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本能の赴くままに日記や小説を書いています。
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カイツールに着くとグランツ謡将はカーティス大佐と話していた。
グランツ謡将の顔色は悪い。
おそらくタルタロス襲撃について尋問されているのだろう。
当たり前だ。
部下の不始末なのだ、責められない方がおかしい。
気配を感じたのか、ふとこちらを向いた。
ほんの一瞬、助かったとばかり顔を輝かせたが、私が斜め後ろに控えているのを見て、いつもルーク様に接する時のような表情になった。
「ルーク、無事だったか」
こいつもか!
ガイ・セシルといい、こいつといい…ルーク様と自分の身分を正確に把握してるか?
「はい。ご心配をおかけしました」
「いや、無事なら良いのだ。ディストにはしっかり言い聞かせておこう」
あくまでこんな公の場で師として振る舞う気か…
良いだろう
前々から言ってやりたかったのだ。
「…ルーク様。発言してもよろしいでしょうか?」
「ん?……良いよ、許す」
ルーク様はこちらを向いた時、一瞬だけ固まった。
おそらくまた無表情になっているのだろう。
以前、ルーク様が「お前ってキレると無表情になるから恐い」とおっしゃっていた。
それ以降、主の前でそんな失態は犯すまいと決めていたが、飛ばされてから失態が多くなっている気がする。
それもこれも非常識な輩が多いせいだ。
そのような馬鹿者はガイくらいだと思っていたから驚いた。
「ヴァン・グランツ。貴方、何様のつもりですか?」
「は?カイル殿、それはどういう…」
「皆まで言わないとわからないんですか?ガイ・セシルにも言いましたが、ここは外で屋敷の中ではありません。確かに貴方は私的な場ではルーク様の師であります。しかし、外では師弟である前にキムラスカ王族と神託の盾騎士団総長です。…ここまで言ってもわかりませんか?」
子供にでもわかるくらいかみ砕いて言ったつもりだ。
本当は屋敷でも最低限度の礼儀くらい弁えてほしいが、それは次に稽古に来る日でいいだろう。
ルーク様に馴れ馴れしいグランツ謡将は屋敷の殆どの者に嫌われている。
公爵やシュザンヌ様もよく思っていらっしゃらないからお許し下さるだろう。
「…いや、理解した。わざわざすまない」
「私ではなく謝罪ならルーク様におっしゃって下さい」
「そうだな。ルーク様、申し訳ありませんでした」
「いえ、頭を上げて下さい。これで侮られるようなら俺もまだまだって事ですし」
それならこれからもっと頑張らなくちゃ、と笑っておっしゃるルーク様の心の広さに感謝しておけ。
許しさえあればこの場で斬り捨ててやったものを…
「そう言えば、師匠は何故ここに?襲撃犯が貴方の妹だったので、てっきり責任を追求されて捕まっているものだと思ってました」
確かにその通りである。
屋敷を襲撃した理由がおおざっぱに言えば兄妹喧嘩。
誘拐された理由が謡将の近くにいたせいで巻き込まれた、であれば捕まる理由としては充分過ぎるくらいだ。
まさか脱獄してきたのではあるまいな、と睨みつければ謡将は首を振った。
「事情を話し、罪を軽減するために貴方様を追ったしだいにございます」
「へぇ、師匠も災難でしたね」
しみじみとそう言うルーク様に機嫌が悪くなったのか一瞬嫌そうな顔をする。
ルーク様の責任ではなく妹の教育を間違えた謡将の責任だろうに…ルーク様は何故咎めないのだろう?
感情の変化に敏感なルーク様なら気付いてないなんて事はないだろうに。
「…俺は少し疲れたのでもう休みますね」
「そうか…」
また敬語ではなくなっている。
あぁ…私にその権限があったなら即刻打ち首にするのに…
「カイル、行こうか?お前も疲れたろ?」
「お気遣いいただきありがとうございます」
「いや。あ、そうだ。鳩飛ばさなきゃ」
「そうでしたね。では鳩を借りに参りましょうか?」
「そうだな。行こう」


――あとがき―――――――――――――
カイルの性格がアスランから遠ざかってくよ…(泣
次は飛んでバチカル予定

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「僕は貴方を一生恨みます」
石田はそう言って現世に戻って行った。
今回の出来事で石田の死神嫌いは更に酷くなっただろう。
奴は一護をライバル視していたし、大切に思っていたからな。
言われた兄様はその後ろ姿を感情のない目で見送った。
一護が死んで、こちらに戻ってきてから兄様の感情が動くのを見た事がない。
多くの死神や石田たちに恨み言を言われたが無言でその様子を見ているだけだ。
私や恋次とて恨めるものなら兄様であろうと恨んでいただろう。
ただ、迎えに行った時の兄様の姿を見ていなければの話だ。
戻って来ない一護や兄様を捜し、見つけた時は目を疑った。
命の次に大切な斬魄刀を投げ出し、一護を抱きしめて人目も気にせず泣いている。
一護の名を何度も呼びながら力いっぱい抱きしめるその姿を見ているから私や恋次たち一部の死神は兄様を憎む事ができなかった。
「朽木さん…」
「あ…」
真っ赤な目をして話しかけてきたのは現世の人間で一護が好きだった井上織姫…
一護の霊圧にあてられて力を手に入れ、それ以来一護の力になろうと頑張ってきた…一護と一緒に私を助けに来てくれた少女。
「ねぇ、朽木さん。何で?何でなの?!黒崎君は何も悪い事してないよ?ただ、ずっと家族や私たちやこの世界を守ろうと頑張ってきただけだよ。確かに黒崎君の力は強過ぎるかもしれないけど、その虚の力だって手に入れたかったわけじゃないし、暴走しないように平子君のところでずっと修行だってやってた!黒崎君はその力を悪用しようとした事なんて一度もないのに…何で?皆の為に戦ってきたのに何で守ろうとしてきた人に殺されなきゃいけないの!!」
「井上…」
「黒崎君は死神じゃない…家族だっている人間だよ?大切なものを守る為に力を付けた優しい人なのに…」
井上はそう言うと俯いた。
私は何も言い返せない…一護を奪ったのは私たち死神だ。
生活を奪い、自由を奪い、命さえ奪った。
「…ごめんね、朽木さん。朽木さんだって辛いのに…」
「いや、井上が謝る事など何もない」
「ううん…私だって朽木さんのお兄さんが泣いてるの見たうちの一人だから…あんなに泣き叫んでたのを知ってて責めるなんて私、嫌な子だね」
井上は笑った。
仲間想いな黒崎君がここにいたらきっと怒られるね、と。
「じゃあね、朽木さん…もう会う事もないだろうね」
「…そうだな」
井上も石田と同じように憎しみを抱えて生きてゆくのだろう。
井上の背中は兄様を恨むと言って去った石田ととても似ていたから。
その後を茶渡が追う。
一瞬、こちらを見た彼は全てに絶望しているような表情だった。
茶度は一護の親友だったからな、仕方ない事だ。
彼らからライバルを好きな人を親友を奪ったのは我々だから。

