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本能の赴くままに日記や小説を書いています。
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「背を向けたら斬る」


文が途絶えた父を探しに京に来た千鶴は、浪士に追われ、羅刹に襲われ、新選組に結果的には助けられたものの、機密を見てしまったため捕まった。
その場にいたのは三人。
副長である土方歳三、一番組組長沖田総司、三番組組長斎藤一。
そのうちの一人、副長の土方は先に戻ると言って一足先に屯所に戻ってしまったため、残された二人で千鶴を見張りながら歩いていた。

「あ、あの…っ」

「何?大人しくしてないと斬るよ?」

沖田にそう言われ、一度は口を噤んだものの、再び口を開く千鶴。

「…その羽織り…新選組、ですよね?」

「それが何?人斬り集団に捕まるくらいなら死にたいって言うなら、すぐにでも斬ってあげるよ?」

「っそうではなくて…あの…烝さんを知っていますか?」

「烝?どこかで聞いたような……斎藤君、わかる?」

「…わかるが、念のために訊く。姓は?」

「山崎です。山崎烝」

その名を聞き、沖田は道理で聞き覚えがあるはずだと思い、斎藤は予想を違わなかったことに眉を寄せる。
山崎は隠密であり、斎藤と同じく土方に尽くす同志だ。
その山崎が一般人に身分を明かしたとはあまり考えられない。

「何故あんたは山崎君を知っている?」

「昔からの知り合いなんです。最近は会っていないんですけど…」

「……そうか。ならば、そのことも含めて副長に報告しておく。話は明日だ。もう寝ろ」

「でも…」

戸惑う千鶴を面倒臭そうに見た沖田は、問答無用で千鶴に首刀を食らわせ、気絶させる。
それを見ていた斎藤は咎めるように沖田を見た。

「総司…」

「こっちの方が早いじゃない。起きていられても迷惑だし、殺してないんだからいいでしょ?」

「……」

はぁ…と呆れたように溜息を吐く斎藤を尻目に、沖田はどこからか持ってきた縄でくるくると千鶴を縛り、手ぬぐいで口も塞いで布団に転がす。

「…女相手にやり過ぎじゃないか?」

「逃げられたら土方さんが煩そうだし、叫ばれたら『何で屯所に女が?!』ってなるでしょ?何も知らない隊士たちに事情を説明するわけにはいかないし、必要な処置だと思うけど?」

「………そうだな」

それだけではなくいやがらせも含む気がしたが、理が適っているため肯定しかできない。
しかし、他の二人と同様に面倒だと思っていた斎藤も流石に不憫に思い、せめても…と掛け布団を掛けてやった。

そして次の日。

散々な目覚めだった千鶴は、更なる窮地に立っていた。

「殺しちゃえばいいじゃないですか」

羅刹を見てしまった千鶴を殺せと沖田が促し、半数ほどがそれに賛同したのだ。
それを土方が止めるが、内心はさほど違わぬように思える。
殆ど味方がいない状況に千鶴が青ざめていると、廊下から足音が聞こえ、襖の前で止まった。

「御呼びと聞きましたが…」

「あぁ。とりあえず入ってくれ、山崎君」

「はっ」

ガラッと音を立てて襖が開き、どちらかといえば小柄な男が現れる。

「烝さん!」

「お嬢様?!」

見知った人物の登場に千鶴は喜ぶ。
一方、山崎は江戸にいるはずの千鶴の姿に驚き、目を見開いて硬直していた。
その様子に、本当に知り合いらしい…と土方たちは納得したが、そのことを知らなかった面々は驚くと共に疑問に思う。

「山崎君、知り合いなの?ってか、『お嬢様』って何?!こいつ男だろ!」

平助の後半の言葉に賛同したのは新ハのみで、他は千鶴が女だと見抜いていたらしい。
千鶴は自分の男装が通用していなかったことに落ち込む。

「女ってのはわかってたが、山崎君とどういった知り合いで、何で『お嬢様』って呼ぶのかがさっぱりわかんねぇんだが」

「まず確認させて下さい。俺が呼ばれたのはお嬢様がここにいることに関係するんですね?」

「あぁ。こいつが君と知り合いだって言うからな。確認するために呼んだ」

「そうですか……それで、何故、お嬢様がこちらにいてこのような扱いを受けているのですか?」

目敏く千鶴の腕に巻き付く縄に気付いた山崎は、目を鋭く光らせながら一同を見る。
そんな山崎に土方は深く溜息を吐き、答えた。

「昨日、アレの後始末、君に頼んだろ」

「はい」

「その現場に居合わせたんだよ、こいつ。アレを見ちまったんだ」

「!」

動揺する山崎に「だからここにいる」と補足すると、土方は目を細めた。

「次はこっちの番だ。…どういった関係だ?」

「…関係も何も、彼女は綱道さんのお嬢さんですよ」

「「「はぁ?!」」」

山崎の説明に皆驚き、奇声を上げる。
その後まじまじと見られ、居心地の悪い気分を味わったが、父の名前に反応する一同に千鶴は多少期待して口を開いた。

「申し遅れました。雪村千鶴と申します。一月ほど前から父からの文が途絶え、心配で父の行方を探しに江戸から参ったのですが…皆さんは父を、綱道を知っていらっしゃるんですか!」

