本能の赴くままに日記や小説を書いています。
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「王様ゲームしない?」
『月篭り』のリメイク版『Dark Moon』が無事クランクアップし、その関係者たちは打ち上げをしていた。
『Dark Moon』の監督が『月篭り』を撮った伊達監督と親子関係であり、その事で監督である緒方がナーバスになったり、呼吸困難になったり、倒れたりと、前途多難だったり
前作の『未緒』役であった飯塚が今回の『未緒』役である京子を降ろせと言ったり、その京子が行方知らずになったと思ったら、髪型を始め、設定をガラッと変えてきたり
主演の敦賀蓮が『嘉月』をできなくなって緒方から休みを取らされ、その上、LME社長であるローリィによる演技テストで駄目だと判断された場合、『嘉月』から降ろされることになったり
それが解決して、順風満帆かと思いきや、軽井沢ではビー・グールのレイノによるストーカー事件が発生したり、バレンタインではNo.1アーティストの不破尚が現場に押しかけてきて、京子の唇を奪ったり
…と、一筋縄ではいかなかった撮影。
しかし、それを乗り越えてきた甲斐があってか、前作の『月篭り』を越えることはできないだろうと言われていた『Dark Moon』はこの世代では難しい視聴率40%越えを達成し、見事、前作の視聴率も越えることができたのである。
横文字なんて軽い感じがする、と題名の批判から始まり、敦賀蓮は保津周平には及ばない、前作を越えることはない…その評価を見事覆したのだ。
そんなわけで、素晴らしい作品を作り上げた役者とスタッフたちのテンションはありえないほど高かった。
未成年以外は酒が入り、弱い者は既に酔い潰れている。
弱くない者も普段以上にハイペースで酒を飲んでいるため、半分ほどが酔っ払いと化していた。
だからだろう…彼の一言に皆が賛同したのは……
「王様ゲーム、ですか?」
「はい。もちろん、ある程度節度を守ったお題にするって条件ですけど」
どうですかね?と貴島が緒方に尋ねる。
緒方はう~ん、と悩んだわりに、酒が入っていたためか、あっさり「いいんじゃないですか?」と許可を出した。
すると、貴島は待ってました!とばかり女性陣に声をかける。
そうすれば、女性陣目当ての男性も集まり、結構な数でゲームをすることとなった。
その中には逸美に誘われて参加することにしたキョーコと、そんなキョーコを心配して参加することにした蓮、そして巻き込まれた社の姿もあった。
「それじゃあ、紙に番号書いたから、引いてって~!」
貴島は手早く参加人数マイナス1分の番号を書いた紙と『王様』と書いた紙を1枚用意し、近くに都合良くあった袋にそれらを入れると、自分の分は取らずに隣に回した。
「あれ?貴島くんは?」
「俺は最後でいいですよ。じゃないと公平じゃありませんし…」
「そう。じゃあ、遠慮なく引かせてもらうね」
そんなやり取りを見つめていた蓮は回される袋が来るのを待ちながら、こっそりと隣にいたキョーコに話しかけた。
「ねぇ、最上さん」
「はい?…なんでしょうか?」
「王様ゲーム…ってどんな遊びなの?」
その言葉にキョーコはぎょっとしたが、敦賀さんだもんねぇ…と変な納得をして答えた。
「…私も、(ショータローのせいで友達いなかったから)やったことはないんですけど、1人王様を決めて、その王様が番号を指定して命令をするんです。例えば、『1番の人は秘密を暴露する』とか『5番の人が2番の人の肩を揉む』とか『9番の人は誰々の物まねをする』とか」
「そうなんだ…ありがとう。わかりやすかったよ」
丁寧に説明してくれたキョーコに笑顔で礼を言いながら、蓮は「もし、最上さんに変な命令をする奴がいたら…」と不安に思う。
キョーコの生真面目さをよく知っている蓮からしたら、当然の不安である。
「最上さんに当たりませんように」と願いながら、キョーコから回ってきた袋から一枚紙を引いて、隣にいる社に回した。
