繁に私のところを訪れることになっていたら、何かあるのではと勘繰った輩が現れ、ルークの存在が公になる可能性も否めません。同様に、あまり接触のないカーティス大佐がいきなり私のところに来るようになっても不自然だと思いましたので、報告を控えさせていただきました」

何か不満でも?と無言で問われ、二人は口を噤む。
そんなことはないと否定するのは簡単だが、知っていて、全く会いに行くことはないかと尋ねられれば答えは否だ。
そんな自分を自覚しているため、二人は反論することはなかった。

「へぇ~。でもぉ、ルークに指導なんてできるんですかぁ?」

「もちろんです。ルークの剣は実践的ですから、とても勉強になりますし、珍しいアルバート流ですからね。ルークに指南を受けようと長蛇の列ができるくらいです」

ルークには無理なんじゃない?と含みのあるアニスの問いにアスランは即答する。
裏のなさそうな笑顔で答えられ、アニスはいつものように「うっそだぁ~」と茶化すこともできず、「そ、そうなんですかぁ」と引き攣り笑顔で引いた。

「…あの、ルークが指南役をしているのはわかりましたが、何故ルークに指南役を?接点もあまりなかったと思いますが」

「あぁ、そのことでしたら、ルークが何か自分にできることはないかと尋ねてきましたので、ルークの剣に興味があった私が陛下の許可を得てお願いしたんです」

「え?ルークがフリングス将軍に?」

「えぇ。家にいるだけでは暇だったみたいで…」

「べ、別に暇だからだけじゃなくてっ」

「わかってますよ。私の役に立ちたかったんですよね。嬉しいです」

「っ////」

にこにこと笑顔を絶やさないアスランと真っ赤になるルーク。
その会話の内容に一同が疑問符を浮かべる中、ナタリアだけは目を見開き、二人を凝視していた。

「家にいるだけって…あ!もしかしてルークってば、フリングス将軍の家にお世話になってるの?バチカルとグランコクマ往復するのきついもんねー」

「半分当たりで半分外れ、かな」

「ふぇ?」

「ルークは私のところに"住んで"いるんですよ、タトリンさん」

「は?住んで、って…だって、ルークの家はファブレ公爵の……」

疑問をそのまま口に出すと、アスランは苦笑し、ルークは目を伏せ、ナタリアはびくりと震えた。
前者二人の反応も気になったが、それ以上にナタリアの反応が気になったアニスを筆頭に、ティアやガイ、ジェイドはナタリアを見る。
ナタリアは集まった視線にますます震え、血の気の引いた顔でルークを見つめた。

「ルー、ク……」

「そんな顔しなくても俺は気にしてないよ、ナタリア。俺がレプリカだって知ったあの日から、居場所を失う覚悟はあったんだから」

「ですがっ!わたくしは…私は貴方も私と同じで己の意思で居場所を奪ったのではないと知っていたのに…っ」

意味深なその言葉に一同が首を傾げる中、ジェイドだけはその言葉の真意を読み取っていた。

「成る程。つまり、ルークは王族として受け入れられず、功績もキムラスカが認める"ルーク"…つまり、被験者であるアッシュに奪われた、ということですね?」

「えっ?旦那、それってどういう…」

「おかしいと思ってたんですよ。キムラスカがあれほどあっさりとルークを讃えるような発表をするなんて。我が子がすり替えられていることに気付かなかったファブレ…ひいては王家にとって、ルークの存在は言っては難ですが、汚点のようなものです。ナタリアに関しては赤子だったからまだしも、10年も共に過ごしてきた"ルーク"の違いを見抜けなかったのは汚点以外のなにものでもありません」

「旦那!ルークやナタリアがいる前で…」

「……よいのです、ガイ。事実ですもの。キムラスカはレプリカは認めないと言ってルークを追い出し、大地降下の功績を被験者ルークであるアッシュのものにするために、"ルーク・フォン・ファブレ"の名で公表したのですから…アッシュがいずれ戻ってくることを想定して」

