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本能の赴くままに日記や小説を書いています。
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事務所の中に無事入ったキョーコはまっすぐラブミー部の部室へと向かった。
一瞬、主任である椹のところに向かおうかとも考えたが、電話が鳴り響いているであろう場所では話ができないと判断して。
今までTVをチェックしていたのか、それとも表玄関を強行突破してきたキョーコが信じられないのか、皆唖然としてキョーコを見つめている。
そんな視線をもろともせず、キョーコはさっさと部室に向かった。


「ふぅ…緊張したーーー」

誰かが聞いていたら「嘘つけ!」と言いそうなセリフを吐いたキョーコは、誰もいない場所に来て安心したのか、椅子の上に崩れ落ちるように座り込んだ。

ブルブルブルブル

座った途端、震えだしたケータイにキョーコはびくっと震える。
そして、慌ててケータイを取り出し、誰からかも確認せずに通話ボタンを押す。
その瞬間、

『あんた、何やってんのよぉぉぉおおおお!!!!!』

と部屋中に女性の叫び声が響いた。
耳元に持っていく前でよかった…と思いながら、キョーコは笑顔になる。
なんたって愛しの親友からの滅多にない電話である。
どんな状況であろうと、嬉しいものは嬉しい。

「モー子さん!」

『「モー子さん!」じゃないわよ!あんた、何やらかしてんのよぉ!!タレント部の主任から、今日は事務所来るなって連絡入んなかったわけぇ?!』

「ううん、入ったわよ?」

『なら、何で…』

「だって、許せなかったんだもん」

『は?』

「まるで、敦賀さんが“クー・ヒズリあっての敦賀蓮”みたいに言われてるのが許せなかったんだもの」

その言葉に奏江は息を呑んだ。
キョーコは本気で怒っていることがわかったからだ。
電話越しでもわかる負のオーラ…
電話越しで良かったわ…と怨キョの被害にあったことのある奏江は思った。

『…あんた、クー・ヒズリのこと“先生”って呼んで慕ってなかった?』

「えぇ、慕ってるわよ?でも、それとこれとは話が別だわ」

『まぁ、そうだけど…』

肩書で判断したりしない奏江は蓮が誰の息子だろうと気にはしない。
クー・ヒズリの息子だと知った時は驚き、「ハリウッドスターの息子なんて大変でしょうねぇ…」と同情はしたものの、所詮他人事。
世間にどう言われようと関係ないが、蓮を神様のように信仰しているキョーコにとっては違うのだろう。
だから、言わずにはいられなかったのかもしれない…
奏江自身、もしキョーコがそんな目にあったら抗議していたかもしれない…と思いつつ、本人には照れくさいため言わなかった。

『…まぁ、いいわ。ということは、あれは意図してマスコミの前に出たのね?』

「うん……やっぱり、怒られるわよね…?」

『当たり前でしょ!最悪、クビ…にはならないでしょうねぇ』

「え?なんで??」

『あんたの暴走が良い方向にいってるからよ。今、TV見てないの?』

「う、うん」

『あんたの発言の後、“敦賀蓮”の見方が変わったのか、あんた寄りの発言をするコメントが増えたのよ。LMEとしても、これからの活動のことを考えると“クー・ヒズリの息子”じゃなくて“敦賀蓮”を見てほしいでしょうし、殆どお咎めなしだと思うわよ』

その言葉にキョーコはほっとした。
クビを切られる覚悟をしていたとはいえ、やはり本当にそうなったら嫌だったからだ。
それでも、例えクビになるとわかっていても、何度だって同じ行動を取るだろう。
それだけキョーコにとって蓮の存在は大きかった。

『じゃあ、私の要件はそれだけよ。あんたが突発的にじゃなくて、覚悟して行動に移したのなら私に言うことは何もないわ』

「…心配、してくれたの?」

『……好きに判断しなさい。じゃあね、キョーコ』

「!…うん!モー子さん、ありがとう!!大好きぃぃいいいvvv」

『っ…はいはい。じゃあ、切るわよ!』

ブチッ

その言葉と同時に通話が切れ、プープーと空しい音が部屋に響く。
キョーコは嬉しそうにケータイを見つめると、いそいそとケータイを鞄に戻そうとした。
が、

ブルブルブルブル

再び震えるケータイ。
キョーコは一瞬固まると、名前を確認する。

「…非通知……」

キョーコが知ってる中で非通知でかけてくるのは二人。
椹と蓮である。
恐る恐る通話ボタンを押すと、『最上くんか?』と今朝より疲れた、しかし、どこか満足そうな声がした。

「椹さん…?」

『最上くん…君、やってくれたなぁ…』

「す、すみません!!!」

『いや、責めてるわけじゃないよ』

「え?だ、だって…」

『蓮を知ってる俺たちとしては、よくぞ言ってくれた!という心境だな。もちろん、独断で勝手にインタビューに応えたことは咎めないといけないが、それでも、君が勇気を出してくれたおかげで蓮は潰れずにすむかもしれん』

嬉しそうに言う椹にキョーコはほっとする。
お咎めはありのようだが、酷いことにはならずに済みそうだ。

『我々や社長が「蓮とクー・ヒズリは別物」と説明しても、世間はどうしたって“蓮=クー・ヒズリの息子”と見る。けれど、同じ役者である君の言葉なら、世間に届くだろう』

「そういうもの、ですか?」

『あぁ。やはり、視点の問題かな?だから、君が蓮は蓮だと躊躇うことなく言ってくれて嬉しかったよ。個人としてもLMEの社員としても礼を言いたい』

「私はただ、皆さんの認識が許せなかっただけです…感謝していただくようなことは……」

勝手をしたのに感謝されて小さくなるキョーコ。
報道陣の前に出たのはキョーコの我が儘だ。
“敦賀蓮”の演技を軽んじる世間が許せなかったキョーコの我が儘なのだ。

『…君ならそう言うと思ったよ。だからな、社長室に向かえ』

「は?どうやったら“だから”になるんですか?脈絡が…」

『勝手をしたことを反省してるんだろう?けれど、後悔はしてないはずだ。だから、社長室に行って、社長に“お咎め”をもらってきなさい。その内容が“お咎め”として納得できるかどうかは判断できないが、それで君の独断を許す。だから、行きなさい』

「…わかりました」

 

 

 


NEXT→

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椹さんの喋り方がようわからん…
でも、あのキャラ不憫で好きなんですよねぇ~

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敦賀蓮はハリウッドスター、クー・ヒズリの息子だった!!??


捏造が多いと共に流行も生み出してきたという某雑誌の一面を飾った見出し。
何が原因かは不明だが、どこからか漏れてしまったらしい…否、漏れたわけではなく、ただの捏造記事だったのかもしれない。
しかし、それが事実であったため、事態は笑いごとではすまなかった。


『演技がうまいのも納得ですよねぇ~』

『流石はクー・ヒズリの息子ですよね!!』

――プチッ

キョーコは据わった目で画面を消した。
その様子をオロオロと『だるまや』の女将さんが見ていたが、キョーコはそんな女将さんを気遣う余裕はない。

――敦賀さんに対する侮辱だわ…

キョーコは真っ暗になった画面をまるで親の敵を見るような目で睨みつけながらそう思った。
普段、あまりTVを見ないキョーコ。
そのキョーコに「大変だ」と言って、このことを教えてくれたのは、今傍でキョーコを見守っている女将さんであった。
そして、あの後にきたケータイへの連絡。
疲れ切った声で「今日は事務所には来ないで現場に直行すること」と椹に言われたキョーコは問合せが殺到しているのだろうと察すると同時に、事務所も張られているのだと察した。

「行くのか」

疑問ではない、ただの確認。
そう大将に問われて、キョーコはしっかり頷いた。

「はい」

「そうか」

言葉は少なかったが、それだけで通じた。

「悔いのないように言いたいことを言ってこい」

「はい!」

大将に背中を押されたキョーコは真剣な表情で頷くと、鞄を持って歩き出した。
まるで、戦場にでも行くかのように出て行ったキョーコを、女将さんは心配げに、大将はいつも通り無表情で見送った。

「あの子、大丈夫かね…?」

「あいつならやるさ。事務所に怒られて辞めさせられたら、ずっとここに置けばいい」

まぁ、そうはならんだろうが…と呟く大将。
絶対に“敦賀蓮”にとって不利なことは言わないとわかっているからこそ叩ける軽口。
「あんたも素直じゃないねぇ」と笑った女将さんは、「さぁて、ご飯にしようか」とキョーコが作っていった朝食を食べ始めるのであった。

 

報道陣が詰めかけているLME本社の表玄関。
キョーコはそこ目掛けて、まるで報道陣が見えていないかのように歩いた。

――冷静に、冷静に…

感情で喋ったらダメ、と自分に言い聞かせながら、普段通りを心がけて歩くキョーコ。
嘘は苦手でも演技はできる。
でも、演技でもダメだ。
演技では世間は騙せても本人には通用しない。
それでは意味がない。
本心で…しかし、冷静に――

「京子さん!」

目論見通り、報道陣は厳戒態勢の中現れたキョーコの周りここぞとばかり囲んだ。
そんな報道陣に内心「ひっかかったわ」と微笑む。
これからやることは事務所からは怒られ、本人からは余計な世話だと言われるのが必須なこと。
…それでも、我慢ならなかったのだ。