「皆、回ったみたいだからやるか!」
『王様、だーれだ!!』
「…私です」
スッと手の上がった方を一斉に見る。
そこには困ったような表情の大原がいた。
「大原さんか!では、ご命令をどうぞ、女王さま?」
「もう!貴島さんったら!…えっと、じゃあ、13番の人、『ねこふんじゃった』を」
「13番、誰だ~?」
遠慮がちに命令を下した大原が指名した番号の人物を探す。
「私、ちがーう」「私もー」という言葉が行き交う中、スッと手が上がった。
「私よ」
「えっ、飯塚さん?!」
いきなり大御所に当たり、顔を引き攣らせる貴島。
当てた大原の顔色も悪い。
しーんと静まり返る中、しかし、飯塚はそんな様子を気にせず、セットの方に向かうと、ピアノの前に座って『ねこふんじゃった』を弾き始めた。
蓮以上にミスマッチである。
「…これでいいのかしら?」
弾き終えると早々席に戻る飯塚。
照れているのか、頬が少し赤い。
動揺の少なかった蓮が拍手を送ると、周りもつられたように拍手をした。
「とてもお上手でしたよ」
「…『ねこふんじゃった』で誉められるって、微妙な気分だわ」
「俺なんて、全然弾けませんでしたから」
くすりと笑いながら蓮が言う。
その言葉に「確かにそうだったわね」と飯塚もくすりと笑った。
「…えっと、飯塚さん、お疲れ様でした。じゃあ、紙回収してまた配るから~!」
貴島の言葉に皆、先程の袋の中に紙を戻していき、先程の要領で袋を回す。
『王様、だーれだ!』
「……俺、ですね」
手を上げたのは蓮。
そんな蓮を見て、女性陣がきゃあきゃあ騒ぎ、男性陣は「敦賀くんの命令って予想できないなー」と呟き合う。
「えっと、そうですね……3番の方は『嘉月』、10番の方は『美月』、25番の方は『未緒』で最終話の台本のページ25~30の部分を演って下さい」
『えぇ?!』
蓮らしいといえばらしい命令だったのだが、蓮の性格を掴めていたい人たちには予想外の命令だったらしい。
キョーコは「敦賀さんらしいなぁ」と笑い、緒方は「敦賀くんは本当に役者ですね」と微笑み、逸美は「流石は敦賀さん!」と蓮を尊敬する。
「ちょっ、蓮!俺、役者じゃないんだけど!!しかも、『未緒』ってお前鬼かっ!」
「あ、社さんが25番だったんですね」
「そんな、のほほんと言わないでくれ!俺にあの恐ろしい『未緒』が出来るはずないだろっ」
「……社さん、それ、どういう意味ですか?」
絶対無理!と訴える社をじとーっと見つめるキョーコ。
社の言い方だと、役を演じることより『未緒』を演じるという点に抵抗があるように聞こえたからだ。
そんなキョーコの問いに、社はビクッと身体を震わせ、言葉に詰まる。
「社さん。別に俺はあの悪鬼のような『未緒』を再現しろなんて言ってませんよ?」
「敦賀さん、ひどーい!!確かに私の『未緒』は悪鬼かもしれないけど……」
むっとするキョーコの頭を「ごめん、ごめん」と言いながら、ぽんぽんと叩く蓮。
「お前、ただそのやり取りがやりたかっただけだろ…」と社は呆れたように蓮を見た。
「えっと、あとは誰かな?」
「あ、私が『美月』です」
「私が『嘉月』ですけど…」
手を上げたのは女性スタッフの一人と、逸美である。
逸美は「『嘉月』を表現するなんて…」と難しい顔だ。
役者として蓮に負けたくない気持ちはあるものの、蓮の演じた『嘉月』以上のものは自分にはまだ演じられないと知っているからだ。
それでも、唯一の役者として初心者二人を引っ張り、何とかノルマを熟したのであった。
「ふぅ…ホント、役者って凄いなぁ…。俺には無理だよ」
「そうですか?台詞を噛んだりしませんでしたし、結構向いてるかもしれませんよ」
「いいや、俺には裏方が向いてるって改めて思ったよ。それに、俺じゃなきゃ、誰がお前のマネージメントをするんだ?」
「くすくす…そうですね。これからも頼りにしてますよ、社さん」
