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本能の赴くままに日記や小説を書いています。
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黒い箱の中にコーンがいた。
正確には、テレビの画面に成長したコーンが映っていた。
何かのドラマの会見らしい…「原作は漫画で…」とコーンの隣に座っている男の人が話していた。
だけど、そんな言葉は右から左に流れていって、私にはコーンだけしか見えてなかった。
コーン。
優しい綺麗な妖精さん。
何故、貴方が人間界[こんなところ]にいるの?
妖精界に帰るから、二度と会えないって言ってたんじゃないの?
ねぇ、コーン……

『―――主演はこちらにいる、敦賀蓮くんが…』

え?
今、コーンのこと、よりにもよってショーちゃんが大嫌いな顔だけ俳優『敦賀蓮』って言った?
コーンが『敦賀さん』って呼ばれて、返事をする。
どういうこと?
コーンじゃないの?
…ううん、どう見たってコーンよね。
『敦賀蓮』は髪はウイッグ、目はカラーコンタクトだって説明してるけど、髪はともかく目はごまかせない。
だって、ショーちゃんもカラコン入れて目を青くしてるけど、そんな自然な色にならないもの。
コーンと同じ、宝石のような碧眼じゃないもの。

ねぇ、コーン。
貴方はいったい何者なの……?

 

夜遅く。
共演者のNGが続き、予定より遅くなってしまった帰宅時間。
あまり睡眠は取れないな…と思いながら、社さんを送った後、自分の家に向かって車を走らせていた。
ようやく着く…と思った時、マンションの近くの歩道に座り込んでいる小さい影を見つけ、驚いて車を止めた。
大きさ的に男性が酔っぱらって…ということはなさそうだ。
子供か、女性。
こんな時間になんでこんなところに…と不審に思って車を降りると、その人物の傍に寄った。
近くによると黒髪の高校生くらいの女の子だとわかり、眉を寄せる。

「…お嬢さん。こんな時間にこんな場所にいると危ないよ?」

世の中、親切な人ばかりではない。
見つけたのが俺だったから良かったものの、危ない男が少女を見つけていたらと思うとぞっとする。
何が起こったとしても俺には関係ないことだけど、事前に防げる事を放置できるほど俺は鬼畜じゃない。
声をかけると少女ははっと顔を上げ、驚きに満ちた表情でまじまじと俺を見た。

「敦賀、蓮……」

少女は飾り気のない格好で、今時の子にしては珍しく化粧もしてなかった。
少し地味な印象を受けるけど、整った顔をしているから、もう少し大人になったら誰もが振り返る美女になるかもしれない。
そんな印象の少女は嫌悪と好意が入り混じった複雑な表情を浮かべて俺を見ていた。
好意だけならまだわかる…一応これでも人気のある俳優だし、ファンもありがたいことに結構いるから。
だから、この少女がそのうちの一人でもなんら不思議はないし、ファンじゃなくても外見には恵まれてるから、好意を向けられやすい。
けれど、何故嫌悪まで?
その嫌悪は俺[敦賀蓮]に向けて?それとも……

「…家出かい?でも、こんな時間にふらついてたら襲われても文句は言えないよ?」

「………貴方に、会いに来たんです」

「俺に?」

やっぱりファンの子だったのか?
家の前で待ち伏せされるのは初めてじゃない。
芸能界にいればプライバシーなんてあってないようなものだ。
だから、不思議じゃないけど…この子は、今までのファンとは違う気がする。

「…俺に会いたいって思ってくれるのは嬉しいけどね、年頃の女性が一人でこんな時間にこんな場所にいたら危ないだろう?送ってあげるから、今日のところは帰りなさい」

「時間は取らせません。ただ、確認したくて………それだけです」

「確認?」

はて。
確認したいこととは何だろうか?
初対面の少女に確認されることなんてないと思うんだけど…

「貴方は…貴方は、コーン?」

「え………?」

懐かしい響きに、俺は言葉を失った。
俺のことを『コーン』と呼ぶのは、たった一人。
俺の英語訛りの発音のせいで『クオン』を『コーン』と聞き間違えた、メルヘン思考な女の子だけ。

「キョーコ、ちゃん…?」

まさかそんなわけないだろうと思いながら、無意識のうちに思い出の少女の名を呼んだ。
だって、あの子は京都に住んでて、王子様の『ショーちゃん』と幸せになってるはず…
こんなところにいるわけがない…
そう思ったのに、少女は「やっぱりコーンなのね!」と微笑んだ。