「知っても何も…なぁ……一月前に姿くらましちまって俺らも探してる」

「そう、なんですか…」

期待しただけに落胆も大きい。
千鶴はがっくしと肩を落とし、俯いた。

「…おい。綱道さんの娘ってなら、お前は薬のこと何か…」

「お嬢様は存じ上げないかと。綱道さんは過保護でしたから」

「そうか…」

ちっと舌打ちする土方。
綱道が途中で放り出した薬のことを何か知っているならと思ったのだが、期待外れだったらしい。
びくっと震える千鶴に、山崎が咎めるように土方を見つめ、その珍しい態度に土方は眉を寄せた。

「ちょっと、土方さん。何一人で納得してるのさ。この子が綱道さんの娘で、女の一人旅は危険だから男装して京まで遥々綱道さんを探しに来たってのはわかったけどさ、肝心の山崎君との関係が全くわからないんだけど」

話に入れずつまらなそうにしていた沖田が横から口を挟む。
つまらなそうにしていた割にはちゃんと話を聞いていたらしい。
確かに山崎は「綱道の娘」と言っただけで自分と千鶴の関係を明らかにしていない。

「あ?そりゃあ、山崎君が一時期江戸に身を寄せてた頃に綱道さんの師事を受けてたらしいから、その関係だろ」

「初耳なんですけどー」

「へー、だから山崎君そいつのこと知ってたんだー」

土方の説明に沖田は関心が薄れたのか、やる気なさそうな声を出し、平助や新ハは納得とばかり頷く。

「僕、てっきり山崎君と恋仲か何かだと思ってたのにー」

「はっ?!」

「えっ?」

「だって、『烝さん』だよ?あの山崎君が名前を呼ばせてるんだよ?そういう仲だと思っても仕方ないじゃない」

期待してたのにつまんないなーと言いつつ沖田の顔は面白そうなものを見つけた時の顔だ。
普段、斎藤と同じくらい表情の変わらない山崎が千鶴のことになるとあからさまに動揺するのが楽しいのだろう。

「ってか、綱道さんは『綱道さん』って呼んでるのに、どうしてその子は『お嬢様』なのさ?」

「その…綱道さんにそう呼ばないと医学を教えていただくどころか家にすら入れてもらえなかったので…」

「へぇ、綱道さんって親馬鹿だったんだ。山崎君を悪い虫扱いなんて……良かったですね、土方さん。この子殺してたら、綱道さんが見つかっても協力してくれなかったと思いますよ。あ、でもその前に後始末に来た山崎君が死体を見て、怒り狂ってたかもしれませんね」

「………」

にこにこと笑顔で物騒なことを言う沖田を山崎は無言で睨む。
普段から仲が良いとは言えない二人だが、千鶴が絡むと更に険悪になるらしい。
沖田の言ったこともあながち間違いではなさそうだと思った土方は面倒なことになったと思いながら山崎を見た。

「山崎君」

「…はい」

「綱道さんに強制させられる前は何て呼んでた?」

「普通に『千鶴君』と呼んでいましたが」

「じゃあ、そう呼べ。それと敬語も禁止な」

「は?あの、それはどういう…」

「こいつはここに置く。男装させたままな。だから、『お嬢様』なんて呼ばれると困るんだよ」

「なっ…こんな男所帯にお嬢様を置いておけるわけっ」

「だから、『お嬢様』って呼ぶなって!仕方ねぇだろ。アレ見ちまった奴をそのまま放り出すわけにはいかねーし、殺すのもまずい。なら、男の格好させて軟禁するしかねぇだろうが」

「っ………」

これでも譲歩しているのだと気付いた山崎は口を固く結び、ちらりと千鶴を見る。
不安げに瞳を揺らす千鶴に山崎は、ここで反論して条件が厳しくなるよりは―例えば軟禁から監禁になるなどよりは―良いと判断して、こくりと頷いた。