そんなやり取りをする二人を「良い男が二人じゃれあってる~!目の保養だわっ」と見ていた女性陣が騒ぐ。
隣にいるキョーコも「仲良いなぁ~」と思わず微笑んだ。
『王様、だーれだ!』
「おっ!やった、俺だ!」
そう言ってガッツポーズを取ったのは、発案者である貴島。
ノリの良い人物が王様を当てたことに、皆息を飲んで指令を待つ。
「じゃあ…1番と20番が…」
「ぁっ」
番号に反応した小さな声に、貴島はにたぁっと笑った。
「駄目じゃないか、京子ちゃん。それじゃあ、バレバレだよ」
「うぅっ…」
隠し事が苦手なキョーコは困った表情で唸る。
そんなキョーコに貴島は笑顔で告げた。
「そうだなぁ、京子ちゃんなら…『Prisoner』のプロモの恰好をしてほしいな」
「えっ?!そんなの無理ですよ!衣装だってありませんし…」
「衣装ならあるぞ!!」
パァンッ
部屋のドアを勢いよく開けて派手に登場したのは、LME社長のローリィである。
あのローリィが自分も関わったDMの打ち上げに来ないわけがないと思ってはいたが、何もこのタイミングじゃなくても…と蓮は内心頭を抱える。
他の者は登場も衣装も派手なローリィの姿に口を空けて、ぽかーん…としている。
その中で(元から呆気に取られていなかった蓮と社を除くと)最初に我に返ったのはLME所属で多少慣れているキョーコであった。
「あ、あの、社長!衣装があるって…」
「最上くんの天使があまりにも良い出来だったのでな、マリアが生で見たいというから衣装一式買い取ってあったんだ!」
「え…………」
「ということは、生で見れるんですね!ナイスです、社長さん!!」
ラッキー!と笑う貴島に、社長は「もっと誉めてくれたまえ」とばかりの笑顔だ。
蓮は「余計なことを」と忌ま忌ましげに呟き、隣にいる社を青ざめさせた。
「本当ですか?僕も見てみたかったんです。春樹に本当に天使みたいだったわと自慢されて、気になっていたものですから…」
「あ、そういえば緒方監督はそのPVを見て、キョーコちゃんに『未緒』役を持ってきたんでしたよね?」
「はい。あの悪魔よりも邪悪にして、闇よりも闇色のオーラを持った天使を見て、やっと見つけた…僕の未緒…!!と感動して京子さんに話を持っていったんです」
社の言葉を肯定した緒方に、そんないきさつがあったのか…と一同は驚く。
監督が直接オファーしたという噂があり、事務所の力か…と最初は風当たりが強かったキョーコ。
キョーコが『月篭り』を越える『未緒』を演じたことで弱まったものの、それでも歳の近い女性などからのやっかみは耐えなかった…それに関しては役についてではなく蓮と仲良いことに関係するが。
「ってことだ、最上くん」
「…はい」
嫌そうに立ち上がるキョーコの隣で手が上がる。
「ん?敦賀くん、どうしたの?」
「…俺、1番なんだけど」
「ぇ、そうなんだ…う~ん、じゃあ、京子ちゃんに合わせて悪魔みたいな恰好……ってあります、社長さん?」
「俺を誰だと思ってるんだ!あるに決まってるだろう!!」
『あるんだ…』
愚問だなと笑うローリィに一同は呆れ半分感心半分で呟いた。
蓮はそういうことなら…と立ち上がり、「行こうか、最上さん」と成り行きを見守っていたキョーコに声をかける。
そんな蓮を「こいつ、こういう展開になるように計算してたな」と呆れた目で社が見つめ、「素直で結構!」とローリィがにたぁといやらしい笑みを浮かべた。
「お前たちが抜ける間は俺とこいつが入ろう」
「よろしくお願いします」
メイクと着替えのために一端抜ける二人にそう言って、どかっと蓮が座っていた席に座るローリィと、「お前も座れ」と言われてさっと座る執事。
一同は「この人が入るの?!」と恐怖に怯えた。
『王様、だーれだ!』
「俺だ!」
名乗り出たのは、ローリィ。
参加して早々王様を引き当てたローリィに一同の顔は引き攣る。
「まさか、くじに細工なんて…」
「するわけないだろう。俺はカンと運の良さで生きてきた人間だからな!」