死神の中で一番取り乱し、泣いて、兄様を憎んだのは意外な事に接点の少なそうな浮竹隊長だった。
一護の死を知った隊長は青い顔を更に青くして発作を起こした。
そして、その死が兄様からもたらされたものだと知ると先程血を吐いて倒れかかったにも関わらず兄様に掴みかかり、どこからその力がくるのかわからないほど強い力で兄様を殴った。
皆、あの隊長がそんな行動に出るとは思っていなかったので、今まで兄様に詰めていた者たちまで唖然として、慌てて隊長を止めにかかった。
ただ兄様だけは一護を抱きしめて泣いていた人物と同一人物だとは思えないほど平然としていた。
「満足か?」
淡々と殴られたというのに普段と変わらない口調で尋ねる兄様に隊長は「なわけないだろう」と睨みつけた。
「殺してやりたいくらいだ…こんな激しい感情を持ったのは生まれて初めてだよ」
そうだろう。
海燕殿が亡くなった時でもここまで取り乱しはしなかった。
「ならば殺せばよかろう。私は抵抗などせぬぞ」
「何言ってんすか隊長っ!」
「殺せば良いと言った。気が済むまでこの身を斬り刻めば良い」
兄様は刀を投げ捨て丸腰になる。
いつもは刀などなくとも少しの隙もない兄様が今は平の隊員でさえあっさりと殺せるくらい隙だらけだ。
それを見て、私も他の死神も浮竹隊長が斬りかからないか不安になったが予想は外れ、刀に手をかける様子さえない。
「誰が殺してやるものか…白哉、死ぬ事が赦されると思うなよ。お前は恨まれ憎まれ嘆き悲しみ苦しんで絶望の中生きていけ」
とてもじゃないが、あの隊長が言った言葉だとは思えなかった。
隊長は誰もが尊敬するような優しい方で、きっと他人から聞いた言葉なら「あの浮竹隊長がまさか」と信じなかっただろう。
「彼がお前を赦したって俺は死んでも許さない。お前に死なんて楽な道をやるほど俺はお人よしじゃないんだ。残念だったな」
そこで漸く兄様が死にたがってたのだと気付いた。
いや、気付いてはいた…後追いしないかとずっと不安だった。
その時漸く兄様の表情が動いた。
能面のような顔にほんの一瞬だけ絶望が走ったのだ。
これから続く生き地獄に絶望し、全てを諦めたような顔だった。
「…そうか」
それからの兄様はいつも通りで、他人から見れば大事な人を失ったとは思えないだろう。
だが、私は確信していた。
兄様はこれから先、一生笑わず怒らず悲しまず、一護の面影だけを抱いて生きてゆくのだと。
兄様は投げ捨てた刀を拾いその場を去った。
その後すぐに浮竹隊長が倒れた。
さっきまでは気力でなんとか立っていたのだろう、青白い顔をして血を吐く隊長は人に支えてもらわないと座る事さえままならぬほどだった。

…隊長が一護が好きだったのは知っていた、兄様と付き合っているのを知っていても恋い焦がれているのだとわかっていた。
一護はどういう人間なんだ?と訊かれた事もある。
一護に会う度抱えきれぬほどのお菓子を渡し、話を聞きたがっていた。
一護と共にいる隊長はいつも体調が良く、病は気からとはよく言ったものだと感心したくらいだ。
つまり、逆を言えば一護がいない今、症状は悪化してゆくばかりだという事だ。
その日以降ずっと臥せっている。
三席の二人が頑張って世話を焼いているが、もう永くないのだと誰もがわかっていた。
そして一護が死んでから約一月後、隊長は穏やかな顔で静かに息を引き取った。
兄様にその事を伝えると「そうか」と関心のなさそうな、しかしどこか羨ましそうな声音で呟いた。


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「勝った…」
斬月で身体を支えながら、倒した敵を見る。
正直なところ勝てるとは思っていなかった。
ただ、負けられない、という想いで戦っていた。
そして、最後の一撃を彼はあっさり受けた…その目に哀れみを宿しながら
彼が言いたい事はわかっていた、だから

胸から刀がはえてきても驚かなかった

俺を後ろから警戒を抱かせず刺せるのは一緒にきていた恋人の白哉くらいだ。
倒れた俺の身体には白哉の千本桜が刺さっている。
「びゃく…や…」
「すまぬ……」
白哉の声音は暗い。
今まで聞いた事がないほど絶望を含んだ声音だ。
「すまぬっ…」
「謝んなよ…わかってた、から…いつか、こんな日が来る…て」
わかっていた、この戦いに臨む前から
愛染に対抗する為とは言え、俺は力を付け過ぎた。
死神としての力だけならともかく、俺は虚の力まで身につけていた。
そんな俺が脅威になる前に、と殺されるのは仕方ない事なんだろう。
自惚れでも何でもなく俺は死神が持つには大き過ぎる力を所有していたから、遅かれ早かれ異分子として始末されただろう。
それが今だっただけの話だ。
嘆く事など一つもない、寧ろ恋人に殺されるのは幸せな事かもしれないとさえ思っている。
だから…
「泣くなよ…白哉」
あんたに泣かれると困る。
普段泣かねぇからどうすれば良いかわかんねぇし…
「無理を申すな。私とて兄が死ぬのは悲しい…しかも、誰かが殺したのなら復讐でも何でもやるものの、その相手が己ときた。なぁ、一護…私はまた間違ったのだな」
大事な者に…命より大切だったはずの者に手をかけた。
赦される事ではないだろう、と白哉が呟く。
それを見て、俺はこの不器用な優しい人に重いモノを負わせてしまったのだとわかった。
「そんな事、言うなよ…皆が、進んで出来ねぇ事をあんたはさ、やったんだ」
「私は愚かだからな。兄が他の者に殺されるくらいならばと…」
「俺だって…殺される、ならっ白哉が良いって…!」
意識が、朦朧と…して、きた…
無駄、に高い…霊圧のおかげで、心臓刺されても、すぐには死ななかった、けど…
ってか、心臓刺されたのに、まだ、意識がある、俺が、おかしい…のか……
「…一護?」
白哉
泣くなよ…
「一護?」
俺はここにいるから
迷子みてぇな声で泣くんじゃねぇ…
「一護!!」
「びゃ…く…や」
ありがとう…