ナタリアの言葉に事情を知らなかったメンバーは絶句する。
逆に疑問を持っていたジェイドは納得し、アスランは隣にいるルークの髪を優しく撫でた。

「えっと…それでルークはマルクトに?」

「いや、最初はケセドニアにいたんだ。和平が結ばれたとはいえ、流石に俺の見た目でマルクトうろつくのはなって思ってさ。ケセドニアなら職を探すのも楽かなぁって思ったし」

「ちょうどその頃、私は私用でケセドニアにいて、凄腕の傭兵の噂を聞きまして。見たこともない剣の型を使うと聞いて、興味本意で会いに行ったんですよ。デマではなく本当に素晴らしい力を持つ方なら、軍に興味はないかと誘いをかけるつもりで」

「そしたらその傭兵が俺で、すっげぇアスラン驚いてたよな」

「それはルークもでしょう。第一声が」

「「どうしてここに?!」」

「だったもんな」

「ですね」

くすくすと笑い合う二人。
その時のことを思い出しているのだろう。
あの時の顔は面白かっただの、その後の慌てようが見ていて微笑ましかっただの、言い合うルークとアスラン。
内輪で盛り上がる二人に、続きが気になる他のメンバーはそわそわと二人を見つめていたが、途切れる様子がなかったため、周りから視線を受けたガイが代表して躊躇いがちに割り込んだ。
いつものことながら、不憫な役回りである。

「コホンッ。…あー、その、それでどうなったんだ?」

「あぁ、申し訳ありません。話の途中でしたね。その後、ルークから当たり障りのない事情を聞いて、私のところに来ないかとお誘いしたんです」

「迷ったけど、アスランが俺のことを心底心配してるのがわかってさ。この人なら俺を放り出したりしないかもって思って、手を取ったんだ」

「その後、陛下に連絡を入れたら、ルークの戸籍をマルクトに作って下さいまして、一応家も用意して下さったのですが、ルークがそこまでしてもらうわけにはと恐縮してしまいまして」

「それでアスランのとこに世話になることになったんだ。最初はそれも申し訳なくて断ったんだけど、アスランが一緒にいてほしいって言ってくれてさ」

「せっかく手の届くところにルークがいるのに、離れて暮らすなんてもったいないですからね」

「あっ、アスランっ////」

顔を赤くするルークに今更隠すこともないでしょう?とアスランが微笑む。
その笑みはどこか悪戯げで、その珍しい笑みに一同は唖然とする。
何となく会話から二人の関係を察していた者は一人は虚ろな目で遠くを見つめ、一人は「お父さんは認めませんっ」と泣き叫び、一人はなにやらメモを取っている。
察していなかった一人はルークに対して淡い恋心を抱いていたため、ショックで砂と化していた。
ただ、ナタリアだけは淋しげな笑みを浮かべ、「貴方は自分で幸せを掴んだのですね、ルーク…」と二人の仲を祝福した。

「私たちが…私が貴方にしたことは決して許されることではありませんが…どうか、貴方たちの幸せを願うことだけは許して下さいませ」

「許すも許さないも…確かに最初は自分たちの都合で俺をことを切り捨てたキムラスカを恨めしく思ってたけどさ…アスランに会って、毎日が幸せなんだ。ずっとバチカルの屋敷にいたら、感じられなかった感情だと思う。今の生活があるのは、ある意味キムラスカのおかげだから、俺、恨んでもないし憎んでもないよ」

「そう、なのですか…ありがとうございます、ルーク」

幸せを感じることができないと断言されたキムラスカの在り方を嘆くべきか、ルークに幸せを感じさせることができるアスランを羨むべきか……
どちらにしろ、ルークを切り捨てた自分が抱くべき感情ではないと思ったナタリアは、ただ微笑んで二人を見つめた。


「幸せに………ルーク」




―――――――――――――――――――
久々のフリルクです。
あまり甘くないですけど…
最初はナタリアも厳しめにしようかと思ったんですが、しっかり後悔してもらうことにしました。
あ、本文の「自分可愛さ」ってのは、ルークを追い出すことに反対したら、自分も一緒に切り捨てられるのではないかと思ったからです。
…補足しないとダメな文って……orz

最近の傾向的に、仲間厳しめじゃないのは珍しい気がします…まぁ、ティアが空気ですけど。

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