「京子さん!先輩である敦賀さんのことですが…」

「敦賀さんがクー・ヒズリの息子だということは…」

「何か、本人にはお聞きしていますか?」

「京子さん、何かコメントを!!」

餌に群がるハイエナのような報道陣の詰問にキョーコはぴたりと足を止めると、報道陣を見て微笑んだ。
微笑みといっても普通の笑みではなく、緒方が『京子』を未緒に押した理由である闇色のオーラで、共演者には怯えられた魔性の微笑みである。
その笑みに報道陣は震えあがり、一歩、二歩、と後ずさる。
それを見て、少し複雑な感情を抱きながらもキョーコはそれを表には出さず、小さな声で呟いた。

「敦賀さんが、クー・ヒズリの息子だった…?」

反応を示したキョーコに再び口を開くきっかけを得た報道陣。
こんな小さな声でも反応するなんて、流石ね…とどこか皮肉げに思いながら、先程より控え目に尋ねる報道陣に目を向けた。

「え、えぇ…京子さんはそのことは…?」

「知っていますよ。それが何か?」

思わず、そっけなく返事をしてしまった。
薄い反応に戸惑う報道陣を「いい気味だわ」と思うキョーコ。
どうやら、自分で思っていた以上に自分は怒ってるらしい…とキョーコは冷静に自己分析した。

「あ、あの、そのことに関して驚いたりとか…もしかして、本人から何か…?」

「本人からは何も聞いてませんよ。今日、ニュースで見て凄く驚きました」

――聞いてるわけないじゃない!私はただの後輩なんだから…

でも、知ってることもある。
それだけで判断材料は十分だ。

「し、しかし…」

「けど、それだけです」

「え?」

「クー・ヒズリの息子だった。それは確かに驚くことかもしれませんけど、ここまで騒ぎ立てることですか?敦賀さんの価値はそんなところにはないのに」

冷静に淡々と述べられる言葉に誰もが驚き、固まる。
そんな報道陣をよそに、キョーコは一台のカメラに狙いを定めて、そのカメラを睨みつけるように見つめた。

「私は敦賀さんを尊敬しています。役者として、人間として。けれど、それは“敦賀さん”だから尊敬しているのであって、“クー・ヒズリの息子”だから尊敬しているわけではありません。“クー・ヒズリの息子”だから演技が上手いとも思いませんし、“クー・ヒズリの息子”だから人気があるとも思いません。敦賀さんが必死で“敦賀蓮”を築きあげてきたからこそ、私は敦賀さんを尊敬してるんです」

芸能界に入る前の私なら、他の人と同じ反応だっただろう。
『顔だけ俳優』と思っていた頃なら…
しかし、私は“敦賀蓮”を知ってる。
そして、ハリウッドスターではなく、親としての“クー・ヒズリ”を知っている。

――だから、許せなかった…“敦賀蓮”を知ってるから、許せなかった

敦賀蓮を見ない人たちを。
肩書に惑わされる愚かな世間を。

「それだけ言いたかったんです」

それだけ言い残して、キョーコは邪魔な報道陣をかき分けて何事もなかったかのように事務所の入口へと向かう。
ぼけっと突っ立っている報道陣が我に返って何か言っていたが、キョーコは言いたいことは言ったので、無視して中へと入ったのだった。

 

 

NEXT→

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キョーコ視点。
キョーコならこんな風に騒がれたらキレそうだなぁと思って書きました。
だって、キョーコって基本、芸能人に興味ないし、肩書とかで判断されるの嫌いそうだし。
なにより、信仰している神様だしね!(笑

拍手[40回]



演技を見るのは好きだった。
そして、父が好きな仕事だから自分もやりたいと思った。
それは兄も同じだった。
けれど、偉大すぎる父の影から抜け出すことができず、俺も兄ももがき苦しんだ。
演技力はそこらの子役より絶対にあるのに、クー・ヒズリの息子なら当たり前…それどころか、クーの息子なのにその程度なのかと、父と比べられて、自分の演技を認めてもらえなくて、まだ10歳になったばかりなのに腐っていた。
俺も兄も、同じだった。

だけど、その年の夏の日。
日本から帰ってきた兄の表情が日本に行く前と違っていた。

――俺だけの魔法を手に入れたんだ…

そう言った兄の演技は以前とは全く違っていた。
技術の問題ではなく、どう表現すればわからないけど、明らかに以前とは異なっていた。
それから、俺の比較対象に父だけでなく、兄も加わった。
双子なのに、どうしてこんなに違うんだ?
それは周りの疑問、そして俺の疑問。
今だ影から抜け出せない俺は、ある日その理由を兄に聞いた。

――京都で女の子に会ったんだ…泣き虫だけどしっかりしていて、メルヘン思考な可愛い女の子
その子に魔法を貰ったんだ
色褪せない、最高の魔法を……

魔法使いの名前はキョーコちゃん。
そう言った兄の手には、いつも持っていたアイオライトの石はなかった。



「………兄さんに、何て言えばいいだろう…」

蓮はそう呟いて頭を抱えた。
キョーコと会って、兄の話とは違うなと思いながら接しているうちに惹かれてしまった。
どんなに否定しても、溢れてきてしまう感情…
夏の日…兄が手に入れた最高の魔法の名前を蓮は知ってしまった。
それは、恋。
人を大胆にも臆病にしてしまう、医者にも治せない進行の早い病。

「今でも、好き…だよな?」

兄の名前を『コーン』と聞き間違えて、貰った石にコーンと付けて大切にしているキョーコ。
キョーコを話す時、見たことないような顔で微笑んでいた兄。
どちらも思い出を大切にしていると知っている。
特に兄は、当時キョーコが『ショーちゃん』が好きだと知っているにも関わらず惚れたくらいだ、キョーコのことを忘れているわけがない。
そんなこと、弟の自分がよく知っている。

「兄さんなら最上さんのこと、大事にするよな…妖精のコーンの方が俺なんかより存在大きいだろうし…」

それに、自分には罪がある。
幸せになるには、あまりに人を傷付けすぎた。
だから、大切な人は作らない…幸せになれないと、自分に枷をした、はずだった。

「だけど………」

「敦賀さん、どうしました?」

食器を片付け終わったキョーコがコーヒーの入ったカップを持って近寄ってくる。
どうぞ、と渡されて、蓮は礼を言って受け取った。

「なんでもないよ。それより、何だか嬉しそうだね」

「明日には現場に復帰するんですよね?」

「うん、そうだよ」

「楽しみなんです。"敦賀さんの嘉月"!」

にこにこと笑うキョーコに蓮も笑う。
この様子じゃ演技テストがあること知らないんだろうな…と思ったが、わざわざ言うことでもないため告げることはなかった。

「それは光栄だな。でも、下手な『嘉月』を作ったら般若を見ることになりそうだ」

「ちょっ…それって私のことですか?!」

「あぁ、ごめん。『未緒』は般若より恐ろしい悪鬼だったね。間違えたよ」

「ひっどぉーーいっ!!」

からかうと予想以上の反応を見せてくれるキョーコに、蓮はくすくす笑う。
惚れていると自覚した少女相手にからかうなんて、俺も歪んでるな…なんて思いながら、蓮はこんな時兄だったら…と考えた。
きっと、「キョーコちゃんのおかげだよ。キョーコちゃんだから、俺は『嘉月』の演技ができるようになったんだ」くらいのことは言うだろう。
兄は自分と違って腐っていた期間が短かったから、その分素直だし…

「…敦賀さん?」

「ぁ…ゴメン、ゴメン。冗談だよ」

「……あの、本当にどうしたんですか?先程から何か考え込んでいるようですけど…」

「…俺が『嘉月』できなくなって、現場にはすごく負担をかけてしまったからね。どう謝ろうか悩んでたトコ」

「本当ですか?」

「…本当だよ?」

にっこりと笑うとキョーコは瞬時に青ざめた。
この笑顔が苦手なことは知っていたが、好きな女の子に笑いかけて怯えられると、少し…かなりショックだ。
兄だったら…久遠の笑顔だったら、きっと違う反応を示すだろう。
石のコーンを拾ってあげた時のような、心底嬉しそうな顔で笑うのだろうか?