僅かに漏れていた霊圧さえかき消えた。
斬魄刀が刺さった背中は微動だにしない。
身体はここにあるのに…
「いちご…」
触れると既に冷たくなっていた。
体温が低い私の手をずっと握りしめていてくれた一護の手は私より冷たい。
「一護」
私はこんな事望んでいない…
兄の強い光の宿った目が見たい。
優しく響く声が聞きたい。
「一護…」
何故私は殺してしまったのだろうか…
何故殺せたのだろうか…つい先程の事なのにわからない。
命令や掟など、己の意志の前には屑にも等しいと教えてくれた彼をその命令なんかで殺してしまった。
そんな無意味な命令など聞く謂れなどなかったのだ。
一護が脅威になるはずなどない。
敵さえ殺せぬ優しい子供が我々に反旗を翻す事などありはしないのに…
他の誰かに殺されてしまうかもしれないという恐怖に我を失っていたのだ、殺されてしまうかもしれないなら守れば良かっただけの話なのに…
「一護一護一護一護一護一護一護一護一護一護一護一護一護一護一護一護一護一護」

白哉は他の死神が捜しにくるまでずっと一護の亡きがらを抱いて名を連呼していた。



―あとがき――――――――――――――
めっちゃ暗っ!
珍しくブリーチ思いついたから書いてみたけど暗過ぎる!!
読んだ方はわかってると思いますが、愛染倒した後の話です。
一護ってどんどん強くなってるし、普通に協力なしで勝ったりしてるから愛染のとこに辿り着く頃には死神最強になってそうだなぁって思って…
白一、でした。

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「ルーク様!」
カイルがコーラル城につくと、ルークは既に入口に立っていた。
「ご無事ですか?お怪我は?『死神ディスト』はどこに?」
「カイル、落ち着け。俺は無事だ、怪我も何にもない。ディストは健康診断みたいな事して帰った」
「…健康診断?」
思いにもよらない内容にカイルは復唱する。
そんなカイルにルークは苦笑した。
「教団員のせいで超振動が起こったろ?それに襲われたタルタロスに乗ってたからさ、その影響や怪我がないか詫びとして診察してくれたんだ。連れ出し方はまぁ誤解を招くようなやり方だったけどさ、良い奴だったし怒るなよ?」
「そう、だったんですか…神託の盾にもマシなのがいたんですね。事前に一言でも言ってくれれば…」
「六神将だから信用してくれないと思ったらしい」
「まぁ、確かにそう申し出があっても拒否したでしょうね」
頷くカイルの様子から見て、結構好印象を得たらしい。
あんな掠い方をしたのにこの様子…余程神託の盾に悪印象を持っていたのだろう。
そのせいで基準が狂ってしまったようだ。
「しかし、私めの不注意のせいで掠われてしまい申し訳ありませんでした。覚悟はできております」
「いや、必要ない。今回の事は俺から父上に取り計らうよう頼んでみる。掠われた理由が理由だしな。だから、これからも仕えてくれないかな?お前の事、頼りにしてるし、いなくなると寂しい」
「るっルーク様っ!」
カイルはルークの言葉に感動して跪ずき、頭を垂れた。
「このカイル、この命が絶えるその時まで一生ルーク様に尽し、守る事を誓います」
「カイル?!顔上げろよ、大袈裟な奴だな。俺にそんな価値ないって…俺は……」
「ルーク様?」
辛そうに言い澱むルークをカイルは心配そうに見上げる。
「ルーク様…?」
「カイル…もし俺が本物の『ルーク』じゃなくても…いや、何でもない。忘れてくれ」
悲しそうに笑うルークにカイルは胸が痛くなった。
ルークは時々、寂しそうな悲しそうな顔で笑う。
記憶が戻らないから辛いのだろうと他の者たちは推測していたが、カイルは何故かそうは思わなかった。
どこか自嘲を含んだこの笑みは何かを諦めている笑顔だ。
そう思ったのだ。
「もう、行こうか。心配してるかもしれないし」
歩き出そうとするルークの手をカイルは反射的に握った。
「え?」
「ぁ…」
許可なく主に触れるなど…と言っている自分がこんな行動をとった事に驚きつつ、無礼だとわかっていても手を放さなかった。
今放したらどこかに消えてしまいそうで…
「私は…」
「カイル?」
いつもと様子が違うカイルに戸惑いつつも今だ膝をついているカイルの顔を覗き込む。
「どうした?」
「私は…例え貴方が本物の『ルーク』様でなくとも、私が忠誠を誓うのは今、目の前にいる貴方だけです。どんな事があろうと私の主は貴方だけです」
カイルの言葉にルークは驚き、目を見開いた。
そして心底嬉しそうに破顔し、「ありがとう」と呟いた。
「お前には救われるよ…(今も"昔"も)」
「ルーク様?」
「いや、何でもないんだ。行こう、カイル。鳩を出したらゆっくり休んで、明日は亡くなったマルクト兵に祈りを捧げさせてもらおうぜ?」
「えぇ、そうですね。では参りましょう」
カイルは立ち上がると乗ってきた馬に近付き、「お手をどうぞ」と言ってルークを落ちないように乗せる。
「お前は乗らないのか?」
「主と相乗りなどできません」
「って事は手綱引いてく事になるだろ?そうすると着くの遅くなるしさ、俺は気にしないからカイツールの近くまで一緒に乗ろうぜ?近くまで来たら降りれば問題ねぇだろ?」
にこにこと笑いながら言うルークにカイルは断るすべを持たない。
ルークに悲しむような顔をさせたくないし、確かに手綱を引いて歩けば着くのがかなり遅くなる。
それに結局、カイルはルークに甘いのだ。
「…承知しました。できれば少し前にズレていただけますか?」
ルークは頷いてゆっくり前に移動する。
カイルは慣れたようにルークの後ろに飛び乗ると、ルークを抱きしめるような形で手綱を取った。
「ご不快でしたら申し訳ありません」
「そんな事ねぇよ。カイルの腕の中、暖かいし、安心する」
ルークはカイルの胸に寄り掛かるように背中を倒すと、ゆっくり目を閉じた。
目を閉じたせいで音が鮮明になり、カイルの心音が聞こえる。
「(少し速いような気がする…けど、落ち着く…)」
安心して身体を任せるルークとの密着度にカイルは赤くなる。
触れているところから熱くなっていくような気がした。
「(無条件の信頼は嬉しいですが、無防備過ぎますよ…私の気も知らないで)」
警戒されたいわけではないが、もう少し自分の魅力に気付いてほしい…とカイルは嘆息した。
きっとそんな日は来ないだろうとわかっていつつもそう思わずにはいられなかった。



---あとがき---------------------------
今のとこカイル→ルーク状態です
ジェイドは今回…どうだろ?惚れるかなぁ??
でも、ルークに「感謝してるよ」って言われたら気になり出しそうだよね~