「ホントに、キョーコちゃん?」

「そうよ!久しぶり、コーン。……妖精じゃ、なかったのね」

その言葉に、少女―キョーコちゃんが今だ俺のことを妖精だと思い込んでいたことを知る。
夢を壊してしまったことを申し訳なく思いながら、何故俺[敦賀蓮]が俺[クオン・ヒズリ]だとわかったのか不思議に思った。

「うん…ごめんね。ところでキョーコちゃんは何で敦賀蓮が俺だってわかったの?」

「あのね、テレビで見たの…すぐにコーンだってわかったわ」

テレビ…と言われて、先日行ったドラマの会見を思い出す。
原作が漫画だというそのドラマの主役を演じることになったのだが、問題はその主人公の外見が金髪碧眼だったことだった。
日本人で、髪を染めてカラコンをしている人は芸能界では珍しくないけど、俺はダメなんだ。
それは俺の本当の色だから…だから、俺は断ろうと思ったんだ。
だけど、社長に「外見が外国人でも、日本人だと思わせる演技をしろ」って言われて、演技力で外見をカバーすることになったんだ。
俺[久遠]だとばれたらどうするんだ…とひやひやしたけど、あちらでの俺[クオン]の知名度は低かったから、俺[敦賀蓮]を見て俺[クオン]と繋げる人はいなかった。
それでいいはずなのに、ぽっかりと心に穴が空いた気がしていた…
なのに…
キョーコちゃんだけは俺[クオン]に気付いてくれた。
一緒に遊んだのは、たった数日間だけなのに。
俺[敦賀蓮]が俺[クオン・ヒズリ]だとばれたらダメなのに、まだ自分への誓いを果たしていないのに、本当は焦るべきなのに…どうしてこんなに心が温かくなるんだろう…?

「そう、なんだ…それで会いに来てくれたの?」

「うん。何で貴方が『敦賀蓮』なのかわからなかったけど、コーンに会わなきゃって思って」

「…そうなんだ」

この子にとって俺は『敦賀蓮』じゃなくて『コーン』
そして、『コーン』には好意を抱いてくれているけど、『敦賀蓮』の名前を口にした時、一瞬感じたのは…嫌悪?
キョーコちゃんは『敦賀蓮』が嫌いなのか?
過去を持ちこまないと決めた俺は今『敦賀蓮』でしかいられないのに…
今度は胸が締め付けられるように痛い。
さっきまで、すごく温かい気持ちでいられたのに…。

「私ね、コーンにずっとお礼が言いたかったの!」

「お礼?」

「コーンは私の辛い気持ちを聞いてくれて、泣き場所になってくれたでしょ?それに、涙が減るようにって魔法の石をくれたし!」

「俺がしたくてしたことだから、お礼なんて必要ないんだよ、キョーコちゃん。それに…ごめんね、魔法の石なんて本当は嘘なんだ…」

「うん。コーンは人間だったもんね」

少し悲しそうにそう言うキョーコちゃんに、何で俺は妖精じゃないんだろう…なんて馬鹿なことを思った。
妖精だったら、この子にこんな顔をさせなかったのに。

「だけどね、コーン。この石は魔法の石なの。私の悲しみを吸い取って、私を元気にしてくれたのよ!」

「本当…?」

「本当よ。この石はコーンに貰ったあの瞬間から私の宝物だったの!」

そう言ってキョーコちゃんが小さな財布を開けて、俺があげたアイオライトを取り出して見せる。
10年も前にあげたものなのに、欠けた様子もないその石を見て、大事にしてくれてるんだ…と嬉しくなった。
あの思い出が宝物なのは、俺だけじゃないんだ…

「そうか」

「うん。それとね…」

「うん?」

「コーンのこと思い出すたびに、後悔してたの」

「え?」

後悔してたって…俺に会ったことを?
それとも、俺の前で泣いたことを?

「…なに、を?」

「私が話を聞いてもらったように、コーンの話も聞けばよかったって」

「え…?」

「コーン、よく辛そうな顔をしてたでしょ?なのに、私は自分のことばっかりで、コーンが耐えてる横でボロボロ泣いて、慰めてもらって…だから、私も話を聞いてあげればよかったのにってずっと後悔してたの。話すだけで悲しみが薄らいで、心が軽くなるって、私はコーンに話を聞いてもらって知ってたのに、私は甘えてばっかりで…」

ぎゅっとアイオライトをサイフ越しに握って俯くキョーコちゃん。
ずっと、俺のことに気かけてくれていたんだと思うと自分の中の闇が薄らいだ気がした。
見向きされなかった俺[クオン]をずっと見つめていてくれた女の子。
この子の中が『ショーちゃん』でいっぱいでも、俺[クオン]の居場所も確保されていたんだと思うと嬉しい…
演技でいっぱいな俺の中に、ずっとキョーコちゃんがいたように、キョーコちゃんの中にも俺がいた。
そんな些細なことで何でこんなに幸せになれるんだろう…?