ズキンッ

胸が、イタイ…
『美月』が他の女性のことを指摘した時より鋭い痛み。
育った芽を簡単に摘み取れると思って頼んだ演技訓練。
大切な人を作る気はなかったし、何より、彼女は兄の大事な"キョーコちゃん"だから、好きになっちゃいけないと自分に言い聞かせてきた。
でも、制御できない感情が俺の中で暴れ回る。

「…ねぇ、最上さん」

「はい?」

「もし、コーンが君の前に再び現れたら、どうする?」

「ふへ?コーン、が…ですか?」

「うん、そう。君に石をくれたっていうコーンが現れたら。ずっと一緒にいたい?」

「それは…できるなら、一緒にいたいですけど…」

ズキンッ

馬鹿か、俺は。
自分で傷口をえぐるような真似をして…
コーンが大好きな彼女なら、一緒にいたいって言うに決まってるのに…。

「あと…とりあえず、まずはありがとうって言いたいです。ずっと、コーンの魔法に助けられてきたから…。あ!それから、敦賀さんを紹介したいです!」

「…俺?」

「はい!私の尊敬する大先輩で、今の私にとって欠かせない人だって!」

「ぇ……?」

予想外な言葉に蓮は固まる。
欠かせない、なんて…まるで、大切な人、みたいな言い方……

「新しい"最上キョーコ"を作るって言った時、馬鹿にしないでくれましたし、演技に興味を持つきっかけになったのも敦賀さんですし、(意地悪だけど)私を導いてくれる人ですから!」

モー子さんも紹介したいけど、妖精って信じる人しか見えないって言うし…あ、それなら敦賀さんにも見えないかも…
なんて呟いているキョーコを呆然と見る。
彼女の中での俺の居場所なんてちっぽけなものだと思っていた。
意地悪な先輩、ドラマの共演者、食事に関しては信用できない男(自覚はある)。
その程度だと思っていたのに…

「違う、のか…?」

親友の琴南さんほど大きくはないけど、紹介したい人で、すぐに俺の名前が出てくるくらい彼女の中の俺の存在は小さくないのか?
彼女の中に俺の居場所が…ある?
そう思った瞬間、胸の痛みが引いた。
『コーン』に勝てるってわけでもないのに、彼女の中に居場所があると知っただけで、視界がひらけた気がした。

「あの、敦賀さん…?今、何か……」

「妖精の存在、信じるよ」

「え?」

「君の大事なコーンが妖精だって言うなら、俺はそれを信じるよ」

『コーン』が妖精じゃないと誰よりも知ってるけど、彼女がそう言うなら『コーン』は妖精だ。
妖精の存在じゃなくて、俺が信じるのは彼女が信じる妖精の存在、だから。
…ってか、今だ兄さんのこと妖精だと思ってたんだ、最上さん…

「本当ですか!?」

「うん、ホント」

「嬉しいです!妖精を信じる人がこんな近くにいたなんて!!」

そう言って、とびっきりの笑顔を見せるキョーコ。
石のコーンを見つけた時の笑顔は安堵の方が強かったけれど、この笑顔は喜びの方が強く、恋を自覚したばかりの恋愛初心者である蓮には刺激が強過ぎた。

――どうしてくれようか、この娘っ

いきなり無表情になる蓮にキョーコは顔を曇らせる。

「あ、あの…?」

「…あぁ、うん。俺も嬉しいよ。でも、妖精が見えたことないんだけど、俺にもコーンを見ることできるかな?」

「それが不安でそんな表情を…?大丈夫ですよ!きっと見えます!だって、コーンは妖精界の王子様だもの。他の妖精さんより魔力が大きいはずだわ!」

だから見えますよ!と主張するキョーコに、理屈はわからなかったが「そうかな」といって蓮はとりあえず頷いた。



「兄さん、ごめん。今も"キョーコちゃん"を想ってるかはわからないけど、俺にとっても彼女は大切な人だから…譲れない。俺に幸せになる権利はないけど、わかっていても彼女だけは手放せないから…だから、ごめん…久遠」

ずっと連絡を絶っていた兄にメールを送る。
これはけじめ。
"敦賀蓮"として成功し、堂々とアメリカに戻れるようになるまでヒズリとは無関係と決めていたけど、兄と同じ人を好きになってしまった申し訳なさともう引き返せないという意味を込めて。

「もう、引き返せない…――」

パタンとケータイを閉じ、そっと目を伏せる。
思い浮かぶのは、"キョーコちゃん"のことを語る兄の柔らかな笑顔、そして、先程見た彼女のとびきりの笑顔。
どちらも掛け替えのない人だけど、どちらが自分にとって欠かせない人なのか知ってしまったから…だから、

「すまない、久遠・ヒズリ。君にも、他の誰であっても、あの子は渡せない」

弟としても、敦賀蓮としても、謝るのはこれで最後だ。
君は琴南さん以上に手強いライバルだから、手加減はしないよ。

「――好きだよ、最上さん」

告白は誰にも聞かれることなく溶けて消えた。





―――――――――――――――――――
誰得かと聞かれたから、俺得だと答えます。
蓮vs久遠
過去の自分じゃなくて、自分の片割れ(双子)という設定にしてみました。
コーンとしての思い出がない分、態度が変わるのは本編より遅いと思いますけど、その分、「過去にほだされてるだけだ」という言い訳が聞かないので、恋心を認めるのは早そうです。

裏設定だと、久遠も蓮が日本に来た頃に活動拠点をヨーロッパに移して父との連絡を殆ど絶っています。
なので、クーが漏らす名前は「クオン」のままです。
蓮、とは流石に言えませんからね(笑

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たまたま社長が持っていた書類を見て、私はあの子だと気付いた。
髪の色も目の色も違ったけど、顔立ちにあの頃の面影があったし、アメリカのドラマを勉強のために見た時にそのドラマに子役で出ていたから。
そして、小さく「クオン」と呟いたことで確信を得た。

「社長!その子のこと、私に任せてもらえませんか?」

迷いはなかった。



「蓮。今日はお前の世話をしてくれる奴を連れてきた」

会うなりそう言い放ったボスに俺は驚いた。
こちらに来て、まだそれほど経っていないから、しばらくはボスが世話を見ると先日言ったばかりだったからだ。
俺に手を差し延べたのはボスなのに、無責任にも放り出すのか、と思わず目が鋭くなる。
そんな俺にボスは溜息を吐いた。

「そう睨むな。俺も迷ったんだ。けどな、どうしてもと言われてなぁ…」

「……どういう意味ですか?」

「たまたまお前の書類を見られてな。黒髪のやつだったが、お前が子役で出ていたドラマを見たことがあるらしい。『その子、クオン・ヒズリですよね?』って当てられちまった」

「っ?!」

ボスの言葉に息を呑む。
役者生命をかけて、自分のことを誰も知らない日本に来たというのに、ここでも知られてしまった。
やはり、俺の居場所なんてどこにもないのだろうか…

「安心しろ。彼女はお前と周平を同一視していない」

「え………」

「ドラマでお前の演技を見て、気になったから覚えていたんだと。お前の可能性のために自分に預けてほしい…彼女はそう言ったんだ」

「俺の、可能性…?」

「そうだ。親が周平だからじゃない。彼女には肩書も七光りも効かないからな」

演技に関してはすごく厳しいぞ、と笑うボス。
そんな人が俺の演技を気に留めていてくれて、世話を申し出たということは、その人に俺の演技が認められたということだろうか…?
それなら、すごく嬉しい。

「あの、ボス…その人って……」

「あぁ、紹介しよう。最上くん、入ってきてくれ」

カチャ
ドアノブを回す音と共にドアが開き、人が入ってくる。
その人物を俺は知っていた。

「京子、さん…?」

日本のドラマや映画で見たことのある人。
若手実力派女優としてアメリカでも注目されていた。

「おっ、知っていたか。彼女がお前の世話をするLMEの看板タレントの京子だ」

「看板だなんて大袈裟ですよ」

そう言って苦笑する女優は、ボスの言うようにLMEを代表する2大女優の一人だ。
………ん?

「タレント…?」

「なんだ、知らなかったのか。彼女はドラマの出演の方が多いが、タレント部所属だぞ」

演技が評価されて売れているから、皆最初は勘違いするんだがな…とボスは笑う。

「俳優部に異動の話も何度か出たんだが、バラエティーは度胸がつくし、アドリブも多いから勉強になるのでって今だタレントだ」

「そうなんですか」

そういう考えもあるのかって驚いた。
確かにバラエティーは役を演じるわけではなく"自分"のままだから、イメージを崩さないように注意を払わなくちゃいけない。
ある意味では役を演じるより大変かもしれないな…

「こんにちは、"敦賀蓮"くん。ご紹介にあずかりました、タレントの京子です。これからよろしくね」

「こんにちは、京子さん。よろしくお願いし………え?あ、あの、えっと…京子さんが俺の……」

「世話役ってさっき言ったろ」

「ちょっ…ちょっと待って下さい。京子さんってかなり忙しいですよね?」

「おぅ!うちじゃ1、2番めに忙しいんじゃねぇか?」

「そんな人に俺なんかの世話だなんてっ」

彼女と一緒にいれば演技の勉強もできるだろうし、俺の可能性に期待してくれている人だから、それは嬉しい。
だけど、日本の業界でも忙しい方のはずだし、アメリカでも注目されている役者だ、俺の面倒を見ている暇なんてあるはずがない。
別に子供ってわけじゃないし、朝から晩まで面倒を見てほしいなんて思わない。
ボスに世話になっている時も、基本的には部屋に篭って日本の勉強をしているし。
でも、地理とかマナーとかまだ全然わからないし、ネットや辞書で調べてもわからないことが多々ある。
そんな時にボスや執事の人に頼ってたけど、彼女にも同じように教えを請うのは辞退したい。
彼女が嫌だとかプライドの問題じゃなくて、彼女の時間を奪うのは気が引けるんだ。
彼女は父さん…クー・ヒズリが認めている役者だから。

「敦賀くんは私じゃ嫌?」

「嫌とかではなく…」

「あ、因みに、お前の住むとこ、今日から最上くんと一緒な」

「は?待って下さい!妙齢の女性と一緒に暮らすなんて…」

「お!妙齢なんて難しい言葉、よく覚えたな。偉いぞ、蓮!それからな、一緒に暮らすって言っても彼女はワンフロアを3人で借りてるから、同居って言うよりお隣りさんになるって感覚に近いと思うぞ。そのうち一人は男だし」

これは決定事項だからな!とボスが断言する。
つまり、俺に断る権利はないらしい。
窺うように京子さんを見ると、京子さんは同居という点は気にしてないのかにこにこしている。
男として見られてないらしい…
確かに俺の方が4つ下だけど、経験は人並み以上にあると思うし、年上にも年下にもモテていたのに…彼女から見たら範疇にないのだろうか。
それとも、そういう関係になっても構わないと思ってるのだろうか…俺には読めない。
思わず、はぁっと疲れたように息を吐くと、京子さんの顔が寂しそうに歪んだ。