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「くそっ」
ダンッ
と壁に拳を打ち付けるカイル。
「ルークなら大丈夫だろ、結構強いし」
とガイが無責任な発言で慰めるが、逆に苛立つばかり。
ガイと言い争っていた(と言うより説教)せいで反応が遅れてしまったのだから仕方ないと同乗員はカイルを不憫に思った。
「そこ衛兵!奴が向かった方向には何がある?」
「はっ!確か…廃墟と化したコーラル城があったかと…」
「コーラル城?公爵の持ち物か…ならば無断で入っても問題あるまい。馬を貸してくれ、見ていた通り主が掠われた」
「その…主というのは…?」
「ファブレ公爵の御子息であらせられるルーク様だ」
その言葉に衛兵は「ルーク子爵?!」と叫ぶと大慌てで馬を至急用意するようにと軍基地に伝えに行く。
「…何かあったのか?ガイ」
その衛兵と入れ違いになるようにヴァンが現れ、周りの慌てように驚きながら顔見知りであるガイにそう尋ねる。
「どうにもこうにも、ルークがディストに掠われちまってしまったんですよ」
「何っ!?」
驚くヴァンにカイルや周りの兵士たちは冷たい視線を送る。
「どういう事ですか、グランツ謡将?六神将は確か貴方の管轄下にありましたよね?」
「私はこんな指示は出してはいないっ…おそらくあいつの独断だろう」
「監督不行ですね。許可なくルーク様に触れるなど何たる無礼…部下の躾くらいちゃんとなさって下さい。タルタロスでも六神将に襲われましたよ。どうゆう教育を行っているのです?」
後ろにいるマルクト軍人が恐ろしい目でヴァンを睨んでいる。
六神将は仲間の仇だ、その上官であるヴァンが恨まれるのも仕方ない事だろう。
「…そう言えば屋敷を襲ってきたのは貴方の妹だそうですね。兄妹喧嘩なら他所でやって下さい」
「…その妹が見当たらないが」
「貴方は馬鹿ですか?ファブレ公爵の屋敷を襲い、ルーク様を誘拐した揚句、数々の不敬罪…牢屋にいるに決まってるでしょう」
全くの正論に納得はできないが、反論もできないヴァン。
そんなヴァンをカイルは今にも射殺しそうな目で見ている。
「どう責任を取るおつもりですか?この度の許し難い出来事の数々を。ダアトはキムラスカとマルクトに喧嘩を売った…そう取っても構いませんか?」
ジェイド後ろにいるイオンは真っ青になっている。
今回の事がどれだけ大事なのかわかっているからだ。
「とんでもない!そんなわけでは…」
「馬の用意ができました!!」
ヴァンの言い訳を遮るようにカイツールの入口付近で馬の手綱を引いた衛兵が叫んだ。
「…この話はまた後ほど。私はルーク様を迎えに行ってきます」
そう言い残して立ち去るカイルの後ろ姿にヴァンはホッと息を吐いた。
しかし、しばしの安息は後ろからの声で破られた。
「グランツ謡将。我々からもお話があります。勿論聞いて下さいますよね?」
にっこりと微笑んで(しかし目は全く笑ってない)そう言った死霊使いにヴァンの顔が引き攣る。
近くにいるガイに助けを求めるが、ガイは慌てて顔を背けた。
「グランツ謡将?」
断る事は許さないとその目は言っていた。
「…勿論、お伺いします…」
ヴァンは引き攣った笑顔でそう答えるしかなかった。



----あとがき-------------------------
カイル、単独でコーラル城へ
なのでジェイドはルークがレプリカだという事に感づきません
記憶喪失の話もしてないしね(ただ会った事がないって言っただけだし)
ヴァンどうなるかなぁ?やっぱ責任を取ってモースと共に辞職?
だってティアはモース直属だし、六神将はヴァン直属。

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「ルーク!」
「…ガイ」
手を振ってルークの名を叫ぶガイに、カイルは剣の柄を握った。

「ルーク!良かった、捜したぜ?それにしても何でマルクトの軍艦なんかに乗ってたんだ?」
にこにこ笑いながらルークに気軽に話しかけるガイをカイルは低い声で呼んだ。
「…ガイ・セシル」
「何だ?カイル、どうかしたか?」
「貴様、ここがどこだか理解しているのか?」
「何言ってんだ?カイツールだろ?」
どういう意味で問うたのか理解してないガイは笑顔のままあっさり答える。
ルークはカイルが更にキレる一歩手前のところまでキているのを感じた。
「そうだ、カイツール…つまり公の場だ。ガイ・セシル、貴様はルーク様の何だ?」
「使用人だな」
「そうだ、使用人だ。ルーク様は確かに私的な場では対等に話しても良いとおっしゃられていた。だが、ここで屋敷で接するのと同じような態度を取れば使用人風情に呼び捨てにされている、と侮られるだろう」
「ははっ、カイルは大袈裟だなぁ」
「大袈裟ではない!」
タルタロスの中であったような事を繰り返しているカイルに後ろにいたマルクト兵たちは深く同情した。
ルークと接して、ルークが侮られるような愚かな人間ではない事を同乗していた人間は知っているが、この光景だけ見ればそうとられても仕方ない。
だからカイルは屋敷でもガイに口調を正すよう日々言ってきたのだが、成果は表れなかったようだ。
ルークは二人が言い争ってるのを見ていたが、何かがこっちに向かってきているのを感じて避けた。
が、第二弾に捕まってしまった。
「なっ…!?」
「ルーク様っ?!」
言い争っていた二人、特にカイルは勢い良く振り返った。
ルークが捕まったのは椅子に乗った男…ディストである。
因みに第一弾はアリエッタの魔物だ。
「(あれ?ここはアッシュじゃなかったっけ?で、アリエッタが軍港を襲撃して、ディストとシンクがコーラル城に…)」
「はーはっはっはっ!ちょっとお借りしていきますよ!」
「誰が許すかっ!ルーク様を放せっ!!」
「用が済んだら五体満足でお返ししますよ。勿論、意識もしっかりしたまま」
そう言い残すと椅子はルークを乗せたままコーラル城に向かう。
ルークは考え込んでいるため抵抗をするのを忘れている。
「待ちなさい、洟垂れ!!」
「キィィィイイ!!私は洟垂れではありません!『薔薇のディスト』様です!」
文句を言いつつ速度を緩めないディスト。
「…なぁ」
「なんですか?放せ、とかは聞きませんからね。後でちゃんと開放して差し上げますから今は大人しくしてらっしゃい」
「そうじゃなくってさ、何で俺を誘拐するんだ?…アッシュにでも頼まれた?」
「変な事言いますねぇ。私の意思ですよ。ただ検査をするだけですから心配しなくても良いですよ」
「えっ?同調フォンスロットを開くんじゃなくて?」
言ってからすぐにマズイとルークは思った。
ダラダラと冷や汗を流しているルークをよそに、ディストはルークの言葉に考え込む。
「…もしかして貴方、レプリカだと知ってるんですか?」
あぁ、ばれてしまった…とルークは泣きたくなった。
ディストからヴァンにその情報が伝われば警戒されるだろう。
せっかく懐いていると見えるよう演じてきたのに…
「そんな顔しなくとも大人しく検査さえさせてくれればヴァンには伝えませんよ、安心なさい」
「え?マジで?」
「えぇ、約束しましょう。…大方、髪を切った時にその髪が乖離したのを見たのでしょう?第七音素は分離しやすいですから」
「そうなんだよ!あははは…あの時は驚いたなぁ」
棒読みだがディストは気にならないらしく指摘しない。
ただ、少し楽しそうだ。
「聞いていたより聡明みたいですね。そこそこ強いそうですし?特殊部隊隊長さん?」
「あはは…レプリカだって知ってから結構鍛えたからな。本物が戻れば俺は用なしだし。抵抗できずに殺されるのも釈だし」
「ふむ。アッシュに目をつけたのは悪くないですね。と言うよりキムラスカの特徴である色を曝しているのに何故今まで一度も疑われた言葉がないのかが疑問ですよ、私は」
確かに、とルークは何度も頷く。
それはルークも"以前"からずっと思っていた事だ。
もしかしたら預言を知っていた王や公爵がわざと気がつかないフリをしていたのかもしれない。
「で、あのさ…同調フォンスロットを開いてほしいってアッシュに頼まれたんじゃないのか?」
「レプリカの事は知っていても少しみたいですね。同調フォンスロットは完全同位体でなくては開けないんですよ?」
「へ?俺とアッシュって完全同位体じゃねぇの?」
「残念ながら。稀なケースで、アッシュは音素振動数が変動してしまったんですよ」
そう聞いてルークは驚くと共にローレライの仕業だろうと検討がついた。
預言を曲げた自分を気に入っていたようだしわざわざ"送り返した"くらいだ。
大爆発の事はどうにかしてくれるのではないかと思っていたが…
「(アッシュは超振動使えないのか…『ルーク』じゃなくなったからだと師匠たちは考えてるかもな)」
「もうすぐつきますよ。検査してデータを取るだけなので少しじっとしてて下さいね」
「了解~」
ルークがそう言うとディストは満足そうに笑ってコーラル城まで速度を速めた。