「そんなことないよ、キョーコちゃん。だって君は、『飛べない』と言った俺のために泣いてくれただろう?それだけで俺の心は軽くなったんだ…」

「本当…?」

「うん、ホント。だから、そんなに後悔しなくてもよかったんだ」

おずおずと顔を上げるキョーコちゃんに笑いかける。
すると、何故か彼女は驚いたように目を見張った。

「キョーコちゃん?」

「…ホントに貴方がコーンなのね……」

「え?どういう意味?」

「だって、笑顔が違ったんだもの…」

「笑顔?」

どういう意味だ?
彼女が何を言いたいのかわからなくて首を傾げる。

「…私ね。貴方がコーンだってすぐにわかったの」

「うん。それはさっき聞いたけど…」

「だけど…コーンはもう『コーン』じゃなくて、『敦賀蓮』になっちゃったんだって思ってた」

「俺が、『敦賀蓮』に?」

本当にどういう意味なんだろう?
俺が敦賀蓮だってことは見ればわかるだろうし、彼女だって最初に確認してるはずだ。

「……だって、笑顔が違う」

「笑顔…?さっきも同じことを言っていたね。どういう意味?」

「『敦賀蓮』が浮かべる笑顔って綺麗なの…作りものみたいに…」

その言葉にはっとする。
キョーコちゃんは今まで誰も気付いていなかったことに気付いたのだ…俺が心から笑ってないことに。
俺が普段浮かべる笑顔が偽物だって…

「コーンの笑顔はね、すっごく綺麗なの!作りものじゃなくて自然な笑顔で、心が温かくなるの……だけど、『敦賀蓮』の笑顔はいつでも同じで心が籠ってなくて、嫌…」

「だから、『敦賀蓮』のことが嫌いなの?」

「え?」

「キョーコちゃんは素直だからね。『コーン』は好きだけど『敦賀蓮』は嫌いってずっと目が言ってたよ?」

「うっ……」

否定しないキョーコちゃんに思わず苦笑する。
本当に昔と変わらず素直な子だ。
よくこんなに純粋に育ったな…としみじみ思った。

「だって…」

「だって?」

「…『敦賀蓮』が『コーン』を消しちゃったんだって思ったら……」

…本当にこの子は俺を見ている。
たった数日間、しかも昼間だけしか会っていなかったのに。
俺[敦賀蓮]とはテレビ越しにしか見たことがないはずなのに。
彼女は、俺[過去]と俺[今]が違う人間だと察している。
本当に違う人間ではないけど、今の俺は『敦賀蓮』として親も祖国も自分[クオン]も持ち込まないと決めて、ここに立っているから。
そして…俺[敦賀蓮]が過去[クオン]を消し去りたいことを感覚的な部分で見透かしてる…
彼女に自覚はないだろうけど、「『コーン』じゃなくて『敦賀蓮』になっちゃった」「『敦賀蓮』が『コーン』を消しちゃった」と言ったあたり、本能的に気付いてるんだ…
今まで、社長にしか気付かれなかったのに…

「…『コーン』は消えてないよ。隠れてるだけなんだ」

「そうみたいね。だけど、何で?貴方は今でもコーン[自然]な笑顔を浮かべられるのに、何でいつも仮面みたいな笑顔を浮かべてるの?」

鋭い…鋭すぎる…
年の割に聡い子だと思っていたけど、本当に察しが良い…。
だって、『敦賀蓮』は俺が作り上げた者。
いつでも紳士である彼[敦賀蓮]は、作られた存在だから、浮かべる笑顔も偽物[仮面]でしかない。
俺[クオン]を曝け出せない俺[敦賀蓮]に自然な笑みを浮かべることなんて不可能なんだ…

「…どうしてだろうね?」

あまりつっこまれたくなくて、キョーコちゃんが指摘した作った笑み[仮面]を浮かべると、キョーコちゃんは嫌そうな顔をした。
…そんな顔されると傷つくんだけど…
わかっていた反応とは言え、少々ショックを受けてしまった俺だが、察しの良い彼女は触れられたくないのだと察してくれて、再び問うようなことはしなかった。