「あ、あの、敦賀くん!嫌ならいいのよ?貴方の成長を間近で見たいと思って申し出たけど、それは私の我が儘だし。いきなり親交のない人間と生活しろなんて普通は拒否するだろうし。今まで通り社長の家で生活したいなら、それでいいから。ただ、敦賀くんは養成所に通わなくても、基礎はしっかりできてるし、家に篭って勉強ばかりしてるって聞いたから、日本に来てから直に演技に触れてないんじゃないかって思って…。だから、少しでも演技に触れる機会を私が作れればって思って、貴方のことを任せてほしいって社長に申し出たの」

その言葉を聞いて、そういえば早く日本で活躍できるように必死に勉強してきたけど、演技の勉強はDVDで見て学ぶしかできなくて、日本に来てから直接演技を見たことがないことに気付く。
それに、彼女ほどの役者に成長を間近で見たいと言われて、嬉しくないはずがなかった。

「ごめんなさい。貴方の都合も考えず…迷惑だったでしょ?」

「そんなことっ…京子さんの言葉はすごく嬉しかったです!迷惑だなんてありえませんっ」

「じゃあ、決まりだな」

にやりと笑うボスにはっとしたがもう遅い。
そういうことで、と何日か分のお泊りセットを渡され、荷物は直接送ると言われる。
京子さんは苦笑して、呆然としている俺の頭を慰めるように撫でた。

「…よろしくね、敦賀くん」

「…………はい」

よしよしと撫でられて、こんな年になって撫でられるなんて…と思いつつ、頭を撫でられるなんて何年ぶりだろうとしみじみ思う。
そして、やはり俺は彼女から見たら年下の男の子でしかないのだと少し肩を落とした。

何故、意識されないことを残念に思うのか気付かないまま―――





―――――――――――――――――――
やってしまった…
年齢逆転とか、立場逆転とか、そういう話が好きなんですよねぇ…。
蓮が恋心に気付くのはいつになることやら…キョーコちゃんより早いのは確実ですけどね。
でもって、年下だから中々強引になれなくて、キョーコちゃんに振り回されそうだわ(笑

拍手[27回]



「―――ルーク殿?」

見かけたのは偶然だった。
久々の休暇をゆっくり過ごし、消耗品を買いに行った帰り、ふと視線を向けた先に彼はいた。
ルーク・フォン・ファブレ――の模造品[レプリカ]。
けれど、自分には彼が自信のないただの少年にしか見えない。
その少年が一人、夕日の中に立っていた。
風が夕日色の少年の髪を靡かせる。
そして――そのまま消えてしまうのではないかと、思わず手を伸ばした。

「え………?」

いきなり腕を掴まれた少年は驚いて振り返る。
逆の手で剣の柄を掴んで。
そのことに、彼は一端の武人なのだと知った。

「フリングス、将軍?」

少年の声が己の名を奏でる。
――甘い…
何故か、そう感じた。

「こんにちは…いえ、もうそろそろこんばんは、の時間ですね」

「ぇ、あ、はい、こんばんは」

「こんな時間にお一人でどうなさったのですか?」

「えっと……」

「一人じゃないですのー!ミュウもいるですのー!!」

ひょっこりと少年の道具袋の中から頭を出すチーグル。
そのチーグルの頭をわしゃわしゃと乱暴に撫でる少年。
小動物にその強さは虐待に近いのでは…と思ったが、当の小動物が喜んでいるので良しとする。

「では、こんなところに一人と一匹でどうしたのですか?」

「こんなところ?」

「この時間帯は、この辺りは物騒ですのであまり人が通らないんですよ。ですので、暴漢などに襲われて悲鳴を上げても助けが来る確率が低いんです」

それを知って、最近はパトロールをしているんですけどね。
そう苦笑すると、少年はわたわたと落ち着かない様子で辺りを見回した。
自分たち以外、人っ子一人いない。

「俺、知らなくて…あ、でも、そういう奴らが出ても俺一人で…」

「過信をしてはいけませんよ、ルーク殿。貴方の腕が確かでも、そういった輩は卑怯な手を使いますからね。多勢でたった一人に襲い掛かることを恥とも思わない者たちですから。だから、もし遭遇するようなことがあれば助けを呼んで下さい。可能性は低くとも、それが1番生存率を上げる方法ですから」

「助けを、呼ぶ……?」

まるで知らない言葉を聞いたかのように少年は目をぱちくりと瞬かせる。
その様子に嫌な予感がして眉を寄せた。

「……貴方が不寝番を担当する際も、敵に出くわしたらそうなさるでしょう?」

「え……」

「…………しない、のですか?」

「あの…最初は、俺一人じゃ無理だし、起こしてたけど『何のための不寝番だと思ってるの?』『これくらい一人で片付けてよね!』『おいおい、ルーク。一人じゃ寂しいからってわざわざ起こすなよ』『こんな時間に起きるなんて美容の敵ですわ!』『おやおや、お坊ちゃんは一人じゃ何もできないようですね』って何度も言われて…。だから、そういう時は俺一人で対処してますけど…」

それが当たり前なんでしょ?
そんな目で少年はこちらを見た。
しかし、そんな当たり前があるはずない。
不寝番は寝ずに敵がいないか見張る係であって、敵が来たら一人で戦う係ではない。
そんなことをして、もしその不寝番が倒されてしまったら、寝ている者たちは無抵抗のまま殺されてしまうことになる。
そんなの考えずともわかるはずなのに、彼らは何を考えてそんな対応をするのか…

「あの、フリングス将軍…?」

「………彼らは?」

「へ?」

「彼らが不寝番の時、敵に遭遇したらどうしてるんですか?」

「そりゃ、叩き起こされますけど…」

今度こそ絶句する。
少年が不寝番の時は起こすなと言いながら、自分たちが不寝番の時は起こす?

「……………矛盾、してませんか?」

「だって、俺は罪人なんですから、あいつらより働かなきゃいけませんし。それに、不思議に思って聞いてみたら『ルークは1番強いんだから一人でも平気でしょ』って言われたので…」

パーティーの中で1番強い奴は一人で対処しないといけないんだろ?

まるで、洗脳…いや、まるでではない。
これは洗脳だ。
無知をいいことに自分たちの都合の良いように常識という名の非常識を埋め込んで、それを疑問に思うことすら許さない。
少年のことをお人形のように扱う彼らは、少年に自我があることを理解しているのだろうか…
レプリカだから、罪人だからと人格を無視して、思い通りに動く人形を作っているようにしか思えない。
しかも、『1番強い』?
軍人が半分を占めるパーティーで、王族である軍事訓練を受けていない少年が?
それはつまり、少年を前線に出していたということだ…レプリカだとわかる前から王族を。

「…ルーク、どの」

「?」

「本日はどちらに宿泊予定でしたか?」

「えっと、明日発つ予定なので街の端の方の……」

「そうですか。では、後ほどそちらに部下を向かわせますので、ルーク殿は私の執務室で旅の話をして下さいませんか?」

「へ?別にいいですけど、ジェイドが報告書を出してるんじゃ…」

「カーティス大佐の報告書は簡潔的でわかりやすいのですが、報告書に感情は伴いませんからね。是非、その時にどう思ったのか貴方の主観を混ぜて構いませんので教えて下さい」

そう、大佐は簡潔でわかりやすく、模範のような報告書を書く。
だから、違和感に気付くのが遅れた。
その状況に至るまでの経緯を…何故、少年がそのような行動に出たのか、その理由が報告から欠けていることに。

「あ、はい。わかりました」

少年は戸惑いながらも頷いた。
その事に安堵する――彼らと少しでも離すことに成功したから…
彼らと共にいる限り、少年は人形でしかいられない。
それは予想ではなく確信だ。
レプリカだとかそういう問題じゃない。

「では、行きましょうか」

「ミュウもいるですの!」

少年の肩に乗るチーグルが存在を主張する。
今の今までその存在を忘れていた。

「はい。では、ミュウ殿もご一緒に」

「ミュウも話すですの!ミュウはずーっとご主人様と一緒だったですの!!」

「そうですか。よろしくお願いしますね」

チーグルの証言がどこまで当てになるかはわからないが、少年一人の証言より良いかもしれない。
少年は洗脳されきっていて、彼らの非常識な行動でも肯定してしまうだろう。



その後、書記官を連れて執務室で話を聞いたアスランは言葉を失った。
出るわ、出るわ、非常識な行動の数々。
数え切れないほどの不敬と犯罪。

――ちょっと待て…ルーク殿と会ったのがマルクト内だなんて聞いてませんよ?!
――しかも、ファブレ公爵の屋敷に侵入して子息を誘拐した犯罪者を放置?!
――極秘任務の途中でそれ以外の行動なんて…