当たって当たり前だ!と主張するローリィに執事が隣で頷く。
恐ろしい人だ……と一同は震えながらローリィを見た。
――早く帰ってきて!京子ちゃん、敦賀くんっ――
皆の心が一つになった瞬間だった。
数十分が経ち、次は誰が指名されるのかとビクビクしている一同。
王様が誰になるかなんてこの数回で嫌というほどわかりきっているため、誰もが命令される内容ばかり気にしていた。
「あれ?皆さん、どうしたんですか?」
ガチャッ
ドアが開く音と共に降ってきた声に、天の助けだ…と一同は縋るようにそちらを見た。
――そこには正しく"天使"がいた。
この世のモノとは思えないほど美しい、清楚な天使…
誰もが現れた天使に見惚れ、目を離せない。
その中には不破尚のプロモを見たことがある者はもちろん、ローリィや顔もCGじゃないかと噂していた『美月』の友人の『良子』役の女優の姿もあった。
「あの…?」
「最上さん、どうしたの?」
その後ろから現れた男に一同は更に目を見張る。
そこには黒髪長髪の美麗な悪魔がいた。
前にいる天使にも引けを取らないほど美しく、魅惑的な悪魔。
そのテノールの美声で甘く囁かれたら、たちまち誰でも堕ちるだろう…
男も女も現れた天使と悪魔に目を奪われ、微動だにしない。
そんな中、最初に動いたのはやはりローリィであった。
「お前ら、人間か?」
「ちょ、社長!酷いですよっ」
「人間以外の生物だった記憶は生憎とありませんが」
怒る天使と苦笑する悪魔。
動くことすら憚れた空気が一変し、元の空気に戻っていく。
「京子ちゃん、綺麗!本当に天使みたいだわ!」
「あ、ありがとうございます、百瀬さん」
「敦賀くん、すっごく綺麗だわ…撮影の時も色っぽいと思ったけど、悪魔の敦賀くんは演じてなくても色っぽいわね!」
「だから、俺男ですって」
きゃーきゃーわいわい言いながら二人の周りに集まってくる人々。
俺、京子ちゃんみたいなお迎えだったら、天に召されてもいい…
私、敦賀くんみたいな悪魔だったら、魂でも命でも何でもあげちゃう!
そんな事を言いながら騒ぐ男女。
写メもカシャカシャ撮られ、その場は混沌と化した。
そんな中、ローリィが困っている二人をじっと見て、うんと納得するように頷く。
「野郎ども!準備だ!!」
その掛け声に、どこから現れたのか、いつもローリィと行動しているダンサーたちがどばっと部屋の中に入って来たかと思うと、その場にセットを作ってしまった。
呆気に取られる一同を無視して、ローリィは二人を呼ぶ。
二人は嫌な予感がしながらも、逆らえずに従った。
「…なんでしょうか?」
「写真撮影するぞ!」
「…記念撮影、ではなく?」
「写真撮影だ!ポストカードにしたり、クリアファイルにしたり、キーホルダーにしたら売れるだろうからな」
いっそ、写真集でも…とぶつぶつ呟くローリィに二人の顔が引き攣る。
「(敦賀さんとセットで写るなんて、日本中の女性を敵に回すようなものじゃない!まだ死にたくないわぁぁぁああ!!)」
「(冗談じゃない!今はまだ不破の曲を買った奴しか見てないけど、そんなことになったら、世間の目にこの最上さんが曝されて…っ!この娘の魅力は俺だけが知ってればいいんだっ…――)」
キョーコは内心泣き叫び、蓮は彼氏でもないのに独占欲をたぎらせる。
そんな蓮の内心を察した社とローリィは生暖かい目で蓮を見ながら、「そんなこと思う前に、まずは告白しろ」と小声でつっこんだ。
「あああのっ!この衣装はアイツのプロモで使ったやつですし、販売目的で撮るのは流石に…」
「あ、そのことでしたら僕に任せて下さい。僕の方から春樹に頼んでみます。相乗効果で不破くんのCDも売れるでしょうし、大丈夫だと思いますよ」
「そうか!緒方くん、頼んだぞ!!」
「はい。その代わりと言ってはなんですが…」
「もちろん、出来上がった製品は全ての種類を君と麻生春樹くん、と言ったかな?彼女の分も用意しよう!」
「お願いします」