-----あとがき------------------------
ディスト贔屓がまるわかり☆
ジェイドは少し反省したので扱いは良いと思う…(未定


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今週のジャンプはナルトとDグレが良かったですvV
ネウロのOPはナイトメア…好きですけど、個人的にはアリプロのが(まだ言ってるよ
笹塚さんが普通にかっこよかった


Dグレ↓↓↓
師匠でたぁ!!!
カッコ良すぎです、ってかマジ何者?
これは師アレフラグたったか?
イイトコどりだよ!
きっとその柩の中には神田とクロウリーが入ってるんだね♪(夢見すぎ


ナルト↓↓↓
サスケもったいない事したねぇ…
ナルトと合流しとけばイタチに会えたかもしれないし…
まぁ僕は嬉しいけどね☆
イタナル~!!
この展開はイタナルかブラコンのどっちかでしょう!!
なんか今までイタチって本気でナルト捕まえようとしなかったし、僕は捕まってほしくないんだと思ってます
例えばイタチは暗部の頃ナルトの監視やってて情が沸いたとか
何となく他の尾獣との扱い違うし♪
っつかナルトはアレ影分身なのか本物なのか気になるなぁ
本物はキバたちのとこかな??

----↓スレナル派生--------------------
「ナルト…」
「イタチ、か。何の用だ?俺を捕えに来たのか?」
音もなくクナイを構えたナルトにイタチは悲しそうな顔で否定した。
「…違う。捕えに来たわけでも勧誘に来たわけでもない」
「?…じゃあ何だって言うんだ。言っておくが俺は今、団体行動中だからな。手早く話せよ」

「…一緒に逃げよう、ナル」

その言葉にナルトは目を見開いた。
だってイタチは自分と決別し、何度だって敵に回ってきたじゃないか…
なのに今更その呼び名で呼ぶのか…
あの、独りだった自分の光だった貴方が
「俺をおちょくってんのか、イタチ。同情でもしてんのか?今更っ…今更、俺を独りにしたお前がっ!どんな想いで待ってたか知らない貴方がっ!!」
涙なんて流してやるものか。
俺を裏切った貴方なんかの…お前なんかの為に泣くか、と耐えてきた俺の気持ちも知らないくせに、今更…
「ふざけるなっ!!俺は独りで生きていく!暁なんてぶっ壊してやる…俺にはその力がある!木の葉最強と呼ばれる俺に『一緒に逃げよう』だと?馬鹿にしてるのか?…逃げるかよ…今更、ジジィの守った里をほおって逃げられるかっ…」
手を握りしめて俯いたナルトをイタチはそっと抱きしめる。
カランッ
と音をたててクナイが地面に落ちた。
「今更…なんでだ、イタチさん。何で今なんだよ。一緒に連れてってくれって言ったのに俺を残して里を去ったくせに、敵になって、何で今更そんな事言うんだ!酷いよ…何で敵のままでいてくれないんだっ」
「ナル…一緒に逃げよう。君が強いのはよくわかってる。監視だった俺をあっさり倒したくせに俺の事強いって言ってくれたのも覚えてるよ。その頃より強いんだろうな、君は守るモノができたから。きっと俺は弱くなった…ナルが側にいなかったから。守りたい者を置いて行ってしまったから」
イタチはそう言って、そっとナルトの髪を撫でた。
綺麗で何にも染まらない君を何にも知らない馬鹿な大人が、何にも知らない馬鹿な子供が、汚そうとするのを我慢できなかった。
特に自分の一族が、ナルト暗殺の企てをしていたのが一番許せなかった。
暗殺なんてされるわけがない。
多勢に無勢なんて言葉、君には通用しない事を知っていたのにどうしても堪えきれなかった。
そして、君を守るための力を付けるために里を出たはずだったのに…あいつに会ってから狂ってしまった。
守る力が君を脅かす力になってしまった。
それでもあいつの言葉は魅力的だった。
君の中の九尾を取り除けるという事実は魅力的過ぎた。
死に至るという事を知らなかったからだけれども…
「ナル、一緒に行こう…今度こそ君の為に生きると約束するから…俺を、独りにしないでくれ」
「…馬鹿イタチ。そんな風に言われたら俺があんたに逆らえるわけねぇだろ」
「馬鹿でも何でも良いさ。君さえ側にいてくれるなら、それで」
そう言ってイタチは暁のマントを脱ぎ捨て、傷の入った木の葉の額当てを捨てる。
ナルトは空を見上げ、切なそうに目を細めると同じように額当てを投げ捨て、変化で目立たない服に変える。

