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本能の赴くままに日記や小説を書いています。
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「ルーク・フォン・ファブレ子爵、参上致しました」
父に連れられ登城したルークはそう言って膝をついた。
"前回"はそんな事すら思いつかなかったし、それどころか乱入である。
恥ずかしい限りだ。
「顔を上げよ。久しいな…記憶を失って以来か…」
「はい。ご無沙汰しております」
「そう畏まらずとも良い。…お主の法案は良いモノばかりであった…これからも期待しておるぞ」
「恐れ入ります」
これからなんてないと知っているくせに、と毒を吐きたくなったが我慢する。
そんな事を口にすれば今までの苦労が水の泡だ。
アクゼリュスに行ってパッセージリングを操作しなくてはならないのだから。
「ここに呼んだのは他でもない。お主に親善大使としてアクゼリュスに行ってほしいからだ」
「…私に、ですか?恐れながら陛下。私は政治に参加してると言っても今まで外に出た事なかった未熟者です。いきなりそのような大役を任されても…」
「わかっておる。だがお主がアクゼリュスに行く事は預言に詠まれているのだ」
「…預言、ですか」
「佐用。導師、これを詠んでいただけますかな?」
大臣が持ってきた石を差し出すと、イオンは戸惑いながらもその石に触れ、預言を詠み出した。
曰く、聖なる焔の光がアクゼリュスに行く、という内容のもので、続きは石が割れていた為詠めなかった。
「…わかりました。お受けしましょう」
「そうか!ルークならそう言ってくれると思っていた。明日にでも出発しなさい」
いくらなんでもそれでは準備期間が短過ぎるのでは…とその場にいた他の貴族たちは不審に思ったが、当のルークは「拝命しました」とあっさり了解したので、疑問に思いながらも口に出す者はいなかった。
「白光騎士団の手持ちの騎士を護衛として連れて行ってもいいですか?」
「カイル・ライラックの事か?」
「いえ、彼もですが王族の護衛として一人では少な過ぎるでしょう。私の手持ちの一部隊持っていきたいのですが…」
王族ならそれくらい当たり前である。
寧ろ一師団あっても良いくらいだ。
しかし、ルーク手持ちの部隊と言えば白光騎士団の中でもよりすぐりである。
一人一人が軍の将官並の力を持っており、いずれも国ではなく公爵でもなくルークのみに忠誠を誓っている騎士たちだ。
預言の続きを知っているインゴベルトとしては彼らという戦力を失うのは痛い。
だが、ここで拒めば不審に思う人間も出てくるだろう。
「…良かろう」
インゴベルトが頷いたのを見て、今まで静かにやり取りを見ていたナタリアが「お父様!」と叫んで立ち上がった。
「やはり私も一緒に参りますわ!ルーク一人では不安ですもの」
その言葉はルークをけなしているものだと気付いていないナタリアは、その言葉を聞いて顔を歪めているクリムゾンやルークの手腕を尊敬している貴族たちに気付かない。
「ナタリア…駄目だと昨日も言ったろう」
「しかしルークは先日まで外に出た事すらなかったのですわよ?婚約者として私が支えて差し上げなければ!」
外に出た事なかったのは王の命令だったからであり、ルークの意志ではない。
それにルークは既に一人前の貴族で、自分の力で爵位も授かっている。
外に出た事がなくとも臨機応変でやり遂げるほどの力はあるのだ。
「恐れながら、ナタリア王女」
「なんですの?ファブレ公爵」
「貴女の役割は我が息子が無事にやり遂げる事を信じる事のはず。それとも、ルークでは貴女の信用に値しないと、そうおっしゃるのですか?」
「まぁ、何を言ってるんですの?私はルークを信じていましてよ。それとこれとは話が別ですわ」
クリムゾンの言いたい事を全く理解していないナタリアにその場にいた殆どの者が内心頭を抱える。
インゴベルトも自分の娘の理解力のなさに呆れたのか、溜息をつき「ルークについてゆく事を禁ず。これは勅命だ、ナタリア」と最終手段に出た。
言われたナタリアは渋々引き下がったが納得はしていないようだ。
きっと今回もこっそりついて来るだろうなぁとルークは苦笑した。
「…陛下、ティア・グランツはどうなりました?」
「おぉ、そうであった。ティア・グランツは罪を軽減するのために同行させる事になった。ヴァン・グランツも同様だ」
やはり、か…とルークは眉をひそめた。
それを勘違いしたのか慌ててインゴベルトが言葉を続ける。
「王族の屋敷への襲撃と誘拐。それに王族への不敬。本来なら即刻首を落とすべき罪だがティア・グランツがやった事は重過ぎて彼女の死だけでは償いきれぬほどだ。だから、兄であるヴァン・グランツと共にアクゼリュスに派遣し、役に立ったのなら罪を軽減してから刑に処す事になっておる」
「…そうですか」
アクゼリュスから帰還できたらティアの罪の軽減を申し出てみようと決意する。
彼女が何故兄を襲うなんて暴挙にでたのか、その理由を知ればもう少し猶予が与えられるだろうし、罪も軽くなるかもしれない。
「では陛下、導師イオン、明日の準備がありますので御前を失礼させていただきます。カーティス大佐、明日からよろしく頼む」
ルークはそう言って礼を取ると書類の引き継ぎや旅支度をする為にその場を辞した。


――あとがき―――――――――――――
礼儀がわからない…
どうやれば失礼じゃないんだろう?

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