最初の方を聞いただけで眩暈がする。
連れてきた書記官も真っ青になりながら、ルークとミュウの話を紙に綴った。

「……………ルーク殿」

「はい?どうしました?」

アクゼリュス崩落、そしてユリアシティのところまで話し終えたルークの肩をがしっと掴むアスラン。
ルークはきょとんと首を傾げてアスランを見た。

「貴方は私が守りますっ…いえ、護らせて下さい、お願いします!!」

「ふぇ?守るって…罪人を守る必要なんてないと……」

「いいえ!貴方がそんなに罪を感じる必要も、その身を矢面に立たせる必要もないのです!」

――罪人といったら、周りの面子の方が余程罪人だ
――だいたい、アクゼリュスの崩落はルーク殿が騙されてと聞いていたが、どう考えたって暗示じゃないかっ

「戦う必要なんてないんです。戦うのは我ら軍人の役目ですから」

「でも、武器を持ってるなら子供でも…」

「ティアさんの言い分が通るのは戦時中だけです。一触即発の状態だったとはいえ、まだ戦争の起きていない状況で民間人が戦う必要なんてないんですよ」

「お、俺はレプリカで…っ」

「レプリカは皆軍人なんですか?」

「そうじゃ、ないですけど…」

「貴方がその手を汚す必要なんてないんです。誰が何を言おうとも、これからは私が貴方を護ります」

膝をついてその手を取る。
主であるマルクト皇帝以外に膝をつくことになるとは思わなかったが、少年に関しては例外だ。
いっそ、頭を床に打ち付けるほど下げた方が気持ち的に楽かもしれない…
それほど大佐の対応は最悪なものだった。
陛下にもし駄目だと言われたら、この地位を返上してでも少年を護ろうと思わせるほど…そう言えば少年が遠慮するとわかっているから、結果が出るまで言うつもりはないが。

その後、書記官にも泣いて守られてほしいと頼まれたルークは戸惑いながら頷き、それを確認したアスランは朝一の謁見を申し込んだ。
そして次の日の朝。
アスランの報告に真っ白になったピオニーは即効ジェイドを呼び出し、事実を照らし合わせ、すぐさま処分を下した。
その後、キムラスカとダアトに文を出し、事の次第を伝えると、ルークの共にアスランを付け、キムラスカからはジョゼットが派遣された。

研究員として幽閉されたジェイド以外の行方を知る者はいない…――




―――――――――――――――――――
おかしい…
フリルクを書こうとしたのにフリルクにならなかったうえ、仲間に厳しくなった…

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敦賀蓮はハリウッドスター、クー・ヒズリの息子だった!!??


捏造が多いと共に流行も生み出してきたという某雑誌の一面を飾った見出し。
何が原因かは不明だが、どこからか漏れてしまったらしい…否、漏れたわけではなく、ただの捏造記事だったのかもしれない。
しかし、それが事実であったため、事態は笑いごとではすまなかった。


『演技がうまいのも納得ですよねぇ~』

『流石はクー・ヒズリの息子ですよね!!』

――プチッ

社は眉間にしわを寄せてリモコンでチャンネルを切った。
しかし、隣にいた蓮が社の手からリモコンを奪って、再びTVの電源を入れる。

「あぁ!何するんだよ、蓮!」

「社さん、見たくないのはわかりますけど、見てないと現状が把握できませんよ」

「けどなぁ!あんな風に言われて黙ってられるか!!お前の価値がクーにしかないみたいな言い方…っ」

「そう、ですね。俺はそれが嫌で日本に逃げてきたわけですから」

蓮はそう言って苦笑する。
親の七光と言われるのが嫌で、『クー・ヒズリの息子なのに』と比較されるのが嫌で、自分がまるで親の付属品のように扱われるのが嫌で、必死に演技して、逆らって、クビにされて、苛立ちを人に向けて、壊れかけた日々。
それを抜け出すために社長の手を取った。
なのに、まだ満足する域に達してない段階でばれてしまった素性。

――これで、また、俺は………

「あ、あれ!!」

社の驚いた声に思考の海から浮かび上がった蓮は自然と下がっていた視線を上げ、TV画面を見る。
そして、驚いた理由に納得すると共に、蓮もまた目を見開いて画面を注視した。

「きょ、今日は、事務所に来るなら裏口からって連絡が入ってるはずなのに!!」

報道陣が詰めかけているLME本社の表玄関。
そこを少女はまるで報道陣が見えていないかのように颯爽と歩いていた。

「最上さん…?なんで……」

『京子さん!』

案の定、報道陣は厳戒態勢の中のこのこと現れた少女にここぞとばかり詰め寄せる。
それを見て、社はオロオロと、蓮は近寄るなとばかり画面を睨みつけた。

『京子さん!先輩である敦賀さんのことですが…』

『敦賀さんがクー・ヒズリの息子だということは…』

『何か、本人にはお聞きしていますか?』

『京子さん、何かコメントを!!』

餌に群がるハイエナのような報道陣の詰問に少女はぴたりと足を止めると、報道陣を見て微笑んだ。
しかし、微笑みといっても普通の笑みではない。
『京子』がブレイクするきっかけになった未緒の、魔性の微笑みである。
その迫力満点の恐ろしい笑みに報道陣は震えあがり、一歩、二歩、と後ずさる。

『敦賀さんが、クー・ヒズリの息子だった…?』

反応を示した少女に再び口を開くきっかけを得た報道陣は、しかし、先程より控え目に尋ねた。

『え、えぇ…京子さんはそのことは…?』

『知っていますよ。それが何か?』

礼儀正しいと評判の『京子』にしてはありえないほどそっけなく肯定する少女。
そのことに関して、まるでなんとも思ってないかのような態度を取る少女に、これまでインタビューしたドラマでの共演者たちとの違いに、戸惑う報道陣。

『あ、あの、そのことに関して驚いたりとか…もしかして、本人から何か…?』

『本人からは何も聞いてませんよ。今日、ニュースで見て凄く驚きました』

『し、しかし…』

『けど、それだけです』

『え?』

『クー・ヒズリの息子だった。それは確かに驚くことかもしれませんけど、ここまで騒ぎ立てることですか?敦賀さんの価値はそんなところにはないのに』

冷静に淡々と述べられる言葉に誰もが驚き、固まる。
そんな報道陣をよそに、少女はカメラを睨みつけるように見た。

『私は敦賀さんを尊敬しています。役者として、人間として。けれど、それは“敦賀さん”だから尊敬しているのであって、“クー・ヒズリの息子”だから尊敬しているわけではありません。“クー・ヒズリの息子”だから演技が上手いとも思いませんし、“クー・ヒズリの息子”だから人気があるとも思いません。敦賀さんが必死で“敦賀蓮”を築きあげてきたからこそ、私は敦賀さんを尊敬してるんです』

それだけ言いたかったんです、と言って少女は何事もなかったかのように事務所の中へと入って行った。
呆然としていた報道陣はそれを止めることもできず、ただ、少女の後ろ姿を目で追う。

そんな光景を画面越しに見た二人は報道陣同様、呆然としていたが、そのうち社が「ぷっ」と噴き出す。
それをきっかけに二人は涙が出るまで腹を抱えて笑いだした。

「くくくっ…さ、流石はキョーコちゃん!ホント、行動が読めないよ!!」

「ははっ…そう、ですね。驚くことだけど騒ぎ立てるほどのことじゃないって…最上さんじゃないと言えませんよね。普通、騒ぎますよ!ハリウッドスターの息子ですよ?騒ぐに決まってるのに、それがなにかって…っ」

「ほ~んと面白い子だよ。俺はてっきり『えぇぇぇええ!!??つ、敦賀さんが先生の息子ぉ?!そ、そんな馬鹿なっ』って驚くもんだと思ってたのにさ、すっごい冷静なんだもん。今日、事務所に堂々と来たのだってニュース見てなくて、相変わらずケータイの意味がない状態なのかと思ったのにさ、確信犯だし!!」

あり得ない、と笑う二人に先程までの苛立ちはない。
少女の冷静すぎる対応に吹っ飛んでしまったのだ。

笑いが収まった蓮は次のニュースに移った画面を意味なく眺めながら、嬉しそうに目を細めた。
ずっと欲しかった言葉。
自分を肯定してくれる、魔法の言葉。
他の誰でもない、あの少女からの言葉だからこそここまで浮上できたことを自覚しながら、蓮は微笑んだ。


「まったく…君には敵わないよ………“キョーコちゃん”」

 

 

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またもやスキビです、すみません。
最近、すっごくはまってるんですよ!
1月に本を揃え始めて、3月の中旬に全部集め終わりました…新刊以外、全て中古で!
ブックオフを5件くらい回りましたよ…(ぉい

さて、いきなり蓮がピンチです。
自ら公表してたらこうならないと思うんですが、全然関係ないところからいきなり暴露されたら変に騒ぎたてられそうだなぁ…と思ってこんな話を書きました。

因みに、蓮キョはまだ成立してません。

拍手[57回]



「社さん!」

――あ、最上さんだ…

蓮はラブミー部の部室のドアをノックしようと腕を上げた状態で止まった。

――社さん、引き留めておいてくれたんだ…

「先に行って、キョーコちゃんを引き留めとくな!」と現場から蓮より先に出て行ったマネージャーは、どうやら目的を達したらしい。
蓮だけでなくキョーコのスケジュールまで把握している社は、蓮にとってあまり敵に回したくない人物である。
苦笑を浮かべた蓮は、再びノックをしようとした瞬間、凍りついた。

「す、好きですっ!」

愛しい少女の声…
聞き間違えるはずもない声が紡いだ言葉を、蓮は理解するのを拒否した。
しかし、そんなことは許さないとばかり、キョーコは言う。

「社さんが好きなんですっ…付き合っていただけませんか…?」

――最上さんが、社さんを好き…?
愛を拒絶する彼女が社さんを選んだのか?