「―さようなら」

聞こえないわかっている仲間たちに向けてそう呟くとナルトはイタチを見た。
イタチもナルトを見る。
そして次の瞬間、どちらの姿もかき消えた。
残ったのは二つの額当てとマントだけ…
カカシたちがそれを見つけるのはそれからすぐの事であった

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ブリッジは死臭が漂っていた。
「おそらく師団長ですね…」
乖離しきれていない数体の魔物の死骸を見ながら少佐が呟く。
どれも譜術の攻撃による傷を負っている。
「この様子なら師団長は無事なようですね。…まぁ、殺して死ぬような人じゃありませんし…」
確かに、とルークは内心頷く。
「とにかく移動しましょう。ここでは囲まれた時厄介ですよ」

「その通りだ」

上からの殺気にルークは後ろにいたイオンを抱え、そのルークをカイルが抱え、横に跳んだ。
殺気に気付かなかったアニスと最後尾にいたせいで避けそこなった兵士数人が降ってきた氷に当たる。
「ふんっ…いいご身分だなぁ、お坊ちゃま」
「貴様っ!この方を侮辱するならば黙ってはいないぞ!!」
叫ぶカイルを見て、最近なんだかカイルがキレやすいような気がする…とルークは内心苦笑した。
「まぁまぁカイル、落ち着けよ。守ってもらうような身分である事は確かなんだし」
「しかしっ…」
「はんっ!どうやら反論もできない屑のようだな」
「貴様ぁ!!」
「カイル!…こいつの神経逆なでるような事しないでくれないか?『鮮血のアッシュ』」
呼ばれたアッシュは目を見張り「何でてめぇが知ってる…」と呟いた。
「神託の盾騎士団特務師団長だろ?単独行動なんてしてていいのか?指示を出す立場の人間だろ、お前」
「うっせぇ、屑がっ!貴様に指図される覚えはねぇ!!」
剣を振り上げた恰好でアッシュはルークに向かって飛び下りる。
それをルークの代わりにカイルが受け止めた。
バンッ
「アッシュ!撤退だ、死霊使いが来るぞ」
リグレットはアッシュと剣を合わせていたカイルに向かって一度撃つ。
カイルは飛びのき、それを避ける。
「…死霊使いには封印術をかけたんじゃなかったのか?!」
「ラルゴが他の奴にかけようとした上、失敗した!」
「ちっ…使えねぇ」
アッシュはカイルと向き合ったまま後退し、逃亡した。
カイルは追うか追うまいか迷ったが、深追いは危険だと先程言われたばかりなので追わずにその場に留まった。
それにルークと離れるわけにはいかない。
「カイル、腕を見せろ。さっき『魔弾のリグレット』の撃った弾が掠ったろ?」
「いえ、これしき………お願いします」
断ろうとしたが、ルークの厳しい目付きに断ったら危険だと脳内で警報が鳴ったので渋々腕を出す。
「《ファーストエイド》」
第七譜術士の素質はあったようだから練習し、取得した。
生憎と回復呪文しか覚えられなかったが。
「ありがとうございます」
「おぅ!ちょっとした怪我でも後に響く事だってあるんだ、気をつけろよ」
「勿体ないお言葉にございます」
ルークとカイルがそんなやり取りをしている間、少佐たちが気絶しているアニスや兵士たちを起こす。
「おや…ここにいましたか」
「師団長!ご無事で何よりです。他に生き残った部下は…?」
訊かれたジェイドは悔しげに答える。
「半数やられました、他はあちらにいます。イオン様もルーク様もご無事なようで何よりです。お怪我はございませんか?」
「僕はルークに守ってもらいましたから」
イオンは困ったように笑った。
「…アニスに、ではなく?」
今だアニスはのびている。
それ一瞥した後、確認の意味を込めて尋ねるとイオンは曖昧に肯定した。
「導師守護役であるアニスは?」
「戦闘体勢もとらずにイオン様の隣を歩いておりました」
部下の返事の内容に流石のジェイドも呆れを隠せない。
「…ルーク様は?」
「俺はカイルに守ったから、大丈夫」
にっこり笑ってそう言うとジェイドは「そうですか」と少し安堵したようだ。
「神託の盾は撤退したようですが、残党が残っている可能性がありますので気をつけて下さい」
「あぁ。…このまま行くのか?」
「えぇ、ケセドニアまではそのつもりです。カイツールでタルタロスの整備と亡くなった兵の弔いの時間をいただいてもよろしいですか?」
「勿論。俺の方も鳩を飛ばしておくよ」
微笑みながら言われた言葉にジェイドも兵士たちも驚く。
「あの、ルーク…それは和平の取り次ぎをしていただけると言う事ですか?」
ジェイドたちの内心を代弁したかのようなイオンの言葉にルークはしっかり頷く。
控えているカイルは複雑そうな顔だ。
和平は成したいが、不敬の数々を不問にしただけでなく王への取り次ぎまでするなど寛大過ぎる。
「政治に参加してるって言っても屋敷に軟禁されてるから提案するくらいだし、王に直接会った事ないけど、それでもよければ」
「充分過ぎるくらいです。ありがとうございます」
礼を言われてルークは苦笑した。
こんなに真摯にジェイドに礼を言われたのは初めてな気がする。
「…タルタロスは動かせるのか?」
「えぇ、必要最低限のところに人を配置すれば何とか。部下たちに復旧作業をさせていますので部屋にてお待ち下さい。…少佐、案内を」
「了解しました。ルーク様、イオン様、カイル殿、ご案内いたします。…そこの兵!導師守護役を起こしておけ!!」
「はっ!」
再び中に入るとマルクト、神託の盾両軍の兵士の死体が転がっていた。
ルークはイオンの目を隠し、転ばないよう配慮しながら歩く。
貴賓室の方はイオンが不在だった為、殆ど兵は配置されていなかったので死体が見当たらなかった。
「…こちらになります。イオン様お一人では不安でしょうから扉で部屋が繋がっている部屋を選びましたが」
「俺はそれで良いよ。イオンは?」
「はい。是非ご一緒させて下さい」
「そう、良かった。カイルは?」
「異論はございません」
「そうですか。それでは、何かございましたら外にいる兵か伝声管を使ってお申し付け下さい」
少佐はそう言うと兵士を数名残して一礼してから立ち去った。
ルークたちはそれを見送った後、警戒しながら中に入り、残党がいない事を確認してから椅子の上に腰を下ろした。



-----あとがき-------------------------
次はカイツール
ガイ様出て来てねぇ
アリエッタも出て来ないし、ティアは牢屋だし、アニスは気絶中でタルタロス無事だからセントビナー寄らないし…
いや、ちゃんと考えたんですよ?
ジェイドが封印術くらってなかったら秘奥義使いまくって勝てんじゃね?とか思いまして…
ガイはきっと次出てきます