「ところでキョーコちゃん。こんな時間にここに来たのは、俺がコーンだと確認するためなんだよね?なら、もうそろそろ…」

「あ!そうだったわ!」

帰った方がいい、と言おうとして遮られる。
他に目的があったのかと彼女を見つめると、彼女は小さなサイフから俺のあげたアイオライトを取り出す。
そして、「はい」と俺に差し出した。

「え?」

「今日はね、『敦賀蓮』がコーンだったらこれを返そうと思って、そのために来たの」

「なん、で?本当の魔法の石じゃないけど、君にとっては魔法の石だったんだろ?コーンが俺だって知っちゃったから『魔法』の効力がなくなっちゃって、もう必要なくなったってこと?」

「ううん、違うの。ショーちゃんがね、『敦賀蓮』のことが嫌いなの」

「『ショーちゃん』?」

例の、彼女の王子様か。

「うん。だからね、コーンと決別しに来たの…。だって、コーンは『敦賀蓮』だから」

「っ?!」

「ショーちゃんはコーンが貴方[敦賀蓮]だってことどころか、コーンに会ってたことも知らないけど、ショーちゃんが嫌いに思ってる人を私が大切に思ってたら嬉しくないと思うの。私も、裏切ってるみたいで心苦しいし…。だからね、コーンと決別しようって思って…だけど、石を持ってたら、ずっとコーンのことを大切なままでいそうだから…」

「だから、返すね」と言って、彼女は俺の掌にアイオライトを乗せた。
そして、呆然としている俺から離れると、走って距離を空ける。
そして、一度振り返ると、泣き出しそうな顔を笑顔に変えて、手を大きく振った。

「ばいばい、コーン!貴方と会えてよかった!!」

そう言い残して、去っていくキョーコちゃん。
悲しくても、自分を奮い立てて笑顔になっていた昔の彼女を思い出して、本当に変わってないなと思うと共に、俺との思い出を置いて行った彼女を酷いと思った。
俺は過去[クオン]を捨てても、キョーコちゃんとの思い出だけは捨てきれなかったのに…
なのに、彼女は『ショーちゃん』のためなら、ずっと大切にしていてくれた思い出を捨てられるんだ…。

「ははっ……」

嗤うしか、ない。
アメリカでは、クオンは切り捨てられ、見下され、軽蔑された。
だから…クオン・ヒズリじゃダメだから、敦賀蓮になったのに。
彼女には、敦賀蓮だから…切り捨てられた。

「痛いよ、キョーコちゃん…」

傷ついた顔をしていた俺[クオン]が気になっていたと言っていた彼女。
そんなに気になっていたなら、今ここに戻ってきて、俺に笑顔を見せてよ…
嘘だって言って?
そしたら俺は、自然[クオン]な笑顔を浮かべられるから…だから、そう言ってよ、キョーコちゃん。
痛いんだ…とっても、とっても……

「どうしてっ…どうして、こんなに胸が痛いんだっっ」

押しつけられたアイオライトを握って、座り込んだ。
ギリギリと胸が締め付けられる。
クビにされた時さえ、敗北感は覚えても、こんなに苦しくなったことなんてなかったのに…
キョーコちゃんは思い出の大切な女の子でしかないはずなのに、何でこんなに痛いんだろう…?
再起をかけて日本にきて、そのためにたくさんのものを捨ててきたのに…『キョーコちゃん』を手放すのは、その時以上に辛いよ…
彼女にそんな選択をさせた『ショーちゃん』が憎い…
ずっと、彼女を独り占めしてきたくせに…
俺の居場所まで取るなよ。
どうして俺[敦賀蓮]に嫌いなんて感情を抱いたんだ…無関心でいてくれれば、コーン[クオン]ごと俺を捨てるなんてことはしなかったのに!

「お願いだ…俺との絆を捨てないで……」

俺[敦賀蓮]の中にクオンを見つけてくれたのは君だけなのに…
君まで俺から目を放さないで…――

空に輝く星を見上げ、願う。

「俺を、見て……キョーコちゃん」

 


――――――――――――――――――――――――――――――――――――
なんか、すっごく痛々しい…
おかしいな…こんなラストじゃなくて、もっと軽い感じになるはずだったのに…
そして、やっぱり自覚のない蓮。
こんなに苦しんでるのに、キョーコちゃんと決別されるのが辛いのは、好きだから…という発想は出てこない。
そこが蓮クオリティ!(ぉい

 

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