蓮は混乱することしかできない。
その顔は青ざめて、まるで病人のようだったが、本人にその自覚はなかった。

「…ごめん、キョーコちゃん。気持ちは嬉しいけど、応えられない……」

申し訳なさそうに社が断る声がする。
その事に、蓮は思わずホッとしてしまい、そんな自分に気付いて自嘲する。

「そう、ですか…時間を取らせてしまってすみません!今まで通り接していただけると助かります……あ、あの、じゃあ、私はこれでっ」

「あ、キョーコちゃん!!」

ガチャッ
ドアノブを捻る音と共にばっとキョーコが現れる。
瞳を潤ませ、顔を赤くしたキョーコはドアの前に立っていた蓮を見た瞬間、サッと青ざめ、何も言わずに走り去る。
そんなキョーコの後ろ姿を呆然と見送った蓮は、少し経って正気に戻ると、中にいる社の方を向いた。
社は罰の悪そうな顔でこちらを見ていた。

「蓮…その、今のはな……」

「…最上さんに告白されていましたね」

「あ、あぁ…そのことなんだけど…」

「俺はお似合いだと思いますよ、社さんと最上さん。現場でも仲が良いって噂されていましたし」

――何言ってるんだ、俺はっ

思わず口に出た言葉に蓮は眉を寄せる。
社も蓮と同じように「何言ってるんだ、こいつ」とばかり眉を寄せた。

「…それ、本気で言ってるのか?」

「俺は…………」

「本気なら、本当に俺がキョーコちゃんを貰うぞ」

「え?」

――何言ってるんだ、この人は……
散々、俺と最上さんをくっつけようとしてるくせに

そんな考えが表情に出たのか、社は皮肉げに笑う。

「お前がキョーコちゃんを好きだと思っていたから遠慮してたけど、俺もキョーコちゃんが好きなんだ」

「…知ってますよ。妹みたいな意味で、でしょう?」

「そう言い聞かせて自分をごまかしてたんだ…あの子はお前が唯一感情をあらわにする子だから、お前の特別だから――だから、俺もあの子が気になるんだって…」

「やしろ、さん…」

「けど、お前がそう言うんなら、俺はもう遠慮してやらない。あの子に好きだって伝える。…今から追い掛ければ、まだ間に合うはずだからな」

そう言って部屋から出ていこうとする社の腕を蓮は反射的に掴んだ。

「俺は…っ」

「『俺は…』なんだ?いいんだろう?俺が彼女に告白しても。彼女が俺に会いに来て、俺に笑いかけて、俺に弁当なんかも作ってくれちゃったりして、俺に抱き着いたりキスしたりしたって、お前は構わないんだろ?」

――社さんに…?
あの娘が俺に見向きもせず社さんに会いに来て
あの娘がキューティースマイルを社さんだけに向けて
弁当を作ってきてくれても、それは社さんのついでで…
そして、抱き着く?
社さんの背中にあの細い腕が回って、すごく密着して…そして、あの可愛い唇が社さんの唇に………?
そんなのっ

「そんなの許せるわけがないっ!!あの娘は俺の…俺が生きるために必要で失えない愛しい人だっ」

社を睨み付けてそう叫ぶ蓮。
そんな蓮の言葉に社は目を見開くと、固かった表情を緩め、蓮の後ろ側に視線をやった。

「―――だってさ、キョーコちゃん」

その言葉に瞠目し、後ろを振り返る蓮。

――最上さん?!

そこには先程走り去ったはずのキョーコの姿。
蓮は動揺し、社の方を見ると、そんな蓮の姿をにやにやと楽しそうに見る社の姿があった。
蓮はその瞬間、先程までのやり取りは演技だったのだと気付く。

――マネージャーより役者の方が向いてるんじゃないですか、社さんっ!!

冷静さを失っていたとはいえ、素人の演技に騙された蓮は心の中でそう叫ぶ。
社の方を見て固まった蓮にキョーコはそっと声をかけた。

「あの…敦賀さん。今のって本当……」

「も、最上さん…その、今のは…」

キョーコに聞かれているとは考えず、自分の気持ちを暴露してしまった蓮はうろたえてキョーコを見る。
そんな蓮にキョーコは思わず叫んだ。

「本当にアドリブなんですか!?」

「そう、本当に………………って、は?」

――今、何て言った、この娘?

思わぬセリフに蓮は固まる。
すると、キョーコは中にずかずか入ってきて、テーブルの上に置いてあった台本を手に取った。

「すぐに演技だって気付いて、アドリブで合わせてくれたんですよね?でも、社さんとのやり取りって台本通りの展開ですし、最後の『そんなの許せるわけがないっ!!あの娘は俺の…俺が生きるために必要で失えない愛しい人だっ』って台詞、台本そのままですよ!」

「え…………?」

「だから私、驚いてつい役が抜けちゃいました……」

「ダメじゃないか、キョーコちゃん。確か、その後は『今のって本当…?今のが貴方の、本音なんですか?』って言って、その後キョーコちゃん(の役)が蓮に惹かれていって二人がくっつく設定だったよね?」

「はい。今まで優しい親戚のお兄ちゃんだった彼が見せた偽りない姿に心を動かされて…って感じで」

そんな二人の言葉に蓮は悟った。

――芝居かっ……芝居でこの俺を嵌めたのか…っ!

ゴゴゴゴゴ……
大魔王のご降臨にキョーコは訳がわからないまま涙目になり、社は「闇の国の蓮さん…」と青ざめて顔を引き攣らせる。

「あ、あの……敦賀さん?」

「何かな?」

「ななな何故、怒っていらっしゃるのですか…?」

「怒ってなんかいないよ」

「(絶対嘘です~~っっ!怨キョが騒いでる上、キラキラがぶすぶす刺さってますから!)」

「(やばい、やばいぞ~っ!キョーコちゃんだけでも逃がさなきゃ!)」

社はこうなった経緯を思い出し、キョーコにまで被害がいくのは可哀相だと勇気を振り絞る。

「きょ、キョーコちゃん!」

「は、はぃいい!」

「確か次、仕事入ってなかったっけ?」

「へ?あ!もう、こんな時間?!社さん、ありがとうございます(いろんな意味で)!敦賀さん、私これで失礼させていただきますねっ」

「えっ…ちょっ、最上さん?」

「では、失礼しまぁぁぁああすっ!!!」

シュタタタタッ
まるで忍者のごとく走り去っていくキョーコを呆然と見送る蓮。
そんな蓮を見ながら社ははぁっと溜息を吐いた。

「蓮……キョーコちゃんな、今度新しいドラマでヒロインやるんだって。同じ部活の先輩に恋して、最終的には親戚のお兄ちゃん(先輩と同級生)とくっつく役。だけど、あの子さ、恋愛拒絶のラブミー部員だろ?恋する役なんて無理だ、って言うからさ、俺たちも手伝うよって持ち掛けたんだ」

「………」

「で、キョーコちゃんが1番不安に思ってた『顔を見ずとも恋してるってわかる演技』をやってみることになって、設定知ってたら先入観があるだろうからって、何も知らないお前を巻き込んだってわけ。因みに、キョーコちゃんは『そんな敦賀さんを騙すような(恐ろしい)ことできません!』って遠慮したんだ、最初。けど、『大丈夫だって。あいつが怒っても俺がどうにかするからさ』って言って、俺が説得した」

「…つまり、社さんが原因ってことですね?」

「だってお前、いつまで経ってもはっきりと肯定しないんだもん。だから、少し危機感煽ってやろうと思ってな」

そして、そんな社の作戦に見事嵌まってしまったというわけだ。

「しっかし、るぇぇん!キョーコちゃんのお前の認識、ひっどいなぁ!演技だってばれなかった場合のお前の反応、『断って正解ですね。恋人を理由に今以上干渉されたらたまりませんから』って感じだと思う、だってさ」

「……俺ってそんなに鬼みたいですか?」

「最初が意地悪だったもんな、お前。神聖化されてるくせにそんな認識って、いったいお前何やったんだ?」

「…………」

凄んだり、嫌がらせしたり、いろいろやりました…
蓮は当時のことを思い出し、「今、彼女が懐いてくれているのが奇跡だと思います」と遠い目をして漏らした。
哀愁漂うその姿に、社は「お前、ホントに何を…」と呟くが、返事は当然返ってこなかった。

「とっ、とにかくだ!キョーコちゃんがラブミー部員だからって安心している蓮に、その考えの甘さを教えようとだな…。あわよくば、キョーコちゃんがお前の気持ちに気付いてくれたらなぁ…なんて思ったけどさ…まさか、台本通りのセリフを吐くなんて想定外だったぞ」

「俺も想定外でした……こんな近くに馬の骨になりうる人がいたなんて…」

「は?」

「思えば、最上さんって最初から社さんには好意的でしたし、社さんのお願いなら簡単に聞きますよね。第一、好きでもない人間に演技でも『好きだ』って言えない子ですよね、あの子」

「そ、それは、好意的っていうよりキョーコちゃんは理由なく人を嫌うような子じゃないし、お願いって言っても基本的にお前関連のことじゃないか!それから、確かにキョーコちゃんは不破とかが相手だったら死んでも『好き』って言わないだろうけど、それ以外の奴になら普通に言うんじゃないか?」

「…俺、初対面で話す前から嫌われていたようですし、俺がお願いしようとすると身構えるし、緒方監督から聞いた話なんですが『敦賀くんのこと好きなんだね』って言ったら『尊敬って言ってもらえませんか』ってすごい顔で言ったらしいんですが」