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大きな衝撃がタルタロスに走った。
少佐は近くにあった伝声管を掴み「何事だ!」と叫ぶ。
『グリフィンの群れが!今、師団長が応戦してますが、持ちこたえきれません!!』
応答した兵士の言葉にその場にいた者は驚愕する。
グリフィンは群れをなさない魔物のはずなのに、その上わざわざ戦艦を攻撃するなど今まで事例がない。
「皆様、危険ですので部屋へお戻り下さい」
「…その時間はないようだけどな」
ルークがそう呟いた直後、階段から巨体が下りてきた。
「なっ…貴様!何者だ!!どうやってここに…」
少佐の言葉に巨体の男は鼻で笑う。
「死霊使いと真っ正面からやるのは分が悪いのでな、迂回させてもらった。さぁ、導師を渡してもらおうか」
「…六神将『黒獅子のラルゴ』か…」
イオンを背に庇いながらルークは剣を抜いた。
それを見て、カイルが渋い顔をする。
「カイル、見逃せ。緊急事態だ」
「…私が突破されたらお願いします。ですからそれまで手をお出しにならないで下さい」
「わかってるよ。…イオン、アニス、動くなよ?」
イオンは頷き、カイルたちが敵の気を引いてるうちにイオンを連れて脱出しようと思っていたアニスは内心嫌々頷いた。
「…導師を渡すつもりはないようだな」
「襲撃犯に渡す馬鹿がどこにいる。貴様の相手は私がしよう」
「カイル殿!相手ならば我らがっ」
客人にあたるカイルに戦闘をさせるわけにはいかないと少佐が剣を構えながら言うがカイルは首を降る。
佐官についているのだから、それなりにやるのはわかるが、六神将相手では分が悪い。
「少佐、マルクトの面子を考えればカイルが手を出すのはマズイと思うけどさ、カイルに任せてくれないか?俺らに喧嘩売った事を後悔させてやる」
暗く笑うルークに少佐たちもラルゴの後ろに控えている神託の盾兵たちも一瞬怯える。
その沈黙を肯定と取って、カイルは剣を構えると次の瞬間皆の視界から消えた。
「なっ!?」
一瞬で目の前に現れ、振りかざされた剣にラルゴは経験からくる勘で防ぐ。
「成る程…六神将の名は伊達ではないようだな」
「貴様っ…いったい何者だ?」
一旦、距離を置いたカイルにラルゴは憎々しげに問うと、カイルは微笑を浮かべながら答えた。
「白光騎士団所属ルーク様付き護衛兼特殊部隊副隊長、カイル・ライラック」
「カイルは軍から将軍職をやるから入ってくれって頼まれるくらいの実力者だから気をつけろよ、ラルゴ♪」
にっこりと笑いながら言われた言葉(敵に気遣われるという侮辱)とその態度にラルゴはかぁーっと頭に血が上り、後ろにいた兵士の剣を抜くとカイルの後ろに向かって投げた。
それは真っ直ぐルークの顔に向かい、避ける様子のないルークに誰もが当たると思ったその時…
「見くびるなよ」
剣は宙に浮いていた…否、ルークが片手で器用にも刃先を掴んでいた。
その手から血が出てる様子もない。
「なっ…」
「白光騎士団特殊部隊隊長、ルーク・フォン・ファブレ。お見お知りを」
笑顔のままそう言うと掴んだ剣を近くにいるマルクト兵に渡す。
「ルーク様、お怪我はございませんか?」
「ないよ。カイルは心配性だなぁ」
格の違いを見せられ、その上よそ見する余裕まで見せられて、ラルゴは(建前上では)導師に使う予定だった封印術を二人の頭上に投げた。
しかしそれも飛んできたナイフのせいで方向転換され、誰もいないところで発動する。
「何っ!?」
「ルーク様、あれは…」
「ティアのナイフ。タタル渓谷抜ける時、落としたのを拾っておいたんだ♪」
ジェイドに使われるものだとばかり思っていた封印術を投げられた時は驚いたが、その存在自体は想定していた為、ラルゴが箱を取出した時点で手に持っておいたのだ。
「これで打つ手はなくなったんじゃないか?ラルゴ」
「ちっ…」
ラルゴは舌打ちすると踵を返した。
慌ててその後を後ろに控えていた神託の盾兵たちがついていく。
「待てっ!」
「深追いするな、カイル。少佐、他とは連絡取れるか?」
「…ぁ、はい、確かめてみます」
ルークに言われて、固まっていた少佐は伝声管を手に取り「聞こえるか?応答せよ!」と言うが返事は返ってこない。
「…ここにいても仕方ない。ブリッジに出るか」
「危険ですが、ここにいては状況を把握できませんからね」
「それでいいか?」
事後承諾のような形になってしまったが異論はなく、皆頷いた。
「先頭と最後尾は我々が務めます」
「頼む。イオンとアニスは俺の後ろな?」
「ルーク様は私の後ろにいて下さいね?貴方様がお強いのは重々承知しておりますが、もし傷を負いでもしたら私は…」
「わかってるって!さっきのはイオンが後ろにいたし、嘗めてるようだったからパフォーマンスも含めてやっただけだよ。ちゃんと大人しく守られてますって!」
守られる義務がある、それはルーク自身がイオンに言った言葉だ。
そしてそれは自分にも適応する事をちゃんと理解している。
「カイルさんって~少し大袈裟ですよねぇ。ルーク様ってかなり強いんだしぃそこまで心配しなくてもぉ」
今まで大人しくしていたが、頼りになる同行者に安心したアニスは「ねぇ~、ルーク様もそう思うでしょ~」とルークにベタベタし出した。
それを見てルークは本性わかっちゃってるからなぁと苦笑し、カイルは顔をしかめた。
「大袈裟なものか!もしルーク様に一つでも傷があれば襲撃された日にいた者は全て首が飛ぶ!それに私…我々白光騎士団特殊部隊はルーク様に忠誠を誓っている。我らにとって公爵であろう誰であろうとルーク様以上に大切な方はいない」
「カイル…熱演ありがとう。お前が俺に忠実なのは充分知ってるから、もう止まれ。イオンたちが呆然としてるぞ」
はっとカイルは我に返り周りを見ると、カイルの熱の篭った言葉におされた兵士たちが呆然とカイルたちを見ている。
イオンはいち早く復活すると少し羨ましそうに微笑んだ。
「ルークは慕われてるのですね」
「う~ん…まぁ、そうなんじゃないかな」
照れたように笑った後、ルークは顔を引き締めた。
「もうすぐだな」
その言葉を他の兵士たちも我に返り、何があっても対処できるように武器を手に持つ。
そしてブリッジに出た。