嬉しそうに笑う緒方に、蓮とキョーコは「余計なことをっ」と拳を握る。
人畜無害と認識していた二人だったが、その評価を改めたのだった。
「…社長。プロデューサから許可が出ても不破くんからは出ないのでは?彼は俺のことを嫌っているようですし…」
「事務所に許可を貰うから大丈夫だ。彼も事務所には逆らえんだろう」
実はそちらの方は既に根回し済みだったりする。
マリアの希望で天使の衣装を買い取った時から計画していたことだからだ。
セットで写るのが尚ではなく蓮なのは、ローリィなりの優しさなのだが、蓮からしてみればそれなら撮らないでほしいというのが本音だ。
「よし!もう異論はないな?」
「「……………………………はい」」
これ以上何を言っても無駄だと悟った二人は大人しく頷いた。
着々とセットが組まれていくのを遠い目で見る二人。
「…最上さん、災難だったね」
「あはは…私、無事に日の目を見れるでしょうか?私のような色気も胸もない地味なジャリタレが敦賀さんとツーショットなんて恐ろしくてたまらないんですが…」
「そんなに自分を卑下しちゃダメだよ」
「はぁ。…まぁ、仕事だと割り切るしかないですよね」
「そうだね…」
ローテンションな二人とは逆に周りはハイになって二人をぱしゃぱしゃケータイやデジカメで撮っている。
絵になる二人を見ながら、「クーにも送ってやろう」とローリィはにたりと笑った。
もちろん純粋な親切心などではない。
喜ぶだろうが、直接見れなかったことを悔しがることを予想しての判断だ。
「あ、そういえば」
「なんですか?」
「よく似合ってるよ、最上さん。とても綺麗だ。本物の天使かと思ったよ」
「…ありがとうございます。こういう衣装はなかなか着れないので、また着れたことに関しては嬉しいです!あ、敦賀さんもよくお似合いですよ(こんな衣装を着こなすなんて流石は敦賀さんよね。大魔王が降臨したらもっと似合うかも)。すごく素敵です!」
誉めたら誉め返されて、思わず照れる蓮。
何故か無表情になった蓮に、キョーコは「私が大魔王って思ってたのがばれたのかしら?」と普段よく心を見透かしているような発言をする蓮を思い少し不安になった。
「敦賀さん…?」
「いや…その、ありがとう。そう思ってもらえて嬉しいよ」
「は、はいっ(なんで悪魔の恰好なのに神々スマイルぅぅぅうう?!)」
シュ~っと音を立てて怨キョたちが浄化されていくのを感じながら、キョーコは「立場逆の方が良かったんじゃないかしら?」と思った。
その後、王様ゲームそっちのけで撮影が行われ、二人は嫌だったが仕事だと割り切り、自分の中にあるイメージとその場の雰囲気に合わせて悪魔と天使を演じた。
ドラマやCMの撮影とは全然異なるため、初めてのキョーコは少し緊張したが、瑠璃子との演技対決で初めてカメラの前に立ったにも関わらず演技してみせたキョーコである、そこは何とか無難に乗り越えたのだった。
そうして撮られた写真はローリィの前言の通り商品化され、異様なまでの収益を叩きだした。
単体のものもあったが、特に売れたのはツーショットで、尚と美森の組み合わせとはまた違う大人な雰囲気に、その写真を見た者は誰もが足を止めてその写真に見入ったほどだ。
緒方の予想通り、相乗効果で尚のCDを買う人間も増え、尚は素直に喜べず、苦虫を噛み潰したような顔をしたらしい。
また、グッズ一式をクーに送ったローリィは、クーとジュリエナから予想以上の反応が得られたことに満足し、「次は逆の恰好をさせてみるか…」と思案し始め、蓮とキョーコは悪寒を感じてそれから数日間、何かを警戒するかのように気を張り巡らせていたとか。
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消化不良…(またか
とりあえず、蓮とキョーコちゃんに悪魔と天使の恰好をしてほしかっただけです。
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