「…ならば、おじょ…千鶴君の監視をするおつもりでしたら、その役目を俺に」

「まぁ、そのくらいなら…」

「えー、いいんですかぁ?山崎君を監視にしたら、こっそり逃がしちゃうかもしれませんよ?」

「新選組の不利になるような真似はしません」

「ふぅ~ん?でもさぁ、君がいない時はどうするのさ?」

「その時は…」

ちらりと斎藤の方を見る。
土方を除けば一番信用できると思っている相手だ。
無口で無愛想だが、意外と人の良い斎藤ならば、悪くはしないだろう。
山崎が斎藤に望むことをわかっていたのだろう…反応の薄い沖田は「でもさぁ」と続けた。

「斎藤君も君も仕事の時は?」

「それは……」

「…山崎君がいない時は監視役は幹部の中で交代で行う。それでいいか、山崎君?」

「……沖田さん以外の幹部でしたら」

「ちょっと、山崎君。何で僕だけ除外するのさ。仲間外れなんで酷いなぁ」

「貴方の存在は千鶴君にとって百害あって一利なし、ですからね。貴方の側に置いておくくらいなら、任務放棄します」

「酷いなぁ、そこまで言う?ってか、仕事大好きな山崎君からこんな言葉が聞けるなんてねぇ…いいんですかぁ、土方さーん。山崎君、任務放棄するって言ってますよ」

「お前を監視役にした場合、だろ。なら、総司抜きで決めるか」

あっさりそう決めた土方に沖田はむっとした後、不安げに成り行きを見守っている千鶴を見る。

「ねぇ、千鶴ちゃんだっけ?君も僕には監視されたくない?」

「えっ?えっと………」

「選択肢のねぇ奴を脅すな、総司」

「えー?人聞きの悪いこと言わないで下さいよ。僕はただ、この子の意思も確認した方がいいと思って…」

「総司」

「はいはい」

咎めるように睨まれて、沖田は仕方なさそうに肩を竦めた。
元々、監視なんて面倒なものがやりたいのではなく山崎をからかって遊びたかっただけなので、あっさり引き下がった。

「そういうわけだ、山崎君」

「はい。…お嬢様の身は俺が守りますから、安心して下さい」

「山崎君、口調」

「はっ!…あ、その…千鶴君。君のことは俺が守る」

話に名前を出す分には問題ないが、本人に対して口調を改めるのは難しいのか、躊躇いがちにそう言う山崎。
そんな山崎に千鶴は少し安心したのか、肩の力を抜いてにこりと笑った。

「よろしくお願いしますね、烝さん」

「……あぁ」

「ふふっ…何だか懐かしいですね。烝さんが名前を呼んでくれるの。不謹慎かもしれませんが、嬉しいです」

「あ、その、だな!俺は別に呼びたくなくて呼んでなかったわけではなく、寧ろ逆というか……」

顔をほのかに赤くして狼狽しながら弁解しようとする山崎を見て、幹部たちは驚くとともに、生温かい目で山崎を見つめた。

((((わかりやすい……))))

鉄仮面とさえ言われていた山崎をここまで翻弄する少女に一部は額を押さえ、一部は微妙な顔でそんな山崎を眺め、一部は笑いを堪え、そして一人は我慢せず吹き出し笑いこけた。
遠慮なく腹をかかえて笑うその一人を睨んだ山崎だったが、千鶴に「烝さん。何故あの人笑ってるのでしょうか?」と訊かれ、慌ててごまかす。
そんな二人の様子に、

((((あぁ、鈍いのか…))))

と恋愛事に縁がなく、千鶴を女だと見抜けなかった二人さえ思い、「頑張れ」と肩を叩いて応援したのであった。





―――――――――――――――――――
ただ山崎に「お嬢様」と呼ばせたかっただけです。
捏造ってやっぱり楽しいですね!

最初は山崎も鬼にして、代々雪村家に仕える鬼(ただし血は薄い)にしようかなぁと考えていたのですが(千姫でいう君菊のような存在)、力量不足のためボツにしました。
それなら何故新選組に所属しているのか、それから考えないといけませんからね…

綱道に風間のことを聞いていて、「婚約者のいる女性を男所帯の新選組におくのは」と渋って、何も聞かされていなかった千鶴に問い詰められたり。
実際に風間に会って、「こんなのがお嬢様の婚約者!?」と嘆き、「風間様に渡すくらいなら、俺が一生お嬢様を守り抜く」と決意したり。
千鶴が自分に向ける気持ちに気付いて、従者である自分と千鶴を愛する男としての自分の間で揺れたり。

もうこれだけで書けそうですね…書かないけど(ぉい
誰か書いてくれないかなぁ…?

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