----あとがき--------------------------
ルークは"未来"の記憶があるから"仲間"たちが何をやっても「しょうがないなぁ」とか「こいつ、こんな性格だったよな」とか懐かしく思うだけです。
何たってスレではなく短髪ルークだもん、この話。

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「お呼びでしょうか、師団長」
コンコンッとノックした後に少佐は中にいるジェイドに呼びかけ、入室の許可を待つ。
「どうぞ」と許可をもらって入った部屋はケテルブルク並に寒かった。

「…何か問題でもございましたか?」
「さぁ?貴方を呼んでほしいと言ったのは私ではなく彼なので彼に聞いて下さい」
そう言われて振り向いた先にいたのは無表情の男。
雰囲気や態度からして軍人か何かのようだ。
その男は何か怒っているようで少し怖い。
「…どうなされましたか?」
「…マルクト軍人というのは礼儀を知らないのか?」
「は?」
いきなり言われた言葉に怒りを感じたが、それは次に言われた言葉で吹き飛んだ。
「こちらにいらっしゃるのはキムラスカ・ランバルディア王国第三王位継承者、ルーク・フォン・ファブレ様であらせられる」
少佐は驚き目を見開かせると素早い動きで膝をついた。
「これは…知らずとは言え数々の無礼を、お許し下さい!」
膝をついた少佐に皆驚いている中、カイルだけは満足そうにその兵士を見た。
「ぁ…もう顔を上げても良いぞ?」
慌てて言われた言葉に少佐は「はっ!ありがとうございます」と言って立ち上がった。
「…どうやらマルクト軍人にも常識はあるようだな。カーティス大佐殿はこの方が王族と知っていたにも関わらず礼の一つもしなかったぞ」
言われた言葉に少佐は真っ青になる。
マルクト軍人は礼儀知らずだと言われても仕方ない。
「し、師団長!このお方が王族だと知っていてこの部屋に通したんですか?!」
「そう言ってるでしょう。いきなりどうしたんですか?」
少佐は倒れそうになった。
周りにいる兵士たちも同様だ。
「何言ってるんですか!こんな部屋に通すなんて無礼にも程があります!!」
「しかし彼らは不法入国者ですよ」
反省のカケラもない上司の様子に少佐は泣きたくなった。
「あーもー…師団長、いいですか?例えばですね、陛下が間違えてキムラスカに不法入国したとします。捕まって尋問を受けていたらどうしますか?」
「不敬罪で引っ捕らえますよ。不法入国したからと言って陛下に尋問など不敬にも程があります」
聞いていたカイルの表情が再び険しくなっていく。
それを見て少佐は土下座したくなってきた。
「何でそれがわかるのにこの状況がマズイ事はわからないんですか!こちらのいらっしゃるお方は王族で、キムラスカで三番目に偉いお方ですよ!それに、ルーク・フォン・ファブレ様と言えば善政で有名な方です。国民に我々マルクトがこんな扱いをしたとばれたら和平どころか戦争が始まります!」
真っ青な顔で叫ぶ少佐の言葉に漸く理解したのかジェイドの顔色が悪くなる。
今更だな、とカイルは呟いた。
「御前で数々の不敬、失礼しました。国に帰りましたら責任をもって辞職しますのでこの場はどうかご容赦下さい。貴賓室にご案内します」
「え…いや、構わないよ。ここにいる人だけの秘密にしとけばばれないし…カイル、報告はしないでくれないか?和平を成功させたいだろ?」
「…ルーク様がそうおっしゃるのであれば。しかし、次があれば公爵に報告させていただきます」
わかった、とルークは頷きつつこれって異常だったのか…と"前回"を思い出す。
"前回"ではジェイドは膝をついたものの皮肉を言っていた気がする…その場にカイルがいたら斬り捨ててたかもしれない…
「ありがとうございます。貴方様のご慈悲、忘れは致しません」
少佐は深く頭を下げると扉を開いた。
「ルーク様、どうぞ。ご案内致します。…イオン様もご一緒においで下さい」
少佐はイオンをこんな所に連れてきただけでなく、椅子さえ勧めていない上司に呆れながら呼びかけた。
「…ならばついでにそこの女を牢屋にほうり込んでおいてほしい。そいつはファブレ家を襲撃しただけでなく、事故とは言えマルクトまで我らを飛ばした張本人だ。屋敷ではルーク様誘拐騒ぎになっているだろうな」
少佐は目が点になった。
堂々とルークの隣に座っていたのでルークの友人か何かと思っていたのだが…
「師団長ぉ~!何故ルークが不法入国などなさったのか、その理由さえ聞いてなかったんですか!?そんなの初めにやる事じゃないですか!!」
少佐は目に熱いモノが込み上げてくるのを感じた。
自団の師団長は皇帝と親友であるが故にどんな不敬も不問にされていた。
戦闘でも、研究者としても優秀であったせいでもある。
副官なので対人関係に問題ありな事も知っていた。
だが、イオンには丁寧に接していたので考え過ぎだと安心していたのに…
「…そこの女を拘束しろ!イオン様、ダアトの軍人のようですが、よろしいですね?」
青くなっているイオンに確認すると戸惑うような仕種をした後「乱暴はしないで下さいね?」と遠回しに許可を出した。
「私はっ!」
ティアは反論しようとしたが、周りにいた兵士に拘束される。
「彼女は譜歌を使うので気をつけて下さい」
カイルの助言に少佐は頷いて兵士たちに猿轡を用意するよう指示を出す。
「わかりました。…師団長、私が皆さんをご案内しますので師団長は指揮をとっていて下さいませんか?」
「…いいでしょう。ルーク様、先程は申し訳ありませんでした。それでは失礼させていただきます」
軽く礼をして立ち去ったジェイドに少佐はホッと息をついた。
「本当に申し訳ありませんでした(…だからフリングス少将にしておいた方が、と進言したのに)」
「何故、あの死霊使いなんかが和平の使者なんですか?もっと相応しい人がいるでしょう。彼から苦汁を味わったキムラスカにしてみれば彼は火に油だと思うのですが…」
「私も師団長は外交には向かないと思っておりますが、陛下の右腕としても名高い師団長を使者にする事で和平を本気で望んでいると伝えたかったようで…」
疲れ切った少佐の様子にカイルとルークは同情する。
カイルは礼儀を知らぬ上司をもっている事に、ルークはジェイドの人間離れしたところや秘密主義なところに苦労しているんだろうなと思ったためである。
「…案内してくれるんだろ?立ち話もなんだし移動しないか?イオンも…」

ドォォオオンッ

ホッとしてつかの間、地面が揺れた。



----あとがき-----------------------
アニスがいねぇ!
なんかオリキャラばっか喋ってるよ(泣
少佐殿、どうなるだろ…?

拍手[6回]


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