「…………」

不憫すぎて何も言えない。
思わずほろりときた社は、ぽんっと蓮の肩に手を乗せた。

「蓮…俺、協力するからな。せめて普通に人として好きと言われるように…」

そう口に出して更に悲しくなったのか、社は無言でケータイを取り出し、どこかにメールした。

「社さん、今の…」

「お前の夕飯、頼んどいたから。少しは認識を変えられるように努力しろよ!」

「……はい」

「それから!何に遠慮してるのか知らないけどな、もっと積極的にアプローチしろ!『俺が生きるために必要で失えない愛しい人』なんだろ?」

「…そうですね。あの子は俺個人の人生にも、役者人生にも欠かせない」

過去の贖罪が済んでない――なんて、そんなことは言ってられない…
恋はするものではなく落ちるもの。
それを蓮は知っている。
恋はしないとキョーコが言っていても、キョーコの意思とは関係なしに落ちてしまうかもしれない。
その時、黙って指をくわえて見ているなんて、蓮にはできそうにもなかった。

「今はまだ、『好き』という言葉はあの子を傷付けてしまうかもしれないから言えませんけど、いつか近いうちに必ず…」

蓮の決意に社は「その意気だ!」とやる気になったことを自分のことのように喜ぶ。
そんな社に苦笑して、「これからもご協力ほど、よろしくお願いしますね?」と蓮は手を差し出した。




―――――――――――――――――――
モー子さんの次に手強いのって尚じゃなくて社さんな気がします。
社さんが敵に回ったら終わりですね、蓮。

拍手[32回]



検索ワードを見てみると、「カイン」とか「雪花」が圧倒的ですね…
あとは「フリルク」とか「仲間厳しめ」とか「鰐ル」とか…
皆さんが何を求めてるのかよくわかります。
…少ないものを探すんですよね。
そういうサーチで探しても出てこないやつ…私も同じだからわかります(笑

ではでは、拍手返信です。
遅くなってしまい、すみません!!

>4/7 (21:04)
「「瞳に映るあなたが真実」、読みました。とても~」の方
拍手ありがとうございます。
返事が遅くなってしまい、申し訳ありません(汗
リンクが切れていたことを報告してくださってありがとうございました!!
すごく助かりました…何で切れてたんだろ??
フリルクを好きになって下さって嬉しいですwww
続き、頑張って考えます…


>4/14 (23:44)
「企画のフリルクおもしろいです~」の方
拍手ありがとうございますw
因みに、一目で見破ったのはアスランだけですよww(裏設定?
愛の力ですね!!
フリルクがもっと増えればいいのに…


拍手[1回]


スキビの長編(10話くらいの)を今本館の拍手用に書いてるんですけど、拍手じゃなくてここに載せたほうがいいですかね…?
ってか、このサイトでスキビって需要あるのかしら?
浮気してないで、さっさとTOA書けって怒られそうだわ…

ま、自己満足サイトだからいっか(ぉい

ってことで(どういうことだ)カインと雪花マンガ第2段ですw



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ペン入れしたけど、鉛筆描きとそんな変わらない雑さってどうよ?

拍手[9回]



「モー子さぁぁぁあんんんっ!どうしよぉぉぉぉおおお!!!」

「ちょっ…いきなり、何なのよっ」

久しぶりにラブミー部に訪れた琴南は出合い頭、中にいたキョーコに泣き付かれた。
抱き着こうと突進してきたをキョーコを華麗に避けた琴南は理由を聞く。
すると、キョーコは「実はね…」と途方に暮れた顔で話し出した。

「あ、あのね…ぇ、ぇっと………」

「もーーっ!はっきりしなさいよ!!」

「つ、敦賀さんに結婚を申し込まれましたっ!!!」

「はぁぁぁあ?!」

急かされたキョーコが勢いに任せて叫んだ内容に琴南は目を見開き、まじまじとキョーコを見る。
嘘をついている様子はない。

「あんた、敦賀さんと付き合ってたの?」

「そんなわけないじゃない!ただの先輩後輩よ!それ以外の何者でもないわっ」

きっぱりと言うキョーコに琴南は思わず蓮に同情した。
社長を始め、LEMの一部の社員は蓮がキョーコに惚れていることに気付いていた。
蓮と殆ど接点のない琴南や小学生であるマリアまで気付いていたというのに、肝心のキョーコはてんで気付いてなかったらしい。
でなければ、こんなにはっきり断言しないだろう。

「…で、返事はどうしたのよ?」

「ちょ、モー子さん!敦賀さんが私なんかにプロポーズなんて白昼夢でも見たんじゃないのとか、冗談じゃないのとか、妄想もそこまでいくと危ないわよとかつっこまないの?!」

「だって私は、敦賀さんはあんたのことが好きだってわかってたもの。ってか、あんた、妄想激しい自覚あるならどうにかしなさいよ」

「癖だから仕方ないじゃない!…じゃなくて、モー子さん知ってたの?!」

「あんなわかりやすい態度でわからなかったあんたがおかしいのよ。ってか、交際をすっ飛ばして結婚の申し込みなんて、敦賀さんもなりふり構わなくなったわね…」

それほど気付いてくれないキョーコに焦れたのかしら?と琴南は不憫な蓮を思う。
だいたい、誕生日になったと同時に新種の薔薇をプレゼントしたり、その中に宝石を仕込んだり、いきなり夜中訪ねてきた後輩に徹夜でレッスンするなんて、特別に想っていなければ普通はしないだろう。
なのに、キョーコときたら「流石は敦賀さんだわ!」で終わらせてしまうのだから、報われないときたらありゃしない。

「わ、わかりやすいって…」

「あんたの前では温厚紳士の仮面が外れてたじゃない」

「確かにそうだけど…初めて会った時から意地悪だったし、今更取り繕う必要がないからでしょ。最近は、まぁ、神々スマイル見せてくれるし、嫌われてないのかも…とは思ってたけど、好かれてるなんて……」

「…………ホント、敦賀さん不憫だわ」

不憫過ぎて泣けてくる。
消極的だけどあんなにわかりやすくアプローチしてたのに、嫌われてないかも…程度にしか思われてないなんて……

「…それで?プロポーズされたのはわかったけど、何でいきなりそんなことになったわけ?何かきっかけがあったんでしょ?」

「きっかけは特になかったと思うけど…」

「何かあるはずよ。聞いてあげるから、順序をたてて、その時の状況と敦賀さんのセリフを教えなさい」

「聞いてくれるの?ありがとう、モー子さぁん!」

キョーコはようやく笑顔を見せる。
その事に何となくホッとした琴南は、次にキョーコが取った行動に眉を寄せた。

「………あんた、何やってるの?」

「鍵閉めて、盗聴器がないか調べてるの!」

「鍵はともかく、こんなところに盗聴器なんて仕掛けてあるわけないでしょ!あるとしても社長が仕掛けたやつくらいだから安心しなさい!」

「わかったわ…じゃあ、モー子さん、耳貸して?」

「なんで…………はぁ、わかったから、その顔やめなさい」

何だかんだでキョーコに弱い琴南は溜息を吐くとキョーコに近付き、耳を貸した。

「あのね、実は私、最近『B・J』役を演じてる関係でホテル暮らししてる敦賀さんのお世話をしてるんだけど…」

「ちょっと待ちなさい…『B・J』って確か、謎の俳優"X"だか日系英国人『カイン・ヒール』だかがやってる役でしょ?」

「うん、そうよ。あれ、実は敦賀さんなの。凶悪だったから、私も戸惑ったわ」

「ちょっ、キョーコ!アレって映画のエンドロールにすら名前を載せない予定なんでしょ?私に話していいわけ?」

「えっと、敦賀さんがね?『君に一人で考えさせると曲解したあげく「あれは夢だったのよ、そうに決まってるわ!だって敦賀さんがそんなこと言うはずないもの!あー、すっきりしたぁ」ってなるに決まってるからね。だから、君の親友である彼女になら相談してもいいよ。カインのことも必要なら話していいから。社長には許可もらってるしね』って」

「………」

キョーコの行動パターンを読み切っている蓮に琴南は引き攣った笑みを浮かべる。
琴南もきっとそうなるだろうと思ってしまったからだ。
それに、夢で終わらせるならまだいいが、「敦賀さん、冗談でそういうこと言うなんて…そんな人じゃないと思ってたのにっ」なんてことにも成り兼ねない。

「それでね、私は今ね、カインの妹の『雪花・ヒール』として一緒にホテル暮らしをしてるんだけど…」

「は?一緒って…同棲ってこと?!」

「同棲じゃなくて同居よ!それに、ベットは別だし、カインと雪花は兄妹なんだから問題ないわ!」

問題大有りよ!と琴南は叫びたかったが、キョーコのことだ、「どこに問題あるの?」と首を傾げるに決まってる。
些細なことで「破廉恥よ!」と叫ぶキョーコだが、過去に男と同居して何もなかったからか、男と暮らしても自分に手を出すわけがないという間違った認識をしているらしい…

「恨むわよ、不破尚…」

琴南はそう呟かずにはいられなかった…

「…で?」

「えっと、それでね、カインと雪花として普通に過ごしてたんだけど、ある日突然カインじゃなくて元に戻った敦賀さんが一枚の紙を私に差し出してね、『これにサインしてくれる?』って言ってきたの」

