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本能の赴くままに日記や小説を書いています。
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「お呼びでしょうか、師団長」
コンコンッとノックした後に少佐は中にいるジェイドに呼びかけ、入室の許可を待つ。
「どうぞ」と許可をもらって入った部屋はケテルブルク並に寒かった。

「…何か問題でもございましたか?」
「さぁ?貴方を呼んでほしいと言ったのは私ではなく彼なので彼に聞いて下さい」
そう言われて振り向いた先にいたのは無表情の男。
雰囲気や態度からして軍人か何かのようだ。
その男は何か怒っているようで少し怖い。
「…どうなされましたか?」
「…マルクト軍人というのは礼儀を知らないのか?」
「は?」
いきなり言われた言葉に怒りを感じたが、それは次に言われた言葉で吹き飛んだ。
「こちらにいらっしゃるのはキムラスカ・ランバルディア王国第三王位継承者、ルーク・フォン・ファブレ様であらせられる」
少佐は驚き目を見開かせると素早い動きで膝をついた。
「これは…知らずとは言え数々の無礼を、お許し下さい!」
膝をついた少佐に皆驚いている中、カイルだけは満足そうにその兵士を見た。
「ぁ…もう顔を上げても良いぞ?」
慌てて言われた言葉に少佐は「はっ!ありがとうございます」と言って立ち上がった。
「…どうやらマルクト軍人にも常識はあるようだな。カーティス大佐殿はこの方が王族と知っていたにも関わらず礼の一つもしなかったぞ」
言われた言葉に少佐は真っ青になる。
マルクト軍人は礼儀知らずだと言われても仕方ない。
「し、師団長!このお方が王族だと知っていてこの部屋に通したんですか?!」
「そう言ってるでしょう。いきなりどうしたんですか?」
少佐は倒れそうになった。
周りにいる兵士たちも同様だ。
「何言ってるんですか!こんな部屋に通すなんて無礼にも程があります!!」
「しかし彼らは不法入国者ですよ」
反省のカケラもない上司の様子に少佐は泣きたくなった。
「あーもー…師団長、いいですか?例えばですね、陛下が間違えてキムラスカに不法入国したとします。捕まって尋問を受けていたらどうしますか?」
「不敬罪で引っ捕らえますよ。不法入国したからと言って陛下に尋問など不敬にも程があります」
聞いていたカイルの表情が再び険しくなっていく。
それを見て少佐は土下座したくなってきた。
「何でそれがわかるのにこの状況がマズイ事はわからないんですか!こちらのいらっしゃるお方は王族で、キムラスカで三番目に偉いお方ですよ!それに、ルーク・フォン・ファブレ様と言えば善政で有名な方です。国民に我々マルクトがこんな扱いをしたとばれたら和平どころか戦争が始まります!」
真っ青な顔で叫ぶ少佐の言葉に漸く理解したのかジェイドの顔色が悪くなる。
今更だな、とカイルは呟いた。
「御前で数々の不敬、失礼しました。国に帰りましたら責任をもって辞職しますのでこの場はどうかご容赦下さい。貴賓室にご案内します」
「え…いや、構わないよ。ここにいる人だけの秘密にしとけばばれないし…カイル、報告はしないでくれないか?和平を成功させたいだろ?」
「…ルーク様がそうおっしゃるのであれば。しかし、次があれば公爵に報告させていただきます」
わかった、とルークは頷きつつこれって異常だったのか…と"前回"を思い出す。
"前回"ではジェイドは膝をついたものの皮肉を言っていた気がする…その場にカイルがいたら斬り捨ててたかもしれない…
「ありがとうございます。貴方様のご慈悲、忘れは致しません」
少佐は深く頭を下げると扉を開いた。
「ルーク様、どうぞ。ご案内致します。…イオン様もご一緒においで下さい」
少佐はイオンをこんな所に連れてきただけでなく、椅子さえ勧めていない上司に呆れながら呼びかけた。
「…ならばついでにそこの女を牢屋にほうり込んでおいてほしい。そいつはファブレ家を襲撃しただけでなく、事故とは言えマルクトまで我らを飛ばした張本人だ。屋敷ではルーク様誘拐騒ぎになっているだろうな」
少佐は目が点になった。
堂々とルークの隣に座っていたのでルークの友人か何かと思っていたのだが…
「師団長ぉ~!何故ルークが不法入国などなさったのか、その理由さえ聞いてなかったんですか!?そんなの初めにやる事じゃないですか!!」
少佐は目に熱いモノが込み上げてくるのを感じた。
自団の師団長は皇帝と親友であるが故にどんな不敬も不問にされていた。
戦闘でも、研究者としても優秀であったせいでもある。
副官なので対人関係に問題ありな事も知っていた。
だが、イオンには丁寧に接していたので考え過ぎだと安心していたのに…
「…そこの女を拘束しろ!イオン様、ダアトの軍人のようですが、よろしいですね?」
青くなっているイオンに確認すると戸惑うような仕種をした後「乱暴はしないで下さいね?」と遠回しに許可を出した。
「私はっ!」
ティアは反論しようとしたが、周りにいた兵士に拘束される。
「彼女は譜歌を使うので気をつけて下さい」
カイルの助言に少佐は頷いて兵士たちに猿轡を用意するよう指示を出す。
「わかりました。…師団長、私が皆さんをご案内しますので師団長は指揮をとっていて下さいませんか?」
「…いいでしょう。ルーク様、先程は申し訳ありませんでした。それでは失礼させていただきます」
軽く礼をして立ち去ったジェイドに少佐はホッと息をついた。
「本当に申し訳ありませんでした(…だからフリングス少将にしておいた方が、と進言したのに)」
「何故、あの死霊使いなんかが和平の使者なんですか?もっと相応しい人がいるでしょう。彼から苦汁を味わったキムラスカにしてみれば彼は火に油だと思うのですが…」
「私も師団長は外交には向かないと思っておりますが、陛下の右腕としても名高い師団長を使者にする事で和平を本気で望んでいると伝えたかったようで…」
疲れ切った少佐の様子にカイルとルークは同情する。
カイルは礼儀を知らぬ上司をもっている事に、ルークはジェイドの人間離れしたところや秘密主義なところに苦労しているんだろうなと思ったためである。
「…案内してくれるんだろ?立ち話もなんだし移動しないか?イオンも…」

ドォォオオンッ

ホッとしてつかの間、地面が揺れた。



----あとがき-----------------------
アニスがいねぇ!
なんかオリキャラばっか喋ってるよ(泣
少佐殿、どうなるだろ…?

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