「それってまさか……」

「…婚姻届。しかも、敦賀さんの方は記入済み」

キョーコが遠い目で呟く。
キョーコの気持ちはわかるが、良い手だわ…と琴南は感心した。
普通に結婚を申し込むより信憑性があるし、本気だと伝わるだろう。
婚姻届まで持ち出せば、流石のキョーコも冗談だと笑い飛ばすことはできないはずだ…多分。

「…って、あら?確か、敦賀蓮って芸名だったわよね?流石に婚姻届に芸名を書くわけにはいかないはずだし、本名で書かれてたわけ?」

「うん……………『久遠・ヒズリ』って」

「へぇ、久遠・ヒズ………ヒズリ?ヒズリってまさか………」

「そのまさかよ、モー子さん。先生…クー・ヒズリの息子だったのよ」

亡くなってると思ってたからびっくりしたわ…と乾いた笑みを浮かべるキョーコ。

「…嘘ってことないわよね?」

「私もそう思ったわ。でも、目の前で自前の金髪見せられた上、普段付けてる黒のカラコン外されたら信じないわけにはいかないと思わない?しかも、身分証明のためにパスポートと運転免許証まで見せられたのよ?」

「そうね………因みにそれって、トップシークレットよね?」

「うん。『日本だと社長しか知らないことだからね。琴南さん以外に話さないこと。話したらどうなるか……わかってるよね?』って脅されたわ…だから、モー子さんも誰にも話さないでね?」

「話さないわよ、命が惜しいもの…ってか、知りたくなかったわ……」

クー・ヒズリの息子が人気俳優『敦賀蓮』だと今まで話題にならなかったのは、意図的に隠していたからに他ならない。
そんなことを他の人間に漏らしでもしたら、蓮はもちろん社長だけではなく親であるクーも敵に回すことになるだろう。
そんなことになれば、芸能人生の終わりを示している。

「…それでね?『君が好きだ。俺と結婚してほしい』って言われて…」

「あら、意外とありきたりね」

「最初はね。その後私、敦賀さんの意図がよくわからなくて『何で私なんですか?私より綺麗な人も可愛い人も優しい人も他に沢山いますよ?』って言ったのよ。そしたらね、『君しか考えられないんだ。君にしか心を揺さ振られない…君は俺の光なんだ。君がいない人生なんて考えたくもない…だから、最上キョーコさん。俺に君の人生をくれないか?』って言われたの」

普通の男に言われたら引くかもしれない言葉のオンパレードに、「期待を裏切らない人ね…」と琴南は呆れると同時に、プロポーズを意図がわからない扱いするキョーコにある意味尊敬の念を抱いた。

「だから私、『そんなこと言われるほど敦賀さんに何かした記憶はないんですけど』って言ったんだけど、『そんなことない。俺は君に救われたんだ…君に自覚がなくてもね。君は俺に最高の魔法をくれたんだ…今も、昔も』って否定されて…」

「ちょっと!今はともかく『昔も』ってどういうことよ?」

「それがね、私はその人が敦賀さんだって気付いてなかったんだけど、私が6歳の時に京都で会ったことがあったのよ。私が会った時は金髪碧眼だったし、身長も今ほど高くなかったし、わからなくて当然だったんだけど…その男の子に別れる時、綺麗な石を貰ってね、ずっとお守りにしてたの。その石を敦賀さんの前で落としたことがあって、敦賀さんはその時、私が京都で会った子供だって気付いたんだって」

「へぇ…凄い偶然ね…」

「私もそう思うわ。別れる時、住む世界が違うから二度と会えないって言われたし…だから、『時を越えて再び会えたって運命だと思わない、キョーコちゃん?』って言われて確かにそうかも…って思ったのよねぇ……」

そのセリフの前に「妖精じゃなくて、ごめんね」と付くのが、そこは省いても問題ないだろう。

「それに『君が俺と結婚したら、君の敬愛するクー・ヒズリが本当の父親になるんだよ?それに、夫婦になったら先輩だからって遠慮せずに演技指導も頼めるし、一緒に暮らせば俺の食事事情を心配しなくて済むようになるよ』って言われて危うく頷くところだったわ…」

だって先生が父親よ!演技指導頼み放題よ!食事管理ができるのよ!?
と、訴えるキョーコに琴南は使えるモノは思い出でも親でも演技でも自分の情けない面でも全て使う蓮に「手段を選ばないのね…そこまで追い詰められてたのかしら」と呟く。
こっそり「演技指導はいいなぁ」と思いはしたものの、「だからといって、あんな面倒臭そうな男の相手はごめんだわ」とばっさり切った。
流石はラブミー部員2号である。

「それでね、問題の紙がこれなんだけど…」

「…ホントに埋まってるわね。保証人は社長…って、あんた、これ……」

「うん…お母さんにわざわざ会いに行って書いてもらったみたいなの。私、まだ未成年だから、保護者の署名が必要だし」

「手回しが早いというか、何というか…」

「『これで君が母親に会いに行く必要はなくなっただろう?本当は君に記入してもらった後に一緒に行った方がいいかな、って思ったけど、君は昔、母親のことでよく泣いていたからね。とりあえず俺だけで行ったんだけど…正解だったよ。彼女のような人を君に会わせるわけにはいかないからね…』って敦賀さんが不快そうに語ってくれたわ…」

少し悲しそうな顔のキョーコに琴南は思わず、そんな顔をさせた見たこともないキョーコの母親を恨めしく思った。
キョーコが愛を信じないのは不破尚のせいであるが、根本はキョーコの母親だと気付いたからだ。

「そう……それで、あんたはどうしたいの?私に相談するってことは迷ってるんでしょ?」

「う、うん…断ろうって最初は思ったのよ?だけど、敦賀さんすごく真剣で、『答えは急がないから、ちゃんと考えてみて…?君が悩んで出した答えなら、どんな答えでも受け止めてみせるから。…ただ、覚えておいて。俺は君が好きだよ。ずっとずっと、君が好きだよ。俺は絶対に裏切らない…一生君を愛する自信がある。それをどうか覚えておいて…』って言われて、この人は私が何を恐がっていて、何を欲しいかわかってくれてるんだ…って思ったら、断りの言葉が出なくなっちゃって……」

ぎゅっと心臓付近を掴むキョーコに琴南は目を見開くと、「しょうがない子ね…」と苦笑した。

「ねぇ、キョーコ…あんた、もし敦賀さんにキスされたらどう思う?」

「は、破廉恥よっ」

「じゃあ、社さんは?」

「へ?社さん?何で??」

「いいから答えなさいよ、もーっ!」

「え、えっと…想像できないわ…」

「じゃあ、不破尚は?」

「絶対嫌!死んでも嫌!!」

「ふ、ふぅん…じゃあ、あんたがお世話になってるブリッジ・ロックの…あの背の低い人は?」

「ちょっと、モー子さん!背が低いなんて言ったら光さんに失礼よっ!」

「はいはい。で、そのヒカルさんとやらにキスされたら?」

「光さんに?う~ん…想像できないけど、少しいや、かも…?」

「それよ!」

いきなり叫んだ琴南にびくっとしながらも「何が"それ"なの、モー子さん?」と尋ねるキョーコ。
そんなキョーコに琴南ははっきりと言った。

「不破や石橋さんは嫌って思っても、敦賀さんには破廉恥だと思うだけで嫌悪感はないんでしょ?それが恋愛かそうじゃないかの違い!つまり、あんたは少なからず、敦賀さんに好意を抱いているのよっ」

「そうなの?」

「そうなの!だから、さっさとその紙に記入してあんたの返事を待ってる敦賀さんに渡してきなさい」

「で、でも、敦賀さんを好きだって確証もないのに失礼じゃない…?」

「そんなことないわよ。少しでも自分を愛してくれる可能性があるって知ったら、あの人はあんたの気持ちが追い付くまで待ってくれるわよ。どうせ、その婚姻届はあんたを縛り付けておくためのものだろうし、結婚したからってすぐに自分を愛せ、なんて言わないと思うわ。だから、それ書いて敦賀さんに渡して『今はまだわからないけど貴方を好きになれると思う』とでも言いなさい!あんたが真剣に考えて出した答えなら曖昧なものでも許してくれるはずだから」

そう断言する琴南にキョーコはこくりと頷く。
琴南はそれを満足そうに…しかし、少し淋しげに見つめると、ふと何かに気付いたように目を瞬かせた。

「そういえば、あんた、敦賀さんのことどう思ってるの?」

「はへぃ?好きなのかもってモー子さんが言ったんじゃない」

「でも、誘導尋問だって思われるかもしれないしね。あんたが自覚してる気持ちは尊敬とかそういうの以外にないわけ?」

「尊敬以外…?敦賀さんに………そうね、敦賀さんに悲しい顔はしてほしくないわ。見てるこっちまで胸を締め付けられるようなあんな顔……」

「そう…なら、それも伝えてみなさい。きっと喜ぶわよ」

琴南がそう言うと、キョーコは少し照れ臭そうな顔でこくりと頷いた。

「モー子さん、相談にのってくれてありがとう!!」

「はいはい。いいからさっさと敦賀さんのとこに行ってきなさい。ちゃんと結果を教えるのよ?」

「はーい!」

笑顔で去るキョーコを見送る琴南。
鍵を閉めたのを忘れてドアにぶつかりかけたキョーコに「らしいわね…」と笑う。

「…ラブミー部、卒業おめでとう……キョーコ」

愛を取り戻したキョーコの背に、そっと呟いた。



その後、独占欲剥き出しでキョーコに構う蓮を見て、「はやまったかも…」と後悔したのは余談である。

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